コロナに続き、今度はサル痘が日本でも確認され、WHOが世界中に急拡大しているとして緊急事態宣言を発出しました。
ただしこちらは普通に暮らしている分には日本の生活様式であれば感染する心配はあまりなく爆発的に広がることはないと思いますが、とにかく症状が辛いそうです。
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サル痘(monkypox)」となっていますが自然界での宿主はサルではなく西アフリカあたりのジリスからサルや人などに感染するようです。
予防法としてはマスク着用や患者との衣類や寝具の使いまわしをしないなどである程度防げるようですし、天然痘のワクチンが有効とされています。
ところが、サル痘が注目され出したころからSNS界隈で天然痘ワクチン反対運動を目にするようになりました。
出元を辿ると、コロナワクチン反対運動を積極的に展開してたアカウントがその流れで誤った情報を元にワクチンは効かないとか毒であると流布しているようです。
元々がコロナのmRNAは未知のものであり僅か1年足らずで世に出たもの(これも誤り)の危険性が分からないという不安を煽るものだったはずが、いつの間にか生ワクチンであっても毒なのだ、ワクチンには効果が無いのを効果があるように見せているだけだという風に反対する理由が変節してきている事からも、その主張の正当性が怪しいと分かります。
ご存知のように天然痘は長らく人類を苦しめてきましたが、ジェンナーが予防のために種痘を行い、その手法を改良したワクチン接種を世界中が行う事で天然痘を撲滅する事に成功しました。
一方、米ソを中心に相互の不信感から、また万が一に備えて研究用の株が保管されていますが、これがどうも陰謀論の根拠として用いられているようでウクライナにあるアメリカの極秘研究所でコロナウィルスが開発され、プーチンはそれを討伐しているだけという荒唐無稽な話まで飛び出します。
そもそもコロナやワクチンの不安を煽るアカウントを辿っていくと、各国のロシア大使館が英語や現地語で発信している情報にたどり着くと言う研究が為されています。
これらを大勢のフォロワーを抱える影響力のあるインフルエンサーが拡散し、人々の間に広まって行きます。
皮肉な事にその過程でそれこそウイルスのように変異して奇異な情報になっていくため、当のロシア国内では政府が認めた以外の陰謀論が厳しく規制されており、主に言論の自由がある自由主義陣営に浸透してきています。
従って、政府がワクチンを強制するな、とか健康を害するマスク反対、というのはロシアのプロパガンダに踊らされていると言えます。
もちろん日本は自由が保証されていますから公衆衛生を害しない範囲でワクチンを打たないとかマスクをしないという判断は自己責任においてなされるべきですが、それをわざわざ人に広めたり反対する立場の人を攻撃したりするのは全く馬鹿げた事だと思います。
往々にしてこれらの反ワク、反マスク運動をしている人達の根拠は希薄で、政府広報や世界保健機構など公的機関の発表を精査するのではなく無数にある噂話の中から自説に合致するものだけを選んで「これが証拠だバカモノ」という態度です。
異なる意見や価値観を認めず、排他的で他者に不寛容なのも、人々のルサンチマンを掻き立てる上で欠かせない要素なのでしょう。
近代の人類の進歩は誤りを見つけ、それを是正する事を繰り返して来ましたが、この都合の良い「真実」だけを抽出するチェリーピック法で真実にたどり着けるとはとても思えません。
仮に陰謀論者が唱える中に真実を言い当てているものがあったとしてもそれは確かな裏付けがある訳ではなく偶々のマグレ当たりと言えるでしょう。
陰謀論を信じて広めてしまう背景には情報過多と不信感という不確かな時代背景があると思います。
そして多くの心理作用が関わっていますがどういった動機があるのかというとのコロナフェイクニュースを研究した日本マネジメント総合研究所の戸村氏によると
・不正の動機
世論との逆張りなどで注目される事で儲かる、得をする、自己承認欲求が満たされる
・不正の機会
人々が不安になる情勢は思考停止や検証を飛び越えてセンセーショナルな情報が伝播される絶好の機会に便乗したい
・不正の正当化
公益性とのバランスを欠いてでも自分の「正義漢」が勝ると思い込み自己正当化する
という「不正のトライアングル」に陥っている人が情報化社会に対応できていない一例としてあげられるかもしれません。
ではどういった情報が陰謀論やフェイクニュースであるのか。
基本的には確定するには情報の裏取りをするしかないのですが、そこまでしなくても
・『邪悪な力』が物事を動かしていると訴えていないか
・匿名の証言やコメントが多すぎないか、ニュースソースが不明ではないか
・「わたしだけが知っている」隠された真実を根拠にしていないか
といったポイントをチェックすればフィルタリングは可能でしょう。
細かく見れば
・エビデンスが示されない
・発信者が得をしている(動画収益、本の売り上げや講演会収入に誘導)
・技術的、状況的に飛躍している
・攻撃対象を人格や適正について実際以上に不当に貶める印象操作をしている
・時間が経つと主張や論拠が何の説明もなく変節していく
・考え方やものの見方を提示するのではなく、用意した答えのみしか見せない
・囲い込み(有料会員限定、講演会など)
など陰謀論を広める側はあの手この手で受け手を信じ込ませようとします。
昨今話題の「カルト」の洗脳手法に通じるものがある事に気付きますが動機は同じなのでしょう。
従って常に「なぜ私を説得しようとしているのか」を考えないと取り込まれてしまいますが、どんな情報であっても主題と結論の部分のみを抽出して矛盾や飛躍が無いのかを点検する姿勢が大切な時代になって来ているのだろうと思います。
Posted at 2022/07/27 18:25:05 | |
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