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2022年03月15日 イイね!

新たなミサイル軍拡競争と日本の防衛(並木書房)

新たなミサイル軍拡競争と日本の防衛(並木書房)ウクライナーロシア戦争を機に日本でも核武装論が叫ばれるようになり、知識不足を補うべく購入した本。

以前は神田の古本屋街でこういった本も集めたのですが、もっぱら米ソ冷戦下の軍拡競争時代までで、最新のミサイル技術に関しては一般で出回っている程度しか知らない事に気が付きました。

シンクタンクの研究員が読むような一冊数万円もするような専門書では、恐らくその殆どを理解することが出来ない宝の持ち腐れになると思って指をくわえてみていました。

で、専ら情報を集めているSNSでウクライナ危機で情報を分析、発信していたハドソン研究所の村野将氏が目に留まりフォローしてきたのですが、氏をはじめ元防衛大臣森本敏氏や「丸の内OL」として知られる小泉悠氏らの共著として紹介されていたので手に取ってみました。

自分の知識量に丁度良かったようで、断片的に知っている知識や条約の交渉や決裂といったニュースくらいでしか知らなかった情勢の舞台裏で行われていた軍拡の駆け引きが語られており、それらがパズルのピースが嵌るように知識を補う度に、その現実に寒気がする本になっています。

INF条約というのは1987年に米ソで合意された中距離核戦力条約で米ソ(のちに米ロ)の核戦力の運搬手段の内の射程500km(300マイル)から5,500km(3,400マイル)までの地上発射型ミサイルの削減の取り決めでした。

空中発射型や潜水艦発射型は含まれないため不完全なものでしたが、ミサイル本体だけでなく発射施設なども含まれ、相互査察が義務付けられるなど核大国どうしの核戦力削減条約として大きな役割を果たしました。

ところが、これは米ソ二国間の条約である事から、当然他の核保有国は対象外であり、中国やインドがこれらの類のミサイルを開発、配備するに至り、ソビエトから条約を継承したロシアが不満を示し、またロシアが秘密裏に開発を進めていたことがアメリカの指摘で暴露され条約は破棄されました。

ただし、これも全てロシアが悪いのかと言えば当のアメリカもイージス・アショアの発射機がこれらの役割を兼ねる機能があったというロシアの指摘を認めませんでしたし一種の巡回型UAVもこの条約に含まれているにも関わらず、これも認めていません。

つまりロシアから見れば他の国もアメリカに対しても不信感が増大していったと見られます。

同様に、日本に配備計画が持ち上がったイージス・アショアももし日本が用地提供、建設で運用がアメリカなどのような形であれば「核シェアリング」の問題もはらんでおり、中国や極東ロシアをけん制する役割を兼ねていたかもしれません。

またアメリカ海兵隊が諸島部に敵艦隊迎撃の為上陸して拠点を築くという運用が提言されていますが、これも純粋に対艦ミサイルを運用するのみに留まらず、核攻撃能力を有する部隊である可能性も本書では触れられています。

元防衛大臣の森本氏がこれらをいつから知っていたのか詮索するのはやめておきます。

一方、足をの引っ張り合いをしている米ロを尻目にこれらの中距離ミサイル開発で一歩抜きんでたのが中国でした。

昨今耳にするようになった極超音速ミサイルは、これまでの巡航ミサイルや弾道ミサイルと比べると迎撃が極めて難しいものであるようです。

これは使う側からすると「使える」という事になります。

日本からの素材や技術が大学経由で開発に使われたとも言われていますが、中国とロシアがこの分野でリードしており北朝鮮とアメリカが後を追うような形になっています。

それでもこれまではもし核兵器を使用したら世界中から制裁を食らうのだから非核保有国に使用されることは無いという暗黙の了解のようなものがあったかと思いますが、ロシアのウクライナ侵攻を見るにつけ、世界中からの制裁による抑止効果は限定的となるケースがあると分かります。

つまり反撃されないのなら「使える」閾値が下がることになります。

北朝鮮もここのところ頻繁にミサイル発射を繰り返しておりすっかり慣れてしまっていますが、北朝鮮が発射実験をする毎に完成度や新たな機能を獲得しているはずで、それを止められないのは本来は問題です。
我々が「打ち上げ花火」と馬鹿にする度に北の指導者は目論み通りとニンマリしているのかも知れません。

これらの有効打の差が開くほど、やはり使用の確率は上がり、これはかつてミサイルの飛距離が競われた「ミサイルギャップ」がいかに「実際に使えるか」というギャップに置き換わっているように思います。

中国は内陸で在日米軍基地などを模したターゲットを標的にしたミサイル演習をしています。これは秘密裏に行われていたことから脅しではなく実際に使用する事を想定しているものと考えるべきで、その意味ではプーチンの核使用準備指令も実際に使用する想定だから指示を出したとも考えられます。

アメリカはトランプ政権時代にこの極めて危険な状態にアメリカとその同盟国が置かれていることに気が付き対中国制裁を科し、まず開発能力を削ぎつつ時間稼ぎをしている間にアメリカも開発を進める政策を進めていましたが政権交代により今後どうなるか分かりません。

民主党政権の過去を見れば中性子爆弾の開発中止など自ら優位性や対称性を削ぐ事をやってきているだけに、相手が核を使いやすい現状のリスクを低く見積もっているかもしれず、それは同盟国が戦争に巻き込まれるリスクを高めている事になります。

ウクライナはNATO加盟国でもないしアメリカの同盟国でもない、むしろ旧ソ連邦の国家なので日本や台湾、韓国にそのまま置き換えることは出来ませんが、それでもアメリカがどう反応するのかを西側も含め固唾を飲んで見見守っているでしょう。

日本に居るとウクライナの戦争の影響もエネルギーや物価についての懸念が多いですが、実はミサイル技術の発達で後方という認識は過去のものとなりアメリカと中ロの対立の最前線に日本も含まれていた事に多くの日本人は気が付いていないように思います。

もちろんこれらの懸念が杞憂に終わって欲しいですが、日本が三度目の被爆国にならないために何が出来るのかを考える時はとっくに過ぎているのかもしれません。
Posted at 2022/03/15 01:19:00 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記

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