
以前に前振りしていたオイルフィルターの話です。
エンジンの血液と言われるオイルですから重要なことには間違いなく、その動粘度特性などは既にふれてきました。しかしもう一つの、まさに物理的な汚れ、という劣化については触れていなかったので、ちょっと書いてみました。 専門家ではないので話半分で(;^_^A。
ただ、本当に基礎的なことはもはや本やペーパーでは出てこなくて、実際にブロック割ってみて初めて、「ああ、ここに逆止弁が入っとるね」なんてこともあります。 エンジンのサービスマニュアルでも、非分解エリアだと載っていないこともありますし、サブアッシーでの交換消耗品だとその内部は不明です。
さて、いかさま詐欺師のような、オイルフィルターの話
オイルフィルターは世界に誇る日本製は優秀です。日本のメーカ純正だとだいたい20ミクロン以上の捕捉率99.5%みたいなやつ。これをスポーツフィルターとかにすると30ミクロンぐらいで、表面積半分みたいな、だいぶスカスカになる?(逆の意味合いから半分は純正並みで、残り半分はさらに細かい組みあわせの
ハイブリッド的なものもあるようです。循環している間の確率的には、細かいほうに捕捉される%もあるわけで、これはこれで有りな気がします。トータルの圧損は「オリジナルスプリング」と言う部分のさじ加減でしょうがw)
さて、問題ですが、自動車のガソリン用だと今はほとんどがフルフローと呼ばれるオイルポンプが汲み上げたオイルは、「全量がフィルターを通って濾されてエンジンに回っています」と、言う建前になっていますが実態は「それは時と場合によります」です。
私も詳しく調べたことが無かったのですが、業界標準でフィルター濾過前の油圧と濾過後の油圧の差圧が1.0kg/cm2あると、フィルター内のセーフティバイパスバルブ(図では②のリリーフバルブ)が開いて、差圧が1kg/cm2を恐らく維持する程度まで駄々洩れです。その分配加減に関する資料は見当たらなくて、メーカの極秘情報なんでしょうか(;^_^A
オイルフィルターは新品が一番目が粗く、使ううちに目詰まりしてだんだん粒子捕捉の濾過の能力は向上してゆきます。引き換えに濾過抵抗が増えてバイパスオイル量が増えます。このバイパスオイルは、エンジン始動時の硬いオイルの時はほぼ駄々洩れだと思います。
しかし、実際にどの温度の動粘度で、どの回転数と供給油量で、何対何の割合で濾過分と直接分になっているのか、おそらく知っている人はいません。フィルター屋さんは試験してるでしょうが、エンジンオイルポンプの動粘度とエンジン回転数での流量は千差万別でしょうから、濾過抵抗値と動粘度の関係は知っているでしょうけどね。
さて、そういうわけで実はエンジンオイルは、まず基本綺麗で、でかいゴミなんか無いのだ!と言う前提で設計されていると思ってください。オイル交換時に吸い込みストレーナの金網に引っかからないぐらいの大物金属粒子が入っていたとして、エンジン始動時に冷たく硬いオイルは一気に油圧リリーフするぐらい高圧10kg/cm2でフィルターにオイルを送ります。さて、当然差圧1kg/cm2なんか、超えてるわけでバイパスからザクザクオイルが出てゆきます。温まってくると、回転落ちて吐出量も減るし、濾過抵抗も減るし、全量フィルターで捕捉されます。なので、通常走行している間にフィルターに捕捉され、めったなことでは逆流しませんから、ハエ取り紙よろしく、捕捉され浄化され続けます(オイルは汚れ続けますが(;^_^A。)
ですが、最初は取り損ねるんですよ。
次に高回転型エンジンは、硬いオイルが好きです。高回転時の120℃以上の高温になっても、しっかり油膜に浮いていたいので、それなりの高価な10w-60なんてなオイルに。
すると、低温からの始動時は、ますますフィルターを通らないオイルが回ります。安定定常状態で、何回も循環するうちには、捕捉されて、オイルは綺麗になって行くのと同時に、一方では吸気からのごみがシリンダーから掻き落とされ、ブローババイも加わって汚れてゆきます。高回転エンジンはスポーツエアフィルターが好きです(;^_^A。するとこのエアフィルターも(はっきり明示された濾過性能にはお目に掛かれませんが)メーカ純正だとJISの試験値辺りから推測するに濾過粒子は8ミクロンぐらいから捕捉されて、順次目詰まりでさらに細かくなるので、総合的にはよくわかりません。圧損値についてはデータを出す癖に、代わりにどのぐらい捕捉率が下がるのかのデータは出さないw。
ちょっとしたオカルトですが、、高回転型NAの大排気量車はデリケートな吸気抵抗を極力減らしたくて、大容量のエアチャンバーとフィルターを用意しますが、さらに大排気量となるターボ車は案外比例して大きくなりません。これは機械的に吸い込むタービンの力故か、間に合わないから目が粗いのか?(純正とチューニング車の大きな違いでもあります)
エアフィルターはオイルと違って循環していないので走る環境次第ですが、使う間にだんだん濾過抵抗が増えるので、吸気抵抗となってパワーが出なくなる点ではよりデリケートだと言えます。エアフィルターを潜り抜けた細かい粒子はシリンダー壁面に残ったりして、掻き落とされオイルに現れます。この時シリンダーやリングを摩耗させるわけですが、同時に燃えたカーボン粒子なんかもオイルリングから掻き落とされオイルに現れてゆきます。
冷えて始動時の一番、バイパス油量の多い時に、どこかにへばりついてたようなゴミは、何周かエンジン内を遊覧して来るのでしょう。やがてはフィルターに捕捉されますが。
そうやって、常にオイルは濾過されて綺麗になって行くので、黒ずんで汚れてきますが、フィルターの目より大きいものは、どんどん減ってゆきます。けれども20ミクロン以下の粒子は常に回っております。フィルターはため込んで目詰まりが進み、捕捉率は上昇しますが、今度はバイパスさせる率が増えてゆくことから、結局メーカ推奨のオイル2回にフィルター1回は、理論、経済両面から理にかなっているのでしょう。走行状態とオイル交換のインターバルにもよるでしょうが。
ドライスタート時、最低限の油膜フィルムは0.5ミクロンぐらい。しかし20ミクロン以下の粒子が流れてますから境界油膜化させるのです。それがドライスタート摩耗の正体でしょう、クランク軸受け面の鏡面で2ミクロンぐらい、スーパラッピング状態で0.2ミクロンぐらいでしょうか。なので、安定流体軸受け状態には5ミクロンぐらいの油膜が欲しくなりますね。メタルクリアランスは35~25ミクロンぐらいありますから、本来なら十分あるわけで、ここが高圧流体による流体摩耗は随時進行しますが、これは極々わずかで結局、メーカ見解では90%がドライスタートでの摩耗と言っています。(設備機械や船、産業エンジンなどは始動前に各種昇温、油圧など保護機器をスタートさせてから始動させますから、結局は経済効率との兼ね合いなんですが。
ディーゼルでは、耐久性が求められる事と、燃焼ガスの煤成分(結局カーボンですよ)がオイルにどうしても多く入るので、フィルターも濾過能力の違うもので、通常のフルフローと、バイパス用の目の細かいので常に一定量だけさらに浄化するものと複数分かれていたりします。オイルのロングライフ化と言う事の中には、オイル自身の性能と濾過による常にクリーンに浄化されている事の両面が必要ですが、硬いスポーツオイルを流量確保の社外フィルターで回すと案外、粘度は生きていても、20ミクロン以下の浄化度は良くないことが想像されます。耐摩耗上の別の悪さが有るのですね。
下図はネットの頂き物の 代表的なオイルラインです
ところで、最近知った話でポルシェは、フィルターのリリーフ差圧を業界標準の1.0kg/cm2から1.5kg/cm2に上げたそうです。粗悪品のエレメントでは明らかにリリーフスプリングが緩いと思われる怪しげな、目詰まり以前に常時バイパスしてるんでは?と言うものもありそうな中で、ポルシェがバイパス油量を減らそうとしていることは、その裏でオイルのロングライフ化や、直噴エンジン+ターボでのブローバイへの煤の溶け込みが多いとか、何かが有るのだと思います。恐らくトヨタも同様に直噴エンジンに対してそのあたりは織り込み済みかな。
いずれにしても、ゴミが入ってくるエアフィルター(マスク)と定期的なオイル交換だけでなく絶えず濾過しているオイルフィルター(腎臓みたいなもん)の両方がメーカ純正状態でエンジン性能(耐久性)も守られているという事。いかさま詐欺師と言うより、非常に地味に頑張っている存在です(;^_^A
最近は車体の商品力より短命な「エンジン」は見当たらなくなったので、メーカ推奨の整備状態なら特段の問題は生じないはずですが、裏ではこう言った状態でエンジンは頑張っているというイメージは持っていてもいいかも知れません。
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2017/08/19 10:46:07