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イイね!
2010年08月28日

V6エンジンの燃焼メカニズムと振動バランスの話

「易しいエンジンの話」カテゴリーもついに10回目。今回のお題は「V6エンジンの燃焼メカニズムと振動バランスの話」です。以前書いた「エンジンの振動とバランスの話」の続編みたいなものです。
半年前から少しずつ書いたという…(汗)


あっ!

今、「またこんな難しくて長ったらしい話を書きやがって…」
って思いましたよね?!




…すみません。もちろん重々承知でございます。ですから、毎回書いておりますが

今回もコメントは不要です!!

こういった内容は興味のない方にとっては苦痛以外何物でもないですからね…。
あくまでも素人の書いた参考書程度に捉えてもらって構いません。

ただ冒頭で紹介した「エンジンの振動とバランスの話」というブログ、自分で言うのもなんですが沢山の方から読まれているようなんです。






PV順位は昨年12月に8位だったのが更に上がってなんと4位!。1年半前に書いた、しかもこんなマニアックなネタが毎日定期的に10~20近く読まれているのには本当にビックリです。それだけに嘘は書けないなぁと思っているのですが、私の知識はかなり昔のものなので、もしかしたら間違っているものもあるかもしれません。その時は逆に教えてくださると幸いです。
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さて、V6の説明の前に基本的な振動の話しがよく分からないという方のために、以前書いた内容をもう少し分かりやすく説明しておきます。知っておられる方や前回の説明を覚えておられる方はV6の説明まですっ飛ばしてやってください(笑)。興味の無い方は本当にここで引き返された方がいいと思います(笑)。





エンジン振動というものは、ケース内部の色々な振動が重なり合って生じます。燃焼爆発によるトルク変動振動、クランクの回転揺れ、クランクの捻りによる慣性偶力振動、ピストンの上下振動等など…。






(トルク変動振動)
シリンダー数に比例するこの振動は、エンジン振動の中でも最も人間が感じやすい振動です。

乗用車の4ストロークエンジンというのは、一つのシリンダーだけで見た時にクランク2回転で一度爆発燃焼します。つまり回転角度720度に一度爆発する。シリンダー数が増えるほど720度の中で小刻みに爆発するので、爆発によるトルク変動振動は体感しにくくなります。



◆単気筒 : 720度に一度爆発=クランク1回転につき0.5回爆発(0.5次)

◆2気筒 : 360度に一度爆発=クランク1回転につき1回爆発(1次)

◆3気筒 : 240度に一度爆発=クランク1回転につき1.5回爆発(1.5次)

◆4気筒 : 180度に一度爆発=クランク1回転につき2回爆発(2次)

◆5気筒 : 144度に一度爆発=クランク1回転につき2.5回爆発(2.5次)

◆6気筒 : 120度に一度爆発=クランク1回転につき3回爆発(3次)


エンジンは爆発燃焼を起こしてピストンを押し下げますが、この爆発力が正のエネルギーとして働くのは一つのシリンダーだけで見た場合爆発した上死点からクランクが半回転する下死点までの180度だけ。残りの1.5回転(540度)は吸い込み抵抗や圧縮抵抗と闘いながら惰性で回らなければなりません。つまり、多気筒で考えた場合180度間隔よりも狭いリズムで連続的に爆発させれば、正のトルクを連続的出せるので滑らかに回せるということですね。そうなると5気筒(144度間隔)と6気筒(120度間隔)が有利なのが分かります。4気筒よりも小さいエンジンはフライホイールの力を借りないと綺麗に回せないことになります。





(クランクの回転揺れとピストンの縦振動)
クランクはその名の通り、クランク形状のシャフトです。このシャフト両端を固定して回転させると外側へ放り投げるような力の成分が発生するのは分かりますよね。この成分をキャンセルするには反対側に同じ質量分のおもりを設けてやればよい。そこでクランクピンの反対側にカウンターウェイトというおもりを設けています。




しかし、よく考えてみればクランクシャフトの回転成分だけキャンセルできてもそれにつながるピストンやコンロッドの垂直水平方向のトルク成分が残ります。そこでこれらをキャンセルするために更にカウンターウェイトを重たくします。





例えば単気筒で説明すると、クランクの慣性トルクAをバランスさせるカウンターウェイトA’を設け、更にピストンの垂直方向に発するトルク成分Bをもキャンセルできる重さB’を増やすとします。つまりカウンターウェイトはA’+B’。そうするとカウンターウェイトが横向きになった時にB’分だけオーバーバランスとなります。つまりエンジンが横揺れしてしまいます。





では垂直成分Bの半分の重さとなるB’/2をA’に増してみます。当然このままだと垂直成分Bは半分しかキャンセルできず、逆に水平成分はB’/2ほど追加されてしまいます。





そこで、B’/2の重さのバランスウェイトをもう一つ別に設け、クランクと逆回転させます。そうすると垂直成分はふたつのB’/2によって(つまり合計でB’)キャンセルされ、水平成分も相殺されます。実際にはピストン速度が上下で異なる事やコンロッドの左右振りがあるので完全にはキャンセルできませんが、かなりの偏った成分を軽減できます。

これがピストン1往復の振動をキャンセルさせる1次バランサーの考え方です。






360度クランクの2気筒も基本的には単気筒と同じ成分になるので1次バランスシャフトが必要になりますが、3気筒以上のクランクの場合クランク軸360度に対して均等角度で捻りが割り振られるので、回転成分だけでいえばカウンターウェイトがなくてもバランスされますが、ピストンの垂直成分が残ってしまうために、やはりカウンターウェイトが設けられています。そうなるとまたクランクが水平向きになった時にオーバーバランスになりそうですが、カウンターウェイトも360度の中で均等に割り振られているおかげでバランスされます。もちろん実際はシリンダー数によって特有の振動が残るので完全にバランスされるということはありませんけど。












(クランクの捻りによる慣性偶力振動)
クランクシャフトはシリンダー数によって捻る数と捻る角度が決められています。そしてその違いによってシャフト長手方向に一種の捻りが生じ、そこにモーメントが発生する場合があります。




4ストの2気筒だと360度クランクなので絵のように2つのクランクが同じ動きになるよう捻られています。これを回すと物を放り投げるような力が発生しますが、実は先ほど書いたカウンターウェイトによってある程度バランスさせることができます。
※ただし、バランスシャフトがないと先ほど書いたように上下か左右のどちらかがバランスされない。

クランクとカウンターウェイト、そしてピストンの動きの関係ががとても分かりやすい動画を見つけたので、埋め込ませてもらいました。



(2気筒の動画)







これが3気筒だと240度間隔の燃焼なので、240度間隔で3つ並べると120度の均等捻りになります。シャフト端面から見るとベンツマーク。これを回転させると前述のように回転振動も垂直水平振動もほとんど打ち消されるので問題ないように思えます。ところがシャフトの前後間でモーメントが生じ、すりこぎ運動というものが発生してしまいます。

実はこのすりこぎ運動について随分前にメッセージで質問を受けたことがあるので、今回この部分をもう少し分かりやすく書こうと思います。





軸というのは一直線の棒であれば軸線を中心に綺麗に回転します。ところが右の絵のように軸の両端付近に違う方向へ捻りを加えて回すと綺麗に回りません。つまり軸が回転しながら軸の両端部も円弧を描きはじめます。コマの回転を想像してもらえばいいかな…。軸が回転しながら軸の上下端がゆっくり円弧を描き始めるアレです。このすりこぎ運動(歳差運動)によってクランク軸周りに発生する力を慣性偶力といいます。


3気筒のクランクシャフトは3つの捻りが120度均等間隔で独立しています。その独立したクランクにはそれぞれカウンターウェイトが付いており、そのクランクを回転させると一見扇風機の3枚羽根のようにバランスされて綺麗に回転するように思えます。
しかし、クランクは扇風機の羽根と違って奥行方向に捻りが並んでおり、しかも3気筒の場合3つがそれぞれ独立した角度で並んでいるため1発ずつ物を放り投げるような力が働き、1番シリンダーと3番シリンダーで放り投げる時間差が生まれます。そうなるとシャフト前後で円弧を描くすりこぎ運動が起こってしまい、2番シリンダー付近を中心にエンジン前後がドラバタとコマのように回転揺れを起こしてしまうわけです。


この振動をキャンセルするためにクランクとは逆回転させる「一次慣性偶力バランスシャフト」というものが存在しますが、国産の3気筒に搭載された実例を私は知りません。多分ないんじゃないかと…。ただし、多くの3気筒はクランクシャフト両端部のカウンターウェイトに慣性偶力を軽減させる役目を負わせているように思えます。別体でバランスシャフトを設けるよりもカウンターウェイトによってトータルでバランスさせるほうがコストも低くなりますからね。




3気筒エンジンは横から見るとピストンの左右アンバランスな動きによってシーソーのように左右がドタバタ揺れてしまいそうなのが分かると思います。ですから両端のカウンターウェイトによってエンジンをトータルでバランスさせるわけですね。

因みに3気筒の中ではかなり静かで滑らかな事で有名なホンダライフ(先代以降)の3気筒エンジンは、贅沢にもクランクシャフトはフルバランス式です。3気筒のクランクは120度の立体配置であるため、製造コストを考慮して大概が2番シリンダーのカウンターウェイトが省かれています。しかしライフはツイスト鍛造法というコストのかかる製造法を用いてフルバランス式にしています。やはりコストをかけたなりに滑らかなんですね。






4気筒だと平面形状の180度クランクです。

4気筒のクランクシャフトは1番シリンダーと4番シリンダーが同じ動きをするよう捻られ、又2番と3番が同じ動きをするように決められています。これが重要なことなんです。
すりこぎ運動による慣性偶力振動を防ぐにはクランク前後を鏡面形状にすればよい。つまり1番と4番のクランク捻りを同じ方向に向け、2番と3番を同じ方向に向ける。それによってシャフト前後で物を放り投げるタイミングに時間差を生じさせないわけです。
そうなるとシリンダー数は偶数が良いわけです。





エンジン両端でシーソー現象が起こらないことがわかりますよね。

因みに偶力の説明とは話が逸れますが、こういった偶力を考慮した前後鏡面のクランク形状を採用するとなると、燃焼順序も自ずと決まってくる事が分かると思います。
例えば燃焼を1番からスタートさせた場合、次に上死点にやってくるのは2番か3番。その次が4番・・・。となると、4気筒の場合は1-3-4-2、又は1-2-4-3のどちらかになりますよね。決して1-2-3-4などと都合よく順番に燃焼する事はありません。






ホンダがかつて採用していた5気筒。

144度の燃焼間隔を5つ並べると72度の均等捻り。軸端面から見ると☆型です。各シリンダーが独立したクランク角を持つ奇数シリンダーということで、3気筒同様にクラクシャフト前後間ですりこぎ運動が発生してしまいます。




初期のホンダ5気筒は偶力をキャンセルさせるバランスシャフトを別体で設けていましたが、2.5Lモデルやアスコット・ラファーガあたりから廃止されました。おそらくこれもカウンターウェイトによってある程度キャンセルさせているのだと思われます。






直列6気筒。今や国産には存在しないエンジンです。

120度の燃焼間隔を6つ並べたクランクは軸端面から見ると3気筒と同じベンツマークになります。しかし6気筒は偶数シリンダーですからシャフトセンターを境に対称形状にできます。これによってシャフト前後間のすりこぎ運動を防げますね。








(ピストンの上下振動)
上下振動については先ほど有る程度書きました。基本的にはバランスされていますが、それでも完全ではありません。その理由の一つに次のような現象があります。





クランクが最上点にあるときはピストンは上死点で、最下点にあるときは下死点なのは当然ですが、クランクが横向きのとき、実はピストンは中間点にいるわけではありません。僅かですが半分よりも下にいます。これはクランクはストロークの半分まで下げながらコンロッドが斜めに下がるからです。
それによってピストン速度は下半分よりも上半分の方が速くなってしまい、縦振動として残存してしまいます。




これら縦振動はもちろん気筒数によって大きさや振幅数(次数)が変わってきます。

◆単気筒 : クランク1回転で1回振幅(一次振動)
◆2気筒 : クランク1回転で1回振幅(一次振動)
◆3気筒 : クランク1回転で3回振幅(三次振動)
◆4気筒 : クランク1回転で2回振幅(二次振動)
◆5気筒 : クランク1回転で5回振幅(五次振動)
◆6気筒 : クランク1回転で3回振幅(三次振動)

縦振動というのは結局クランク1回転の間に何度ピストンが往復するかという事ですから、クランク360度に対する捻り数と同じことになります。

こう見ると、6個のピストンが3組で動く6気筒よりも、5個のピストンが全て独立で動く5気筒の方が小刻みに振動するため振動を感じにくいという事になります。分かりやすいのがまたしてもこの動画です。




(5気筒の動画)



動画後半にクランク軸端面から見たピストンの動きがありますが、5気筒はクランク1回転で5個のピストンが上死点を突いています。結構早いリズムですよね。



ところが6気筒だと…




(6気筒の動画)

同じく動画後半に注目。

6個もピストンがありながら上死点を突くリズムは5気筒よりもスローリズムです。これは72度の独立クランクでピストンがバラバラに動くか、120度の前後対象クランクで2個3組のピストンが動くかの違いにあります。完全バランスエンジンと呼ばれる直6も、実はこの縦振動については5気筒に負けているんですね。



もちろん同じ事が3気筒と4気筒の比較にも言え、120度クランクの3気筒の方が180度クランクの4気筒よりも小刻みに縦振動を起こしているといえます。


(3気筒の動画)


(4気筒の動画)







ところで4気筒の縦振動は次数でいえば二次ですから結構大きめなわけですが、その振動数値は跳びぬけて悪いのをご存知でしょうか。3気筒や5気筒、6気筒などは、あるピストンが上死点にいる時、他のピストンは動いている途中です。ところが4気筒は平面形状の180度クランクであるため、2個1組のピストンが上死点で止まっている時もう1組ピストンは下死点で止まっています。つまり動きが「無」になる瞬間があり、振動がはっきりと表れてしまうんですね。




そこでこの二次振動を軽減するためバランスシャフトを搭載しているエンジンがあります。
縦振動のキャンセルの考え方は先ほど単気筒を例に説明したのと同じです。つまり残存する垂直慣性成分の半分を打ち消すバランスシャフトを1本設け、このバランスシャフトのせいで生じる水平成分を打ち消すためにもう1本同じバランスシャフトを設けて逆回転させる。ただし、2次振動はクランク1回転につき2回起こるので、バランスシャフトはクランクの2倍で回してやらねばなりません。

先ほど単気筒の例えで説明した縦振動はクランク1回転につき振動も1回ということで1次振動でした。ですのでクランクのカウンターウェイト+バランスシャフトで解決できますが、2次振動はクランクの2倍の回転数で打ち消すため別体のバランスシャフトで対応しなければ不可能というわけです。
なぜ4気筒の二次バランスシャフトが2本必要でなぜ倍速させるのか、又それぞれをなぜ逆回転させなければならないのかが理解できたでしょうか。



ここまでが、以前説明した内容をもう少し詳しく整理した内容です。











さて、これらを踏まえやっとV6エンジンの話です。



V6というのは、何といっても直列6気筒よりも短くできるのが最大のメリットです。1列に6個並ぶシリンダーをV字状に左右3個ずつの2列に分けて、それぞれのシリンダー間をギュッと詰める…。もちろんコンロッドとクランクピンのジョイント部は重ねるわけにはいきませんから、エンジンを真上から見たら千鳥状に並べてコンロッドとクランクピンの取り付けスペース6個分を設けるわけです。これで、ざっと4気筒並の長さで6気筒ができあがる事になります。




(V6の動画)


百聞は一見にしかず…。

V6のクランク構造ですが、大前提としてVバンクを挟んで向かい合ったピストンは同じクランクピンを共有します。例えば手前左のピストンを1番とし向かい合う右手前のピストンを2番とすると、1・2番が同じクランクピンを共有します。動画をみても共有していますよね。






直6のクランクは120度クランクですから軸端面から見るとベンツマークでしたよね?上死点は真上1列に並んでいて、クランクが120度回転するたびに2個のピストンが1組で上死点を突きます。クランク軸の慣性偶力を考慮して、必ず1番6番を同相にし、2番5番を同相、そして3番4番を同相にする、つまりクランクセンターを境に対象形状にしています。






じゃぁV6はどうかというと、V6と言えども6気筒ですから120度の等間隔爆発には変わりはありません。
120度の等間隔燃焼を行なう直6のクランクはベンツマーク。これをひっくり返してY字にしてV6を考えると、6気筒の120度燃焼間隔に対するVバンク角は120度がピッタリ合うことが分かります。







実際の燃焼状態はこうなります。

左1番と右2番のピストンを一つのクランクピンに共用させ、左3番と右4番を共有、そして左5番と右6番を共有させるわけですが、左1番が上死点の燃焼状態にある時は右4番が上死点の排気完了状態にあることが分かります。

このクランクを、6気筒の燃焼間隔である120度ほど回転させると次に燃焼が起こるのは右2番。この時左バンクは5番が上死点の排気完了状態にあります。左右バンクで必ず1つずつのピストンが同じ動きをしながら、120度の回転ごとに左1→右2→左3→右4→左5→右6という順番で燃焼していくわけですね。




クランク端面から見た回転の流れを書くとこんな感じです。

左バンクのピストン番号を赤色、右バンクのピストン番号を黄色で書き、燃焼(爆発)しているピストン番号を◎で囲むと、1-2-3-4-5-6という順番で燃焼し、しかも左右バンクが交互に燃焼していることが分かります。


このように、Vバンク120度のV6エンジンというのはクランクピンを共有することで3気筒のようなクランクでよいことになります。しかしながら、120度のV6なんてエンジンが幅広になりすぎて実用的じゃありません。

そこで、V6では一番メジャーなバンク角60度の話です。





もし先ほどの3気筒のような120度クランクをVバンク60度に無理矢理使用してしまうとどうなるか分かるでしょうか。

図の様に、1-2-3-4-5-6という順に燃焼させるとすると、60度-180度-60度-180度-60度という不等間隔燃焼を行なってしまいまう事がわかります。これでは爆発トルク変動が不規則で滑らかに回りません。


では60度Vで120度の等間隔燃焼を行なうにはどうすればよいかというと、燃焼間隔120度からバンク角を引いた60度のオフセットクランクにする必要があります。





こういう感じ。軸端面から見ると*形状です。

V6のクランクピンオフセットの考え方は、図のように360度を3等分した赤色を左バンク3気筒分とし、そこからオフセット分だけグリ~っと反時計回りに捻った黄色を右バンク用とし合体させればOKです。だからV6は3気筒を抱合わせたようなエンジンと言われるんですね。


それぞれ1・2番、3・4番、5・6番のクランクピンを共用していたのをやめて、グリ~っと反時計周りに60度ほどずらして独立したクランクピンを持たせてるわけですね。要は60度の等間隔捻りと同じ状態を作るわけですが、直6のようにクランクアームを12本(2×6)も持たせると全長が直6と同じになってしまうため、実際はこの絵のような状態ではなくあくまでもクランクピンの部分をずらすという考えで構成されています。





しかし位相を60度もずらすとなると段つきピンとはいかなくなります。そこで、このようにウェブという板を挟み別物のクランクピンを60度ずらして設けています。





燃焼の流れはこのように。
燃焼順序は、左1→右2→左3→右4→左5→右6。120度の等間隔燃焼で左右交互に燃焼していますよね。



(60度V6の動画)

60度Vの動画はこちら。







Vバンク角が90度のV6も過去にはありました。ホンダのレジェンド(初代~3代目)やインスパイア(2代目)&セイバー(初代)、そしてNSXに搭載されたC型エンジンです。




※画像拝借…
90度Vの場合も60度Vと同じで、クランクピンをオフセットしてやらないと等間隔燃焼ができません。90度Vの場合は120-90=30度のオフセットクランクです。

この画像ではクランクアームと書かれていますが、ここが一般的にはウェブと呼ばれるものです。




先ほどと同じ様に赤色の線を左バンク用とすると、そこから反時計周りに30度ずらした黄色い線が右バンク用です。





この30度オフセックランクを120度回転させるごとに、左1→右2→左3→右4→左5→右6というふうに120度の等間隔燃焼で左右交互に燃焼していますよね。




ここまでがV6の燃焼メカニズム。いよいよこの話も終盤。V6の振動についてです。





V6は6気筒ですから直6同様に120度という狭い等間隔燃焼を行ないます。ですから燃焼トルク変動による振動も直6と同じで非常に滑らかです。
ただし縦振動はV6の場合左右バンク方向にそれぞれ斜めへ発生し、その性質は直3と似ています。しかし二次振動を発生する直4よりは随分と小さいのは言うまでもありません。

むしろV6で厄介なのは慣性振動です。




60度、90度、120度、それぞれのVバンク角に共通して言えることですが、エンジンを上から見てピストンが千鳥に配列されるV6のクランクシャフトというのは、前後対象形状にできません。上死点が二手に分かれて1番が左バンクなら6番は右バンク。だから絶対にクランクの前後が対称形状になるはずがありません。
これは何を意味するかというと、軸周りに慣性偶力振動が発生するということですよね。すりこぎ運動が起こる3気筒や5気筒と同じ状態です。


面白いことにV6の場合はその振動成分がバンク角によって少し異なります。






120度Vというのはクランクの捻りが360度の中で3等分されています。つまり120度の等間隔捻りです。
60度Vというのもクランクの捻りが360度の中で3等分されていますが、60度のオフセットクランクですから、結果的に360度の中で6等分した60度等間隔捻りと同じ事になります。


ところが90度Vというのは、クランクの捻りが120度の等間隔捻りに30度のオフセット捻りが加わりますから、6つの捻りが全て等間隔にはなりません。


60度V、90度V、120度Vのクランクをそれぞれ回転させると一次慣性偶力が発生するのはどれも同じですが、120度Vと60度Vはクランク360度の中で等間隔に捻られているので物を放り投げようとするリズムが一定になります。ですから、これらの振動は3気筒のところでも書いたように両端のカウンターウェイトのチューニングによってまとめてキャンセル(軽減)できます。
ところが90度Vは90度→30度→90度→30度…というパターン化したリズムながら不等間隔で物を放り投げる力が発生し、独特の偶力振動波が起こります。こうなるとカウンターウェイトだけではキャンセルできず別体のバランスシャフに頼る必要がでてきます。




国内唯一の90度Vを採用したホンダのC型エンジンが、やはりこのバランスシャフを途中から採用していましたね。







乗車用のV型エンジンは6気筒以上のマルチシリンダーなので燃焼間隔が狭くトルク変動も少ないといえます。ですから振動としてはあまり不快には感じないレベルなのですが、高級車のエンジンとして搭載されるが故に小さな振動も消さなければならないのが現状です。その振動の一つに偶力振動があり、特に偶力振動のようなローリング振動はアイドル付近の低い回転域で表れるので(縦振動のような慣性振動は逆に回転数が高いほど増える)、メーカーもこの振動に対してはおろそかにできないでしょう。

また最近では、エンジン全体で発生する偶力振動を、各ピストンをバランスさせるカウンターウェイトによってキャンセルさせるわけですから、よく考えてみたら個々のピストンのバランスは崩れているはずです。しかし近年のV6は個々のカウンターウェイトの大きさはバラバラで、どれだけエンジンをトータルでバランスさせるかが主流になっているのかもしれません。






V6の燃焼メカニズムと振動バランスの話、いかがでしたでしょうか。メチャ長でしたがV6の話は面倒なので…。もしかしたら理解不能な説明だったかもしれませんね。
前半の復習が長かったともいえますが…。


今回の話も多くの方から読まれるものであれば嬉しいです。
ブログ一覧 | 易しいエンジンの話し | 日記
Posted at 2010/08/28 17:21:02

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この記事へのコメント

2010年8月28日 18:05
エンジンと振動についての考察は興味深いですね。
V6搭載のNSXは永遠の憧れです。

私が最初に買ったバイクが90度Vツインエンジンを搭載していました。
一次振動が理論上ゼロということでしたが、それなりに微振動が多かったような記憶がありますね。
二輪の世界ですが、HONDAはこれまで革新的なエンジンを搭載したマシンを数多く登場させてきました。
・NR500
 (楕円ピストン ツインコンロッド V型4気等 32バルブ)
・NS500
 (2ストローク V型3気筒) 
・RC211V
 (4ストローク V型5気筒)
楕円ピストンV型4気等は市販車NR750にも搭載され話題になりました。500万円以上で手が届かない存在でしたが…。(^^;
NR750は4型プレリュードのCM(プライベートステージ)にも登場してましたね。

最近気になっているのはYAMAHAのクロスプレーンクランクシャフトです。
http://www.yamaha-motor.jp/mc/lineup/sportsbike/yzf-r1/detail/0002.html
2輪GPマシンのフィードバックで、従来の直列4気筒の概念を覆すトルク特性を持っていると言われます。
買ってしまおうかと思ったりもしたのですが、さすがに思い留まりました。(((^^;

このエンジン。次回のテーマにいかがでしょうか?
コメントへの返答
2010年8月31日 22:34
wata-plusさん、こんばんは!長いブログにお付き合いくださいましてありがとうございます。

私は2輪がさっぱりなのですが、以前少しだけ2輪のエンンジンの内容を読んだ感じでは、4輪での常識が2輪では当てはまらないという感じに受け取りました。4輪はとにかく滑らかに回ることを目指したエンジン造りがされていますが、2輪は不等間隔燃焼や奇数V型エンジンなど、「ええ??!!」と目を疑うようなものが多いですよね。残念ながら2輪には興味がなくてその先を知るために突き詰めるといった事はしていませんが…。

楕円ピストンもなぜこういうものを採用したのか知らないんですよね。楕円って熱が均等に逃げないでしょうから、それをあえて使うほどのメリットが何か他にあるってことですよね。

ご紹介のサイト見てみました。クロスプレーンクランクシャフトとは、つまり4輪の4気筒では常識的な180度クランクを90度振ってあえて不等間隔燃焼にしているわけですね。クランクが横に向いた時の失速をカバーする燃焼間隔のようですね。なるほど…、バイクの世界はなかなか奥が深いですね。考え方が4輪の延長線にないところが不思議です。大きなボアと長いストロークの4輪ではこの方法が向いていないのか、それともそもそも2輪の使用回転域が超高回転域なのでこういった考えがうまくマッチするのか…。

残念ながらこれを語れるほど2輪の技術を知らないのであります(汗)。でも面白いテーマですね。
2010年8月28日 20:01
いよいよ、動画まで駆使する様に
なりましたなぁ~  (^_^;)

でもじっくり読ませていただく
途中の動画はさらに興味深く
読ませていただけます!
(^^ゞ
コメントへの返答
2010年8月31日 22:36
V-テッ君♂さん、こんばんは!長いブログにお付き合いくださいましてありがとうございます。

動画はたまたま見つけましたが、絵よりも理解しやすいですからねぇ。特にV6は説明が大変で、書きながら途中で何度もやめようと思ったほどです。
2010年8月28日 21:38
理論的な話はよく分からないのですが・・・(爆
私は直4からV6に乗り替えたので、体感差はよく分かります。V6が振動が少なく滑らかなふけ上がりだというのは、同乗した家族も分かるほどです。ただ燃費を含めたトータル性能を考えると、直4の方に軍配が上がりますね。
コメントへの返答
2010年8月31日 22:41
Vision42さん、こんばんは!長いブログにお付き合いくださいましてありがとうございます。

そうですね。V6の振動の少なさはうちの嫁さんでも分かりますし(笑)。シリンダーの数というのは滑らかさに直結してますね。

ホンダは2.5LのV6に見切りをつけ2.4Lの直4にかけています。トヨタもその傾向がありますが、大きな車には2.5のV6を残しています。2.5のV6で環境性能をクリアできれば、新型アコードはこちらの方がマッチすると思うんですけどね。
2010年8月30日 0:41
VQ30DETに乗っていましたが、今調べたら60度でした。
こうやって滑らかにしていたのですね。
コメントへの返答
2010年8月31日 22:43
katochさん、こんばんは!長いブログにお付き合いくださいましてありがとうございます。

日産もトヨタも昔からV6は60度を採用していますね。ホンダはボンネットを低くしたがために90度を採用していましたが、今はその必要性もなくなって60度です。

色々考えるとやはりV6は60度がベストだと思います。
2010年8月31日 0:05
おぉ、V6ですか(^-^)
我が家は以前V6だったので非常に興味津々です。

しかし詳しすぎます(笑)
説明も素晴らしいですね~!
まるで何かの講座を受けている気分でしたよ(笑)
コメントへの返答
2010年8月31日 22:48
すけさん、こんばんは!長いブログにお付き合いくださいましてありがとうございます。

V6の説明はちょっと難しかったんじゃないでしょうか。なかなか上手く説明できなくて…。でもこのブログも定期的に沢山の方から読まれると嬉しいです。

カムリプロミネントはハイメカツインカムのV6でしたね。確かあの頃のトヨタV6は日産と似たグルグルした音がしていましたが覚えておられます?当時のV6は排気干渉のおこる音がしていたんです。
2011年5月21日 10:52
こんにちは、しょっちゅう見させてもらってます。

うちのV6は75度の変な角度です、振動バランス的にどうでしょうか?
補機類含めすんごいうるさいエンジンですけど、例に漏れず3000回転あたりから滑らか&トルクが出てきます。
コメントへの返答
2011年5月21日 22:21
呑人さん、初めまして!こんなマニアックなブログにコメントいただきましてありがとうございます。

失礼ながら75度のV6というのが国産にあったなんて初めて知りました(汗)。ISUZUのエンジンのことですね?

エンジンの仕様が分かりませんのではっきりした事はいえませんが、120度の等間隔燃焼を行っていると思われるので恐らくホンダの90度V同様にオフセットクランクを採用していると思われます。だとすると、燃焼間隔120からバンク角75を引いた45度のオフセットクランクとなり、360度の中で6個のクランクが独立した状態になります。その角度間隔は45-75-45-75-45-75度となり、ホンダ90度V6と同じ不等間隔の偶力波となります。
120度クランクを採用しているとはまず思えないのですが、もしそうだとすれば燃焼間隔が75-165-75-165-・・・・と不等間隔燃焼となり、かなり振動が大きくなると思われます。多分オフセットクランクだとは思いますけど…。

エンジン全体の振動は75度V云々だけでは決め付けれないので何とも言えませんが、恐らく振動の質としては90度Vに似ていると思われます。又、トルクの出方もバンク角とはまた違う話でして、このあたりはメーカーのチューニングが鍵を握っているのでしょうね。
2011年5月23日 20:19
詳しくありがとうございます。
調べたところ、仰るとおり45/75度のオフセットでした。バンク角はエンジン高対策の設計のようです。
どっちにしろ、直6の呆れるほどのスムーズネスを知っている者としてはそれほど大した違いではないのかもしれません。もう一台のV6は現時点で最高峰クラスの評価を得ていますが、その体感振動に関して直6には遠く及ばないのが実際のところです。

ところで、最近気づいたのですが、昔のF1やM5、ガヤルドに顕著である上下オクターブを混ぜて唸るような個性的すぎるメカノイズは当然V10独特のものだと思っていましたが、どっこいアウディTT RSの直5が全く同じ音質ではありませんか。やはりV10と直5は兄弟なんだなあと感心した瞬間でした。
それを踏まえますと、NSXのサウンドがどうしても軽トラにしか聞こえない自分の耳はあながちバカではないのかもしれません。
コメントへの返答
2011年5月24日 0:09
呑人さん、こんばんは~!再コメありがとうございます。

どこかのサイトでクランクの詳細がのってたんですね。私もざっと探してはみたんですが分かりませんでした(~-~;)

私は6気筒オーナーじゃないので、最新のV6は結構スムーズだなぁと感じていますが、毎日乗られているとその差がより大きく感じられるんでしょうね。
うちの会社にゼロクラウンがありますが、V6でも凄く滑らかに感じます。でもホンダの現行型インスパイア3.5のV6は少々荒々しいです。トヨタの6気筒のNHV対策は本当に素晴らしいですね。

V6サウンドが3気筒に似ているというお話しですが、非常に面白いですね。V6サウンドとも呼ばれるこの音は、V型特有の排気干渉を起すためだと言われています。少しグルグルした音質はV型特有のもので、アメ車のV8エンジンもそんな音がします。酷かったのは日産のVG型でしょうか。極端に言えば水平対向エンジンもバタバタした音質で、これも排気干渉です。でもこれを避ける対策をメーカーによってはやっていて、トヨタの最近のV型は綺麗な音にしてますよね。初代ウィンダムなんかはグルグルしてましたけど…。スバルも最近は綺麗な音に仕上げてます。先代のインスパイア3.0も綺麗な音です。NSXは確かに昔風のV6サウンドですけどね。

アウディの直5とホンダの直5も結構似た音だと私は思いました。仰るように独特の濁ったような音質ですね。
2011年9月24日 13:41
こんにちは

なぜ直2、直4や直6が2気筒セットで同じ動きをするのか、ばらばらのほうが滑らかではないか?と思い、指でピアノを弾くようにいろんな形式のストロークを再現してみるうちに、いろいろとわかってきました。

点火がメチャクチャな間隔になるわけですね、今頃知りました。

フェラーリ以外の滑らかV8がなぜか排気だけはホロホロと歌うメカニズムもよくわかりましたよ。ドラムでいうRLRRLRLLRLRRLRLL・・・のパラディドル由来の排気干渉なんだなあと。

理科に疎い私も実際やってみると気づくことが多くて面白いです。

コメントへの返答
2011年9月24日 20:19
呑人さん、こんばんは~!

直列の偶数シリンダーエンジンは、クランクシャフトの偶力を消すために必ずクランク中間部を対称に同じ動きになるよう決められています。それによって自ずと爆発順序が決まってきます。V6などはバンクの釣り合いを考えて、1-2-3-4-5-6と順番に爆発させるエンジンが多いですけど。

何か音楽に関係のあるお仕事なり趣味をお持ちなのでしょうか。リスム的な例えを音楽で表現されるのは、非常に分かりやすいですね。V8の燃焼順序はどうなんでしょう…。私はV8をあまりかじっていないので、またいつか勉強してみます。

排気干渉は、いまや等長排気マニホールドでかなり改善されています。でも最近のレガシーは水平対向らしさが消えて、水平対向好きな方からは反対意見も多いようです。
2013年9月20日 12:35
はじめまして♪
お友達の『イイね!』から来ましたSuper Cityといいます。
↑V6のお話、私は知識あやふやなので興味深く拝読させて頂きました。これまでバンク角90度と60度の、両方のV6エンジンを経験し、他にも12-Aのロータリー、直4、直6と乗り継ぎ、水平対向4気筒等も試乗してみましたが、同じ直6の中でも最近試乗したBMWの直6-3.0Lのフィーリングが最も感動的でした。みん友さんや、多くの自動車評論家が絶賛する理由を、短い試乗機会のなかで体感し、納得したものです。でも同じ直6なのに、何故そんなに違うのだろう・・・って思いました。
コメントへの返答
2013年9月20日 21:59
Super Cityさん、はじめまして(^^)。コメントありがとうございます。

沢山の愛車歴ですね。しかもV型90度はレジェンドではなくNSXってとこが凄いです。これほど色々なエンジンの車を楽しまれたなんて羨ましい限りです。

BMWの直6は、もちろん私は経験がありませんが、その気持ちよさはあまりにも有名ですよね。車のエンジン性能には数値的なものとして表れない性能があり、これが素晴らしいほうが強く印象に残ると思います。BMWはそこを掴んでいるんでしょうね。日本車ではホンダのエンジンもその傾向がありましたが、今やそれはないに等しいですからね・・・。

エンジン開発にはそこに熱い情熱がないと気持ちの良いエンジンなどできないのだと思います。
2013年9月20日 13:18
あ。。。。(^ ^;
バイクのエンジンのお話も拝読しました!
当時の二輪GPシーンの記事や資料などはよく読んでいました。あの頃の開発者の発言を想い出すと、二輪用エンジンで重要な事は、①回転マスが小さい事(クランクシャフトが短い事)、②軽量コンパクトでパワーが有る事、③トルクの駆動輪への伝達がスムーズな事。。。などでした。

釈迦に説法になっちゃって済みませんm(_ _)m

①は、基本的に、二輪車はその構造上、コーナーリングの際には車体(タイヤ)を直立状態から傾ける事によって曲がって逝くので、コーナー脱出の際、全力加速しそのトルクをドリフトやスリップダウン等によって浪費せず効率的に路面に伝えるには出来るだけ早く車体の傾きを直す必要が有ります(直立状態へ)。
S字やシケインなどの細かい切り返しの際には反対側から反対側へ、素早いリーンが必要ですが、この時ライダーに邪魔な力が、いわゆるジャイロ効果です。即ちホイールの回転軸からの水平線を伸ばす角度を、維持しようとする力。水平4気筒、6気筒などのエンジンは緻密で見た目にも美しい工業製品ですけど、クランクシャフトが走行方向に対して90度の角度に有りますから、左右にバンクを振る際の抵抗になります。この軸が左右に短いほうが、ジャイロ効果は小さく、切り返しがクイックに出来るのです。

②は、前面投影面積の極小化と車体マスの中央集中化。ライダーの身体か露出したまま走る二輪は、空気抵抗を可能な限り下げる為に車体全体を小さく作りたい。前面投影面積を小さくする為に、設計上考えるのは車高を小さく、幅を短く。すると、大きな構成部品は人間の他はエンジンという事になります。
また、車体の操縦性の問題で言うと、前後ホイール軸を出来る限り短くする事で、クイックかつフリクションも小さい、軽くて扱い易い操縦性を備えたい。すると、一番思い鋼構造体であるエンジンをコンパクト化する事で、スイングアームも詰まり、フロントフォークも角度をより立てる事が出来る。
その為に、今は4サイクルのMoto-GPマシンというカテゴリーが有りますけど、あの当時は2サイクルにパワー、操縦性ともに敵わなかった。また、2サイクルでも可能な限りエンジンのマスを小さくするために、例えば後ろのシリンダーの冷却効率を多少犠牲にしても、直立2気筒を前後に並べてマスを集中させたり、並列3気筒を花が開くように前後に開いてシリンダー間を詰め乍ら冷却効率を追ったり。。。それが、90度だったり70度だったり、バランサーを無理やり突っ込んで変則的な不等間隔になってもやったのは、操縦性と車体小型化というGPレースの世界での要請からでした。
HONDANR500は、2サイクルエンジン全盛のなか、将来的に4サイクルで2サイクル以上のパフォーマンスと高回転(当時では驚きの20,000rpm以上)、当時レースに臨んではそんな試験的試みでも2サイクルエンジン車に4サイクルで勝とうとホンキで取り組んだ、楕円8バルブマシンでした。熱対策、エンジンの冷却やピストンピン開発の問題でなかなかレースでの成果は出ませんでしたけど、あれは珠玉の工業製品です。

③は、勿論、バイクの駆動は後輪をチェーンで行います。ドライブシャフトで行うBMWやいまのHONDA GL等も有りますが、四輪と違い左右に傾けてコーナーリングする二輪は、ドライブシャフトの回転軸が発生するジャイロ効果に伴う車体への左右どちらかの方向へ押す力が邪魔になります。コーナーリング中は特にそうです。だから、1,000cc以上のビッグバイクでも、チェーン駆動がいまだに使われている。
この場合は、出来るだけ多気筒で高回転、パワーバンドを広く取り、その中でトルクの発生が安定している必要が有ります。

・・・・のような事で、大きなコーナーリングフォースの中でのデリケートな操縦性が、極めて重要であることから、小さいエンジンという発想でいろいろなVバンクのエンジンが試された。。と言う点が、四輪との違いです(^ ^;シツレイシマシタ
コメントへの返答
2013年9月20日 22:12
すみません・・・、実はバイクのほうは知識がサッパリなく、なんともコメントしようがないのですが、ただバイク好きのみん友さんから多少知識を得ている状態です(~-~;)

バイクでは不等間隔燃焼させているものもあったのですか。さすがに今はもうないのでしょうか。いずれにしてもそれは一つのシリンダー容積が小さいことと、そのトルク変動振動を許せるカテゴリーのバイクだからではないでしょうか。

確かにバイクはかなり傾けて走ることが多いですし、それがレースともなると信じられないほどギリギリに傾けてますもんね。そんな状態で走らせているのですから、直行方向のクランクのモーメントは無視できないというのは何となく理解できます。

ホント、バイクはさっぱりなので色々書けないのが辛いところですが、V型が発する一次偶力振動はどちらかというとアイドリングなど低い回転数で感じやすいと思うのですが、そのV型エンジンは主に高級車に搭載されるため4輪自動車では可能な限りそれを抑えようと等間隔燃焼、それに一次偶力を抑えるクランクを開発させています。バイクでそれをすると重さの問題もあるでしょうし、そもそもmassが小さいので問題としてあまり扱われないのかもしれませんね。
2014年6月1日 10:06
Z34に乗っている親父ですが、5000回転以上での振動がひどく、理由が知りたく興味深く読ませていただきした。
説明の上手さにただただ驚いています。
ありがとうござました。
コメントへの返答
2014年6月1日 15:12
yasu957さん、はじめまして(^^)。コメントありがとうございます。

Z34は排気量が3.7Lでしたよね。V6としては1シリンダーあたりの容積がかなり大き目ですし、何よりもV型エンジンは左右バンク間にエキマニを持ってきてそこからマフラーへと走らせるので、このエキマニ部分で排気干渉が起こりやすいのです。ホンダは等長エキマニを採用して各シリンダーの排気干渉をなくしていますが、VQエンジンはどうなのでしょうね…。高回転での振動ですのでV6の本質的な振動よりも排気系からくる音の振動なのかもしれません。本来V6は機構的に高回転が得意なエンジンですから。

ただ、やはり3.7LというのはそもそもV6としては高回転が厳しい排気量ではあると思います・・・(~-~;)。

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