2020年09月11日
今年の世界自動車販売台数でトヨタがVWグループを下し世界一に返り咲く可能性が高いようです。
盤石な経営のトヨタですが死角は無いのでしょうか。
自分はトヨタがコケるとしたら、それはトヨタが自動車メーカーだからだと思っています。
自動車メーカーなんだから自動車を造るのが当たり前だろうと言われそうですが、今後は自動車メーカー以外が台頭してくるでしょう。
EV化、というか脱ガソリンエンジン自動車ですが、このパラダイムシフトは既存の自動車メーカー以外に参入のチャンスを作ります。
これは部品点数が少なくて済むこととと冶金工学、材料工学などのアナログな研究の蓄積がないメーカーでも参入しやすくなる事を意味しています。
テスラがいい例ですが、平たく言うとある程度の資本力があれば誰でもパクり易くなると言うことです。
中国には上場しているだけで20数社、それ以外も含めると100社以上、一説には200社前後の自動車メーカーが存在するとも言われています。
次にバッテリー問題。
これも先行する自動車メーカーだから有利、というものではなく、例えば全個体電池のような新しい形のエネルギー貯蔵手段が開発されればわずかなアドバンテージもすぐに無くなってしまいます。
そして自動運転技術。
これはセンシング技術と情報処理の分野でこれまで自動車メーカーがやって来なかった分野に挑戦するという意味では立ち上げたばかりのベンチャーと条件は同じになります。
市場で評価されるのは単なる技術品評だけにとどまらずシェアリングとサービス、つまり個人が自動車を所有するという社会から必要な時だけシェアする時代になると言われています。
これは配車管理サービスなど、まだ事業として芽が出たばかりの分野です。
そしてそれらを実現するために必要なのが通信技術です。
クルマとサーバー間、クルマとクルマ間、或いはクルマ自身で様々な通信を高速で行う必要があり、特に自動車は高速移動するものなので、安定した高速通信には自動運転以上に克服すべき課題が残されています。
これらの頭文字を取ってC「connected(コネクテッド)」A「autonomous(自動運転)」S「shared&services(シェアリング&サービス)」E「electric(電動化)」、CASEと言われているのですが、実はこの基幹技術の殆どを中国が占めているのが米中貿易戦争を通じクローズアップされました。
代表的なのが次世代高速通信規格の「5G」で、アメリカが主に傍聴を危惧して中国ファーウェイ産5Gを外し、各国がこの流れに追従するものです。
配車サービスはモネ、ウーバー、グラブ、オラ、滴々出行、GMクルーズ、SBドライブなどまた立ち上がったばかりですが、中国系だけで4億人のユーザーを持つと言われおり今後急成長するのは確実です。
そしてCPUやGPUといったコンピューターのハードウェア産業は気が付けば中国系、台湾系、韓国系の生産工場しか残っておらず、日本はもちろんアメリカもこれらの会社に製造を委託している状態です。
intelやAMD、NVIDIAといったアメリカの企業と言えどももう自前の工場は持っておらず、しかも経営幹部には中国人が多く入り込んでいる状態です。
音声認識もアリババの「天猫精霊」AIチップがアウディ、ルノー、ホンダを皮切りに、今後は採用が広がっていくでしょう。
トヨタはようやくこの事に築気付いたのか、上記に名前の出てきている企業に多く出資しているソフトバンクグループと手を組む決断をしました。
しかし、ソフトバンクグループも中国と深いつながりを持っており、最近では資金繰りなど様々な事情で持ち株をオプション取引きで大量購入しているという話です。
ここでは株式のオプション購入については詳しくは説明しませんが、簡単に言うと素人が手を出すと大やけどする買い方になります。興味がある方は検索してみてください。
トヨタが自動車をたんなる自動車として生産し続けるならかならず衰退すると思う理由は以上ですがソフトバンクグループという時限爆弾まで背負い込んでしまっては、さすがのトヨタもいつまで盤石でいられるか分かりません。
で、もしCASE革命が起きるとどうなるかと言うと、自動車の運用方法が変わってきます。
「MaaS」(Mobility as a Service)、つまり自動車を「所有」することから「手段」としてとらえる事であり、配車サービスの普及などはその一つの形態になります。
これが普通になるという事は、自動車の価格決定権が今の自動車購入者から離れて配車サービスなどの新業態に委ねられる事になります。
もちろん、個人に販売をしなくなる、という事はないでしょう。望めば自家用車を購入する事は出来るでしょうが、恐らく、購入代金を支払うという事は稀で、今のサブスクリプションのような一定期間の利用額を支払うようなものに移り変わっていくでしょう。
法的な所有者はどうなるのか、レンタカー会社がどうなるのかはその時にならないと分かりませんが、まず世界的に自動車の需要が落ち着き、新規販売台数は減る事になり、そして自動車は今の数倍の高額なものになるかもしれません。
自家用として所有できないのであれば改造したりすることもできないし、サーキット走行のような危険行為も禁止されるものと思われます。
GPSで位置や速度を把握して電源が入らないようにする事は簡単な事でしょう。
通信が発達すればそれらをキャンセルできないように対策する事も簡単です。
要するに今よりも自動車とユーザーの距離は遠くなり、単なる手段としてしか認識されなくなるという事です。
その頃には様々なモノが同じように「シェア」されて人々が愛着を持つ事を忘れるかもしれません。
しかし人類史はこれまで常に「利便性」を求めて進化してきました。
今より便利になるのなら必ずその方向に進むはずで、技術的な障壁はすでに取り除かれて、下地は整っていると言えるかもしれません。
これは自動車愛好家「エンスージアスト」にとっては辛い時代ですが、いずれはエンスージアストという言葉も忘れ去られて誰も何とも思わないのかもしれません。
ひょっとしたら日本だけガラパゴスでこれらの普及が奇跡的に遅れる可能性もありますが、日本以外の世界各国がこの流れになれば日本の自動車メーカーとて追従せざるを得なくなります。
そして540万人、60兆円産業の日本の自動車産業に対して嵐を前にして日本政府の動きは鈍く無能無策であるようです。
先日、ソニーが自動運転BEVの試作車を披露しましたが反応は薄かったようです。
CASE時代に必要な技術を幾つも自前で持っているソニーが無視されるならこの国の自動車産業はますます生き残りは難しい時代がやってきそうです。
Posted at 2020/09/12 00:26:49 | |
トラックバック(0) | 日記