
先日ちょっと嬉しいことがありました。お友達ではありませんがみんカラのとある方(ブログはされていない)から私の書いた
「ストリームのアトキンソンサイクル」というブログを読まれて痛く感動してくださいまして、わざわざメッセージをいただきました。確かにメカ解説って雑誌等ではいまひとつ分かり辛いものが多く、素人の私が書いたものだからこそ伝わるものがあったのかもしれません。
で、そのブログに書いている「ポンピングロス」という事と「吸気量」についての解釈が若干違っておられたので、活字数制限のあるメッセージでの返信ではなくこのブログにて説明させてもらう事にしました。
その他リーンバーンについての質問もありまして、これらを一度にまとめるのは少々大変なので、リーンバーンはまたいつか分かり易く書いてみたいと思います。ついでにカテゴリーも「易しいエンジンの話し」というものを新しく追加したので、時々ネタを思い出した時にでも何か書いてみようかな…。私が書くエンジンの話しはイメージとして分かり易くするために多少強引な例えやざっくりとした書き方にしていますが、その方が分かりやすいと思うのでご了承ください。
因みに冒頭で書きました「ストリームのアトキンソンサイクル」というブログですが、先日調べてみたら460近く書いてきたブログの中で40位(2009年1月)。更に
「フィットって本当にi-VTEC?」というこれまたマニアックなエンジンネタも現在4位。エンジンネタって関心がないだろうと思っていただけにこの結果は意外でした。
さて、アトキンソンサイクルの説明でも書きましたが、内燃機関を分かりやすくするには「エンジンはいつも外気を吸いたがっている」ということを頭におくといいと思っています。加圧過給するターボも、吸い込みをなくしては始まりません。まずこれが大前提です。今回は分かりやすく解説するために自然吸気エンジンでの話しに限定しますけどね。
よく雑誌等のメカ解説で「4バルブ化によって、より多くの空気を取り入れる」とか「吸気ポートの研磨で、吸気量がアップした」などの言葉を目にします。要するに「吸気量が増える」というこの書き方ですね。これが誤解を生んでいるという事が今回分かりました。
吸気量が増えると聞くと、あたかもシリンダーの中に入る空気(混合気)が多くなったり少なくなったりするものかと錯覚しますね。しかしこれは違います。シリンダーに入る吸気量は加速中であろうがクルージング中であろうが基本的にはいつも同じです。つまり2000ccの4気筒であれば1個のシリンダーは500ccであり、どんなにデキの悪いエンジンでも500ccの混合気を吸い込んで爆発します。
※アトキンソンサイクルは吸入量自体が変わります。もちろんターボも。
この説明を分かりやすく…。
エンジンの動きは針の無い注射器で例えると分かりやすいです。
注射器のニードルキャップを連続的に引いたり押したりすると、筒の中に空気が入ったり出たりします。これはエンジンのピストンの動きと同じですよね。そして空気の取り入れ口の先端を指で少しずつ塞いでいくと、抵抗が増えて空気の出し入れがしづらくなる。この塞ぐ部分をエンジンのスロットルバルブと思えば分かりやすいでしょう。このあたりは「ストリームのアトキンソンサイクル」のブログで説明しましたし、よく聞く例えだでしょうからきっとご存知だと思います。
で、穴が小さくなっていって空気の出し入れがしづらいという事は注射器のニードルキャップを上下させるのが重たくなるということですよね。つまりニードルキャップを連続的に動かす時間が遅くなってしまう。でも時間は遅くなっても最終的には空気を目いっぱい入れる事はできます。
注射器の先端を少しづつ塞がれることによってニードルキャップを上下させる速度が抑えられる…。これがエンジンのスロットルバルブとピストン速度(つまりエンジン回転)との関係です。
エンジンは爆発してピストンを押し下げます。その爆発力は理論空燃比で爆発する一般的なエンジンであればほとんどいつも同じです。ですから爆発によるピストンを押し下げる力(クランクを回す力)もいつも同じ。じゃぁなんで回転が速くなったり遅くなったりできるのかというと、先程のスロットルバルブですよね。
シリンダー内で爆発するとピストンは勢いよく押し下げられる。その勢いを更に加速させるためにはスロットルを開いてやらないといけない。注射器でいえば先っぽの塞ぐのをやめる。じゃないとせっかく押し下げる勢いがついたのに吸い込む時の抵抗が大きすぎて勢いがつかない。塞ぐ量を減らしていけば、勢いは弾み車のようにどんどん勢いが増す。
この時、間違ってはいけないのが先程書いた通りシリンダーに入っていく混合気の量は毎回同じということです。決してシリンダー内の混合気の量が増えて勢いが増しているのではなく、ピストンが押し下げられる勢いを邪魔しないようスロットルを開いたために勝手に勢いが増したのです。つまり、スロットルを開くという事は吸気量そのものが増えたのではなく単に回転が速くなるということ。回転が速くなるという事はすなわち「時間あたりの吸気量がアップする」という事です。そりゃそうです。1000rpmと2000rpmじゃ同じ1分間で2倍の回転差があるんですから2倍の吸気量差がある。当然ですが、燃料消費も1回の爆発に使う燃料は同じでも、時間当たりで考えれば2倍の速さで爆発させる方が2倍燃料を食う。実際はポンピングロスなど色々な条件が加わり、理論通りにはなりませんが、簡単に言えばそういうことです。
エンジンというのは結局いつもいつも空気を吸いたがっている。吸いたがっているものに栓をしている。つまり、せっかくの爆発力を殺している。逆に言えば栓を塞がなければいくらでも回ろうとするし、ガソリンはそれだけのエネルギーを持っている。吸い込み口に栓をしているアイドリングがいかに無駄で効率が悪いかが分かると思います。この話、ストリームのアトキンソンサイクルの時にもしましたね。ポンピングロスというやつです。
吸気量とポンピングロスの関係は切っても切り離せないものですね。
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易しいエンジンの話し | 日記
Posted at
2009/01/19 00:12:27