私の住む家は山口線のすぐそばです。山口線といえばSLやまぐち号ですよね。
あら?ローカルネタ?
SLやまぐち号は「貴婦人」という愛称を持つC57型1号機です。C型ということで動輪が3つ。デゴイチなど動輪が4つあるD型に比べ、ほっそりシャープな外観から貴婦人という愛称を持っています。
今年でSLやまぐち号が山口線を走り始めて25周年。このC57・1号機を年齢に例えると70歳です。さすがに調子が悪いときもあるらしく、運転休止になることもしばしば…。頑張って欲しいものです。
さて、実は今回20年ぶりにSL山口号の撮影をしてきました。家の窓からいつでもSLを眺めてますから、もちろんにわか撮影はしたことがありますし、子供たちをSLに乗せた時の写真もあります。しかし、きちんとした心構えで撮影したことがなかったんです。
きちんとした心構えって、何?
みたいな声が聞こえそうですが、簡単にいえばじっくりファインダーを覗いて考えながら撮ったことがないという事です。でも鉄道の写真って、正直難しそうですよね。動いてるからピントも露出もリアルタイムで変化していく。特にSLって真っ黒だから背景とのコントラストが高くなって、難しそう…。それにチャンスは一度限り。
頑張れ!俺!
とまぁ、意気込みも大事ですが、SL撮影にとって大事なのが撮影ポイント。やっぱり迫力あるSLって、真っ黒い煙をモクモク吐いている姿です。そこで峠越え手前を探すことに。
数週間前から色々ポイント探しに駆け回っていたのですが、途中鉄道撮影マニアと思われる方と出会いお話をしました。やはり峠での絶好ポイントというのは車では行けないので、線路脇を歩いて行かれるようです。もちろん、きちんと時刻表を調べて列車が走ってこないタイミングを熟知しておられました。

この方から色々と情報をもらい、その後テクテクと線路脇を歩いていかれました。別れ際に思わず「お疲れ様です!」と、マニア仲間になった気分でご挨拶しておきました。
さて、私はここから移動です。今回選んだポイントは仁保駅の上の方にある二反田という峠区間。ここは25パーミルという急勾配が続く、SL撮影にはもってこいのポイントです。

なぜマニアでない私がここを知っているかというと、この場所の下にある集落に私達夫婦の仲人さん宅があり、しょっちゅうこのふもとに来ているからです。写真の家がそれです。

ここを通り過ぎると民家は全くなくなります。そしてどんどん上っていき、ようやく行き止まり。

撮影ポイント探しのために、連日田舎の悪路につきあってくれている我が家のダンク君。
ここから先は歩いて山を登るのですが、すでに先客がおられました。撮影までに2時間以上あるので話しかけてみると、なんと北九州からこられたとのこと。50歳過ぎの方ですが、色々と山を登り場所を開拓しておられるようでした。

撮影まで1時間となったところで、お互い出発です。
リュックにはカメラやレンズ、水筒や虫除けスプレー、うちわなど、結構重たくなっちゃいました。それに三脚と折り畳みのイスを持参です。
嫁さんは、今朝リュックを背負った私を見送る時
うわ!秋葉系じゃん!!
どうせなら、ズボンの中にシャツ入れたら?
と笑ってバカにするんです。
しょうがないでしょ!
実際リュックじゃないとSL撮影は無理なんですから!

上り口にはこんな看板が…
ちゃんと時刻表から列車が通過しない安全な時間帯である事を確認したので大丈夫です。今から1時間は列車は通りません。

こりゃどうかと思う急斜面を登っていきます。少しでも立ち止まると大量の蚊やアブに刺されてしまいます。マムシも怖いです。

そしてほどなく登りきると、やぶの中からいきなり線路が現れてびっくり!
ここから線路沿いをザクザク歩いて上ります。

途中線路脇をでかい蛇がニョロニョロと…かなりでかかったのでマムシではないようです。でも怖かった…

ほどなく歩き撮影ポイントに到着。時間はたっぷりありますが、とりあえずセッティングです。
それにしても、凄い勾配だなぁ…。

今日頑張ってもらう私の古い一眼です。
実は、最初は三脚にカメラセットしたものの、結局手持ち撮影に切り替えました。やはり何枚も写したかったからです。
望遠用コンバーションレンズも今回は付けませんでした。近寄ってきた時にズームを引くと画像周囲にケラレが起こるからです。
ファインダーを覗き何度もイメージトレーニング。しかし困った事が起こりました。今日は晴れたり曇ったりで、絞り値が大きく変わってしまうんです。ズームを最大にしてスタンバっているため、手振れを恐れシャッター速度は1/250固定。急に暗くなると絞りが開放になることも…。
悩んだ末にプログラムオートで撮影することに。
腕がないためいきなり妥協です(/_;)

そして、SLやまぐち号が来るまでしばし休憩…
嫁さんが凍らせたウーロン茶を保冷ポーチに入れて用意してくれていました。
うだるような暑さだったので助かりました。
嫁さんにお礼を兼ねて
、「まもなく勝負の時だぜ!」とメールを送ると…
こ、この野郎…(~-~;)
言ってくれますな…。
ポ―――――----
どこからか分からない遠くの山肌から警笛が聞こえてきました。
き、来た!
一気に緊張してきました。すかさずカメラを構え、ファインダーを覗きます。
ポ―――----
姿が見えぬものの、警笛の音が徐々に大きくなり、蒸気を吐き出す図太いドラフト音が近づいてきました。
心拍数が上がってくるのが自分で分かりました。
ド・ド・ド・ド・ド・ド・
シュ――シュシュ
来るのか!?
ドッドッドッドッ
徐々にドラフト音のリズムがゆっくりになってきました。25パーミルの峠がきついようです。
ドッドッドッドッ

音ばかりが大きくなってくるも姿が見えません。
気がつけば、緊張のあまりに手がガクガク震えてきているではありませんか!
まずい!!三脚撮影にしておけばよかった~~!(泣)
でも、もう遅い!!
うぉーー!来たぁ!!!
でも、ちっちぇ~~~!
もう撮れるだけ撮っちゃえ!!

(クリックで最大画像)
ここで問題発生!!
メディアに書き込む時間がかかるため5枚程度しか連写ができないんです、このカメラは!!
肝心な時にシャッターが降りないじゃんか!!

でもって、こうなってしまいました。
でも、実は最後のアングルは狙い通りでした。
本当は縦長に構えたかったのですが、ファインダーにうまくおさめる自信が無かったので横でいきました。
今日のベストショットは、最後のこれでしょうか。

(クリックで最大画像)
本当は、SLが現れてから2枚目の写真を自分の中でイメージしていました。もっとアップの状態で。
やはり望遠装着は必至ですね…。次はコンバーションレンズ付けて三脚固定で1発勝負です。
で、今の気持ちですが
ヤバイ…。こりゃ嵌りそうな予感…。
山肌から聞こえる警笛。
徐々に聞こえるドラフト音。
目の前に現れた時の緊張感。
物凄い勢いで吐き出される黒煙と水蒸気。
そして真横を通過する時に身体全体で感じる地響き。
普段、平坦な場所で見ているSLとは全く別物でした。なんといいますか、この貴婦人が持てる力全てを振り絞ってぜいぜいいいながら走っている様でした。電車やディーゼル車の様に、スマートでスイッと通過する走りとはまるで対極した走りです。
VTECの気持ちよさも真っ青な五感の刺激とでもいいましょうか、とにかく全てがド迫力でして、どうりで熱狂的なカメラマンがいるわけだと思いました。
と同時に、SLの走る街にいながらこの25年間を無駄にしていたような気分になりました。
撮影が終わり駐車場所に戻ると、先程のおじさんがいました。このおじさんも、もともとは風景撮影をされていて、半年前からSLを追うようになったそうです。
1時間ほど撮影談義で盛り上がり、地元である私に色々と貴重な情報をいただきました。
私もお礼代わり(?)に、6月になるとこの道沿いに無数のホタルで賑わうことを教えてあげました。かなり秘密の場所なのでとても喜んでおられました。
これから時間をできるだけ作って、SLの撮影というものもしていこうと思いました。
しかし、撮影ポイントまで足を運ぶこと…、これが一番大変だということもよく分かりました。