
午後のバルーン競技がキャンセルされる強風の中、10月最後の
星撮りに行ってきました。
行き先は、少し霞んでいたので標高の高いところが良かったのですが、
風が強いため、久しぶりのダム横(標高400m)です。
到着したのは21時頃で、小型赤道儀を設置して、望遠鏡ではなく、
135mmの単焦点レンズをD5300に付けて載せます。
まずは、今年の夏から何度か撮った北アメリカ星雲に、お隣のペリカン星雲
をフレームに入れます。
はくちょう座のこの辺りは分子雲があり、それが恒星の光で電離されて赤く
見える星雲になっています。どちらも2000光年離れていて、ひと続きの分子雲
が照らされているものですが、太陽系との間に光を吸収する暗黒星雲があり、
このような形に見えています。
ペリカンの右の明るい星はデネブです。天の川の中にあるので、無数の星に囲まれています。
その天の川を北に辿っていくと、カシオペア座の下を通り、オリオン座の東を抜けます。
カシオペア座を逆さにしたWの字と見ると、その右のほうに以前あげたハート星雲(IC1805)があります。
そのときは「ハート」が欠けてしまいましたので、今回は引いた構図で。
お隣にも「ソウル星雲」(IC1848)という赤い星雲があります。どちらも7000光年離れていて、上のはくちょう座の赤い星雲と同様、
電離した水素が出す光が赤く見えています。
なぜ「ソウル星雲」というのか調べてみると、"Heart and Soul"から取られたそうで、形から「胎児星雲」とも呼ばれるそうです。
上のペリカンほどは分かりやすくないですね。
これらと並行してポタ赤(SkyTracker)には50mmレンズを付けたD5200を載せて、アンドロメダ銀河からカシオペア座の辺りを入れます。
アンドロメダ銀河はかなり明るい部類で、50mm(35mm換算75mm)でこの程度に写ります。
右下のほうに星が2箇所に固まって見えるのは、二重星団という散開星団のペアです。この星団の下のほうに、ハート&ソウル
星雲があります。
夜半過ぎにはすばるがかなり高くなってきました。
すばるとカリフォルニア星雲を入れてみます。この星雲はすばるの倍ほどの距離にあり、肉眼では見えませんが赤い光に感度の
良いカメラを使うとカリフォルニア州のような長い形の星雲が浮かび上がります。
さて、この夜のメインは中型赤道儀に載せた焦点距離980mm F7の屈折鏡のテストです。
去年の暮れに発表され、今年の夏に発売された口径140mmの2枚玉(対物レンズが2枚)の望遠鏡です。
私が最初に買った撮影用の望遠鏡は口径102mm 焦点距離714mm (F7)の屈折鏡で、2年前の夏に入手してから、オリオン大星雲
やアンドロメダ銀河を撮ってきました。(←初心者っぽいですね。)
最近、光害カットフィルタを使うようになり同程度の焦点距離で、F5.6以下の屈折鏡に入れ替えたいと考えていたところ、海外の
BBSで発売前のこの望遠鏡が話題になっているのを知りました。
目的とする焦点距離とF値では、口径が140mm以上となり、価格は並行輸入物でも60万以上になります。屈折鏡では色収差を
抑えるためにED(異常分散)レンズが使われ、日本産のある硝材のレンズが有名で、高性能の屈折鏡はそのレンズを1枚ないし
2枚使って3枚玉構成にしています。(2枚使ったのは日本の有名な望遠鏡メーカーのものだけだと思います。)
この屈折鏡は、そのレンズを1枚使い現地価格で3000EUR弱でしたし、同スペックで6000USDするアメリカ産の屈折鏡と同程度の
性能であるとの書き込みもありました。
これを作っているドイツのショップの製品を輸入している国内の代理店は、以前三脚やアイピースを購入したことがある店で、
この屈折鏡の取り扱いを始めると知って、サンプル画像を持たないか尋ねたところ、貸し出すから撮るように頼まれました。
しかも、私の使い方を伝えると、焦点距離とF値を0.75倍にするレデューサーやそれを取り付けるアダプターまで取り寄せてくれて、
気に入ったらディスカウントしてくれるとも。天体望遠鏡は、カメラレンズほど数は出ませんので中々試写する機会はなく、ネットで
サンプルを探したりBBSで評判を読んで購入を決めることが多いのですが、これは一石二鳥とオファーを受け入れました。
タイトル画像は、その屈折鏡を使っているところです。
この夜は、この望遠鏡の「ファースト・ライト」(First Light)となりました。(新しい望遠鏡を初めて外で使うときに、こう言うそうです。)
レデューサーを使う前に、手持ちのフラットナを使って素の焦点距離で試写しました。
最初のターゲットは、さんかく座のM33銀河です。アンドロメダ銀河や天の川銀河と局所銀河群を形成する、もっともご近所の銀河
です。
アンドロメダ銀河より小さく暗いのと、この銀河の中にある赤い星雲を撮るためにフィルタを使ったので露光時間を十分に取ります。ISO1600、SS=720sを7枚撮って合成しました。
次に、星像をチェックするために散開星団を狙います。
上にあげた広い画角の写真に写っているカシオペア座の右、ペルセウス座にある二重星団です。こちらはSS=180sを10枚。
縮小した画像を見る限り、よく撮れているように思えます。拡大しても、収差は少なく、安価な3枚玉よりよさそうです。
ただ、LiveView画面でフォーカスを合わせるとき、焦点距離1000mmの反射鏡や900mmの屈折鏡(TSA120)に比べて明るい星が
太いのが気になりました。口径の割には軽く運用が楽で、コスパはとても良いし、これ以上の性能を求めると価格が倍以上に
なるので、悩むところです。(買わないという選択肢もありますが。)
しばらく使って良いとのことなので、空の条件の良いときに、送ってもらったレデューサーや、手持ちのレデューサーを試して
みようと思います。