昨日は日経平均株価最高値更新やNVIDIAの好決算にOpenAI社の新AI発表を受けての米国株式市場全面高となり、一部株クラ界隈はなさがらお祭りのような騒ぎでした。
自分も投資している米国株式債券が高騰して月の給料の倍くらい資産が増えました。
NISAなどのつみたて分は今日は日本市場が祝日で休場のため週明けに確定になりますが、今晩の米国市場でよほど大暴落するなどがなければ更に資産は増えている事になります。
この高騰はアメリカのCPIやPPIといった経済指標発表が予想より上振れ、インフレ再燃が懸念され軟調になっていたところにNVIDIAの予想を上回る好決算によって下落していたAI関連銘柄が再び高騰したものです。
実際にはAIを実現するプロセッサを独占状態で設計・販売しているNVIDIAやサーバー分野で大きな存在感を示すSuper Micro Computerの株式に資金が流れ込んでいる事が要因となってもたらされたものです。
これらにもライバル企業は存在していますがプロセッサやメモリを実際に製造しているTSMCやSKハイニックスなどの製造能力には限りがある事もあり、供給能力自体がMOATになっているという背景もあります。
AIはこれまでも何度か技術的なパラダイムシフトがありましたが、ここ最近になってそれを処理する半導体プロセッサやメモリの性能が向上した事で大幅な計算資源が生み出された事により、それまで難しかったデータ構築や解析が可能となって一気に様々な新技術が日々生み出されている状況になっています。
AIがどのように社会を変えるかは不確実ですが、例えば電信電話が人間の交換士が回線を都度繋ぎ変えていたものから機械式交換機で自動化され、それがデジタル交換にとなってインターネットの膨大な処理が可能となったように、社会を変えて今は人間に頼っている非効率な仕事の幾つかは消えるでしょう。
人々に移動手段と運搬能力の拡大をもたらした自動車ももはや誰も「歩け。馬車に戻せ。馭者の仕事を奪うな」とは言いません。
先日発表されたOpenAI社の新生成AI「Sora」はそれまでの生成AIよりはるかに高性能な印象を受けます。
これは
「雨で濡れた東京の街を黒髪で赤い口紅の女性が自信に満ちて歩く」
といった簡単な指示で生成されたものでAI特有の不自然さを見つけ出すのが難しく、そのまま映像素材にも使える程のクオリティーを出しています。
またOpenAI社のサム・アルトマン氏が自身のフォロワーに生成画像のリクエストを求めフォロワーから寄せられた文章から即興でその映像を生成するなどして見せている事から都合が良い一部分だけを見せているわけではなさそうです。
このように一夜にしてトレンドが塗り替えられる技術革新が想像を絶するスピードで繰り広げられていますが、慎重な経済評論家は「AIブームはバブル。過去のバブルと同じような虚構に踊らされているだけ。もうじき弾ける」と昨今の株高を冷ややかに見ています。
一面では正しいと言えますが、全面的に正しいとも言えません。
まずAIブーム悲観論の主幹である「AIはまだ何も生み出していない。経済モデルとして成立していないから一過性のブームに終わる」
という見方はOpenAIのようなキャッチーで派手なものだけをAIとして見ているようですがもうすでに仕事の在り方を変えている企業と言うのは存在します。
資料を収集して要約する仕事はそれまで半日から一日がかり、場合によっては数日を費やすものでしたが、今はAIに指示を出せはすぐに結果が出てきます。
指示を出した人間はそれを軽く眺めて吟味し、必要に応じて調査すればいいだけになります。
このように仕事の性質がAI以前と比べて変化している最中であり、社会構造を変えてしまう可能性を秘めています。
またAIバブルに「期待値が実態より高すぎるから崩壊する」という理屈もPERやROEなどしか見なければそうとも言えます。
資本を投じる市場参加者の資金には限りがある事から割高な状態はいずれば限界を迎え、そこから投機売りなども呼び込んで大きく下落するというもので、それは金融理論や過去の歴史からしても正しいと言えますが、仮に相場が下落し、場合によっては「AIバブルショック」のような金融市場崩壊に結び付くかもしれませんが、基本的に銀行が連鎖破綻するなどに発展しなければ企業の価値が棄損され、場合によってはそれまで有望とされた銘柄が退場するようなことになるかもしれませんが、それに取って代わる新企業が登場し入れ替わる余地が生まれる事にもなります。
したがって、それらは平均回帰に基づく市場の健全性が保たれているから、とも言い換えられます。
そもそもバブルと言うのは健全な市場で起きると言われています。
統制経済を行っている独裁国家や経済破綻した状態の国ではバブルを起こしたくても起きないのです。
一般にバブルというと「欲に駆られた投資家が投機をするから起きる」と言われていますが、それはチャールズ・マッケイが著した『狂気とバブル―なぜ人は集団になると愚行に走るのか』によって広まった概念ですが、バブルの構成要件の一部に過ぎません。
投資家の熱量と信用に裏打ちされた余剰資金、それを受け入れるだけの流動性のある市場が揃い、そこに技術革新や政府の規制緩和政策などが火種となり買いが買いを呼び込んで株価が高騰していきます。
そういう枠組みで捉えればAIブームはバブルとなり、資金量の限界や革新の停滞などによって下落に転じる局面は訪れます。
「投機」は誰に高値のババを引かせるかのチキンレースと言われています。
ですから逃げ遅れた多くの投資家が資産を減らしたり、それによって実物資産や金融機関が痛み、実体経済まで停滞する事になるバブルは忌避されます。
しかし、株式市場というのは常に経済成長を伴い拡大し続けます。
これは人口増加による経済の拡大と相まって投資が価値創造をしているからです。
高騰している相場を前にしてこの「投機」と「投資」を勘違いしないようにしなければ「高値で買って、安値で売る」という最もやってはいけないムーブによって資産を失う事になります。
そうならない為には暴騰している銘柄に目が眩んで高値に飛びつく、下落時に追証が求められるレバレッジ、逆張りして下落を当て込んで空売りで損失を出す、などの身に余る過剰なリスクを取らない事です。
とにかく「退場したら終わりです」からそういう状況に自分を追い込まないリスクマネジメントこそが求められる事になります。
仮に「AIバブルが崩壊」したとしてもそこで出現した技術などは大局として見れば次のトレンドの萌芽になり、更に経済成長を促す事になるでしょう。