
武田知弘著(2009年)
祥伝社新書
まず最初に、この本のタイトルは「シャハトの経済政策」、もしくは「ナチス初期段階の経済政策」が適当かと思います。
確かにシャハトを任命したのはヒトラーであり、政策を承認したのもヒトラーでしょうが、立案したのはシャハトだからです。
表紙だけ見るとそれが分からないですし、偏見から読むことすらためらう人も多いでしょうから・・・
ナチスの初期経済相 ヒャルマール シャハトの名言です。
「資本主義的経済方法の応用無きいかなる社会主義的経済方法も考えられず、各経済階級間の社会主義的協調無きいかなる資本主義経済も存在しない。」
要するに、両方の考えの良いところを融合させないと経済は上手くいかないということです。
一方のヒトラーもそれなりに経済センスはあったようです。 戦争が始まってからは、金集め(返さない)の政策ばかりになってしまいましたが・・・
ヒトラーはオーストリア人でありながら、母国の徴兵に従わず、ドイツ帝国の志願兵となるくらいのドイツ好きです(笑
なので、彼の政策はドイツ人のためを第一に考えていたようです。
少子化対策、若年非就労者対策、天下りの禁止などです。
政府が自国民のために政策立案をするのは当然ですけどね。
で、初期のヒトラーは大してユダヤ人を憎んではいなかったようです。
戦争でドイツ人が苦しんでいる傍らでユダヤ人が大儲けしていたりしたので、国民からの反感を買い、出てほしいと言ったところ、口は出すけど手は差し伸べない欧州列強は知らんぷりとか・・・
ナチス党綱領
・すべてのドイツ人が結束する
・ベルサイユ条約の廃止
・ドイツ人を扶養しうるだけの土地を要求する
・血統的にドイツ民族の血をひくものだけがドイツ国民になりうる
・ユダヤ人などのドイツ国民でない者は外国人法の適用を受けなければならない
・国民の権利はドイツ国民のみが有する。公職から外国人を締め出し腐敗した議会を糾す
・ドイツ国民の生活を最優先する。国家に余裕が無い場合、外国人は国外に退去させる
・非ドイツ人のこれ以上の移民は禁止
・ドイツ国民は全て同等の権利を持つ
・ドイツ国民は創造的であるべし
・不労所得の撤廃、寄生地主の打倒
・戦争で得られた利益の回収
・トラスト企業の国有化
・大企業の利益の国民への分配
・老人社会保障制度の大幅な強化
・大型小売店の国有化、小規模経営者への支援
・公益目的のための土地の無償収用、地代徴収の禁止、土地投機の制限
・高利貸し、闇商人の追放
・ドイツの新しい憲法の制定
・無償の高等教育制度の制定
・母子の保護、少年労働の禁止、体操とスポーツを義務として法的に定める
・傭兵部隊の廃止と国民軍の形成
・非ドイツ人のマスコミ活動の禁止。公共を害する報道の規制
・公序良俗に反しない限りの宗教の自由。ただし公益は私益に優先する
・国家の強力な中央権力の確立
あ~、疲れたw
基本的に弱気を助け、強きを挫くというものです。(弱者救済とナショナリズムがメイン)
不幸だったのは、その「強き」に属するのはユダヤ人が多く、アンチユダヤになってしまったことですかね。
現代から見たら過激な目標に思えるかもしれませんが、帝国主義時代で後発工業国かつ敗戦国の立場として自国民を飢えさせないためには、必要だったのでしょう。
ナチスの経済政策で成功したのは「減税する→国民が潤う→景気が良くなる→税金を払う人が増える→税収が増える」というものだったようです。
財政学では昔から知られた方法であるが、財政が苦しい時に減税するのは苦しいことなので、やったとしても小規模なために、景気にも影響を与えないものとなってしまうそうです。
同じように、「なんとか補助金」も金額が少なければ景気に対する刺激は少なく、意味が無いということになります。
政府は抽出調査でもして、適当な金額を判断しないのですかね?
政治家や公務員の身内に聞いたって、庶民の感覚から外れるでしょうに・・・
※独裁体制のメリットとデメリット
独裁者が賢明なら、改革その他をスピーディーに行えるメリットがある。
逆に独裁者が暗愚な場合は転げ落ちるスピードも半端ではない。
ということで独裁体制は人類が国家のシステムとして使いこなすには、まだ難しいそうです。
昔の日本や古代ローマ帝国には、歴史に名を残す独裁者(将軍や皇帝)もいたのでは?と個人的には思っていますけど・・・
こういう本を紹介していますが、ネトウヨではありません。
ましてやモンゴロイドなので、ネオナチでもありません(爆
経済関連の本としては、なかなか面白かったです。
Posted at 2009/07/02 13:02:06 | |
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