20日に投開票が行われた第27回参議院議員選挙は事前に予想されたとおり、自公は非改選含め過半数である50議席に届かない見通しとなりました。
参院選【速報】自民・公明が過半数割れ、続投を表明した石破首相に退陣論…国民民主や参政が大躍進
https://www.yomiuri.co.jp/election/sangiin/20250720-OYT1T50062/
石破茂首相は自らが設定した勝敗ライン50議席を割り込んでも続投の意思を示し、かつて自らが選挙結果で安倍首相に退陣を迫った過去を蒸し返され、党内からも異論が出ている所です。
自民がこのような結果になったのは、選挙中にも「幸運にも能登で地震が起きた」「消費税は死守する」というような国民軽視の現在の石破政権を厳しく見られたこともありますが、派閥解消した事で選挙互助会としての機能を失ったのが大きいでしょう。
自民党を支えてきた公明党も創価学会の池田大作名誉会長の死去や支持者が高齢化し引退、子や孫はそれを引き継がなかった事で組織の弱体化が言われていました。
自民党はその役割を終えたと言える選挙だったかもしれません。
今回注目されたのは国民民主党と参政党の躍進でしょう。
その二党に注目が集まった余波で新興政党は振るわない結果ともなりました。
国民民主党は「103万円の壁撤廃」で大きく注目されましたが党首の不倫や女性天皇擁立を目指す山尾しおり氏、反ワクチンなどの陰謀論に夢中な須藤元気氏ら公認を発表した事で失速、それを埋め合わせるように所属議員が五名となり「政党」としてメディアに取り上げられるようになった参政党が躍進しました。
選挙戦中盤あたりから候補者がロシアの工作メディアである「スプートニク」取材に応じた事が報じられると、参政党党首の神谷宗幣氏の過去と併せ、ロシアの影響力工作の疑いも報じられ勢いは削がれましたが、国民民主とともに野党第二党をうかがう情勢になりました。
神谷宗幣氏に関しては参政党結党前から注目はしていました。
かつて自民党から選挙に出馬し落選した後、思想を背景にした高額商材を買わせるマルチ商法でカルト的人気を博し一部界隈では知られる存在で、YouTubeの動画チャンネルでは各界の言論人を招いて話を聞くというスタイルで一時は視聴していましたが、いつの間にか神谷氏の思う歴史観などを展開するチャンネルになっていたようです。
その後、有志らと参政党を結党、先述のYouTubeチャンネルのような歴史観を開陳し支持を広げていきました。
多くの新興政党がSNSなどで過激発言をして注目を集めるのに対し、参政党は地方議会などで着実に議員を増やすなど組織固めをしていきます。
そこには囲い込みマルチ商法時代の人脈が組織しているとも噂されています。
神谷氏の外国勢力の脅威を強調し日本を取り戻す、日本人を舐めるな、という日本観に共鳴した「見捨てられた人々」の集まる負け犬集団と見なされてきましたが、寄付者の顔ぶれを見ると地元の有力者なども取り込んできていることが分かってきています。
しかし神谷氏の歴史観は選挙戦でも明らかになり、また「女性は大学に行かず子供を産めるように高報酬で雇えばいい」「発達障害など存在しません」「農民は全員公務員にする」などの人権を無視した現実離れした発言が物議をかもし、参政党が専門家と二年超の時間をかけたという憲法草案は天皇統帥権のような威勢の良いことが書かれてはいても基本的人権の概念が抜け落ちている等問題があるもので、それを指摘されても「草案はたたき台なので」と言うかと思えば「キリトリだ」とお得意の被害者と加害者を入れ替えるDARVO論法で反論します。
DARVOについて知っておくべきこと(英語)
https://www.medicalnewstoday.com/articles/what-is-darvo
またかつて有機農法で食料自給率100%などとしてジャンボタニシ農法を提唱していましたが、外来種であるジャンボタニシは雑草だけでなく稲そのものも食べしまう問題のあるもので駆除が困難であると農家や農業専門家から苦言が呈されると「ジャンボタニシなど知らない」と言い、党の公式ページなどからもその項目は削除されました。
このように問題発言ばかりなのになぜ人々は熱狂するのか。
そこには街宣車の上から「ね?皆さんもそう思うでしょ?ね?」と熱く語りかける神谷氏の姿がありました。
彼の演説は上手いとは言いがたいものの、人の良いお兄さんが熱心に語っている姿に心を動かされる人も多いようで、どの街宣でも多くの聴衆が集まりました。
このような陶酔状態にかつてナチスドイツが民主主義のプロセスから政権を奪取し独裁に走り、欧州全土で数千万、ドイツ国民だけでも800万人が犠牲になり、ユダヤ人迫害で世界を震撼させた過去と照らし合わせる人も出てきました。
もちろん、参政党がナチスの突撃隊のような武装組織で政敵を襲撃したりする危険性は杞憂でしょう。
しかし参政党支持者の既成政党への人々の不満は「本物」です。
正直、日本の移民問題は欧州やアメリカ、それ以外の国に比べればまだマシなものであり、外国人労働者200万人が農業や工場、運輸業、コンビニなど日本人がやりたがらない仕事に入っている事で支えられています。
自分はコンビニ弁当なんか買わないから関係ない、と言ったとて彼らに依存したシステムで生活していることに変わりありません。
近年、川口のクルド人問題などを過剰に取り上げ、元々日本にあった外国人はなんとなく怖い、という思いを増幅させたのでしょう。
また左派が伝統的にやってきた政権政党へのデマでも誤報でも「権力監視」なのだとした誹謗中傷や政治家個人にとどまらず家族にも及ぶ人格攻撃といった手法を参政党は取り入れ再現したに過ぎないと思います。
神谷宗幣氏は今回の選挙結果を受け、与党との協力など内閣入りを匂わせる発言をしており、権力と戦ってくれると思っていた有権者を戸惑わせています。
今後の自公政権がどう対応するかはまだ確定していませんが、立憲の野田代表に首相を明け渡す自公立大連立になれば緊縮財政で経済圧迫、円安で生活は苦しくなり、それ以外の野党協力を得ようと大型給付金や減税に踏み切れば物価上昇のインフレ加速となり、どちらに転んでも庶民の生活はじわじわと圧迫されていくように思われます。
しかしこれも民主主義。
かつて古代ギリシャでは民主主義はポピュリズムに陥るとして危険思想とされました。
それゆえ哲人政治や高度な教育を受けた貴族階級が王政を支える権威主義が世界の主流となりましたが、それらも権力の腐敗と言う宿命から逃がられることはなく、民意を取り入れた民主制に徐々に、あるいは一夜の革命で大きく舵を切りました。
民主主義でも権力は腐敗しますが、民衆のためにならない政治をしていれば選挙という審判で交代させられ、またポピュリズムはやがて是正されるというのがメリットとされます。
人権を考慮しない参政党が与党に参画すれば現実路線で穏健化せざるを得ないのはこれまでの例から予想されますが、逆に国民が陶酔すればナチ化したり、文革やポル・ポトの原始共産主義のような実体経済を無視した結果、大きな犠牲が出る時代になるかもしれません。
現在の日本で一党独裁や個人崇拝なんて、と笑っていられる日が続くことを望んでやみません。
Posted at 2025/07/21 13:03:49 | |
トラックバック(0) | 日記