
前回のブログから、ラズパイを天体撮影に利用する話を
始めました。
最初のブログのタイトルでタイプミスをして「INDI」と書くところを
「INID」としてしまい、「Initial-D」になっていました。すみません。
前回は、ラズパイとはどんなものかをざっとご紹介しました。
それをどのように利用するかを話す前に、まず、天体撮影って
どんなことをしているのかをご紹介したいと思います。
ラズパイとINDIから脱線しますが、どのように使うかの説明には
必要ですので、長い話にお付き合いください。
ご存知の方は、読み飛ばしてください。
当たり前のことですが、夜空に見える星でさえかなり暗いので、
写真に撮るには感度(ISO)を上げ、絞りを開けて、シャッター
スピード(SS)を遅くします。SSは数秒以上となるので、三脚に
固定しなければブレてしまいますが、カメラを固定しても地球の自転のために、
レンズの焦点距離によっては、数秒でも星が流れてしまいます。
星を流さように撮るには、カメラを地球の自転に合わせて撮ればよいわけで、その撮影法を「追尾撮影」といいます。
追尾撮影に必要なのは、地球の自転軸に平行な回転軸を持ち、地球の自転速度と同じ速さで回る「赤道儀」という
機械です。厳密には、回転軸が一致していないことや地球の公転の影響もあるので、単純な回転運動では正確な
追尾にはならないのですが、とりあえず、それは考えないことにします。
(後述するように、リアルタイムで補正ができます。)
最近はデジカメの普及もあって、広角〜標準レンズの画角で天の川などを撮影する時に星が流れないようにする
ポータブル赤道儀(ポタ赤)がいくつか発売されています。これらも極軸(=地球の自転軸)と回転軸を合わせる
ために北極星を見る簡単な望遠鏡(極軸望遠鏡)や覗き穴が備えられています。
私も最初のデジイチを購入した2012年の秋にポタ赤(Vixenのポラリエ)を購入し、天の川や明るい星雲を撮ること
から始めました。その後、少ししっかりしたポタ赤を入手して300mmまでのレンズで撮っていましたが、それに限界を
感じて、三年前の夏に小型の赤道儀を購入し、それからこの趣味にハマっていきました。
暗い星雲や遠くの銀河を撮るには、焦点距離の長い望遠鏡が必要になりますが、カメラレンズほど明るくなくて、
屈折鏡でおおよそF7-8、大口径の反射鏡でF4程度ですので、ISO800や1600でも、SSが10分以上になることもあります。
また、焦点距離が長くなると視野(画角)が狭くなるので、目で見えない天体を視野の中心に持ってくること(「導入」
といいます)が難しくなります。
望遠鏡、赤道儀、カメラという道具が揃えば、「導入」「追尾」「フォーカス」の精度を如何に向上するか天体撮影の
基本かと思います。焦点距離が長くなると、これらの難易度が上がります。
このように書くと敷居が高そうですが、私が始めたときの体験談を少し書いておきます。
上に書いたようにポタ赤からのステップ・アップを考えて赤道儀について調べると、自動導入できる赤道儀が安価で売られ
ていて、小型パッテリでも一晩動かせそうでした。
当時7万円くらいの赤道儀と、口径80mm F7.5 (焦点距離600mm)の屈折鏡とレデューサーレンズ(焦点距離とF値を
0.85倍にするレンズ)から始めました。昼間のうちにマニュアルで予習しておいて、最初の晩に、目に見えない銀河の
写真が撮影できて驚いたものです。それからは、ズブズブと、天体沼にハマっています。
本題に戻って、赤道儀とはどんなものかをご紹介します。
下の画像は、前回の出動時に撮ったものを、明るさを持ち上げて現像したものです。
天体の位置は、地軸を南北の軸とする球面を考えて、そこに地球と同じ経度・緯度を割り当てて位置を指定します。
標準的な赤道儀には2つの軸があり、地球の時点に同期させる方を「赤経軸」、それに直交する軸を「赤緯軸」と言います。
これを使って撮影するまでの手順を以下に書きます。
この写真の状態にする前に、機材を全て装着して2つの軸の周りのバランスを取っておきます。
I. 極軸合わせ
赤経軸には極軸望遠鏡が仕込まれていて、これを覗いて所定の位置に北極星を導入すれば、自転軸と赤経軸を平行に
できます。(ただし、多少の誤差はあります。)
2. アライメント
写真の位置が「ポーム・ポジション」で、この位置で電源を入れます。最初にする作業は「アライメント」(車の足回りでも
使う単語ですね)をします。明るい既知の星を視野の中心に導入し、それを端末に「この星はココだよ」と教えることで、
赤道儀に座標系を教える作業です。極軸とホームポジションの精度がよければ、1度のアライメントでも十分よいのですが、
機種によっては、2スター、3スターと複数のアライメントをすることで、自動導入の精度を向上します。
3. 自動導入
端末に登録された天体を選択すると、2つの軸に仕込まれたモーターが回って赤道儀を望遠鏡をそちらに向けます。
中央にこない場合は、端末で赤道儀を少し動かして中心に置いて、Syncという操作をすると、アライメント情報が更新されます。
暗い天体を導入するときは、近くの明るい星を導入してからSyncをすると、導入精度が上がります。
以上で、赤道儀の準備は終わり、撮りたい天体を視野に入れることができました。次は、いよいよ撮影です。
慣れると、観望地に着いてから15分ほどで、ここまでの作業は終わります。
4. フォーカス
もちろんマニュアルです。ライブビュー画面を見ながら、明るい星を拡大し星像が最小になるように調整します。
バーティノフ・マスクという、切れ込みを入れた板を望遠鏡の前にかざすと、明るい星に3つの光条がでます。これが1点で交わる
ようにすることで、より精密にピントを合わすことができます。(下の画像では、左が少し外れていて、右がジャスピンです。)
写野に明るい星が無いときは同じ高度にある明るい星で合わせてから、対象を導入します。
5. オートガイド
星像が流れないように長時間撮影をするために必要な仕掛けです。極軸がしっかり合っていれば、3分くらいなら無くても
何とか星を流さずに撮影できますが、5分以上だと必須です。
焦点距離の短いレンズに取り付けた小型CCDで対象の近くの星を捉えておいて、星がずっと画像の同じ位置に居続ける
ように、星の動きを赤道儀にフィードバックする仕組みです。
パソコンに専用のソフトを入れて、CCDからの画像を読み込み、補正信号を送る方法が主流ですが、最近は手のひらに
収まるスタンド・アローン型のオートガイダーが販売されていて、私はそれを使っています。
上の赤道儀の写真で、太い望遠鏡の上に乗っている小さなものが焦点距離100mm F2.8のCマウントレンズと、オート
ガイダーのCCDを取り付けたものです。タイトル画像の望遠鏡の右下でオレンジ色に光っているのがそのコントローラ
の画面です。ガイド中は、下の画像のように星の動きを監視していて、許容範囲を越すと戻すように信号が出ます。
6. タイマー撮影
以上の準備が出来たら、後はリモコンタイマーにレリーズ時間(SS)とインターバル、そして撮影枚数を設定してボタンを
押します。
赤道儀やオートガイダーに、このタイマー機能を持つものもあり、私はオートガイダーでレリーズ制御しています。
1時間を越す撮影のときは、カメラにはバッテリではなく、DCカプラを使って外部給電します。
撮影が始まると、天候の急変でも無い限りすることは無いので、サブの赤道儀を設置したり、ブログに上げるような
車と星空の写真を撮ったり、コーヒーブレイクを入れたり、iPadでメールや本を読んだり、仮眠をしたりして過ごします。
偶に、現地で同じ趣味の人がいると、観望地や機材の情報交換をしたりもします。
以上、天体撮影の手順をざっとまとめてみました。
では、INDIで何ができるかというと、1〜6までの全てです。
(極軸合わせだけは、赤道儀を直接さわらねばなりませんが、その補正量を計算してくれます。)
ラズパイを赤道儀か三脚にでも固定して、赤道儀・撮影用カメラ・電動フォーカサー・ガイド用CCDと接続しておけば、
それをWifi経由でパソコンから操作できます。
当面の目標は、オートフォーカスとピントのチェックに使う予定ですが、その後は赤道儀のアライメントと導入に
使えればと考えています。全てをパソコンに任せると、何か1つでも不具合があると台無しになりますし、オートガイド
は今でも一旦始めると放置できるのでパソコンでコントロールするメリットが少ないことも理由です。
拙い文章で、作業の内容をお伝えできたか自信がありませんが、いかがでしたでしょうか?
ーーー(3)に続く。