
こんにちは、スタッフSSです。
今回はですね、皆さん大好物の、あのカスタムパーツを生み出している核心部に潜入的な、そんな内容です。と、もったいぶった言い方してますが、こちらの写真を見れば一目瞭然。そう、
ダンパー界の巨人『ビルシュタイン』ですね!
そんな言わずと知れたビルシュタインが、ホンダ ヴェゼル向けに純正形状のダンパーを開発し、8月から販売を開始したというので、その開発現場に潜入させてもらい、
開発秘話やら、ビルシュタインダンパーのどこが優れているのか、いろいろとお話を伺ってきました!

というわけで、おじゃましたのは、千葉県某所にある
「ビルシュタイン・テクニカル・センター」(以下BTC)です! こちらでは主に国産車用のビルシュタインダンパーの開発、設計、製造が行われているんですね!

お話を伺ったのは、BTCセンター長の矢代さんと、

今回、ヴェゼル用ダンパーの開発担当の山本さんです。
まずは、こちらのBTCについて聞いたところ、ビルシュタインダンパーの設計開発や現地向けの仕様変更、そして製造までも手掛けるBTCは、ビルシュタイン本社があるドイツ、そしてイギリスとアメリカ、アジア地域にはこの日本と最近できた中国の5つだけ。
ビルシュタイン出資のグループ企業であるBTCですが、実は日本のBTCだけは、こちらもクルマ好きにはお馴染みの阿部商会さんのひとつの部門で、つまり、ビルシュタインの資本は一切入っていません。「なぜ日本だけ?」と思うのも当然ですが、ビルシュタインが日本に上陸した頃から阿部商会さんとタッグを組んできて、なんと去年でその付き合いが40周年を迎えたという歴史が、現在に繋がっているわけですね。

独自仕様のダンパーを開発する機能を有する、
ドイツ本国からもいち目置かれる日本のBTCは、阿部商会さんへのビルシュタインからの信頼度の高さを証明する存在でもあるわけですね。
そんな日本のBTCのこだわりと表すエピソードをここでひとつ。各国のBTCでは、主要な機能パーツをビルシュタイン本社から仕入れて、加工しています。例えばこのメインチューブ。

奥の半分ビルシュタインイエローに塗装してあるのが日本のBTCで加工した後で、手前がドイツから仕入れた部材を切削して溶接加工を施した状態です。

こうやってアップにすると、加工したままの状態では、小さな傷などがあるのがわかると思います。

まずこちらをバフ掛けしていきます。向かって右側がバフ掛けした後ですが、違いは、もう言うまでもありませんね。

バフ掛けした後は、メッキを施し、サーフェーサーを噴いて、最後に耐久性に優れる焼付塗装のビルシュタインイエローをペイントします。

「ペイントする部分の下地にも耐食性に優れたメッキを施しているので、日本のBTCで製産したダンパーはとても錆びに強いんです。
これは日本独自の品質です。」と矢代センター長。いや、それ、笑顔でサラリとかなり大事なことおっしゃってますけど(笑)

「我々は、このビルシュタインのラベルを貼る位置も正確に定めています。着けたらほとんど見えないパーツですけど、やっぱり見た目も大事ですから(笑)」 シールの貼る位置までとは、お、恐れ入りました!! まさに、ジャパンクオリティ! ここだけの話、日本製のビルシュタインは、海外でも事情通のファンに人気なのだそうですよ。
さて、日本のBTCの凄さがわかったところで、続いて
本題のホンダ ヴェゼル用のダンパーのお話にまいりましょう!

そもそもなぜコンパクトSUVのホンダ ヴェゼルの純正形状ダンパーを開発することになったというと、ヴェゼルは海外では主に「HR-V」として販売されている人気モデルで、タイ、台湾、マレーシア、シンガポール、インドネシア、中国など、アジア各国で販売されているのだそうです。
そこで各国のユーザーから、ヴェゼルの足をもっと良くしたい!という要望がアジア各国のビルシュタインの代理店を通じて、開発機能を有している日本のBTCに届いたのだとか。なるほど、つまり日本国内だけじゃなく、海外も視野に入れての開発だったわけですね!

「ヴェゼルはコンパクトなのに車内が広くて実用性も高い人気のモデルですが、純正のダンパーは硬さが目立ち、乗り心地に関して、ユーザーからの要望が高かったんです。特に路面状況が良くないアジア諸国では、その傾向が高かったようです。」と、開発担当の山本さん。
今回、ハイブリッドのスポーティグレード、FFの「RS」用と、 それ以外のFFのハイブリッドグレード向けの2種類の開発を行ったわけですが、どんなポイントに苦労したのでしょうか。

「純正のスプリングを使う
純正形状ダンパーの『B6』というシリーズの場合、スプリングの受け皿となるスプリングシート(※写真でセンター長が指さしている丸い皿状の部分)を忠実に再現しないといけません。純正の形状に合わせて設計すれば、サスペンションが原因で車が壊れることはありませんからね。」と矢代センター長。

3Dスキャナーで純正ダンパーを計測し、寸分の狂いのない計測データを作成したら、1つウン百万円(!)の金型を起こします。ちなみに、開発期間1年のうち、このシェルケースの開発で半年ほどかかっているそうですよ(汗)

また、乗り味の決め手となるのが、こちらのピストンバルブ。ビルシュタインのダンパーの要となるピストンバルブが上下動(伸び/縮み)することで、封入されたオイルがスフィアの中を通り抜ける際に生み出す抵抗が、減衰力を発生させるのは、ご存知の通り(釈迦に説法ですね)。

その際、オイルの流れ方により減衰特性を変化させるわけですが、その変化を生み出すのが、複数のそれぞれ特性が違うシムになります。このシムと呼ばれるそれぞれ大きさや穴の位置・サイズなどが違う丸いプレートを、伸び側、縮み側でそれぞれ組み合わせていくわけですが、その組み合わせは、それこそ無限に存在します。

今回のヴェゼル用ダンパーの開発では、通常より多くテストを行ったそうですが、開発担当の山本さんは、硬めのフィーリングが好みなので、硬い方向に足のセッティングが寄りがちだったのだとか。
そこで、片道約85kmを車通勤する矢代センター長に、開発中のダンパーを装着したヴェゼルを評価してもらうことで、乗り心地の良さにこだわったセッティングが実現したんだそうです。

手前がノーマルのダンパーですが、見ていただいたわかるように、奥のビルシュタインダンパー(フロント用)は単筒ダンパーで倒立タイプできるので、フロントストラットの剛性がアップし、ステアリングを切った時にリニアに反応し、思い通りのコーナーリングをしてくれます。

また、単筒倒立ダンパーはバンプラバーがシェルケース内に内蔵されているので、動きが筒内で制約されるため、表に出ているバンプラバーと求められる性能が異なりますね。
ではさっそく、ビルシュタインダンパーを装着したヴェゼルの試乗に出かけましょう! と、その前に、せっかくなので、
BTCのファクトリーを見学させていただきました!!

ダンパーの組み付け・分解をするマシンに、慣れた手付きでダンパーをセットする山本さん。

あっという間にピストンバルブを抜き出します(早っ!)。簡単そうに見えますが、高圧ガスが封入されているので細心の注意が必要ですね。

こうやって抜き出したピストンバルブのシムを変更したりして、減衰特性のチューニングを行っているわけですね。

では、ピストンバルブを戻していきましょう。まずピストンバルブをセットして。。

ダンパーオイルを注いでいきます。ちなみにこのビルシュタインが使うダンパーオイルは、アフター向けをはじめ、メーカー純正用からレーシング用の特別なものまで、すべて一緒だって知ってましたか?(スタッフは知りませんでした。。。)

こちらはドイツの老舗オイルメーカー、
FUCHS(フックス)社製のオイルで、ビルシュタイン向けの専用オイルなんだそうです。このこだわりっぷり。ビルシュタインが世界中で人気なのも納得ですね。

で、この後、高圧ガスの封入を行うわけですが、おっと、その場面は
企業秘密でNGなので、写真はありませんよ!

組み付けできました! 単筒ダンパーの場合、高圧ガスを使用するため、高い精度が必要になりますが、その一方で構造がシンプルで分解が出来るので、アフターパーツ向けとも言えるんだそうです。

ちなみに、高圧ガスを使用するワケをこちらのダンパーの見本で実際に見せてもらいました。このようにダンパーの高圧ガスを抜いてピストンを動かしてみると。。。

ダンパーオイルが濁ったようになっているのがわかるでしょうか? これは、筒内の圧力が十分ではないため、オイル内で気泡が発生してしまっているんですね。その結果、気泡はオイルのように減衰しないため、想定した減衰力が発生しなくなる=ダンパーとしての機能を失っている状態なわけです。
走り始めと走り終わることでは、乗り心地が変わってしまうという場合は、走っている間にダンパーオイルのエアが発生している可能性があります。つまり、ダンパーオイルはギュッ!と高圧で封じ込めておく必要があり、
そのノウハウがビルシュタインの優位性でもあるわけですね!

せっかくなので、組み上がったダンパーをテストマシンにかけるところをデモしてもらいました。ダンパーをマシンにセットして。。

スイッチON!

ダンパーを速度を変えながら上下させていきます。実際にはこういったテストを何十回、何百回と、セッティングを変えながら繰り返し行っていくわけですね。

すると、こんな感じで伸び側(上向きのグラフ線)、縮み側(下向きのグラフ線)で、ダンパーの動きをグラフ化してくれるんですね。実走前の確認というわけですが、「同じようなグラフの線形をしていても、実際乗ると乗り味が違っていたりするんです。長年やっていても、面白いものだなと思いますね。」と、矢代センター長。奥が深いですね。。。!

というわけで、こうやって開発された『ビルシュタイン B6』 ホンダ ヴェゼル ハイブリッド/ハイブリッド RS用 純正形状スポーツダンパー。

フロント!

リア!

というわけで、普段乗り味のチェックに使っているというコースに向かいましょう!

テストドライブと言っても、普段使いでどうかなので、通常より飛ばしたりするわけではないんですが、お!? 凸凹のある路面の悪いところでも、しなやかに足が動いているのがわかりますね。

もちろん脚はノーマルよりも硬め、というかしっかりした印象ですが、ノーマルダンパーの突っ張ったような挙動がなく、路面をきっちり捉えている感触が伝わってきます。また、フロントは倒立タイプになったため、ステアリングレスポンスが向上しているのがわかります。
助手席にも後席にも乗りましたが、後席にも不快な振動が伝わりにくいので、後席にご家族を乗せる機会の多い方でも、乗り心地に不満が出ることは少ないのではないでしょうか?
というわけで、今回ご紹介したホンダ ヴェゼル用 B6 純正形状スポーツダンパーの製品情報はこちらになります!
【製品情報】
(1)ホンダ ヴェゼル ハイブリッド用(RU3)
1台分税抜価格 152,000円
フロント 左)VE3-3388LJ 倒立単筒 税抜価格52,000円
フロント 右)VE3-3388RJ 倒立単筒 税抜価格52,000円
リア BE5-3389J 単筒 税抜価格24,000円
(2)ホンダ ヴェゼル ハイブリッド RS用(RU3)
1台分税抜価格 152,000円
フロント 左)VE3-3390LJ 倒立単筒 税抜価格52,000円
フロント 右)VE3-3390RJ 倒立単筒 税抜価格52,000円
リア BE5-3389J 単筒 税抜価格24,000円

さて、いかがでしたでしょう? ビルシュタインでは、様々な国産車および外国車向けに、豊富なダンパーをラインアップしていますので、ぜひ以下の
「車種別適応表」からチェックしてみてくださいね!
https://bilstein.jp/product_search
また、阿部商会さんのみんカラ+ページでは、最新の製品除法を更新中! フォローよろしくお願いいたします!
https://minkara.carview.co.jp/userid/1122418/blog/
では、また。