
(明日から1泊旅行ですが、台風の通路になっており、間に合うように帰ってくる予定です、なので先に続きをUPしておきますw。)
次に重要な指標は高温高せん断粘度HTHS(High Temperature High Shear Viscosity)です。
こちらは摩耗や寿命と言った点でエンジンを労わるにはより重要でしょう。
昔、油冷のGSX-R750のタペット調整をした時に、チッピングが起きているカム面を発見しショックだったのですが、純正の10-40wではなく、より高性能な高温粘度の高いカストロールの5-50wを使っており、なんで?。と言う感じでした。しかしこれはこの油冷エンジンの特性上、、実際には真夏の品川あたりで熱ダレで250CC?と思うような状態になったことからも非常に冷却が厳しいエンジンでした。
加えて高回転当時750ccで1万回転以上回りましたから、条件もハードでした。それを指定交換サイクルで5000km間隔ぐらいだったので、劣化による粘度低下が起きていたこと(4Lも食うのにね)。さらに夏は多分130℃は常態化しての使用だっただろう油冷エンジン(局部的にはもっと高温な部位もあったかも)。加えて暖気を丁寧に取っていたことで、空冷ファン無しオイルクーラではすぐに部分的に高温部分が出来、加えてアイドリングの低回転では十分な循環油量と油圧が出せず、最も高圧せん断(高圧接触)の掛かるカム面の油膜厚が充分保持できなかったものと推定できました。
ここで前編冒頭の それ何のお話?と思われたつづき・・・・。
その劣化因子としては第1に「回転数より油温が響く」ですが、
その意味は「高回転を多用すると「オイルのせん断劣化が進んでポリマーが破壊され、高温時の粘度低下が起きる、、、」という頭学問でなく、最高速をやったような後(燃焼室のピストンリング回りの高温冷却の代償でオイルは高温による部分劣化とか、クールダウンをアイドリング(低圧、低循環油量)でやるような過酷な使い方をせずに、低いギアで油圧がリリーフする前ぐらいの回転数を保って風を当ててやる、、といったことが大事で、高温のシャバシャバ状態でアイドル回転の低油圧でハイカムがこちこち回るような状態は非常にエンジンを傷める、、という事。高価だから長持ちではなく、逆にポリマー効果が大きいオイルほど劣化を起こす条件だとむしろ早く劣化するということ。 と言うようなことを学びましたw。つまり万事油温を適正範囲で使うことが基本で、油温が上がる使い方をするなら劣化管理をきちんとしなさいよ、と言う話。
HTHS粘度についてはウィキは結構わかりやすく書いてますので、ご一読をお勧めします。
このHTES値は欧州車では指定オイルで規定しており、おおむねダウンサイジングターボなどの厳しい条件だと「HTHS粘度を3.5mPa・s以上」を要求しています。これはVI値での代替指標と見るとおおむね後半の□□を30以上を選ぶ必要が有ります。機械工学ではHTHS粘度は2.6mPa・Sを下回ると境界潤滑状態が増加すると言われています。すなわち完全に油膜に浮いた流体潤滑状ではなく、微視的には金属接触状態が部分的に生じた時々金属接触してるよ、、摩耗するよ、と言う状態なので、車好きの方は20wは避けた方が良いと思います(焼付くちょい前とも言える)
以上のようなことから言えることは、サーキットを走るような高温状態が暫し続く環境を与える使い方では、指定VI値の後半を合わせた上で、
①高価なポリマーでグラフを寝かせた高温粘度低下の少ないオイルを
②比較的短い周期で交換(交換目安は正確な油温と油圧がわかる計器があれば、その低下度合からある程度推定できる)
例えば指定が10-40wだったら、5w-40とか。但し、ポリマーが多ければその分劣化でデポジットを生成しやすいので寿命は短いと思った方が良いでしょう。
私みたいなたまに峠で飛ばすけど、大半は通勤でなるべく経済的にしたい、、ならば、高温側の□□を合わせた上で、マルチグレード幅の狭いオイルを選び、指定サイクルで交換。
例えば純正が5W-30ならそれでOK。0-30wだと冷間時から軽く回って、燃費もちょっとは良くなるかも知れませんが、オイル代の差は埋まらないでしょう。でもウィキに有るモービル1フォーミュラだと5w-30でもHTHSは150℃で3.58を保っており、エンジンの摩耗的にはより安心でいいなぁとか思います。
ただし、評価点としてこれ以外にもメーカ独自の媚薬についてはわかりませんから、コスパを考えると通常は純正を使って、ちょっと油温が120℃以上とか、毎日チョイノリで朝晩の温度差大きいとかの環境なら酸化と水分の影響を考えて少々指定期間より早めに代えてあげるとイイだろうと考えます。水平対向エンジンではバルブからのオイル下がりやシリンダー側面にオイルが残りやすいことから始動時のオイル燃えが起きやすいとか、ロータリではサイドハウジング面に残留オイルが燃えやすいとか、固有の症状に合わせた処方がなされている可能性も大きいので実験から保証されている純正指定オイルが通常は一番お得だと思いますよ。
以上の点を考えて、できれば気に入ったオイルのスペックシートを調べて、HTHS値など知っておくといいでしょうね。以下は参考例
高性能なモービル1の5-50wのwebで見れるスペックの一部。
HTHS値が高いです。
次は空冷ポルシェ用というガルフの15-50wオイルのスペックの一部
最後はスバル用のガルフのオイルとスバルの高性能オイルです(純正の5-30wと違ってある程度スペックが公表されている点は安心ですね)。純正よりも低温粘度が0なのでグラフが寝てより高温でも粘度低下が少なく、低温でもフリクションが少なく回りが軽くなることが予見されます。スポーツユースならガルフの方がより安心だと思えます。ただ、EZ30RはHLAによるカムの切り替えが有るので少々心配です(V-TEACは切り替え作動性ゆえ、高粘度を奨めてません)けれど、スバルでも高性能版で10-50wを認めてますから、問題ないんでしょうね。
最後に、これらいくつかのデータが出ていたオイルについて表にして見ました。
ここから試しにグラフに移してみると、これまで述べて来た意味がわかりやすいと思います。
これまた線間が狭くて見辛いですが、2つほど特徴を拾って見ました。
先ず、高価な専用オイルの上段にいるグループの中でFLAT4&6用のオイルの線は寝ていて、同じグループの中でも100℃以上の高温エリアで粘度低下が少ないことがわかります。同時にこの5w-50の120℃時の粘度を水平に100℃に戻すと、モービル1などの0w-40や5w-40のグループの粘度になりますからガルフのFLAT4&6は、120℃でも0w-40の100℃程度の粘度を保っているとわかります。
次にこれもわかりにくいですが5w-40のガルフアローよりワイドバンド(一般には高価)なモービル1の0w-40を比べると、普通はモービルワンのほうがグラフは寝てより高温粘度は高いはずなんですが、ガルフのアローの方が寝ていて、100℃以上ではより高い油膜保持が出来ていると言えます。
(※ガルフの引用が多いのは、他銘柄に比べてデータをちゃんと出していることと、各オイルの狙いがきちんと説明されていたからです。多くのメーカは念仏のように形容詞しか使っていないのでわかりません)
いずれにしても、レブリミット付近多用やサーキットで油温計上限張り付き、、なんて使い方をしなければ、コスパ的にも純正が最も合理的だとわかります。オイル自体での数字に出る性能差は無く、頭の中の気分の差です。またフリクション差も銘柄やグレードで有っても1%程度の差でしょう。
なので、特定用途でなければ経済メリットの観点から純正オイルを指定期間で交換が最も合理的と思います。ただし、個人的には〇〇-30が標準なら、〇〇-40にすると燃費は多少悪いかもですが、たいていのエンジンは静かで滑らかに回るようになります。なので余りワイドバンドの高価なポリマーが入っているオイルでなく、ちょっとベース粘度高めの10w-40は長持ちで個人的には好きなチョイスでした。
番外編に続く。