
(出演)
はるのアナグマ ・・・ はるのくまくま
ネコ助 ・・・ デコ助
(スペシャルゲスト)
ネクタイ男 ・・・ Dosan:5
「あんたほんまに網走での出来事忘れたんか」
婆ちゃんは、ネコ助の顔を睨みつけた。
ネコ助はしばし考えたが、はっと顔を上げた。
「ほら、思い出したじゃろぅ。ユウコちゃんのことを。もう28年前のことでも、しっかりと覚えているやろ、ユウコちゃんのことを・・・」
「あああぁ・・・」と、意味不明の声を上げるとネコ助はへたり込んでしまった。
「な、なんや?ユウコちゃんって誰やねん?」
はるのアナグマもしゃがみこんで、ネコ助の顔を見つめた。
「ユウコちゃん・・・」
ネコ助は、はるのアナグマに説明を始めた。
それはネコ助がまだ血気盛んな若者であった頃のことである。当時ネコ助はヘビメタ青年として、仲間とともに全国を回っていた。いわばドサ周りのような感じだった。
毎日一食という貧乏旅行だったが、その年の夏は北海道一周の旅に出ていた。
そして、網走に寄ったときの事である。あるバーでヨッペケの連中とネコ助たちが喧嘩をはじめた。一見怖そうに見えるネコ助だが、実は弱く、一人ぼこぼこにやられてしまった。そのネコ助を助けたのがユウコであった。
紙面の関係上、具体的に細部まで書くことはできないが、このことがきっかけになって、ネコ助とユウコは恋に落ちた。
バンド仲間が次の街へ旅を続けても、ネコ助は網走に残り、ユウコとの暖かい日々を送った。ネコ助にとって初めての心暖まる人、心暖まる場所だった。
しかし、彼は若かった。冒険心にも満ちていた。ひとところに留まり、愛をはぐくむよりも、仲間が待つ街へ向かうことに決めた。
ユウコは何も言わず、再び旅立つネコ助を見送った。
ネコ助にとってある年の淡い夏の思い出だった。
その後ネコ助が、網走を訪れることはなかった。
そこまでネコ助が説明すると、ばあちゃんが一枚の写真を取り出した。
「この子はな、彩(あや)っていうてな、私の孫なんじゃ」
ネコ助とはるのアナグマは、写真を覗きこんだ。
「ありゃ、またかわいい。小倉優子そっくりじゃん。」
「彩の母親はな、ユウコなんじゃ。メコ助はんが付きおうたユウコ、つまりわしの娘じゃ。」
「そうなんですか?」
ネコ助とはるのアナグマはばあちゃんをしげしげと眺めた。
「そしてな、彩の父親はな、そこにいるメコ助さんなんじゃ。」
「そうなんですか・・・
え、ええ~!!」
ネコ助もはるのアナグマも飛び上がるほどびっくりした。
「え、え、え、こんなかわいい子がネコ助さんの子供だって!???」
「そう、メコ助さんの子供じゃ。そしてな、彩がな、一度でいいから父親にあいたいいうてな、網走で待っておるんじゃ。なんせ、小さいときから彩は私が育てたよってな、結婚する前に一度でいいから父親に会いたいとな・・・」
はるのアナグマが怪訝な顔してばあちゃんに尋ねた。
「婆ちゃんが育てたって、ユウコさんはどうしたの?」
「メコ助さんが網走を去ってからまもなくな、子供ができているのに気がついたんじゃ。ユウコはな、一人で育てるいうてな、彩を生んだんじゃ。それからまもなくして、ユウコは病気で死んでしもたんじゃ・・・」
ネコ助は直立不動のまま動くことができなかった。
「そ、そ、そっか。こりゃネコ助はん、彩ちゃんに会いに行ってあげなあかんやろ。」
はるのアナグマは、ネコ助を見つめた。
「そ、そ、そんなことできるかいな・・・どんなつら下げていくねん。だいいち、今のおいらは網走なんか行く金もないんだ・・・」
「よし、それなら、デリカ仲間をDONGURIに集めるから、みんなで相談しよ!いや、いっぱい集まるから今回は烏丸五条のコア集合やな。さ、みんなでネコ助はん、応援するで~!」
はるのアナグマは小さな体で腕組みをして、うんうんと頷いた。
その頃、北海道で一人の男がくしゃみをした。
「どうも何か、大きなことが起こる予感がする。よし、いっちょ、気合を入れるか!」
男はそういうと、ネクタイをはずし、鉢巻のようにおでこに巻いたのだった。
つづく
Posted at 2008/12/25 23:12:09 | |
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