2022年04月06日
ポーポイジング現象
2022年シーズンのF1レギュレーション変更で「ウィングカー」が復活。これはシャシー底面が飛行機の主翼断面を上下反対にする事でダウンフォースを得る事になり、コーナリングスピードが速くなるという事です。これは米国インディカーシリーズマシンにも採用されている、一つのグランドエフェクト効果です。
ですが、この「ウィングカー」に各チームともマシンの上下運動挙動に悩まされていますが、特に顕著なのがメルセデスチーム「W13」というシャシーはマシンが上下運動する事でダウンフォースは不安定で、しかもドライバーへの疲労が増加しフィジカル面でも不利になっています。これは、どういう事かと言うと、速度が上がる。ダウンフォースの力でマシンが下がる。マシンが下がる事でフロアが路面と接触し、一瞬でダウンフォースの効果が無くなりマシンは上がる。また、ダウンフォースでマシンは下がると言う「負のスパイラル」から抜けられない現象です。これではマシンは速く走る事は出来ないですね。これを「ポーポイジング」現象と言います。この現象は航空機でも起こります。
成田空港R/W16Rに着陸しようとしている、フェデックスMD-11型貨物機ですが、春の成田空港はクロスウィンドウが強い傾向となり、動画のようにバウンドする事があります。これを「ポーポイズ」と言います。極端な話、「ポーポイジング現象」も「「ポーポイズ」も空力的には同じ事です。
意外かと思いますが、飛行機の主翼は失速特性が良くないとダメなんです。つまり、主翼から発生する揚力は「ピーキー」ではダメなんです。特にアスペクト比が高い直線翼や後退翼はポーポイズになりやすいです。翼弦(主翼断面での長さ)が短いとポーポイズになりやすいです。翼断面が短いので失速しにくいからです。逆に戦闘機の殆どはクリップドデルタ翼(切り落とし三角翼)です。翼弦が主翼の根元に近いほど長くなります。そして後退角があります。迎角が大きいほど揚力は増すことは出来ますが、低速では主翼から揚力は期待出来ないです。翼弦が長いから失速するからです。つまり、主翼上面の上に流れている空気が剥がれるからです。それを防止する為に「ソーカット」「ドッグツース」「制御板」は追加されます。これにより翼端失速を防ぐ効果があります。中にはF-15のように主翼前縁が下に垂れているデザインをコニカルキャンバーと言います。これにより低速でも空気が剥がれる速度を遅くしていますが、空気抵抗が大きいので、フライバイワイヤの戦闘機では使われていません。
そういう事で今シーズンのF1マシンはウィングカー概念による、グランドエフェクト効果の恩恵をいかに生かすかで勝負が決まると考えられます。このウィングカー概念を最初に取り入れたのは、当時のロータスでしたが、マシンがスピンしマシン後部が進行方向に向いたら逆にアッパーフォースが上がりマシンは空中に舞い上がり事故が多かったので、ウィングカー概念は中止となりました。確か、1990年代のグループCカーで「ルマン24時間」レースでは「ユノーディエールストレート」は直線で約6kmありましたので、速度は軽く300km/Hを超えるので、時には「ミュルサンヌコーナー」の手前は少し上り坂になっており、マシンのノーズが上を向くことで空中に舞い上がり事故を起こして火災炎上しドライバーやマーシャルなどの犠牲が多かったので、現在の「ユノーディエールストレート」」は二個のシケインで速度を抑制しています。
と言う事で、レーシングカーも航空機も空力に左右されると言う話でした。
ブログ一覧 |
モータースポーツ | スポーツ
Posted at
2022/04/06 20:45:48
今、あなたにおすすめ