
「低重心FRパッケージの本質とはなにか」
最初に断っておかないと誤解されそうなので、言っておくと今回のエントリーは大いなるエールだと言うこと。いつものように皮肉っぽく聞こえても、それもまた近しいゆえの憎まれ口だと思っていただければ幸いです。
思うに低重心FRの真逆のコンセプトになるのは高重心なリアエンジンフロントドライブ、、、、ってそんなバツゲームみたいな車有るわけないだろ!って(ひょっとしたら特殊作業車としてあるかもしれないが)となると、一番近いのはあの車、911だと考えます。
低重心RR・・・というか、911はRR故に、低重心は必須である。重心が高いとどんな車もロール剛性が落ちて、ピッチ、ロールともに輪荷重差が大きくなり、難しい走安性を抱えることになります。ただでさえ、リバースステアが難問の911ならば、低重心な水平対向エンジンあってこそ、延命できたと言えるでしょう。実際、ドライサンプでぎりぎりまで下げた最低地上高は直角に曲げたエキゾースト下端に拘束されているといっていいし。
一方のBRZの低重心は、量産エンジンの転用という点を考えれば仕方ないけれども、そこまでの低重心には出来ていません。(それでもAWDをやめて稼いだ分は使い切っているけれど)。
では例えば、低重心FFってのは何かお得なのか?、そもそもあるのか?。と見渡すと、大体デフとドライブシャフトの処理でシャシーと前サスメンバーの構成上の制約があるので低重心にならない。いずれもオーバハングが大きい分、直進性に磨きはかかるだろうけど、逆を言えばヨーゲインは高くできない。
さて、86のポジションとは、いうなればFRというアクセルとハンドルの両方をヨーコントロールに使いやすいいわば勉強車だと言えでしょう。逆に言えば、スピンに至るまでのカウンターリカバー領域が広いという車。
BRZ(86)が使える料理ネタとして積み上げの順番は
①ライトウエイトFR
②安価な販売価
③4シータ
コスト上限を300万としたら、取れる手段は流用です。そこから導いた流用装置は
インプレッサの足回り+そこそこ回るNAエンジン
じゃあ、売りは?
運転のコントロール性、楽しさを軸にするならパワーよりもリニアリティ。
スピードは直線でなく、コーナリングスピード・・・。となるのは自然な成り行き。
この時点でロードスター同様にリアのトラクションキャパを決めて、せいぜい200馬力程度、、となったことでしょう。
となるとこのクラスでお手本となるのはポルシェ924、944、RX-7?。といったFRバランスの手本ですが、ポルシェは入門用とはいえ腐っても鯛、リアにトラクションをかける前提での50:50を目指したトランスアクスル+エンジン傾けたビッグボアの低重心直4バランサー付き。(これを客観的に見える代替特性(ゼロヨン/最大加速G)として当時の車ZX280ターボ(16.1sec/0.754G)アルファGTV6(16.5sec/0.778G)、944(16.3sec/0.818G)のデータが手元にあります。最終タイムに比べて、最大トラクションが発揮できているのはポルシェだと言えます)
一方,RX-7はシャシーと一体化したバランスで成立させたロータリー専用車。ヨー慣性はクラス随一小さいと思うけど、縦の荷重変化が軽い、路面とタイヤの荷重変化に敏感な操縦性となるのと、エンジンの回転軸(車体のロール方向)に対して、トルクリアクションで右と左に差異が出る癖がある(たぶんエキセンのジャイロ効果)。引き換えに手に入れた、加減速を殺した時の旋回速度の高さ。(逆に金縛り状態な感じでもありますが) なんてところが設計者の意図かなと思うのですが、これらに代わる「核」が有るか?。
私が設計者なら、どうやっても過去の名車(944)を越えられ無い気がします(一クラス違うけど)。軽量化と質量集中のバランスの中で、リアのトラクションを制約上限とし、考えると一つはRX-7型の方程式があります。私が二十歳の頃いじっていた初代7がカタログ値約1トンで13B換装で遊んでた車が非常に近いのです。ですがトラクションの掛からないこの車ではピーキーなエンジンでは山での運転は難しく、ヘタレな私はパワーよりトルクバンドの広い特性がほしくてこれにスバルの水平対向が入らないか、、とまじめに考えていました。結局フロントではなく、リアシートに入れる方が(今のケイマンのように)大改造するならより正解だと考えていました(アメリカに居たならやっただろうなと思いますw)。
なので、BRZに乗のると当時のSA22Cに非常に近い情景が浮かぶのです。パワーやトルクウエイトレシオを考えると、あと500CC分足りない。ま、それは置いといて。
前重な車は、前タイヤの方が静的グリップは上です・・・し、操舵にサイドフォースを使い切れるFRでは、前重ということはハンドルの方に重きを置いた練習用に最適ということでもあります。
低重心FR化はフロントロール剛性がモーメントアームが短い分、ストロークが使えるばねレートにできるけれど、前後ピッチング方向でのコントロール幅は狭くなる(にもかかわらず、BRZはストロークが長くできていない)。つまりリアに荷重が移しにくい。リアのトラクションが掛からないと、一旦流れたリアを取り戻すには繊細に踏んでも食いつかせるのは骨が折れます。カウンタで姿勢を戻す推進力自体が得られにくい。
(911の逆。故にポルシェはヨーコントロールにアクセルが使えるように、リアトラクションには非常にこだわっています。944も928も)
奥の手は、リアサスジオメトリにアンチダイブの逆で加速側でリフトモーションになるような配置にすることですが、ブレーキ側でスクワット方向に抜ける弊害があります。後はハイグリップタイヤで稼ぐこと。実際はこれが最適でしょう。昔のSAではメカLSDに当時のVR規格ミシュランのカチカチタイヤで、雨の日が練習日という感じで(どんだけケツ流してもタイヤが減らないw)、とにかくグリップさせて推進力に変えるアクセルワークをマジで磨いてました。なんせ、突っ込み頑張ると遠心力でケツが出て、そうなるとカウンタと踏みとどまるためになんとかリアを食いつかせる、、、失敗すると盛大に横向くというwww。絶対スピードが超低い峠攻めをやって遊んでました。
そういう車の挙動を学ぶ意味では、ぎりぎりまで踏ん張って、いきなり流れる、、という設定でなく、手前からむずむずして予知させる特性の方が重要でしょうね。けれどそこを卒業したところの受け皿になる車は吊るしでは得られない、、ということなんでしょう。だからこそ、この車の封印は「タイヤ」であり、そこに合わせたセッティングにしてあるのでしょう。タイヤを変えることで、ゲインの高い、反射速度が求められる方向に詰めて行ける、とつまりそういう成り立ちだと思います。
1.タイヤのレベルはそのままに、パワーをあげてじゃじゃ馬化する。
2.タイヤのグリップを上げて、コーナリングマシーン化する。
3.タイヤのグリップを上げて、パワーも上げて、ピーキーさを楽しむ。
いずれも、楽しく安全・・・からは遠ざかる方向ですから、メーカはそっちには行かない。
私が考えるには、1、2、3のいずれも、底上げにはリアのトラクションのキャパを上げるしかない。お金持ち相手なら3は有りだが、大衆スポーツカーではそれは無いものねだりになる。
(ただし、FA25エンジンを作って載せる・・・という拡張性はあっても良いでしょ、豊田さん、と言いたいが。) ただ、この車には毒が無い。危うい影が無いのです。何が足りないかと言えば、そういうわざとお膳立てされた守りの車だという点でしょうか。そこはオーナーが如何様にも好きにして、、というスタンスなのかな。
(個人的には入り口としては正しい車だと思うけれど、、、逆にドライビングの正解が見つけにくいこともありますよね)
残った腕の見せ所という余地があるのかといえば・・
・リチウムイオン電池をリアデフの上に・・・
・リアモータアシストをリアデフに内蔵・・・
・ルーフをカーボンに・・・
・よくできた電制リアLSD+トルクフルなエンジン特性
低重心FRパッケージの本質とは、「扱いやすいの中に、高性能を少しまぶした分、伸びしろを上げてあるけど、パワーを受け入れるキャパは逆に低いよと。水平対向をフロントにせっかく入れた伸びしろは、フロントサスをよくストロークさせてこそ、、、つまり、ロール方向の荷重移動を操ってこそと思うのですが、そこが個人的にはパッケージの謎なんですが、E型はそのあたり、改善してるような、、まだまだのような、、どーでしょう。(STIのサスキットを見ると、雑誌でいうような方向とは答えが違うような、大人の事情もありそうですw)
個人的には、現状のパッケージであれば、水平対向の恩恵は「低重心」という言葉よりも縦置きフロントミッドシップ(ぎりぎりの位置だがw)が実現できたこと。だと思います。
居住性の点で、ミッション位置を決めたのであれば、直4では1.5気筒分前にズレたはず。BMWのように前軸を前にずらせば50:50も近づくけれど、敢えて、そうしなかったのはスポーツカー的スタイリング故でしょう。でもこれは大事ですから。お金掛けるなら専用ミッションでドライサンプ化、もう少し後ろに低く置ければより高級ですが、コストパフォーマンスはダダ下がりでしょうから、いろんな制約の中で頑張っていることが逆に身に沁みます。
まぁ、私のレベルで日常を楽しむ、ちょっと峠もクルーズして、、という範疇で仕上げるなら、十分な素材で、ぴったりな範疇にはあります。いずれにしても、この車に乗り込んで浮かぶ情景には、SA,FCのセブン、944(エクステリアは944をモデルにしたのか・・とも思える程)の時代が見えて、それはある意味最後のチャンスとも思えるのです。(;^_^A
ああして、こうして、、と具体的な毒をまぶすポイントは有って楽しいなと。ただし、2ドアでマニュアルで、、となるわけで、ハードルは極めて高いたかーい!となりますがw。
一方で、冷静振り返って、じゃぁやり残したことがあったのかと自問すると・・・どーなんだろうか。
以上
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2016/07/24 10:01:35