
望遠鏡を載せる架台には大きく分けて
・経緯台
・赤道儀
があります。
経緯台は水平方向のパンと高度のチルトができる構造がシンプルで、
運用も簡単なため眼視観望によく使われますが、ここでは追尾撮影が
目的なので赤道儀(普及しているドイツ式)についてお話しします。
今回はベーシックなところをお話しして、赤道儀の選び方については
次回にします。
赤道儀には赤経軸と赤緯軸という2つの軸があり、天体撮影では
両軸にモーターが仕込まれたものが使われます。
次の画像は、以前ブログで使ったものです。
望遠鏡は赤緯軸の上端にあるベースに固定されています。
望遠鏡の固定方法は、この写真のように望遠鏡に直接、または望遠鏡を支持する鏡筒リングに取り付けられた
プレート(アリガタとよばれます)を、赤経軸の先の部分にネジ止めするか、その部分にねじ止めしたクランプ(アリミゾ)
で挟んで固定します。後者の方法は、アルカスイス規格のプレートとクランプの大型版だと想像してください。
天体の業界では、ビクセン規格(44mm幅)とロスマンディ規格(3インチ幅)という2種類が普及しており、両方に
対応したアリミゾもあります。車で移動する場合は、アリガタ・アリミゾ式が便利ですね。
大抵の赤道儀には赤経軸に【極軸望遠鏡】が仕込まれています。
色々な形式がありますが、最近多いのは、望遠鏡の中に時計のような目盛りが刻まれた透明のプレートがあり、
その「時刻」で指定される位置に北極星を導入することで赤経軸を地球の自転軸に平行にします。
例えばiOptronというメーカーの赤道儀やポタ赤の極軸望遠鏡のパターンは下の画像のようになっています。
これはiOSのPolar Scope Alignというフリーのアプリの画面で、スマホの位置情報を基に、北極星を導入する位置を
示してくれます。
赤道儀には水平の角度と高度を調整するネジがついていて、極軸望遠鏡を覗きながら北極星をX点の位置(1時16分)に導入します。
Polar Scope Alignでは主だった赤道儀メーカーの極軸望遠鏡のパターンが選択できます。
焦点距離200mm程度までなら、ポタ赤(ポータブル赤道儀)で撮影することも可能です。
ポタ赤は赤経軸だけを持つ小さな赤道儀で、極軸を合わせた後はカメラの雲台で構図を決めてタイマーリモコンを使って撮影します。
200mmくらいまでなら比較的明るいレンズ(F2.8程度)があるので、追尾も2-3分で済む場合があります。
ポタ赤については以前書いた
こちらの記事をご覧ください。
地球の自転と同期した追尾だけなら赤経軸だけで良いのですが、赤緯軸にもモーターがあると、自動導入とオートガイドが可能になります。
以下ではこの2つの言葉について解説します。
自動導入
目的の天体を視野の中央に導入することです。
天球の座標系(=赤道座標:北極星に近い自転軸の先端を北極とする緯度と経度*1)で星の位置が指定されていて、赤道儀の2つの軸の周りに
刻まれた目盛りでその座標に望遠鏡を向けていました。
現在は、赤道儀に付属の端末で「アライメント」と言う操作をして、赤道儀に座標系を教えます。
赤道儀の2軸のモーターとしては、回転角度がわかるステッパーモーターか、エンコーダー付きのサーボモーターが使われます。
端末は単純に2つの軸の周りに回転させる機能をベースに、観測地の位置情報や時刻を蓄えたり、星や天体のデータを保持しています。
明るい既知の星(今の時期ならスピカ、ベガ、アークトゥルスなど)を視野中央に導入した後、端末でその星の名を指定します。
これを2、3個の星について実行すると端末が座標系が理解します。その後、端末で導入したい天体(星雲や銀河、星、星団)を
名称やカタログ名で選択してボタンを押すと視野の中央に来るように2つモーターが望遠鏡の向きを変えます。
実際には「ドンピシャ」とはならないので、ISOを6400以上に上げて10sほどで撮影し構図を確認します。
像面内の角度についてはフォーカサーそのものか、ドローチューブの先に回転する装置があり、これらを使ってカメラの向きを変えます。
(*1)天球の座標系
座標系としていくつかあるのですが、とりあえず「地平座標」と「赤道座標」を知っておけば良いでしょう。詳しくは、
こちらの解説がわかりやすくオススメです。
地平座標は天動説、赤道座標は地動説のような感じです。地球の自転により、ある星の地平座標の値は時間とともに変化しますが、赤道座標は変化しません。SkySafariなどの天文ソフトである天体の情報を見ると、Az-Altという座標(方位と高度)の値は変化していますが、RA-DEC(赤経-赤緯)は一定です。
オートガイド
まず「オートガイド」とは何かから説明します。
極軸合わせは大抵の場合、角度にして1分か悪い時は数分の誤差を含んでしまいます。
仮に極軸が完璧に合っていても、モーター>ギヤ>ウォームギヤ>ウォームホイールと伝達される各部の回転には必ず“ムラ”があります。
可能な限り機械の調整を行いますが、極軸合わせの誤差や回転ムラが追尾エラーを引き起こします。この残った追尾エラーを補正する仕組みがオートガイドです。
方法は、上の機材の写真のように、撮影用の望遠鏡とカメラの他に、短い焦点距離のレンズに小さなセンサーのCMOSカメラ(モノクロで良い)を取り付け、撮影対象の方向に向けておきます。この小型カメラが対象近くの明るい星を監視し続けます。
追尾エラーがなければ、星は視野の中で動かないので、もし星が動けばそれを補正するように赤道儀に信号を送ります。
星を監視して補正信号を送るのはパソコンに入れたソフト(PHD2というのがメジャーです)か、スタンドアロン型(Lacerta M-GENなど)の端末です。
私が天体撮影を始めた頃は、オートガイドをせずにSSを2−3分で撮っていました。
オリオン大星雲などの明るい天体はそれでも良いのですが、SSを長くしたり焦点距離を長くすると、追尾エラーで星が流れてしまいます。
天体撮影を始めて半年ほどで限界を感じて、オートガイドを始めました。
初心者の方は、最初からガイド撮影をしようとは思わずに、まずは短め(600mm以下)の望遠鏡とお手持ちのカメラを使って、自動導入など赤道儀の使い方、追尾撮影の基本をマスターされると良いと思います。
SSを5分などと長くするようになってからオートガイダーを導入すれば良いでしょう。
次回は、赤道儀の選び方を私の独断と偏見に満ちた視点で書こうと思います。
ポタ赤ほど多くのメーカーの赤道儀を使ったことが無いので、実際に購入したものを中心に、触ったことのあるもの、知人が使っていての評判などを基に書くことになります。