![亡霊戦艦VSイージス艦みょうこう 第2話ー◎◎ー 亡霊戦艦VSイージス艦みょうこう 第2話ー◎◎ー](https://cdn.snsimg.carview.co.jp/minkara/blog/000/025/530/726/25530726/p1m.jpg?ct=1b9e7ddac7b7)
山波艦長はFIC(司令作戦室)の椅子に腰かけながら考え事をしていた。
「寝られないのですか?」そこへ副長の水野がやってきて声をかけた。
「回収した破片を調べてみると、どうも自沈ではないような気がするんだ・・・」
「つまり何者かに攻撃されたということですか?」
「そうだな・・・考えられるのは・・・」
「某国の潜水艦・・ ですか?・・・」
山波は立ち上がると、CIC(戦闘指揮・通信・情報室)に向かって歩き出した。
「それも急襲だな。備えあれば憂いなし。最大限の警戒態勢にしておこう。」
そして「みょうこう」は静かすぎるほどの暗闇の海を、非常警戒態勢を取りながら航行した。
「月がまだ出てこないか… 月が出れば海面を照らすのに・・・」
そう心の中で山波がつぶやいた時だった。
「レーダーに正体不明の反応あり!」
「なに!?」山波はブリッジから急いでCICに降りた。
「艦長この影を見てください。先程から当艦を追尾してきますが、なんかでかいんです。」
「形を明確に表示してくれるか?」
レーダー担当係官は画像を調整して立体的に正体不明の物体を画面に映し出した。
「これは・・・」
副長ともども山波は一瞬言葉を失った。
「電波、電磁の状況に不具合はないか?」
「ありません」
山波が画面を見ながらつぶやいた。
「まるで、戦艦大和のような形だ・・・ あるはずないものがあるのか?」
「本部に連絡しますか?」
「いやまだいい。第一、大和と遭遇なんて報告したところで、なにを寝ぼけてるんだといわれるだけだ。」
「では、接近してこの目で確認しますか?」と副長。
「そうだな。いや、ちょっと待て。昨日のアメリカのイージス艦の沈没と関係あるかもしれん。迂闊に近づくな。」
「でも、本当に大和なんでしょうか?」副長は釈然としない様子だった。
山波は画面から目を話すと、副長に話しかけた。
「確か、厨房にほら、何といったかな、あのまずいカレーを喰わせる奴。」
「あ~、分家二等海士ですか?」(二等海士は、二等兵にあたる)
「そうそう、確かあいつは旧帝国海軍の艦艇の物知り博士だったよな?」
「帝国海軍だけでなく、ドイツのUボートやタイガー戦車や、とにかく第二次大戦の物知り博士ですよ。」
「よし、そいつをここに呼んでくれ。」
副長にそう命じると、山波は再び画像を見つめた。
しばらくしてから、緊張してかちんこちんの表情の分家二等海士が入ってきた。
厨房担当の分家二等海士にとって、CICは初めて入る場所であり、まして艦長に呼ばれたとなると、緊張しまくりである。山波は分家二等海士のそんな表情を無視して聞いてきた。
「分家君、この形はなんに見える?」
分家はレーダースクリーンを覗き込んだ。
「これは・・・大和型戦艦です。いや最終艤装されたシルエットですから、大和です。」
「シルエットだけでそこまでわかるのか?」
「はい・・・軍事オタクですから・・・」
山波は深いため息をついた。
「主砲の射程距離は?」
「42キロです。でもそれは飛距離だけのことであって、命中の確率はかなり低いですが。」
「では、何キロまで近づいても大丈夫なのか?」
「20キロまで近づくと、命中する確率がかなり高くなります。」
「よし、わかった。副長、奴から30キロの距離まで近づいてくれ。そして戦闘態勢に入れ。特にハープーンはいつでも使えるようにな。」
警報が鳴り、艦全体が一気に緊張感に包まれた。
しかし分家二等海士はもじもじしながら突っ立っていた。
「あの~、朝食の準備しないといけないので、帰ってもいいでしょうか~」
山波は分家を一瞬睨みつけた後、にやりと笑って言った。
「朝食は後回しだ。分家二等海士、只今より、みょうこうの作戦参謀補に命じる!」
「?!」分家はあっけにとられて、ブリッジへ駆け昇っていく艦長の後姿を見ていたのであった。
みょうこうは、正体不明の物体がなんなのかを確かめるために、進路をその不気味な物体に向けて変更した。
(続く)
ー◎◎ー
Posted at 2012/02/20 23:52:02 | |
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