
久しぶりの一応チューンド枠の話です。今回のブログはあくまで私見でして、何かに誘導するような意図も知見も有りません。あくまで私のあほな試行錯誤話の一つとしてUPします。オイル選びは宗教みたいなもので、もったいないコストを掛けている場合もありますので、、という思いです。
さて、エンジンオイルについては車好きな方ならあれこれこだわりをお持ちでしょう。その選択基準に、いったいどのような「物差し」を持って望まれているでしょうか?。
1.高いオイルはいいオイル。 高品質銘柄をチョイスしてますよ。。という基準
2.交換時期をまめにしているから、高いオイルは要らないんだよ、純正でOKと言う基準
3.推奨されている粘度指数を使い方に合わせてシフトして好きなブランドの銘柄にしている。
4.黙って純正、メーカ推奨時期に交換。
などなど、さまざま有るかと思います。 一般論としては8割がたはオイルメーカの宣伝文句やディーラの商売手法に乗っからされているように思います。
極論すれば、その効果の小さい順に
①ブランドの違いで起きる変化は気分ぐらい。
②交換頻度の違いは使い方によっては差が出る。通常はメーカ推奨で変わりなし。
③マルチグレードの粘度範囲はコストと劣化に差が出る。
④指定粘度指数の違いは結構差が出る。
と言ったところでしょうか。
以下の話は私もオイル屋ではないので、自分のクルマいじり体験談から得た個人的な知見に寄るものですのであしからず。
まず昔なつかしSA22Cに13Bをいじって乗せていた時代。あれこれ文献見ながら高回転対応をするにあたり、油圧の基準をどうするか、という問題が有りました。そのため通常ノーマル状態はどうなっているのかを知るために、今では使われなくなったブルドン管式の機械式油圧計を油温計とセットで取り付けました。こいつは今時の電子式と違って、エンジンの拍動まで拾って再現しますから始動時の外気温差によるアイドル時の油圧さえ、その違いをすぐ読み取ることが出来ました。ですから走り回ると劣化によって同じ油温でもアイドル油圧が下がって行く(いわゆるヘタる、緩くなる)経時変化を知ることが出来ました。そんな初歩的なところからオイルに対する疑問は始まりました。
結論から言うと、わかったことはその劣化因子として 「回転数より油温が響く」と言うこと。
これは高回転まで回したからと言って、オイルは緩くならない、という実感です。
どういうことかと説明するために、以下に風が吹けば桶屋が儲かるみたいな、遠回りな話になりますが良かったらお付き合いください。
まずはオイル選びの指標として、私たちが得ることの出来る情報は限られていて、むしろ純正オイルの方が闇に包まれています(^_^;)。通常入手できるオイルの情報として粘度表示が有りますが、その意味を知る必要が有ります。これには
①粘度指数(VI値)と
、②高温高せん断粘度(HTHS値)の2つを最低理解しておく必要が有ります。以下はこの2つを頭に置いて話を進めます。
一般に使われるエンジンオイルは、0W-30や15W-40といった表示がしてあります。これの意味するところは○○w-□□の表示の前の○○の値は低温始動時の指標となる粘度を表し、後ろの□□は100℃の時の粘度を表しています(粘度指数VIは40℃-100℃における動的粘度を結んだグラフ線で温度と粘度の関係が示されます)。もう少し具体的には前半の数字はおおむね-20℃おける静的粘度で、後半は100℃における動的粘度を示しています)
通常の国内環境においては始動性に難があるようなオイルを使った経験は無いでしょうし、まず前半はひとまず置いておきます。大事なのはエンジンが回っている運転時の粘度です。これが昨今低燃費を狙って下がる傾向にあり、スバルでも低出力エンジンには0W-20というグレードがあり、次に一般的な(お世話になっている(*^_^*)5W-30があり、さらに上級になるとエルフの0W-30、カストロールの5W-40、そしてエルフの10W-50が有ります。(この値段の順にわかることは、前半と後半の数字の差が20→25→30→35と大きくなっている点ですね)
スバルの用意しているオイルラインナップでは、100℃における粘度として20、30、40、50と有るわけです。この一点から見るとそのエンジンのメタルクリアランスなど「どの粘度」で設計されカタログ値を出したのか、と言う視点からは「純正指定の基本30である」とわかります。一方、汚れや酸化などの劣化以前に、ゼロヨンやら最高速やら遊んだ経験では、寿命的にゼロヨンでは使っている期間での油圧低下が少ないのに最高速は数回やるとアイドル油圧がもう下がって復活しません。
高いオイルなら長持ちするのかと有名ブランドを使って見ましたが、なるほど高負荷で油温が高い時にも油圧低下が少ない。しかし同じ高い銘柄でも同様にすぐ低下するものも有る。いったい何が違うのか?と疑問でした。御存じとは思いますが、シングルグレードの30番オイルは夏は良くても冬は始動が固くて困ります。なので夏-冬を無交換で乗れる低温側が5で高温側が30と言ったマルチグレードオイルが開発されたわけです。しかしこの作り方は低温側のベース粘度オイルに粘度指数向上剤というポリマーを加え、分子を絡める仕掛けで粘度を増すのです。言い換えればポリマーと言う出汁を加えることで、高温になってもサラサラになりにくくしているのです。
この粘度指数向上剤は湿式クラッチのようなせん断応力を受け続けるとポリマーの分子が細切れになって行き本来の高粘度化能力が失われて行く、と言ったことを当時知りました。
なので、湿式クラッチと共用となるオートバイのオイルは、バイク用の専用品でないと調子を崩します(ダメになったポリマーでスラッジが増え、クラッチの切れが悪くなります)
興味のある方はご参考に以下の解説文のご一読を。(これはオイル交換頻度を考える上で大事ですよ)
【潤滑油の粘度特性と粘度指数向上剤】
なので添加剤で上げた粘度は劣化し、肝心の100℃でのオイル粘度は限りなくベースオイルに、つまり○○と前段の数字で書いてあるベースになったシングルグレード油に近づいて行きます。一般にスペックシートが公開されていないので、知る機会は少ないのですが通常の使い方でも20~25%位は劣化するように言われてます。(試験データでは5%も下がらない、、という感じですが、逆に実車では簡単に劣化する:単一条件の試験と違うから?なのかとも思いますと言う具合に、極論すると最後は前段のシングル粘度まで落ちるわけです。
ネットの拾い物の図を利用させていただきますが、注目してもらいたいのは2点。
ひとつは10w-50のグラフと20w-50のグラフです。2つの線は100℃での動的粘度が同じ50ですが、より高温領域ではグラフが寝ている分ワイドバンドな10w-50の方が粘度を高く維持できることがわかります。つまり高温でも粘度が保てる=油圧が落ちにくく、油膜厚も保てるということ。(ポリマーによって油膜が変わる事が、資料の図4と図5に示されています。)(※モービルワンのラインはおかしいので無視してください。自分でグラフ作ればよかったんですが、サボりましたw)
もう一つは上で述べたようにワイドバンドのマルチグレードオイルはグラフが寝るので、より高温時にも粘度が保たれますが、一方でポリマーが失われた場合にはベースの10のシングルグレード油のラインまで低下してしまうと言うことです(資料の図3で示されてますね)。(ちなみにシングルグレードの30をペットボトルに持っておき、エンジンで使っているオイルを抜いて、2つの金属容器にそれらを各々入れて100℃のお湯に漬けて温めます。2本のスプーンですくって真下に垂らして見ます。この時ぽたぽた落ちる感触からどちらが固いか見ます。ヘタレた10w-40がシングルの30と同等以下なら寿命と言えます。色とか使用期間は関係ありません。そんなことで、好きなオイルと走り方の組み合わせから自分なりの寿命を簡易的に掴んでおくと良いと思います)
まずは目的に会った粘度指数(VI値)を選択すること。より高温な過酷環境で使うエンジンには、メーカ指定の後ろ□□の設定を合わせた上で、前段○○wがなるべく小さくワイドレンジなオイルにするほど安心できることになります。一方でポリマーを破壊する高油温や高面圧な接触圧力、高せん断使用ではポリマーの破壊が進んで粘度低下が起きて、より安価な20w-50よりも10w-50のほうが粘度低下してしまうと言うことです。この重要なポリマーは各社秘伝のタレみたいなもんで、これで持ちやフィールが変わります。またベースオイルの持ちと言うのは、鉱物油と化学合成油では違いますが、同じ種類同士の中では値段やブランドの差は無いのではないか、、、と思っています。
これは基本高価な5W-50というブランドオイルでフィールも対して安いオイルと変わないし、数度のトライアルで油圧低下が起きて「どこが高価なの?」と思いましたが、ひとつには上記のような120℃を超えるような高温に上がっても、粘度低下が抑えられる性能が秘められていたわけですね。一方で対して高価でもないのに最高速で吹け切っている時にもエンジンが良く回る10w-40オイルが結構粘度低下が少なく長持ちしたのはそもそも劣化成分のポリマーが少なく、ベースオイルが固めだったから、と理解出来ました。(この話は最後の番外編に続きます。)
後半に続く