メルセデスとトヨタから登場したミラーレス自動車、名称の統一を望みたい
クルマのミラーレス化、つまりドアミラー(後写鏡)をカメラとディスプレイに置き換えるというシステムが、間もなく公道を走り始めます。ほぼ同じタイミングで、ダイムラーはメルセデス・ベンツのトラック「アクトロス」に、トヨタはフルモデルチェンジするレクサスESにミラーレスのシステムを搭載することを発表しました。
いずれも空気抵抗や前方の死角を低減するために採用したとアナウンスしていますし、荒天時での視界確保にも有効と期待されるシステムです。またデジタル化したことを活かして、シーンに合わせた最適な表示も可能となっています。たとえば、これまでの鏡を使ったドアミラーでもリバースギアに入れたときにミラー角度を自動的に最適化するといった工夫はありましたが、トヨタ(レクサス)はレンズのズーム自体を変えて画角を広げるといったことまで可能としています。
そうしたこともあって、レクサスは『デジタルアウターミラー』と名付けていますし、メルセデスも『ミラーカム』と呼んで、先進性やオリジナリティをアピールしています。こうした先進技術は、広報宣伝的な視点でいえば他社との差別化に“使える”ツールですから、独自の名前を付けたくなる気持ちは十分に理解できます。
しかし、すでにミラーレス化については保安基準でCMS(カメラモニタリングシステム)と名称が決まっているのも事実。かつてABSについて、メーカーごとにいくつもの呼び名が生まれ、分かりづらいという指摘があり、結果的に名称を統一したということがありました。CMSについては慣れの問題などから標準装備化への反発もあるでしょうが、メーカーごとに独自の名前を付けず、名称統一することで普及が進むのではと考えられるのではないでしょうか。
レクサスのシステムが今後の基準になるとすれば、ウインカーに連動して画角が広がること、雨滴の影響が少ないこと、明るさ・暗さに強いことなど、ヒヤリハットが減ることが期待されるCMSですから、普及促進は大事といえそうです。
もっとも、横滑り防止装置について国土交通省などはESCという略称を使うことで、統一化を図っているにもかかわらず、各メーカーは独自のネーミングをやめることはありませんし、それでユーザーが混乱しているという指摘があるわけでもありません。CMSについては、見れば付いているのがわかる装備ですから、あえて名称の統一にこだわる必要はないのかもしれません。
文:山本晋也
自動車コミュニケータ・コラムニスト
世界初の量産デジタル・ドアミラーはなんで違和感があるのか?
世界初の量産車用のデジタル・ドアミラーが、新型「レクサス ES」にオプションで設定されることになって話題だったりします。通常の鏡の代わりにカメラとモニターを使ったこのドアミラー、「新しいレクサス LSに搭載か?」という噂が流れた昨冬から、編集Tも注目してきましたが、いよいよお目見えですね。
ただ、期待のテクノロジーに付き物の「ウォーッ」という感動よりは、微妙な違和感が先行中。まずは形がスンナリ来ません。従来のミラーに比べ、細く小さくなったことで空力性能や風切り音も低減していることと思われますが、外から見たときはもちろん、運転席から見た画像でも、コケシのようなバーが横にニョキッと突き出ていて、これはカッコイイのかワルいのか?
まあ違和感の多くは、見慣れていないというのが大きそうです。フェンダーミラーがドアミラーに置き換わっていく80年代以来の、クルマの形の改革でもあるわけで、浸透するまでは時間もかかるでしょう。カーデザイナーだって、大きなドアミラーありきでカッコいいクルマをデザインしてきたはずです。
Aピラーの根元にペタッと貼り付けたようなモニターも、まだコックピットのデザインに馴染んでいるとは言えなさそうです。夜でも明るく見えるとか、ウインカーを入れるとズームして死角の少ない広角に切り替わるなど、機能面は流石なんですが、このあたりも慣れるまでは時間がかかるのかもしれません。
編集としては、今後はデザイン側からのアプローチにも期待です。先鞭をつけたレクサスの次世代版はもちろん、ドイツメーカーなどからも、新しい提案があったりするかもしれません。それにデジタル・ドアミラーが普及すれば、自動車の内外装だって、影響を受けて変化したりするかもしれませんね。
名称には各メーカーの思想とかもあるんだから統一する必要はないんじゃないかな?今までの他の装備だって統一なんてされてきてないんだし
個人的にはオーテック・ザガート・ステルビオみたいにフロントフェンダーの造形コミでカメラとかを埋め込んでくれれば車体との一体感もありながらカッコいいミラーを付けられるんじゃないかな~なんて思うんだが
【週刊クルマのミライ】クルマのミラーレス化はプレミアムブランドの差別化ポイントになるか?
クルマのミラーレス化、という表現で話題のCMS(カメラモニタリングシステム)が話題を集めています。バックミラーをカメラとディスプレイに置き換えることで、空気抵抗や死角を低減、さらに状況に応じた表示切り替えが可能なCMSは次世代の運転支援デバイスとして、すでに2016年から保安基準としても認められているシステムです。
すでにレクサスESにCMSが乗用車として初採用されることが発表されていますが、ドイツではハノーバーモーターショーに合わせてメルセデス・ベンツのトラック「アクトロス」がCMSの採用を発表、また以前からCMSの採用を公表していたアウディの電動車両e-tronもCMSの姿を公開しました。
レクサスは「デジタルアウターミラー」、メルセデスは「ミラーカム」、そしてアウディは「バーチャルエクステリアミラー」という名前を付けていますが、いずれもドアミラー相当に張り出したステーの先にカメラを置き、その映像を室内のディスプレイに映し出すという仕組みは同じ。国際的にCMSに求められる機能を満たした上で、各社が工夫を凝らしているこようです。
メルセデスはトラックなので、求められる機能やデザイン性が異なることもあり、同列に比較するのは難しい面もありますが、この3台のCMSを比べてみるとスマートにまとまっているのは、ドアトリムにディスプレイを埋め込んだアウディと感じる向きが多いかもしれません。
もっとも、メルセデスやレクサスがAピラー付近にディスプレイを配置したのは、初物だけに見やすさ、わかりやすさを考慮した面もあるはずで、どれが正解というのは現段階で決めることは難しいといえるでしょう。
当然、これから市場の声を受けて、各社はフィードバックしてくるでしょうし、市販することで得られたノウハウはグループで共有することになるでしょう。というわけで、ひとまずダイムラー、トヨタ、フォルクスワーゲンの各グループが、CMSという新しいデバイスにおいてリーダーとなるべくスタートを切ったということでしょうか。
今後は、CMSの標準化を前提としたスタイリングも生まれてくるでしょうが、コスト面を考えると、当面の間は、そうした割り切りができるのはプレミアムブランドに限られると予想され、その点からもメルセデス・ベンツ、アウディ、レクサスというブランドが同時期にCMSの採用を発表したのは深い意味があるといえそうです。
(山本晋也)
Posted at 2018/09/19 10:49:39 | |
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