2014年09月30日
ホバリング限界高度
未だに御嶽山噴火により行方が分からない人が居る中での救助作業も火山性微動により、中断を余儀なくされている状況下ではありますが、官民一体となって救助活動を行っています。
この救助模様は海外メディアでも報道され、その行き末が注目されていますが、実はこの上の映像。かなり、海外からの驚愕の声が挙がっているようです。それは何故か。
一見、ヘリコプター独特のホバリング(空中停止)している映像ですが、御嶽山は標高約3000m級の山岳。この映像が標高何メートルで撮影されたかは不明ですが、ヘリコプターには地面効果内ホバリング限界高度と地面効果外ホバリング限界高度とがあります。
この陸上自衛隊UH-60JAはUH-60Jより約900kg軽い仕様ですが、オリジナルUH-60の地面効果外ホバリング限界高度は約3000m、地面効果内ホバリング限界高度は約2300m。これは何を意味するかというと、ホバリング出来る可能高度が地面効果外で3000mでしか、メインローターからの揚力が発生出来ないという事になります。つまり、映像のUH-60JAでのホバリングしながらの救助活動は多分、ホバリング限界高度ギリギリ。それに山岳地帯なので突風が吹く中で、また廻りは有毒ガスと高度上昇に伴う影響で酸素濃度が薄くなり、エンジンパワーが100%出ない状況下となり、またメインローターからの揚力も小さくなります。
そういう過酷な環境下でのホバリングでの救助活動はかなり困難でありながら、ピタッとその場で停止しているUH-60JAのパイロットのスキルの高さが海外からかなり評価されています。多分、他のヘリコプターであれば、ホバリングするにも安定せず不可能かもしれません。
ここで言う、地面効果外ホバリング限界高度とはメインローター直径においてのホバリング限界高度、対して地面効果内ホバリング限界高度とはメインローター直径の半分によるホバリング限界高度を言います。
因みにMV-22Aオスプレイの地面効果内ホバリング限界高度は3441m、地面効果外ホバリング限界高度は4331mと、やはりティルトローター機の性能には敵いません。理由は簡単。エンジンパワーの向上もありますが、プロップローターが先端失速を起こさないからです。つまり、プロップローター全体から安定した揚力を発生出来る高度が高いという訳です。
そのことを踏まえながら、今後起こりえるだろうと思われる山岳でのヘリコプター救助活動に着目し、いかに困難であるかが理解出来れば幸いです。
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Posted at
2014/09/30 18:53:47
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