
なかまちモーターショーを見学した後、ポルシェ911カレラ4に同乗試乗するという、とても貴重な体験ができました。
今年の遊佐町クラシックカーミーティングで
初めてお会いした911のオーナーさんは、キヤノンのMFカメラ「NewF-1」を愛用するフィルムカメラ愛好家でもあります。
こちらもキヤノンNew F-1を入手し、旧車イベントでの撮影に投じたりしていた関係でお話しする機会を得て、寒河江のイベントと今回の酒田のイベントと、いろいろなお話を伺いながら仲良くさせていただいています。
そして今回、イベントが終わってからポルシェとセリカの体験試乗&撮影会となりました。
普段は運転席がある側のドアを開けると、そこは助手席です。
当然ステアリングもペダルも無く、ダッシュボードのシンプルな形状もあって助手席は広々しています。
排気系に少し手が加えられているというこのポルシェは、音量はそんなにうるさくはないものの、重厚なサウンドが室内に聞こえてきます。
エンジンもトランスミッションもリヤにレイアウトされた関係でリヤタイヤは座席に近い位置にあり、車体の四隅にあるというより、体のすぐそばにタイヤがある感覚がよくわかります。
カレラ4はRRベースに4WD化された駆動レイアウト。
加速姿勢はRRを感じさせるリアを沈めて後ろから押される感覚が残っています。
横置きFFをベースに4WD化されたセリカGT-FOURとは全く違い、レイアウト的にはスバルの前後を逆にしたものに近いのですが、エンジンの搭載位置はさらに低く低重心であることを感じました。
どっしりと低重心に構えるリヤタイヤが、このままどこまで持ちこたえてくれるのか想像も付かないキャパシティを持っていて、乗りこなすには相当の経験が必要そうです。
4WD化によってフロントデフが配置され、多少はフロントにも荷重が載るとはいえ、フロントには重量物のないポルシェ911。
操舵のレスポンスやブレーキングの挙動などはさぞ手を焼くのだろうと勝手に思っていましたが、そこはきちんと躾けられている印象です。
乗り手のスキルがそう感じさせてしまったのかもわかりませんが、アンダーステアの出方も穏やかで突然リヤが暴れまくるなんてこともありません。
RRの持つ独特の癖・ネガティブな部分をよく理解し、乗り手がそこをカバーしつつ得意な姿勢に持ち込んだら、後は強大なトラクション能力に湧き上がる強力なエンジントルクを全部乗せる。
そんな繊細かつ大胆な、機械と人との対話をするような乗り方が、このポルシェの醍醐味なんだろうなと思わされました。

そんなポルシェの異次元空間を味わった直後、今度はST205セリカGT-FOURの試乗会。
今回はどちらの車両もそのオーナーが運転し、助手席で体験試乗というカタチです。
実はポルシェ911のオーナーさんは、かつてSW20MR-2のGT-Sを所有されていたということで、3S-GTエンジンには縁があるのです。
久しぶりの3Sエンジンのフィーリングはどうでしょうか。
そしてもっと気になるのが、あのポルシェに乗せてもらった直後にこのセリカに乗ったら、一気にこのセリカが色褪せてしまうのか?
ところがです。これが結構負けてはいない?
乗り味を勝ち負けで表現するのは適していませんが、乗りやすさ・乗りにくさはまったく異なるものの、運転の面白さやクルマの個性、能力を引き出すには相応の理解とコツが必要な点など、どこかポルシェとも共通する方向性があるようなところがあります。
1990年代初めのこの2台。ポルシェはよくR32スカイラインGT-Rと比較されていたモデルでした。
モデル的にはST205がやや後発ながら、ST165・ST185と経てきた時代はポルシェ911カレラ4のあたりとオーバーラップ。
セリカがポルシェを目指したかどうかはわかりませんが、日本のクルマの多くがドイツ的な方向性を強く意識していた時代の車だけに、どこか似たような方向に向かっていたのかもしれません。
WRCのイメージが強く、ラリーのために開発したと語られるセリカですが、市販車としてのセリカGT-FOURのキャラクターはラリーではありません。
くろネコセリカは完全ノーマルではなく、少々足回りに手が入っています。
チューニングの方向性はあくまでノーマルっぽく、けど実はエンジニアはこういうクルマにしたかったんじゃないのかな?仕様です。
今回の乗り比べで感じられたのは、両車ともベース車のレイアウトから来るネガティブな部分をカバーするべく4WDという構造を与え、必要十二分な容量のブレーキが与えられ、ハイパワーを安全に高いスタビリティで支えて速く走らせることを目的にしつつも、ネガティブな部分は完全には取り切っておらず、後のフォローは乗り手の理解に委ねるという味付けがされている点では全く同じ。
こんなどこか共通したクルマが大のお気に入りになっている二人のオーナーは、期せずしてともに古いマニュアルフォーカスのカメラに魅せられ、キヤノンNew F-1がお気に入りという共通点を持つこととなりました。
↓セリカとポルシェの対決の様子?はフォトギャラリーで