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2022年10月23日 イイね!

正しい核戦略とは何か ブラッド・ロバーツ (著), 村野 将 (監訳)

正しい核戦略とは何か ブラッド・ロバーツ (著), 村野 将 (監訳)アメリカの戦略意志決定にも参画してきた筆者が世界が「核戦争による滅亡」の恐怖から解放され核戦力問題に関する関心が急速に失われていった冷戦終結以降のアメリカの核戦略と他国の政策を分析した原書をハドソン研究所の村野将氏らが翻訳、新たに出版されて以降の2015年から2022年までの分析も加筆した日本国内では極めて稀な冷戦以降の核戦略を扱った本。

8月12日の発売日に予約して手元にはあったものの、他に読みたい本があったため後回しにしていましたがプーチンの核使用宣言などもあって優先度を上げて読んでみました。

ロシアの核使用基準や手続きについてはベールに包まれている部分も多いのですが、プーチン大統領、ショイグ国防相、ゲラシモフ参謀総長の三人が「核のボタン」を共有していると言われています。

実際のシーケンスがどうなっているのかは使われた事が無いので推測の域を出ませんが、三人の合意が必要なのか、三人中二人の合意でもいいのか、プーチンだけは独断で決定権があるのかなどはっきりしていません。

一方のアメリカは大統領が最終的決定権を持っていますが、戦争開始には議会の承認が必要な事から、実質的に大統領単独でも戦争を始められる現在の制度は問題視されてきました。

そのアメリカは核軍拡の果てに一度核戦争が始まったら双方が滅亡するという「相互確証破壊」を抑止の柱にしてきました。

そしてソビエトとの軍縮条約などを経て、ソビエト連邦の解体と冷戦の終結からは一貫して核戦力の削減に努め、またそれをもう一方の核大国でもあるロシアにも求めてきました。

ロシアもある程度この方針に従って双方で冷戦終結前の70000発の核弾頭を13000発にまで削減してきました。

しかし、アメリカは大陸間弾道弾(ICBM)による核抑止を主力にしてきたものの、ロシアはより小型の戦術核(低出力核)が中心であり、これを削減するとロシア軍の軍事ドクトリンが成り立たなくなるため、ある時期からアメリカの推し進める核削減はロシアの核戦力を削減するものであるとして反発を強めるようになりました。

大陸間弾道弾は都市を丸ごと吹き飛ばすほどの破壊力であり、米ソ相互確証破壊の名残でしたが、ロシア(そして中国)は広島型原爆の1/10程度の威力の低出力核を実際の戦場で使用する事で戦力の劣勢を挽回する方針であったため、アメリカの目指す核軍縮の世界(グローバルゼロ)とは相いれないものとなり米ロ、米中で不信感が増大し軍縮交渉は暗礁に乗り上げたまま、北朝鮮やイランといった新たなアメリカへの挑戦者が登場する事になります。

その頃、アメリカは中東のならず者国家や対テロ戦争など「弱い相手」との戦争を想定しており核戦力は強力過ぎて使えない為、不要論が出始めます。

ロシアや中国のような低出力核オプションを次々退役させていたアメリカは、従来のICBMが旧式化してきても、それを新型に更新するなどの能力向上を怠り、もっぱら能力維持か戦力削減に政策の主眼を置いてきました。

オバマ政権下ではアメリカが核軍縮の規範を示したものの、ロシアや中国、それに北朝鮮といった挑戦者は核戦力の能力を拡大し続けました。

気が付けば、ロシアはウクライナで核恫喝、また東アジアでも中国がミサイルと核戦力を整備して、台湾への接近を実力で阻止できるまでになっており、台湾侵攻も目前に迫っていると言われています。

世界の良心を信じていたアメリカはようやく中距離ミサイルや新型の極超音速滑空ミサイルなどの開発に乗り出しますが、先行して来た中ロはもとより、北朝鮮にすらこの分野では後れをとっている状況となっています。

・アメリカ
核戦力は
1)アメリカの国土安全保障上必要
2)挑戦国の意志を挫くため世界最強の能力を有する事
3)同盟国やパートナー国に安心を提供するものである事

などが求められて来たが、冷戦終結により核兵器の存在そのものがアメリカを脅かすものとして一貫して核戦力の削減、核の拡散防止の為、全世界の核削減、廃絶(グローバルゼロ)を目指すが、アメリカのみの核軍縮はアメリカのみならず同盟国やパートナー国家の地域を不安定化させるため、核戦力の能力向上を求められている。
現在は潜水艦発射型の戦術核(低出力SLBM)や核・非核両用任務の戦闘機(DCA)の展開に地域安定が委ねられている。

・ロシア
アメリカの核削減の働きかけをロシアの核戦力を削ぎ、アメリカ優位の状況を作り出しロシア政権を崩壊させる目的であるとしてアメリカやNATO諸国に反発。民族自決権を理由にウクライナのクリミアやドンバスに侵攻するのみならず、ウクライナに軍事侵攻し核恫喝で既成事実化を目論む。

・中国
アメリカの軍縮・管理交渉には一切応じず、核戦力、通常戦力の拡充を図り、アメリカとの数的なパリティを目指す。その時点になれば交渉に応じるのかは極めて不透明であり、仮に軍縮交渉に応じたとしても軍拡は続けると見るのが妥当。
こちらもアメリカが共産党支配を転覆する画策をしているとして自由主義陣営と対立、核心的利益として台湾併合や西太平洋海域の掌握を目指す。

・北朝鮮
体制維持の為、アメリカと対等に交渉するための核開発、ミサイル開発を継続しており、開発段階から実戦配備段階に移行しているとみられる。
朝鮮半島有事が起きた場合、まず日本を火の海にすると宣言するなど、条件が整えは実際に核使用する可能性が高い。

・NATO
ソ連邦崩壊により最盛期の3%までヨーロッパ配備核兵器の削減を進めた。通常兵力も削減していたためロシアのウクライナ侵攻にも満足な支援すら行えない程戦力が低下していた。アメリカの欧州配備核兵器の他、NPT体制以前に核保有国であったイギリスとフランスの核戦力が主な抑止力。

・日本
唯一の被爆国として根強い反核意識がありアメリカ軍の核持ち込みも難しい状況だが中国や北朝鮮の核の脅威の高まりに直面して核シェアリングや核兵器自主開発が叫ばれるようになる。
ただしアメリカはNATO以外と核共有する事は無く、また憲法九条がある日本において核兵器を保有したところで実際に反撃する事が出来ないであろう事から抑止力の効果は他の核保有国よりも低く見積もられ、また日本の核保有は韓国の核開発に繋がるなど地域不安定化を招くと懸念されている。トランプ政権では「防衛の応分の負担」という事で日本の核保有を歓迎する流れがあったが、基本的にはアメリカの核不拡散の努力に反し、日米間の相互不信に発展する可能性もある。
核開発の能力を持った日本が今だにNPT体制に従い核開発を自重している事を評価。

筆者は極めて現実的な立場から核兵器万能論や核廃絶論を批判しつつも、核保有国が核戦力の削減に応じられるように率先してアメリカがアメリカと同盟国の安全が保障される最低限まで核戦力を削減し、必要があれば旧式化したICBMなどの戦力を更新して進化する核戦力投射能力(ミサイル)に対応していくべきとしています。

しかし、核弾頭を運搬するミサイルの高度化多様化や変化する地域情勢を見るとこれはやや楽観的ではないかと思います。

まず、いかにしてロシアと中国を軍縮のテーブルに着かせ、また北朝鮮やイランといった挑戦国、潜在的な核開発国を思い止まらせる事が出来るのかだと思います。

それは残念ながら戦場での実力行使でしか証明できないものなのかもしれないという暗澹とした気持ちになりつつも、戦後3/4世紀にもわたり核が使用されてこなかった事に一縷の望みを見出し、ウクライナで核が炸裂する日が来ない事を祈るばかりです。
Posted at 2022/10/23 17:10:27 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記

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