2019年11月11日
艦船用AESAレーダーについて
この動画はフランス・タレス社が開発した艦船用AESAレーダーの紹介動画です。
その前に「AESA」とは何か?ですが。「AESA」とはアクティブ・フェーズドアレイ・アンテナ(Active phased array antenna)またはアクティブ電子走査アレイ(Active electronically scanned array)と言います。今は後述した「アクティブ電子走査アレイ」と呼称するのが通例のようです。
実はフェイズドアレイレーダーがあっても「アクティブ」ともなると実際に開発、製造、運用している海軍は少ないのが現状です。では「アクティブ」とは何かですが。
上の図は「AESA」レーダーの概念図です。簡単に言えばこれまでレーダーアンテナを回すことで物体等を発見、監視、追跡が出来ました。そこで「AESA」はアンテナは動かず、電子素子(モジュール)の一つ一つから出力をコントロールし、電子的に電波放射強度をアクティブに作動させているのが「AESA」レーダーと言う訳です。だからアンテナ自体を動かす必要が無く、パーツ数の減少、リアルタイムな多数の目標発見、監視、追跡及びマルチタスクが可能となる訳です。中にはアンテナが動く「AESA」レーダーもあります。
実は世界で初めて艦船用「AESA」レーダーを開発、実用化したのは日本です。海上自衛隊護衛艦「あさぎり」型護衛艦、「むらさめ」型護衛艦、「たかなみ」型護衛艦に搭載されている、三菱電機製J/OPS-24(B)型と言われます。
このレーダーは360度回転しながらの「AESA」レーダーですが、当初は諸問題もあり、J/OPS-24(B)型になっています。そこでイージス艦と同じようにレーダー配置したのが、同じく三菱電機製J/FCS-3型となります。これには「ひゅうが」以降の搭載型を「FCS-3改」と言い、ひゅうが型に搭載される型式を「FCS-3」、「あきづき」型に搭載される型式を「FCS-3A」に変更され、更に続くいずも型は「OPS-50」2番艦調達時には「OPS-50A」、あさひ型は「OPY-1」と呼称されます。
アンテナの大きさが違うのは「バンド」の種類が違うからですね。そこで「FCS-3A」ともなるとレーダーに窒化ガリウム(ガリウム・ナイトライド)素子を採用することで、モジュールの出力は「ひゅうが」型の搭載システムの3倍以上に増強されており、FCS-3Aを管制する戦闘指揮システムのOYQ-11にも複数目標や横行目標を対処するためのアルゴリズムが追加されています。この窒化ガリウム素子に関しては三菱電機が世界から見れば一歩リードしています。
これは航空機用「AESA」レーダーにも言える事ですね。F-2戦闘機のJ/APG-1から窒化ガリウム素子により、J/APG-2となり、飛躍的な能力向上が見込まれます。また、将来型戦闘機に搭載する実証型「AESA」レーダーも開発されています。
防衛装備庁もよく公開に踏み切りましたね。まず、公開することはあり得ない事です。今や窒化ガリウム素子を使った「AESA」レーダーテクノロジーは日本が世界を一歩か二歩リードしている現状から、イージスアショアレーダーを日米共同開発するという話もあります。
自国で「AESA」レーダー開発技術があるというのは大変良い事です。これは何も軍事用ではなく、民生用レーダーも「AESA」化すれば、今まで出来なかった事が可能となると思います。
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Posted at
2019/11/11 20:29:58
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