
月が変わって新月気になりましたが、あまり星撮りが捗っていないので、
先月最後に撮影したオリオン大星雲とその画像処理のお話でも...。
この星雲と前回のブログでご紹介した銀河(NGC253)を、11月28日と29日の
ふた晩で前半・後半に分けて撮影しました。
タイトル画像が、そのオリオン大星雲(M42)です。
オリオン座の三つ星の下にある明るい星雲で、目が良い人ならボンヤリと見えます。
私がポタ赤に300mmレンズで初めて撮った天体で、これが天体撮影にハマる
切っ掛けでした。
天体写真としてもよく見かける対象ですが、中心部が明るくその周りの赤い星雲は
無改造のカメラでも写すことができます。
1つの露出設定で撮影すると中心部が白トビしますが、そこにはこの星雲に
赤い色をつけている「トラペジウム」という台形型に並んだ4つの星の星団が
あります。
この明るい星々から出る放射線が周囲の水素ガスを電離して幾つかの特定の
波長の光を出します。そのうち、大強度で可視光域にある光はHα線と呼ばれ
赤い色をしています。
宇宙はほとんど真空で、銀河に物質(実はダークマターも)が集まっていて、その中でも、太陽系から1300光年離れた
オリオン座の辺りは物質が多い領域です。その主成分は水素分子で、それ自体は強い光を出しませんが、近くの星により
電離されて赤く光ります。Hαは輝線スペクトルの1つなので、このように赤い星雲は「輝線星雲」とも呼ばれます。
また、青白く光る部分は近くの明るい星の光を反射したもので「反射星雲」と呼ばれます。これらを合わせて「散光星雲」
と言われます。
オリオン座の三つ星からM42に渡る領域は水素分子雲が濃い場所で、今回はこの分子雲と明るい星団のトラペジウムの
両方を写すのが目的です。
ただ、現在のカメラでは1ショットで両方を捉えるのは不可能です。
トラペジウムを見えるようにすると分子雲が写らず、分子雲を写そうとするとトラペジウムの周辺が白トビする
という、「あちらを立てれば、こちらが立たない」状態です。
タイトル画像は中心部が白トビしています。
カメラのダイナミックレンジ(DR)が十分広ければ1ショットで写せますが、そうではないので、風景写真でも使う
HDR (High Dynamic Range)という手法を利用します。
これは露出設定の異なる数枚の画像を合成するもので、デジイチなら「露出ブラケット」で露出設定を変えながら3〜7枚を
連写し、現像するときに合成します。
私は風景写真では、以前Nik CollectionのHDR Effex Proを使っていましたが、最近はLuminarのメーカーである
SkylumのAurora HDRを使っています。
天体写真には、画像処理用のPixInsightにある「HDR Composition」という機能を使います。
今回は、SS=10sと30sをそれぞれ50枚、SS=420sを可能な限り撮ろうとしましたが、2日目は途中で曇って
使えたのは72枚でした。
それぞれを通常の画像処理と同じく合成しておきます。
合成後のSS=10sと420sの画像をJPEGに書き出しました。
JPEGなのでDRが小さく、左の画像でも中心部がトンで見えますが、合成後は32bitにしているので明るさを調整すると
トラペジウムが浮かび上がります。420sの方はどんなに明るさを調整してもトラペジウムは見えません。
画像では分かりにくいので、トラペジウムを含む512x512ピクセルの領域の光量分布をヒストグラムで見てみます。
SS=10s。
SS=30s。
S=420s。
SS=10sではピークでも飽和していませんが、30sでわずかに飽和し、420sでは広い領域でトンでいます。
HDR合成して画像処理下出来上がりは次の画像です。
暗い分子雲が星の光を反射していたり、電離して赤い光を出している様子がわかるでしょうか。
中心部に4つの星が並んだトラペジウムも辛うじて見えています。
上の画像に天体のカタログ名を入れると次の画像になります。
M42は下の広く明るい部分で、鳥の頭のような部分はM43です。
NGC1977、NGC1975、NGC 1973は輝線星雲・反射星雲で、これらを合わせて "The Running Man Nebula"とも
呼ばれます。下の方にあるNGC1980は散開星団です。
太陽の最もご近所の星でも数光年は離れていて、太陽系周辺はこのようなダイナミックな場所ではありませんが、
遠くから星が生まれ出る場所を眺めて見て、太陽系もかつてはあのような領域から生まれ出たのだと想像するのも
感慨深いと思います。
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Posted at
2021/12/07 20:22:15