
富士登山を提案してから早二か月。
予想外の6名+1名のパーティに育った、ペッタンコ組山岳部マウントフジアタック隊は、怪しすぎる天候の下、須走口登山道の入り口に集結した。
前日までの晴天が嘘のように、雨が降ったり止んだり。
ううむ・・・出発時に雨なら中止にしよう。
そんな風に決めていたのだが・・・まさかの小康状態。
行くしかないではないか!
しかし・・・ノリさんがなかなか来ない・・・。
早めに来てるはずなのに、ここまでの来かたが判らないとの電話が・・・。
このご時世に、富士山に集合出来ないとか・・・あるだろうか?
レーサーはアドバンテージが欲しいらしく、少し先に出発。
ノリさんも到着し、レーサーに20分ほど遅れて一行は登攀スタート。
yuu君は、当日まで北海道入りしていたとの事で、夜便で羽田着、そのまま富士山という愚かしい段取で、遅れて参加するということだった。

本六号目到着。
やや小雨になってきたので、レインウェアの上だけ装着。
気温もそれほど低くなく、まだ余裕の面々だ。
しかし艶消しみかんが到着していない。
ちょっと心配なほどヘビーウェイトだったみかん。
途中までの感じだと、ココまでで30分以上差がついてしまっているはずだ。
登山というものは、パーティを編成してはいても、基本的には個々の挑戦である。
速いペースに引っ張られるのも、遅いペースに合わせるのも、どちらもしんどいものだ。
自分のペースで歩けないというだけで致命的な消耗になるのだ。
だから、明らかにペースが違ったら、離れてもいいからそれぞれのペースで歩く。
キリのいい中継地点で、離合するなり連絡を取り合うなりして、その後の段取を更新してゆく。
今は、富士山でも携帯が使えるので、割とどうにでもなるものだ。

七合目を前にして、天候が急変する。
雨脚が強くなり、強い風に見舞われはじめる・・・寒い。
レインウェアもまだ上だけしか来てないのだが、止まって着替えるのに適さない岩場が続き、七合目まで頑張ろうという雰囲気だったのだが、実際下半身はかなり濡れてしまった。
七合目に立つと、暴風雨になっていた。
気温はがくんと下がり、恐らく10度~15度位だったと思われるが、強風の為、体感で5度位に感じる。
厳しいな・・・。
奥のベンチでレーサーは待機していた。
濡れた指でなかなか反応しないiphoneをしつこくタップしながら、天気概要を確認する。
「このまま進んでも好転の兆しは見られませんね。」
八合目までは、登山道と下山道とで道が分かれている須走ルートだが、七合目から見上げた登山道に見える全てのヘッドライトが下山してきているのが見える。
上の山小屋でのビバークを断られた登山者が、諦めて一斉に降りてくる絵だった。
我がパーティも、さすがにココまでの悪天候に長時間対応できるほど、重装備をしてきていない。
殆どの者が防水防寒グローブをしていない、二名にザックカバーの準備がない、足元の保護が不充分で靴下までずぶ濡れの者がいる、きちんとした登山靴でない為にソールが壊れてしまっている・・・etc
もう強行する訳にはいかないな・・・残念だ。
隊長として、辛い決断を下さざるをえなかった。
遅れているみかんや、五合目で準備しているyuuには
「悪天候の為、緊急下山だ!登ってくるな。」と信号弾を放ち、七合目からも合流できる砂走り下山道を使って、退却となった。

五合目まであと少し、というあたりで、漸く雨をしのげる東屋を発見。
休憩がてら軽く食事をとることに。

どんな場面でも、笑顔を絶やさず場を盛り上げるレーサー。
たぶん辛い事に慣れているんだろう。
人間は気持ちが負けると、出来ることも出来なくなってしまう弱い生き物。
たとえ嘘でもいいから、希望的観測だけでその場を乗り切る。
誰もが苦しい時にはとてもいいことだ。
周りに伝わるくらい不機嫌になるような奴も、たまにいるからね。。。
こういう時に我儘にならないのは、いい奴な証拠だろう。
大変な時にこそ、こころねが見える。

そうは言っても憔悴する面々・・・。
大変だったからねぇ・・・。

このコーヒーがウマイんですよ~と、嬉しそうに準備するレーサー。
ヲレとレーサーとで持ってきたガスバーナーで、
お湯を沸かし、カップめんやコーヒーを振る舞うと、みんな少し落ち着いたようだった。
ううむ・・・今回は仕方ない。
自然には勝てぬ。
地方から登りに来てコケてる人も沢山いただろうし・・・その人たちから見たら、ウチラなんか麓に住んでるようなもの。
また来年チャレンジだね。
不完全燃焼だから、別の山で振替え登山しようかね。
今週末再アタックなんて話もあったんだけど・・・天気的に難しそうだな。