2022年10月20日
ポーランド陸軍は、何故「K2」戦車を選定したのか
動画の通り、ポーランド陸軍は半島軍「K2」戦車を選定しましたが、各国の陸軍、海兵隊関係者は一堂に首をかしげたと思いますが、これにはポーランドの地政学上の問題、NATO主要国の戦車の開発、配備状況が、言い言葉で言えば「偶然にも歯車が合った」と言えるでしょう。
計画では初期の「K2」戦車は現代ロテム社が主契約者となり、主砲は主砲 現代製 WIA CN08 55口径120mm滑腔砲(スムーズボア)ですが、これはドイツ・ラインメタル社製120mm滑空砲のラインセンス型でもあります。主機は第1次量産車:ドイツ・MTU製MT-883 4サイクルV型12気筒ディーゼルエンジンで1,500ps、第2次・第3次量産車、ポーランド向け一次契約:斗山インフラコア社製DV27K4サイクルV型12気筒水冷式ターボチャージド・ディーゼルで1,500psとなっていますが、これは公称値ですので、1,200~1,300psではないかと言われています。また、動画でも言っていましたが、パワーパック(エンジンとトランスミッションの統合型)に関しては、遂に斗山インフラコア社製トランスミッションとのマッチングが悪く、主機のパワーを受け入れるキャパが無い事が推測され、結果的にドイツ・リンケ社製トランスミッションとをマッチングさせ、パワーパックと成しました。上記でも書いたようにパワーパックはエンジンとトランスミッションとの統合運用なので、互いに補完する意味もあるし適合性もあるので、多分ですがポーランド陸軍向けの後期型の「K2PL」型戦車は冬季運用でマイナートラブルが出るのは覚悟した方が良さそうです。
そこで、ポーランド陸軍は何故「K2」戦車を選出したのかと言うと、まず、プライマリーはロシアによるウクライナ侵攻により、自国の「T-72」戦車をウクライナへ供与した事で、不足した分はウクライナ侵攻前から米国「M1A2sepV3」型戦車を発注していますが、配備するまで時間が掛かります。また、NATO主要国の戦車はどうなのかと言うと、ドイツ・レオパルド2A7は生産ラインが一時、閉じたために生産が追いつかないと言うか、生産できない。英国・チャレンジャー2も他国への輸出で生産できない。フランス・ルクレールも、これまた他国への輸出が優先で生産できない。イタリアは論外とみなし、NATO主要国は冷戦が終結し国防予算減少で、のきなみ戦車を保有する意味が無くなり生産規模縮小の波が来た訳です。だが、ポーランドとしては隣国のウクライナがロシアが侵攻した事で国家危機に入ったと判断し、発注している「M1A2sepV3」の納車まで時間が掛かる。かと言って、コストが高いNATO主要国戦車は受け入れる事が出来ない。そこで当時の米国クライスラーディフェンス社が開発協力した「K2」戦車が比較的に火力、防護力があり安価であった事に着目し、第一次生産分の200両は「K2」戦車オリジナルを輸入し、第二次生産分の「K2PL」戦車はポーランドで800両を生産し、ポーランドの地政学に向いた改修作業が比較的、安価で行う事が出来るし、ポーランド国産のセンサーや通信・戦闘システムをインテグレート、合わせて装甲を強化するとともに、重量増加に対応するため転輪を1対追加し10トン以上の重量増大に対応させ、アクティブ防護システムを搭載することが提案されていますし、ポーランド軍備庁は「K2PL」は装甲の強化、全方向観測システム、ハードキル式アクティブ防護システム(KAPS)の装備が実施されます。
これは半島製ベトロニクスではなく、欧州製のベトロニクスなので、パーツ所得性、整備性、運用性が半島オリジナルの「K2」とは、全く違う仕様戦車となりますので、これもプラットフォームは「K2」なので中身は欧州製となる事だし、ポーランド陸軍仕様に改修できるコストが安価な事が明暗を分けた事が「K2」戦車を選出した理由です。当然ながら、「C4ISR」概念のリンケージシステムはNATO規格になるし、米国M1A2sepV3とのリンケージも出来るので、繋ぎの戦車としては、ポーランドとしては「上手く利用した」事になります。逆に半島は「利用された」戦車とも言えます。
つまり、ポーランド国内での生産ですので、実質的に半島にはライセンス生産料を支払えば良いだけの話なので、折角、1,000両近い戦車を選出したとは言え、半島への純利益はまず期待出来ません。これは「K9」自走榴弾砲も同様で、メンテナンスはドイツで実施出来るし、パーツも、ほぼ欧州製なので、わざわざ半島製パーツを発注する事もないのです。「K2」戦車、「K9」自走榴弾砲は上手く利用された。これが答えです。
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Posted at
2022/10/20 20:11:28
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