2013年02月12日
MTとATの違いを考察する。(その4)
第3章 私はなぜ、ギアを変えるのか
そもそも変速行為は必要なのか?。
スタートの回り始めが最も大トルクな電車に変速機が無いように、電気自動車になれば、お役御免となるかもしれません。今は機械技術の延長のハイブリッドを踏み台としており、広くなったとはいえ、パワーバンドやトルクの適切な領域に回転数を留める場合、高速道の巡航などで極力低燃費走行する場合などに、切換えが必要なわけです。
変速機の主たる役目である「エンジンの力を効率よく(低燃費で)引き出す、、、」ために状況に応じた変速比にする、、と言う御役目で考えれば、もはやATの方が理に適い高効率。だとするとMTにこだわる場合の変速機の役割はなんだろう?、、と言うことになります。
私なりの結論から言うと、次の2つがこだわるポイントのようです。
ひとつは機能上の問題で<アクセルワークを車両運動性能に繋げるため>となるでしょう。
これはトラクションの最大化とスライドをアクセルで使い分ける「操作性≒応答性」と言えるでしょう。
今のBLEで雨の広場でブレーキングドリフトを試みた事がありますが(特性把握の為)、ATに加え私の腕では維持できない、となりました。パワーバンドに入れて2速状態で、リア荷重を抜いて、うまくリアが出たら、即アクセル入れて、テールの流れを止めようとしても、一瞬遅れるのと、アクセルの踏み加減とタイヤのコンタクトが布団の上から背中を掻くような感じで、うまくも行かないし、面白くも無い。つまり、アクセル操作ラグ+エンジンの反応ラグ+トルコンの食い付き+コンバータのスリップによるトルク増幅の非線形さ、が積み重なって全く制御性がありません。アクセルぴくぴくやっても反応無しです。
というわけで、「スポーツモード」なる状態でロックアップを固定できたなら、、、、恐らくMTと同等の操作性があるはずです。ところが、恐らくメーカではそんな大トルクに耐えるロックアップクラッチは持っていない。あくまで定速走行に必要な最低限のクラッチ容量しかないはずです。なので、これがMT並みに出来たなら可能性はあるかと思いますがw。
次にCVTですが、こちらは走り出したら基本ロックアップ状態なので、おそらくトルコンATより大容量なのかな、?と思いますが、スバルの38kg・mに耐えるDITでの感触ではやはり無理で、シフトダウンしたり、アクセルべた踏みした瞬間、クラッチは外れているように思います。もっと言えば、普通のトルコンATよりもラグを感じました。これはプーリの変速動作時間と思われ、エンブレも無く空走感が加わり、変速はしてもタイヤにトラクションが掛るまでに結構ラグを感じます。しかしCVTの問題はこれよりも、後で述べるもうひとつの方こそが問題です。
DCTでは、ここでの操作性は最も優秀、というかMTと変わり有りません。エンジンとタイヤが直結しているダイレクト感があります。あるとしたら6-4-2といった飛び越しシフトダウンが出来ない事かも知れんませんが、今や6-5-4-3-2と落としても、MTの飛ばしダウンより速いかも知れません。なので、この点はDCTは全く問題有りません。
さて、本題のふたつ目ですがそれが「CVTの苦手なもうひとつの問題点」です。
それは<エンジン回転数を捕える機能>と言えば良いでしょうか?。(本テーマの初回のコメントで、タッチさんが指摘されていた点ですね)
これは、車を運転している時、法令上、速度計を見て自車の速度を制御しなければなりません。車列の流れに乗ることを意識してると、案外速度は気にしないですが(バイク乗りは特にw)、AT車は変速の概念が運転始めた時から不要ですから、ギア段がどこか、ドライバーの意識に上がる事はありません。BLEもシフトレバーを倒してスポーツモードにすると、現在の速度段が表示されるので、「ああ、今3速か。」と知る事は出来ますが、通常モードでは表示もされず、ドライバーはアクセルとブレーキによる「速度調節だけ」が「足」の制御対象となり「手」はハンドルで「位置」制御だけを行うことになります。つまりATの車に乗る事は、手で行く先を、足で速度を 制御する事=「運転」となるのです。
これがMTの場合、各ギアの守備範囲は決まっています。ハヤブサでは1速で軽く法定速度を超えますが、、だからと言って1速だけの運転なんてしませんね(笑)。つまり、大体何回転あたりを中心にギアを変え、いつも何回転あたりにエンジン回転を保つか、、で間接的に速度制御をしている意識下に有ります。何速に入って入るかで、大体何キロかはわかります。
この「意識チェンジの儀式」に実は「クラッチ」が大事な役目をしていそうです。
MT車を動かす時は、エンジン回転に意識が集中します、なぜか?。クラッチを繋ぐためですね。基本私はアイドリングのまま繋ぎ始め、エンジンが抵抗感を感じたらクラッチペダル固定でアクセルだけを踏み増して、アイドル回転数のまま、車を動かします。実際はアクセルの踏み込でクラッチペダルをちょっとだけ緩めて繋いでしまい、反クラッチ状態はほんの一瞬です。軽量フライホイールに強化クラッチ、、なんてのはチョイ回しますが。
で、走り出したらシフトアップポイントを決めます、、というか大体習慣化してるので、いつもの音というか、引っ張り加減でクラッチを踏みます。つまり、クラッチを踏む行為はエンジンの回転範囲を人間にフィードバックメモリしているんですね。「何回転で3速に入れた」と無意識化であっても、確実に。そしてギアによって守備範囲は決まっていますから、表現としては1速だと赤色、2速だと黄色、3速だと青、4速だと緑、、といった感じでギア段ごとに「ステージ」が切り替わってアクセルを踏み直しているので、ギアを変えるたびに意識は初期化され、タコメータが気になります。また、各速度段でのおよその速度守備範囲も、耳が覚えますので、スピードメータは運転に必要なものとはなりません。
正月に熊本から宮崎まで母の「ミラ」5MTで初詣に行った際も、久しぶりに運転を楽しみました。なんせ、非力なので、結構回して走ります。高千穂の峠では基本70km/hを如何なるカーブや上りでもキープしてやれ、と後ろの高級セダンに迷惑かけない速度でw。(登坂車線で譲りましたが)。このミラにはタコメータは無く、何回転か、わかりませんが、トルクバンドは音と加速でわかります。またシフトによってドロップする回転数が、次のバンドを外さない位置も音で分かります。すると車を走らせるために「ハンドルで位置を」制御する事はATと同じですが、車の速度を制御するには「右足でアクセルを踏み」、「耳で聞いてトルクバンドを感じ」、ここだ、と言うタイミングで「左足でクラッチを切り」「左手でギアを変え」速度を制御している事が分かります。
狙ったクリッピングに向けて、おもに「手」と「右足」だけで運転するAT車と、なめらかなGを次の立ち上がりにつなげるために、ここで「聴覚」で得た回転数に反応して、左足と左手で「ステージ」を切り替えて、「2速ならこんな感じ」「3速ならこんな案配」と車のエンジン特性と速度段で、切り替わっているのです。
車を走らせる意識が実は違う!。「耳とタコメータの針」が大事なインプットになっています。これが何に似ているかと考えたら、カメラのレンズ感に似ています。
昔は単焦点レンズが主体で、28mm、35mm、50mm、85mm、135mm、、とレンズによって、そのパースぺクティブやボケ深度、画角が染み付いていました。なので、被写体を見ると得たいイメージからレンズを選びますが、大事なのはほしい効果が得られる距離まで被写体に歩いて近づいて、構図を決めたわけです。ところが今はズームレンズ主流ですから、画角の効果を知らず、得たい被写体の「大きさ」だけをズームで切り取るという、なんとも浅い写真ばかりになってしまいます。愛用していたリコーのカメラにはステップズーム機能があって、上記単焦点域をそれこそシフトレバーのようにシフトしてくれるのです。そうすると頭で覚えたイメージに距離感が直ぐ決まるのです。ところが不定型のズームだとファインダーをのぞきながら、画角を決めようとしても決まりません。それはパースペクティブ効果の距離が連続して掴めないからです。なので、カメラ初心者の方は単焦点から入った方が、後々楽しめると言う気がします。
横道にそれてしまいましたが、つまり、「2速」のイメージと「35mm」が提供する世界は、人間の頭の中に5感を通して刷り込まれており、結果の世界がイメージが出来ます。ところが、ATや電動ズームでは、必要な「速度」「大きさ」が得られるだけで、車を運転する「位置と速度」制御のうち、速度の中の「加速感、パワーの出方、粘り、何キロまで引っ張れるか」と言った「走りの組み立て」がイメージ出来ない単調な運転になっている事が分かります。
このように、MTとATは機械構造により、「自動変速か、手動変速か」という車の走行機能上の僅かと言える?違いでしかないけれど、実はドライブシーンで、ドアを開けてエンジンを掛け、A)ギアを入れる か、B)クラッチを切る、かの違いが、車を走らせる「運転」そのものが、全く別世界に入ることになっているようです。
MTで走ることとATで走る事は、同じ道路をAからB地点に移動しても、それは全く異なるドライブになると言うことだとしたら・・・。
つづく
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私的なミニ哲学の泉 | クルマ
Posted at
2013/02/12 21:30:46
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