2020年03月24日
射出座席
過去に何回かアップしましたが、動画ではF-35のエジェクションシート(射出座席)を紹介していたので捕捉説明をちょっと話をしようかと思った次第です。
因みに世界的には、この射出座席を開発、製造しているメーカーは二社しかありません。英国のマーティンベーカー社、ロシアのズべズダ社ですね。過去には何社かありましたが吸収合併されたりで、今の状態となった訳です。
動画は米空軍のF-15,F-16,A-10,B-1も運用している「ACESⅡ」と言われる、元はマクダネルダグラス社でしたが(当時はESCAPACⅠと言われていました)、BFグッドリッチ社となりマーティンベーカー社となりました。日本ではダイセル化学工業がライセンス生産しています。そこで、このACESⅡを日米がより安全性向上の為と将来の女性パイロットの為に質量の小さいパイロットでも運用出来るように共同開発されました。だから、今の航空自衛隊のF-15とF-2のエジェクションシートはACESⅡ改と言って良いでしょう。
動画で見ればわかりますがロケットモーターにより強制的にエジェクションされますので、短時間ではありますが急激な荷重(G)が掛かるので時にはパイロットは失神する事もあります。今はだいたいプラス20Gくらいでエジェクションされますが、三菱F-1/T-2で運用していた、ウェーバーES-7Jはプラス22Gでしたので失神者は多かったと思います。因みにES-7Jは米空軍ではF-106デルタダートで運用されていたと思います。
このように今のエジェクションシートの性能向上のおかげでパイロットの生存率は飛躍的に向上しているのは、大変良いことだと思います。ここでうんちくですが、このACESⅡにはヘッドレスト両側にピトー管があり、それにより気圧高度と対気速度が算出され自動的にパラシュートを開くモードがオートになっています。これは仮に高空でエジェクションしパラシュートがデプロイすれば、長時間にわたりパイロットは氷点下の状況下に晒される事になり、下手をすれば凍死する可能性もあります。そこで今のエジェクションシートは、そうならないように高度と速度を算出しパラシュートを開くタイミングを自動的に制御されています。
試験動画ではパイロットに扮したダミー人形がテストの為にエジェクションされていましたが、実際はパラシュートがデプロイした時にパイロットがお尻で座っていたところが救命ボートとなり、パイロットより先に海上に落ちて自動的にデプロイされるように設計されています。これは海水に反応するタイプですので湖に関しては不明です。また、時には地上に於いて緊急にエバケーションする事案が発生した場合、ショルダーハーネス、ラップベルト、レッグレストを外す時間が無いときは、ACESⅡでは右側にハンドルがあり、それをプルする事により、火薬で一気にコネクトしていたハーネス類をリリース出来るようになっています。
F-35に関しては英国のマーティンベーカー社製US-16Eが採用され、質量の小さい女性パイロットや質量の大きい男性パイロットに適応できるように改良されております。一時期、F-35に女性パイロットは搭乗できない時がありましたが、理由はここにあります。やはり、ある程度は質量があった方がパラシュートがデプロイしやすい面はあります。また、今は動画でもありましたようにキャノピーを粉砕する事でエジェクションできますが、このプリマコードに関しては歴史は古く、航空自衛隊では川崎T-4には、このプリマコードがあり、キャノピーを粉砕してエジェクションする事を「スルーザ・キャノピー」と言います。要はエジェクションする時間が短縮する事が出来るので、それだけ生存率は向上しますが、なにしろキャノピーを粉砕するので、その破片がパイロットへ負傷させないとは保証出来ない面はありますが、命が掛かっているので多少の怪我はやむを得ない事情はあります。
因みに各エジェクションシートには座り心地が違うので、お尻が痛くなる事があります。特に川崎T-4のステンセルSⅢSは座り心地が悪いので、約30分座ればお尻が痛くなります。だから、ブルーインパルスのパイロットに会う機会が航空祭等であれば、自分自身用の座布団が用意していると思うので聞いて見てください。多分、ブルーインパルスパイロットは自分専用の座布団は用意していると思いますよ。
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Posted at
2020/03/24 21:39:54
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