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2022年09月25日 イイね!

ウクライナ戦争と米中対立 帝国主義に逆襲される世界 峯村健司 (著)

ウクライナ戦争と米中対立 帝国主義に逆襲される世界 峯村健司 (著)Twitterでフォローしている元朝日新聞記者の峯村健司氏による国際情勢、軍事専門家との対談を纏めた新著。

元朝日新聞と言うと親中反米というイメージですが、峯村氏は北京、ワシントン特派員を歴任した経歴から、また大学で講義をするアカデミズムの立場から中国の問題点やアメリカ政治について発信し続けています。

保守、右翼などと言われますが著書からは国粋主義や民族主義などのイデオロギー色はなく極めて現実主義的な視点からの問題提起が多いのが特徴かと思います。

そんな氏の軍事、防衛、外交分野の論客との対談本が出ると聞き注文、数日で読み終えました。

タイトルからも分かる通り、ロシアによるウクライナ侵略とそこから見えるアメリカや中国、諸外国の思惑を描き出しています。

第一章はロシア軍事研究者の小泉悠氏とのプーチン、習近平といった権威主義体制とそれに対峙する自由主義陣営について、
第二章では国際政治学者の鈴木一人氏とのロシアに対する各国の対応、
第三章でハドソン研究所で戦略情報分析を専門とする村野将氏によるアメリカのウクライナ支援
第四章で元航空自衛隊空将の小野田治氏によるウクライナ情勢がアジア各国に与える影響の考察
第五章で国際政治史・イギリス外交史を専門とする細谷雄一氏の今後の世界情勢予測

といった分析が対談形式で綴られています。

元記者である著者が各論客から上手く話題を引き出していく手腕はさすがで、読みやすくもあります。

各々の専門とする分野は違えど、異口同音にするのは

プーチンはリアリストからナショナリストに変質した。
バイデンとバイデン政権の誤ったメッセージがプーチンの決断を後押しした。
制裁では無謀な侵略を止める事は出来ないがそれでもやるしかない。
中国は今回の教訓を分析し、虎視眈々と台湾を狙っている。
アメリカには欧州とアジアの二正面で戦うリソースが不足している。
プーチンや習近平は20世紀以前の大国が小国を従える「多極化世界」を目指している
ロシアは国威を落とし、いよいよ米中対決が顕在化していく。
日本は備えがない。

といった冷徹な国際情勢と、日本の置かれた危機的ポジションが浮かび上がります。

したがってウクライナなんて関係ない、勝手にやってろという見方は一側面ではそうとも言えますが、グローバルな視点からは極東アジア情勢に与える直接間接的な影響を真剣に考える時期に来ています。

今回の侵略に中国が関与せず距離を置いているのは中露連携が完ぺきではないという見方も出来ますが、逆に言うと中国には「中国の夢」実現を優先したいという事情も透けて見えます。

プーチンはスウェーデンに勝利しバルト海を手中にしたピョートル大帝を持ち出し、今回の侵略を正当化しています。
習近平も偉大な中華の復興を掲げており、同床異夢とも言えます。

ロシアはプーチンすら手を焼いた腐敗体質により軍の近代化がままならないままに今回の侵略を開始ししてしまいました。
結果はご覧のように徹底抗戦する相手に体たらくを晒していますが、中国は習近平体制で汚職摘発を本格化し、それは習近平の政敵へのパージとみられていましたが、結果的に中国軍の近代化が推し進められており、2025年までには極東における軍事バランスで中国が優位に立つと見られています。

もっとも、戦争と言うのは総合的な能力が問われるため、兵器がいくつある、とかの帳簿上の数字だけでは分からないのはまさに物量で勝るロシア軍がウクライナ軍に苦戦を強いられている所を見れば明らかでしょう。

従って実際に米中の軍隊が激突した時に、その装備や編成が適切だったのかの真価が問われる事になります。

台湾有事なんて起きないに越したことはなく、戦争は始めるのは簡単だが終わらせるのは難しいと言われるように、始まってしまうとコントロールできない要因が増大します。

それだけにいかに「予防」するかが大切になり、それは平時の備えと言う事になります。

左派知識層を中心に、「だから日本は戦争にならないように常に中国に平身低頭、無限贖罪しなくてはならない」と言いますが、日本がどんなに臣下の礼を尽くしたとしても中国の気分一つで侵略を受ける可能性を考えれば極めて非現実的な妄想と断じても構わないでしょう。

それは国連が常任理事国であるロシアの侵略戦争を止める手立てがない事からも他国に安全保障を委ねるべきではなく、

自衛 > 同盟 > 国連

といった防衛の優先度(効果)という図式が見えます。

この図式からも「日本が防衛を強化したら戦争になる」「日本を戦争できる国にするな」というのが冷酷な弱肉強食時代の国際情勢では虚しい絵空事である事が分かります。

むしろ周辺国が嫌がるからこそ強化すべきであり、防衛はいかに相手に侵略コストを強いるかに掛かっています。

「無防備都市宣言」や攻められたら戦わずに降伏します、というのは聞こえは良いですが、降伏し占領された都市では住民の生命財産はいっさい保証されないリスクを負う割には、侵攻を受けるハードルが格段に低くなります。

従って事前に「戦わない」などと宣言する事はやってはいけない事であり、バイデンのウクライナ侵攻前の失言やバイデン政権の姿勢がロシア侵略を招いたと言われてしまう所以です。

日本軍は中国を侵略して住民を虐殺したというその口で中国に降伏すればもはや殺される事はないというのは日本性悪説、反米思想であり、現実的に生命を助ける事にはなりません。

日本では増強目覚ましい中国軍に対する備えが全く足りてないと言わざるを得ません。
弾薬備蓄の話も最近ようやく問題視され始めましたがそれは自衛隊創設時からの問題でもありました。

まず自衛隊が備蓄を持つことは侵略の意図を疑われるという世論的背景と、また予算が限られる中で備蓄よりは戦車や戦闘機と言った正面装備の導入を優先してきた事、更に有事の際にはアメリカの増援が到着するまで持ちこたえればいいという考えがありました。

しかし中国軍のミサイル近代化により接近を阻止されアメリカ軍が加勢に駆け付けられない状況と言うのを考えれば自衛能力全体を拡充する必要があります。

日本が長距離ミサイルを持ったら周辺国が嫌がるというのなら装備すれば効果があるという証左に外なりません。

ウクライナが持ち堪えているのは欧米各国の軍事支援があるからですが、当初欧米はウクライナへの軍事支援には消極的でした。

しかしゼレンスキー大統領がロシア軍が迫る首都キーウに留まり徹底抗戦を呼びかけた事により国民が一致団結、各所でロシア軍を撃退するに至り、ようやく各国の支援が動き始めました。

それはいわば「戦う覚悟を決めた者へのご褒美」であり、国内左派勢力は有事の際に日本人が団結して戦うような事は阻止したい。

従って有事の前後には国内からも「日本が悪い」「自衛隊が酷い」「中国軍はジェントルだから受け入れよう」といった戦争反対を煽る勢力が大声を上げる事になるだろうと見られています。

ウクライナもそういったプロパガンダ戦に晒されました。

ロシアの言う「ゼレンスキーはネオナチ」「ネオナチからのロシア系住民の保護」という雑というのも程がある杜撰なプロパガンダに対し、ウクライナへの支援を呼びかけ「侵略は絶対悪」という価値観を広める事には成功しました。

しかし今後は先進国の国威が落ちるのに反比例して「グローバルサウス」と言われる先進国とは一線を画す発展途上国々の存在感が増し、中国やロシアが経済や資源を背景に影響力を強めこれらの国々を取り込んでいくと予想されています。

商業工業などの仕組みを整えた自由民主主義的な先進国に対して世界を多極化するために分断を至る所で仕掛けて来るでしょう。

人権や貧困、環境などかそのツールとして既に利用され始めています。

有事の際には日本の領空領海が侵犯され、日本の現地法人の接収や現地駐在員の身柄拘束などが起きるでしょうが、日本の正当性と被害の回復を国際社会にどれだけ発信できて賛同を得られるのかが問われる事にもなります。

中国の台湾侵攻は、数年前に某軍事専門家の方とSNSで「意思はあって能力を養っているのだからどんな手段を使ってでもやる気ですよ」と具申したところ「何かいい案があれば習近平に教えてやればいいんじゃないですか(笑」とにべもない返事をもらいましたが、中華人民共和国建国100周年や習近平体制第三期の終わる2027年頃、早ければ2024年には中国が台湾を侵略する可能性が高まるとシンクタンクなどの専門家も時期と手段を考察している段階になっています。

ペロシ訪台後の軍事演習を常態化させて軍を配備し一気呵成に攻めるリスクをウクライナで見て取った中国は、台湾の総統選に干渉して親中勢力を勝たせ、その親中勢力の求めに応じて「中国系住民の保護」などを名目に人民解放軍を進駐させるのが最もコストが低く危険視されています。

しかし恐らく選挙は中国の思うような結果にはならないでしょうから、そうなると圧倒的なミサイル戦力を背景に台湾や日本の防衛施設を破壊し、アメリカ海軍の接近をけん制しながら台湾上陸もあり得ます。

台湾には上陸できる海岸が13カ所と限られる事からも、ノルマンディー上陸作戦のような強襲上陸は行わず、港湾を無力化してそこに軍民フェリーで人員を送り込む事は可能と見られています。

中国海軍は一つのドッグで二隻同時竣工のような恐ろしい建造スピートで軍艦を建造していますが、軍備を送り込める揚陸艦はまだ10隻程度しか戦力化されていませんが、民間フェリー、特に自動車がそのまま乗り降りできるRORO船は世界大台数を保有し、有事の際にはこれらを軍が使用する取り決めになっている事から中国軍の揚陸能力を低く見積もるのは現実的ではありません。

これに対して憲法9条の縛りがある日本は論外として、アメリカが打つ手は非常に限られます。

まず頼みの空母打撃群は中国の中長射程ミサイルによって被害を被るか、戦域に接近を阻止されるようです。

こうなるとアメリカの潜水艦頼みという事になります。

幸い、未だ中国海軍の対潜哨戒能力は大きく劣る事からアメリカの優位はある一面では確保されている状況ですが、そこは中国も当然分かっているので今後、この方面の戦力の充実を図るでしょう。

台湾に対する世論工作はうまく行っていないとはいえ、ウクライナの様に一致団結してどんな犠牲をも厭わず戦えるという保証はなく、その戦意を継続させるには自由主義陣営の援助が欠かせませんが海路と空路を封鎖された台湾をどう支援するのか。

ウクライナは独立国への侵略という構図でロシアが批難されましたが、中国は一度も統治した事が無い台湾を自国領と主張し、内政問題であるとしています。

これまでのアメリカのあいまい戦略もあってこの言説には一定の説得力と抑止効果がある事から中国が「内政干渉する国には経済制裁や軍事などあらゆる手段で対抗する」と表明したら、台湾は香港と同じ運命をたどる事になるでしょう。

台湾を失った場合、日本は資源輸入のシーレーンを脅かされる事になります。
特に中国が中部太平洋までアメリカの影響を排除できた場合、深刻な事になります。

ロシアの侵攻を受けたウクライナのGDPが-45%になると発表がありましたが、日本は中国の影響を受けている間、同じように経済活動を制限される事になります。

経済界には中国の影響を過小に見積もり、貿易のためにならないデカップリングはすべきではないという経営陣が多いと聞きますが、有事の際に経済を「人質」に取られた日本は、もはや赤子の手をひねるくらい簡単な相手とみなされるでしょう。

習近平もプーチンも超大国の多極化する世界において、米中ロなど数ヶ国だけがれっきとした「国」であり、それ以外の小国は取るに足らない、大国間で奪い合う「緩衝地帯」と見なしているようですから日本の置かれている立場は極めて拙い状況であるという認識を経済界だけでなく広く日本人が共有する必要があるでしょう。

しかし安倍元首相の国葬反対問題など、世論を分断する工作はすっかり根ざしており、今後日本人が団結して抗うような事はもう出来ないでしょう。

これが「個人主義」偏重の弊害であろうと思います。

今後、この「弊害」が最大限利用される事が無いよう、またそのためにロシアの野望が打ち砕かれ厳しく断罪される事を願うばかりであります。
Posted at 2022/09/25 13:16:38 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記
2022年09月17日 イイね!

ロシア軍はなぜ潰走するに至ったのか

9月5日頃から始まったウクライナ軍の反撃により、同国に攻め込んでいたロシア軍は潰走し、奪われていた領土の多くを奪還しています。

戦車や大砲といった数の面ではウクライナ軍を抑え込んでいたように見えたロシア軍は、しかし反撃を受けると非常にもろかったようです。

これには多くの要因がありますが、何よりもまず徹底抗戦するというウクライナの人々の不屈の精神があったればこその反撃でした。

占領された地域の人でさえも、ウクライナ側の反撃を待ち望んでいたでしょう。

そして西側の支援、特にアメリカの提供する武器や弾薬はもとより、様々なレベルの情報が戦況を覆す事を可能にしました。

多くは衛星写真の画像解析や電子偵察機などからもたらされるロシア軍の状況分析などにより、効果的な作戦立案を可能にしたのでしょう。

恐らくキーウには米英の「軍事顧問団」が常駐し、ウクライナ軍の作戦立案にアドバイスをしているものと思われます。

従ってロシア軍が対峙しているのは東側の旧式装備のウクライナ軍ではなく、アメリカ軍の指揮するアメリカ式の装備で戦うウクライナ軍とでもいうべき状況変化がありました。

当初は南部にて攻撃を開始したウクライナ軍でしたが翌6日には東部にて大規模な反抗作戦を実施し、ハルキウ州の大部分や東部ドネツク州の要衝を次々解放させていきます。

中には一日に50キロ程進撃した部隊もあったようです。

対イラク戦争時にアメリカ軍の機甲師団が砂漠を突っ切り一日に100キロも進撃した例はありましたが現代戦では30キロ進めれば快進撃と言われます。

これはウクライナ軍が殆ど抵抗らしい抵抗を受けなかった事を意味します。

実際、戦場の様子をSNSで語っていた兵士はロシア軍の大量の武器や弾薬が放置され、逃げるロシア軍と並んで進んでいると伝えている例もありました。

通常は占領地に防御陣地を幾重にも張り巡らせ、どこかが突破されてもその先の防御陣地で食い止めるのですが、そういった陣地構築をしていたり頑強に抵抗する事もあまりありませんでした。

南部が陽動作戦だったと分かったロシア軍はただちに東部に戦力を振り向けますが、それよりもウクライナ軍の進撃速度が上回ったため、占領地の多くを手放し、後方に「配置転換」するしかありませんでした。

このあまりの脆さに当初は自分もウクライナ軍を引き入れる罠ではないかと数日はヒヤヒヤしていたのですが、どうも単にロシア軍が弱いというだけだったようです。

その事を裏付けるロシア側からの分析を見つけました。

まずロシア軍は単一の軍隊として機能しておらず、組織的な反撃が出来なかったとしています。

ウクライナに攻め込んでいるロシア軍は兵員不足の為、正規のロシア軍(契約兵)の他に国境警備部隊、民間軍事会社ワグネルグループ、チェチェンの武装勢力「カディロフツィ」などの混成で成り立っています。

それぞれ言語が違っていたり、またそれぞれの組織の目的が違っており、各々がそれぞれの判断で行動しているため、そこを突かれてひとたまりもなかったようです。

ワグネルグループは軍しか持っていない攻撃機まで持っているため、実質的にロシア軍の超法規的な任務を遂行するための一部門と見られますが、これまでの兵員不足のため、刑務所の囚人を募集する事が許されいました。

その多くが短期間の訓練を受けたのみで戦場で任務にあたっていたようです。

ロシア軍も人員不足の為、黒海艦隊の水兵が戦車の操縦訓練を受けさせられて投入されているという話もあります。

ドローンによる空撮で、道路を走っているロシア軍の戦車が道を外れて横転したり、曲がり切れずに木に激突する動画が拡散されていますが、その背景にはこういった練度の低さというのもあるようです。

カディロフツィも金や快楽的な暴力を原動力にしているため、守勢では使い物にならないというのは以前から言われていました。

部隊を指揮する士官も慢性的に不足しているとの事です。

分析ではこういった指揮系統の問題や、予備として長期保管されている予備兵力が故障し放棄されているなど、装備の問題もあったようです。

急募された兵士は装備も満足に与えられず、迷彩服にスニーカーといった程度だったり、長期保管のためかボロボロに劣化した装備が与えられています。

夜間暗視ゴーグルのような装備など望むべくもなく、その作戦遂行能力そのものが格段に低い事が伺われます。

また補給についても、現地のニーズに合わないと思われる物資がそっくり残されています。

軍隊への補給、「兵站」についてはどの軍隊でも問題になりますが、アメリカ軍はコンテナ無線タグで管理しており、世界中のどこからの要請にも答えられる体制を構築しており、アメリカ軍の世界展開を支えています。

ロシア軍にはそのような管理システムは無く、慢性的に物資不足であったと推測される上、9月の反撃までにアメリカが供与したHIMARSによる精密誘導ピンポイント攻撃でかなりの後方の物資集積所が破壊されていました。

このように非常に拙い用兵という状況は開戦以来抱えていた問題が全く改善されていなかったばかりか200日に及ぶ戦中においての損耗によりかなり弱体化していた様子が伺われます。

ウクライナ兵のように命がけで祖国を守るという気概は侵略側のロシア兵には無いでしょうから、現在の状況が続けばいずれロシア軍がウクライナから撤退する日が訪れるかもしれません。

既に東欧において、ロシアの弱体化を見て取ったかのように地域紛争がいくつも再燃し、地域が不安定化しています。

またトルコもこの機を逃さない立ち回りをするでしょう。

中国もロシアとは距離を取り始めていると言います。

インドのモディ首相が上海協力機構首脳会議後にプーチン大統領と会談した中で「戦争のときではない」と窘められ、目を逸らしたそうですが、数少ない友好国からのアドバイスをどのように受け止めたでしょうか。

ロシアは西側へ禁輸した天然ガスや石油をこれらの国に売って貿易黒字が拡大したと言いますが、その石油掘削設備や石油精製装置は西側のものであり、自国ではベアリングも満足に造れず鉄道事故が増加しているなど、すでに制裁の影響が出始めており、いずれは経済も戦争遂行能力も壊滅するのは避けられない流れです。

今年の冬が厳冬になれば戦火のウクライナだけではなく、ロシアも欧州各国もエネルギー事情のひっ迫が懸念されるだけに、早期の停戦合意が望まれるところであり、ウクライナ軍の快進撃がロシア首脳部の判断を変えて欲しいものです。
Posted at 2022/09/17 17:21:12 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記
2022年09月11日 イイね!

時間は存在しない カルロ・ロヴェッリ (著), 冨永 星 (翻訳)

時間は存在しない カルロ・ロヴェッリ (著), 冨永 星 (翻訳)過去や未来に行けないのは何故だろう。
そんな事を考えて時間を過ごす子供時代でした。

時間と言うのは川の流れのように過去から未来に流れ、そこに竿を刺したところに渦が巻くように事物が存在する、或いは上下左右に広がる格子状の目に見えないグリッドがこの世界を構築して、そこに時間要素を加えたのがこの世界であるというのが一般的な認識かと思います。

しかし、それでは時間が過去から未来に流れているように見える現象や、宇宙の始まりを説明する事はできないと思って来ました。

いろいろ考えてたどり着いたのは過去も未来もなく、ただ「現在」のみがあるのではないか、という視点です。

これなら過去に影響を与えられなかったり、また現代に未来人が来訪する事が無い事も説明が付き、子供心にも得心したものです。

まぁ考えた所で結論が出る問題でもないので、人生の中での優先度と言うのは次々に起こる現実問題の下位に埋もれていきました。

最近、ネット通販で買い物をするとアルゴリズムが関連しそうないかにも興味を持ちそうなものをオススメして来ることがあって、大抵はスルーするのですが、今回手にしたこの本はまさに子供の頃から思ってきたテーマについて書かれていそうでタイトルのみで衝動買いしたものです。

「時間は存在しない」とはどういう事なのか。やはり時間の流れと言うのは存在しないという研究があるのだろうか、興味津々紐解く事にしました。

まず我々が知覚しイメージする「時間」というのは、古来から哲学者や科学者が考えて来た永遠のテーマでもありますが、体系づけたニュートンの世界観に基づいたものです。

つまりこの世界は均一な空間が広がり、そこに一定の時間が流れているという世界観。

しかしこれを打ち破ったのがアインシュタインでした。
アインシュタインは電磁気力を解き明かす中で時間の流れは一定ではなく重力の影響を受けてその速度が変化するとしました。

これが相対性理論です。

つまり重力が大きくなるほど時間の流れは遅くなる、というものでエベレストの山頂での時間は地上の時間よりも僅かに速く流れます。

これは1960年頃、精密な実験装置により観測値でも正しいらしい事が確認されましたが、たとえば地球を周回するGPS衛星で測位する場合、この時間の誤差を考慮に入れているというのは有名な話です。

手近な所では東京スカイツリーの展望台に設置された時計でも観察できています。

これは時間と言うのは均質ではないという点で概念上、様々な問題を引き起こしますが、そもそもなぜ均質ではないのか、時間とは、重力とは何かという根源的な問いに到達します。

宇宙はビッグバンで始まり、そこから時間と空間が広がって現在に至るというのが通説になっています。

これは天体観測によると宇宙は膨張しているらしいく、その膨張を逆再生すると宇宙の一点に集約していくであろう事や宇宙全体で観測される宇宙マイクロ波背景放射がビッグバンの残響であろう事、そして物資を構成する素粒子の成り立ちや素粒子間に働くとされる四つの力(強い力、弱い力、電磁気力、重力)を説明するのに都合が良く、恐らく事実だろうという仮定で成り立っています。

しかしアインシュタイン世界観をもってしても、時間そのものを説明する事は出来ませんでした。

アインシュタインは、晩年この世界の物理現象を全て説明できる「宇宙統一場理論」の構築を目指していましたが叶いませんでした。

それはアインシュタインの知能が足りなかったというよりは、過去の自らの理論に囚われ量子力学を否定し続けた限界と言えるものでした。

最新の量子力学では宇宙は最低でも11次元あるとされています。
縦横奥行きの三次元構造に時間を加えたこの世界が4次元とすると、とても想像の付かない高次元です。

平面で構成される二次元世界があったとしてそこに住む二次元人がどもう「高さ」があるらしいという概念は思いついても、それを体感できないように我々がこの高次元を予測できても観測する事は出来ないでしょう。

話を本書に戻すと、アインシュタインは時空は一定ではないとした所は最大の功績ですが、その時空の成り立ちを説明できなかったのは「視点が大きすぎた」つまり量子力学の視点に立ち入らなかったからだとしています。

我々が体感できる物理現象は微細に見てもかなり大きな構造といえます。

原子そのものを構成する素粒子世界は我々の知覚できる物理現象とは違う法則で成り立っています。

「宇宙統一場理論」にはマクロの視点とミクロの視点を紡ぎ合わせる必要がありそうだというのが最新の研究です。

極々ミクロの世界では時間と言うのはどうなっているのか。

我々が上流から下流への流れを意識するような「時の流れ」というのは存在せず、「状態」があるだけだと筆者は言います。

空間の一点(超弦理論では「点」ではなく「紐状」)はこの「状態」の変化する、しない、によって動いていてそれがあまねく全宇宙に広がり構成している。

つまりある一点をもっての「現在」というのは全宇宙には通用しないという事です。

分かりやすく言うと地球から4光年離れたプロキシマケンタウリに知り合いがいるとして「今、この瞬間、向こうで何をやっているんだろう」というのはそれぞれが別々の時間軸に居るので意味をなさない問だということです。

それは宇宙空間に二つの小石を持って行き「どちらが高い位置にあるか」を問うようなもので、その視点によって変化する質問自体が適切ではない、というのです。

つまり「現在しか存在しないのでは?」という子供の頃の自分の問いは半分は正しく、半分は間違っていたという事になります。

現在しか存在しないというのは古代から信じられた「現在主義」と言いますが、これは人間の知覚する範囲、可視光線域や、見渡せる範囲から来る錯覚であり、たとえば生涯地上を離れない人にとっては天球の方が自分の周りを回る「天動説」こそが世界の真理ですが、彼を宇宙船に乗せて打ち上げれば地球が丸く、地球の方が太陽の周りを回っている「地動説」も受け入れられるだろうという事です。

では時間の成分とは何か。

筆者は、これをエントロピーであるとしています。

エントロピーというのは簡単に言うと「乱雑さ」であり、物理学的な意味では熱力学に関係します。

特に「熱力学第二法則」において熱は高い方から低い方に一方的にしか移動しない不可逆現象とされています。

お湯は放っておくと冷めて常温になりますが逆に勝手に沸騰する事はあり得ません。

水を沸騰させるためには外部からなんらかのエネルギーを与える必要がありますが、この行為も「低エントロピーからの解放」と言える働きです。

つまり低エントロピーで安定した状態に「燃焼」などのなんらかのきっかけを与えるとエネルギーを開放して発散、高エントロピーの状態になります。

これはお湯であっても薪であっても原子炉であっても太陽であっても同じで、かならず低エントロピーから高エントロピーにしか状態移行しません。

状態移行と不可逆性。
著者が注目したこの二点こそが時間の正体=エントロピーという訳です。

本書では素粒子や調弦理論などには踏み込んでいませんが、興味があってネットで調べた事がある程度の認識力があれば難なく読み進める事が出来ます。

では我々が知覚する「時間の流れ」とは何か。
これはもう哲学の領域になりそうです。

ざっくり言ってしまうと我々の体感できる粒度ではそのように「錯覚」している、という事です。

そう言われてしまうと「現在しかない」というのも「現在なんか無い」というのもどちらも「天動説」と「地動説」は見方が違うだけでどちらも正しいように、どちらも成立してしまうでしょう。

もし筆者が言うように無数の極微細な要素が時空を織り成しているとするのならば、宇宙の成り立ちや宇宙誕生以前はどうなっていたのかを説明できる日が来るのかもしれません。
Posted at 2022/09/11 13:22:07 | コメント(1) | トラックバック(0) | 日記

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