2019年02月21日
射出座席(エジェクションシート)
昨日の航空自衛隊F-2B戦闘機の墜落事故によりパイロットの命を救ったのは射出座席:通称「エジェクションシート」と言います。そのシートは米国BFグッドリッチ製(現在はUTCエアロスペースシステムズ製)のACESⅡ(エイセスツー)です。上の動画は米空軍サンダーバーズのソロ機が離陸後にハイレートクライムを実施し、ハーフロール(180度横転)し、「スプリットS」にてリカバーする事に失敗し墜落。その直前にACESⅡにより緊急脱出(ベイルアウト)した動画です。
航空自衛隊F-2B戦闘機のパイロット二名は上記の動画のようにベイルアウトしたと思われます。この時代のエマージョンシープロシッジャー(緊急脱出手順)はパイロットが「エジェクト」ハンドルを引くと、まずキャノピーが火薬で飛ばされ、その次に後席のパイロットがベイルアウト、次に前席のパイロットがベイルアウトしたとお思います。
下の写真は同系列であるF-15に搭載しているACESⅡですね。
ちょっと分かりづらいのですがシートのヘッドレストの両脇には「ピトー管」があります。これはベイルアウトした直前の速度と高度を計測し、パラシュートデプロイトメントするタイミングを自動的に算出され、規定された高度でパラシュートデプロイトメントするシーケンスとなるデバイスです。それに写真の右側に緑色のボトルがありますが、中には酸素が入っており高高度でベイルアウトしてもパイロットには、この酸素ボトルにより酸素を得る事が出来ます。このACESⅡは「ゼロゼロ射出座席」ですが、この意味は高度「0」、速度「0」でも安全にベイルアウト出来るようになっています。今のエジェクションシートは全てが「ゼロゼロ射出座席」じゃないですかね。
世界的にエジェクションシート・メーカーは米国UTCエアロスペースシステムズ社、イギリス・マーチンベーカー社、ロシア・ズべズダ製があります。中でも世界最高峰の性能はロシア・ズべズダ製K-36Dでしょうね。このエッジェクションシートを上回るシートはありません。その性能を動画で紹介します。
ベイルアウトした直後に下から円形状のが出てきましたね。これで風速からパイロットを守り、つまり衝撃波を遅らせる事が出来、マックでもベイルアウト出来るとの事です。つまり550ノットです。凄いですね。ロシアは時々、生命維持装置に関しては「手を抜かない」事案が沢山あります。なんだか不思議な話でもあります。またロシアの凄いところはパイロットのヘルメットやフライトスーツ、耐Gスーツ、酸素マスクは、このエジェクションシートK-36Dの一部としてデザインされている事ですね。まさに「恐ロシア」です。
話は元に戻しますが無事にベイルアウトしたあとが実は肝心。時にはパイロットに18~22Gの荷重が掛かります。これは火薬で打ち上げられるからです。一瞬ですが場合によってはパイロットは「ブラックアウト」、つまり意識喪失になり、殆どがパラシュートデプロイトメントするタイミングで意識を回復しますが、時には意識が戻らないうちに海上へ着水する事もあります。意識を失っていたら溺死するかもしれません。それでショルダーハーネスのコネクトには「シーウォーズ」という海水に触れると強制的にパラシュートを切り離す機能があり、またパイロットの救命胴衣には時にはうつ伏せな状態であっても上半身の救命胴衣はゴム風船のように膨らみ身体を仰向けになるように呼吸を確保するようになっています。また、サバイバルキットや救命ボートもあります。
パイロットはそのような事態に陥ってもいいように「サバイバル訓練」を実施しております。今は冬ですのでフライトスーツには耐水服も着用しており体温が下がらないようにしています。中には海水を真水に替えるモノもあります。
そこで米国は昨今の女性戦闘機パイロットへの門戸を開いた事により、日本と共同開発した「ACESⅡ改」が普及され、それは航空自衛隊戦闘機であるF-2とF-15にも採用されています。その恩恵が今回の事故により証明されたと言っていいかと思います。
本当に助かって良かったです。パイロットの奥様とご家族はさぞ心配されたと思います。その心中は察します。
「生き残る」これが重要な事です。その為のデバイスも新たに開発されるかと思います。
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Posted at
2019/02/21 22:01:23
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