
昨年の初めに、自分の友人からポンさんの所へ養子に出した11アルトワークス。
目を離すとどこか壊れている30年前の軽自動車ですが、それなりに整備をして移籍した筈ですが、半年ほど乗って高速道路上でエンジン停止。
レッカーでの帰宅となったようです。
電話で聞いた話だけでは原因は特定できず、とにかくセルは回るがエンジンは掛からず、一瞬初爆的な感じはあるものの始動には至らないというもの。
これだけだと漠然とだけど、点火と燃料は死んでないと踏める。
燃ポンや点火系はリフレッシュしたばっかりだからね。
直感だが、制御系ではないな・・・メカニカルトラブルならバラさないと特定は出来ない。
その頃私も忙しく、なかなか見に行ってる暇が無かったんですが、昨年の初夏に原因を特定しにポンさんとこへ。

分解前にダイアグを掛けてみるが、正常コード。何も出ない。
セルを回す感覚だと、一瞬ボッとか言って掛かろうとする時があるが、それ以降は一向に初爆は感じられず、一発圧縮が無いような中途半端な回転抵抗。
タイミングずれなら無抵抗にセルは軽く回る。
1気筒だけ何かが起こってる・・・そんな感じ。
ピストンかバルブがぶっ壊れてるんだろ・・・それしか説明がつかない。
この日もちょっと見に来ただけで、余り時間は無かったんだけど・・・
試しに1番のスパークプラグを外して見る・・・
確実に事件はここで起こっている事が判ったw
小一時間もあればヘッドぐらい外れるだろうと思ったので、折角来たのでちょっとバラしていく事にしました。

ヲイヲイ何だこれ!
一番の燃焼室がメチャクチャじゃないか。

原因はエキゾーストバルブ折れでした。
折れた傘が燃焼室内で暴れ倒してヘッドもピストンもグズグズになっている。
ピストン冠面が抉られてピストンピンが見えている。
タイミングベルトが切れたりズレたりという事も無かったので原因は判らないが、バルブは折れてしまい、当然エンジンは全損である。

兎に角シリンダーブロックもヘッドも完全に死亡かな。
ただまぁ、OHすれば使える位の程度のストックのエンジンはあるので、そいつを仕上げて載せ替えれば復活は出来るが・・・正直面倒くせえしそれなりに時間も金も掛かる。
「・・・どうする? 捨てるか直すかだけど。」
「いやいや直すでしょ、直るんだよね?」
「まぁ、直そうと思えば何だって幾らでも直るけど・・・。」
「じゃあ直そうよ。」
「ふーん・・。」
そういう旧車乗り的な覚悟はあるのか。
ヲレもそんなに掛かりっきりで出来ないし、旧いから部品も受注生産のものも多いし、加工に出せばそれも待たされる。
直ぐには直らないし、それなりに費用も掛かる事を説明したが、それは理解しているようで、ポンさんにとっては費用の事もあまり関係がないようだった。
車両価値を超えるような修理費用が掛かるようなら廃車。
というのが一般的な意見である。
そういう合理的な損得勘定があったら、一定以上古いクルマには乗り続けられないものである。
元々は足グルマとして購入しているサブのマシンではあるが、別に通勤で使っている訳でもないので、特段困ってもいないらしく、足グルマの割りにはなかなか面白いクルマだったので、時間が掛かってもちゃんと直して乗りたい。
・・という事なのだろう。
でもまぁ、いまこの辺のヴィヴィオだとか旧いアルトワークスだとかってのは買おうと思うと高いからね。
2、30万掛けても直した方がいいのかな?
事故してボディーが傷んじゃったとかだと金掛けて直しても微妙な所だけど、エンジンだ何だと、部品を交換して直せる部分なら修理も賛成ではある。
前のオーナーの時は余り金を掛けられなかったから、エンジン修理も簡易オーバーホールで済ませたり、取り敢えず走れる状態に戻すだけ、みたいな安々仕上げで繋いできたけれど、ここできっちりやるのも良いのかも知れないね。
ただまぁ、何でバルブが折れたかね・・・。
過酷なエキゾーストバルブ側である事を考えると、単純に経年劣化とかによるクラックが入ってポッキリ逝ったのかな。
サージングを起こしてピストンとヒットするほどポンさんが回し過ぎるとは思えないし、ブーストだって1キロも掛けていない。
前オーナーの頃よりは走るし攻めるし、シビアコンディションなのは間違いないけれど、使い方で壊れたというよりは30年近く交換されていない部品が寿命を迎えたと考えた方が早いのかも知れない。
そうか・・・バルブも交換しないと折れるか・・・。
そんなこんなで、新しく腰下とヘッドを作って載せ替えることが確定した訳だけど、ストックの腰下は激しいオイル上がり症状があり、掘り直さないと使えない。
ストックのヘッドも、ストックと言うより、バルブとピストンの小干渉にによるトラブルで降ろした物なので、最低でもバルブ交換が必要になる代物。
どっちもメインの役物を買わないとオーバーホールは出来ないナ。
取り敢えずストックのエンジンを預かって、どこまで何を揃えればオーバーホールできるか精査する為に分解してチェックします。

目視上特に問題はなく、メタルもジャーナルもきれい。
シリンダーの内壁もきれいなので、普通にオーバーサイズピストンに合わせて掘って貰えば、オイル上がりは直るでしょう。

たしか凄いオイルの減りだったので、リングの合口だけ見てみると・・・
0.2とか0.3ミリ程度でなければいけない隙間が、1.2ミリとかまで開いちゃってました。
こりゃ吹き抜けちゃうよ・・・。
リングが減るのかシリンダーが減るのか判らないけれど、こんなに広がっちゃうんだ。
軽自動車ってのは大きい排気量のエンジンと違って、高回転まで回してパワーを出すしかないので、パワーユニットに掛かる負担は大きい。
2バルブのこのF6Aですら、1万回転近くまで回る。
だから距離乗れば、ピストンやスリーブが摩耗したり、時にはバルブが折れたりするという事なんだろう。
「クルマ」という意識で見ていると、なんでも10万キロが曲がり角と思ってしまいがちだが、軽自動車の660㏄という特殊な規格のエンジン車に限っては、私たちが思っているよりもずっとメンテナンスサイクルは短いのかもしれないね。
そんなこんなで、純正ピストンのオーバーサイズはとっくの昔に廃盤になっているので、社外品のピストンを注文するしかありません。
この辺の手配は大口になるのでポンさんに任せましたが、トラストが扱っているOS技研の0.5ミリオーバーサイズを注文。(納期は3ヶ月)
シリンダーの加工はピストンが届いてからになるので、更にそこから1~2か月待って、全部部品が揃ってから組み立てです。

昨年末に漸く届いたシリンダーブロック。
上面の修正面研もしてあります。

ピストンリングの合口の調整(セカンドリングだけやや削って調整)と、新品ベアリングのクリアランスの確認だけやって、腰下を組み立てます。
組み付け油をやや多めに付け乍ら組み付けし、クランクキャップを規定トルクで締めた後、クランクがスルスルと一定の抵抗でスムースに回転する事を確認。
クランクやコンロッドに曲がりや歪みがあると、回らなかったり、重く引っかかる部分が出来たりするんだけど、そういった部分は皆無。
状態は良いと思う。

これでショートブロックは完成。
ウォーターポンプも新品である。

このヘッドも、一昨年にタイベルトラブルでピストンとバルブの軽い接触があった個体なんだけど、バルブ曲がりと言ってもよく見たら曲がってるという程度の物で、シートリングが傷んでいるかどうかが焦点だったが・・・
新しいバルブを組み付けて念入りにすり合わせをしてみると、しっかりアタリが出たので、気密性には問題が無さそう。
純正バルブを頼みたかったが、廃盤直前の為なのか価格が爆上がりしていて、全部新品で頼むととんでもない金額になるので、格安の社外品を選択したのだが、これが吉と出るか凶と出るかは使ってみないと判らないな。
大丈夫だと思いたい。
ポンさんが揃えておいてくれていたOH用のシールパッキンセットが、ツインカム用だったようで大半が使えずで、ヘッド側の消耗品を自分の方で再注文。
作業がまた後ろへずれ込んでしまった。

お、こちらのヘッドは軽くポート加工したチューニングヘッドだった。
IN/EX共に、鋳造のバリを極力取って、ガスケットの径に合わせて削っただけだが、これだけで相当変わるのが小排気量の良い所。

さて、ヘッドと腰下をドッキングしてしまうと運ぶのが大変になるので、バラで持っていき、実車の所で組み上げます。

アペックスのメタルヘッドガスケットを使ってヘッドの取り付け。
これで1キロ以上のブーストを掛けられるようにはなるが、ノッキング防止の為にやや圧縮比を落とす厚めのガスケットを選択。
特にハイチューンにする積りは無いので、目標の圧縮比などは設定しておらず、この辺はざっくりである。
何と言っても機械式VVCにツマミの燃調ボリュームである。
多めのマージンを取りながらフィーリングでいい所を探っていくセッティングなのだ。
この辺は、タイヤが四つ付いているオートバイ位の感覚である。
そもそもDジェトロの旧車なので、こんなもんで大丈夫。(だろうw)

ヘッドを取り付けてタイミングベルトを掛ける。
ヘッドカバーで蓋をする前に再度タペット調整。
単体で調整はした筈だけど、やっぱヘッドボルトを締め付けた後だと結構変わってしまっている。

エキマニタービンや、デスビ、インテークマニホールドなどの補機類組み付けていくと、漸くあとは積むだけだなという所まで形になりました。
積み込んだら手が入りにくい所は、先に完璧にしておかないと後で泣きを見ます。
念入りに見落としが無いか見ながら組んでいき、あとはクレーンで釣り上げてクラッチとミッション、セルモーターなどを組めば、搭載。
・・・という所の一歩手前でタイムアップ。
日が暮れると気温は一気に一桁台。
手が悴んでボルトも持てなくなってしまう。
もうアラフィフですよ、こんな真冬にそんなに出来ません。
ま、次回来た時にエンジン積んで始動・・まではイケるでしょ!