
今月の星撮りの後編です。
今月は新月期(12日前後)は8、9日の夜が晴れて、9日が最良の条件
でした。前回上げたオリオン座の2枚の画像はこの夜に撮ったものでした。
タイトル画像はもっと広角で冬の大三角を入れようとしたのですが、
空全体が薄曇りでオリオン座の上の方にあった月齢9.3日の明るい月の光が
ぼんやりと広がっていて、赤被りを起こしています。
この構図で撮るとしたら、次の新月期が今シーズン最後の機会ですね。
今月は、前回のブログで触れたN.I.N.A.というソフトをずっと使っていました。
その間、何度かベータ版のバージョンアップがあり、ほぼ通常の撮影で使える
レベルになってきました。
N.I.N.A.のサイトにも課題として挙げられているガイド星をロストした後のリカバリーが実装されれば私の用途としては十分です。
Sequence Generator Proでは、ロストした後にリトライの間隔と回数を指定できて、リカバーする際にプレートソルブ
(短い露光時間で星の写真を撮って、星図データベースに照合して視野を特定すること)を実行し、
構図のズレを補正します。このリカバリー・ルーチンが実装されることを期待してます。
さて、2月4日の晴れ間が出た短時間に、きりん座の渦巻銀河NGC2403を撮っていました。
800万光年と、系外銀河ではアンドロメダ銀河やさんかく座銀河M33などの次に近い部類の銀河で、M33と
似た形をしています。焦点距離2000mmにフルサイズのカメラで次のようになります。
その2日後はとても風が強い夜でガイド星が揺らいでいたので、0.75倍レデューサを入れて焦点距離を短めにして
しし座のM95とM96という銀河のツーショットを撮りました。
右が棒状渦巻銀河のM95、左が渦巻銀河のM96で、3800万光年の距離にあります。
そして新月も近づいた8日の夜に初めて撮影する星雲を狙いました。
カタログ名はAbell 21という惑星状星雲で、海外では「メデューサ星雲」と呼ばれています。あのメデューサの頭部に
似ているところから名付けられたとか。
惑星状星雲とは、銀河の中で最も多い太陽程度の質量の恒星の終末の姿です。
これらの恒星のエネルギー源は水素の核融合でヘリウムを生成することで生み出され、水素燃料が尽きてくるとヘリウムの
融合を始めます。概ね重い元素の方が融合で放出するエネルギーが大きいので、表面のガスの圧力(原子核と電子や光子で形成される
プラズマの圧力)が急上昇し、外側のガスを吹き飛ばした様子が惑星状星雲として見られます。ここのブログでも
紹介したことのある亜鈴状星雲、リング星雲、らせん星雲などがその代表格で、これらは夏に見られます。
北半球が夏の夜、地球の夜側は太陽に対して天の川銀河の中心に近く中心方向を向いているため、多数の星があり天の川も
くっきり見えます。逆に冬の夜には銀河の外を向いているので冬の天の川は薄く星が少ないため、惑星状星雲も統計的に少数です。
このメデューサ星雲は発見された当初は超新星残骸と考えられたそうですが、観測精度が上がりガスの広がる速度まで評価
できるようになって惑星状星雲と確定されました。
次に今月ではベストコンディションだった9日の夜は、春の銀河の代表格の1つ、M106銀河を撮りました。
北斗七星の南側(右側)にある子持ち銀河M51と同じりょうけん座に属し、M51とほぼ同じ2500万光年の距離にあります。
星図ソフトで見ていると周りに多数の銀河あったので、M106と近くにあるエッジオン銀河NGC4217が入る構図に
して、上の星雲と同じ機材で撮影しました。
NGC4217は6000万光年と遠い距離にある銀河で、そのほかにも小さな銀河が見えてます。
そこで天体画像処理用のソフト、PixInsightでカタログ名を入れて見ました。
天体カタログとして最も古く有名なのはM106などの"M"=メシアカタログです。NGCというのは"New General Catalog"
で銀河以外に星雲・星団なども含みます。上の画像に見えるPGCといのは Catalog of Principal Galaxies の略で、
銀河のカタログです。この1枚に数千億から数兆個の星の集団である銀河がこれだけの数写っています。
次の撮影機会は2月20日とタイトル画像を撮影した21日でした。
両日とも快晴の時間が長く続かず、M106と同じ機材で2日合わせて100枚近くとったのですが使えたのは70枚程度。
対象はしし座の「トリオ銀河」と呼ばれる3つの銀河です。
3500万光年の距離にあり、左上がM66、左下がM65、右がNGC3628という3つの渦巻銀河です。
この領域にもたくさんの銀河があります。
最後は、翌日の22日に撮影した月(月齢10.3日)です。
ある銀河を撮影しようと上の銀河や星雲を撮影した鏡筒からレデューサを外して焦点距離2000mmにしていました。
雲が多くて銀河の撮影はできなかったのですが、ちょうど雲がかかっていない時に月を撮ることができました。
満月よりもこのくらいの月齢の方がクレーターの陰影がハッキリして立体感が出ます。
これから一週間は短周期で雨が降る天気のようで、天体撮影ができるのは3月第2週以降になりそうです。
まだしばらくシーズンが続く春の銀河を狙おうと思います。