昨日、
トルネオに乗っていた時にHIDバーナーの交換の際、色が違うというハプニングがあった事をお話ししましたが、「なぜ同じ車で、しかも純正バルブ同士でこれほど色に違いがあるのか」という疑問を残したままの交換となりました。

実は前期のCF系アコード・トルネオのヘッドライトは、HID装着車のみがマルチリフレクター式ではなくレンズカット式でした。そのため点灯状態のバーナーを直接見ることができませんでした(後にマルチリフレクターに変わりましたが)。しかし、私が買った1年後に会社の先輩がステージアを買われ、これがマルチリフレクターのHIDだったので(我社では私に次ぐHID車第2号だった)バーナーの点灯状態を見させてもらいました。
そこで意外な状況を目にしました。
「なんでバーナーの光源は純白なのに、
リフレクターに反射してる光は黄色っぽいんだ?…」
その後、自分の手元に残っていたあのバーナーを眺めながら、私は一つの疑いを持ちました。
「ひょっとして、これが原因なんじゃないだろうか…」
疑いを持ち続けて数年後、インターネットも普及し始め、ついにその答えらしき検証内容のHPを目にすることになったのです。
「やっぱりな…」
私と同じ疑問を持ち、解明したかった方はやはりいたのです。
※今ではこの手の話は色々と掲載されているようなので、ご存知の方はお許しください。
現在純正で使われているHIDバーナーの色温度は4300~4500ケルビンの範囲だといわれています。明るさでいえば3200ルーメンといったところです(ハロゲンバルブは約1200ルーメン)。4300~4500ケルビンという200ケルビン差はそれほど大きなものではなく、若干色が違うという範囲のものです。しかし200ケルビンという差には思えないほど大きな色の違いがあるのはまぎれも無い事実です。つまりキセノンガスの量だけでは説明がつかないわけです。

このバーナーはどちらもホンダ車の純正バーナーで、私が保管していたものです。
まずHIDバーナーには大きく分けて二つの規格があることはご存知の方が多いと思います。一つは写真左のものでマルチリフレクターなどで使うD2R。もう一つが右のプロジェクターヘッドライト用のD2S。
この二つの違いは取り付けの台座の位置決め穴と形状が違うことと、レジストと呼ばれるセラミックの遮光プレートが有るか無いかです。D2Rにはレジストがガラス管の一部に焼付けられており、D2Sにはこれがありません。
バーナー管内のキセノンガスの量によって照射色に違いが出る事は前回書きましたが、先のステージアの様にバルブの光源が白いのに反射光は黄色っぽくなるという原因が、実はこの写真のバーナーで隠されています。

その鍵を握っているものを上の写真の“マルチリフレクター用D2R”で示しますと…
(※トルネオに付いていたバーナーではありません)
一つは緑矢印で示している「セラミックチューブ(電極棒に焼き付けてある)」というものです。そしてもう一つが赤矢印のもので、先ほども書きましたガラス管に焼き付けてある「レジスト」と呼ばれるものです。
問題なのはこの二つの色です。
純正で使われているHIDバーナーのほとんどがフィリップス、パナソニック、コイトと言われていますが、そのレジスト&セラミクチューブの大半が写真の様な銅色です。でも中には灰色があったり、最近の社外品では白や水色・紫色なんてのもあります。問題なのは、大半を占めている銅色です。

これはうちの親父のフィットでHIDを点灯したものです。バーナーは純白なのに部分的に黄色い反射光が確認できますよね。まさにこれがセラミックチューブとレジストの銅色の影響によるものです。
ではなぜこの色が照射色に表れるのか…。メカニズムはこうです。
まず、点灯させるとセラミックチューブが照らされます。純白光で間近に照らされたセラミックチューブは輝くほどの黄銅色を発し、真上のバーナーガラス管に反射してしまいます(セラミックチューブは通常真下向きにセットされる)。結果、バーナーの下半分が黄色っぽい光を発していることになります。悪い事にD2Rだとレジストも貼ってあり、更に悪条件が加わります。そうなるとリフレクター下部から中心にかけて黄色く照らしてしまい、離れて見ると全体的に黄色っぽく見えてしまいます。
この黄色い光を「グレア光」と呼ぶそうです。
車によってはバルブに反射したグレア光を見ることができます。

もう一度、先ほどのD2RとD2Sを見比べてみてください。同じホンダ純正品でありながら、まずメーカーが違います。D2Rはフィリップス、D2Sはコイトです。
そして問題のセラミックチューブの色です。D2Rは銅色ですがD2Sは灰色です。そしてもう一つ、D2Rにだけあるレジストです。この写真のものはやや灰色に近いです。もちろんD2Rのセラミックチューブが灰色で、D2Sのそれがが銅色の場合、つまり逆の場合もあります。
右のD2Sですが、恐らく純正品としてはかなり蒼白色のものだと思われます。レジストが無い上にセラミックチューブが灰色だからです。
では左のD2Rはというと、そこそこの黄色いものだと思われます。セラミックチューブは銅色ですがレジストが灰色に近いからです。以前私はレジストの色が赤茶色のものを見たことがありますが、これは相当茶色い発光色のものだと思われます。
マルチリフレクター用のD2Rというのは、D2Sに比べていかに不利であるかが分かります。

実はこれらのグレア光を抑えるために、最近ではバルブ管とセラミックチューブを仕切る「遮光管(遮光板)」なるものが安価で出ています。その効果は確かにあるようですが、バーナーをこれだけ包み込んでいいものなのか…。光量、対候性、放熱性、取付強度など不安要素が多いです。
先ほども書きましたが、社外品ではセラミックチューブの白いものがあります。これは明らかにグレア光を抑えようとしたものですね。遮光板など被せ物で誤魔化すのではなく、根本的に黄銅色を出さない考え方なので、非常に理に適った手法だと思います。
もう一つ…、私が乗っているアコードワゴンにも使われているプロジェクター式についてです。
プロジェクター式はマルチリフレクター式の様にバーナー背面のリフレクターで配光コントロールするのではなく、表面の凸レンズでコントロールしています(だからD2Sにはレジストが不要)。
あの小さな凸レンズでコントロールすれば良いのですから、リフレクターは非常に小さくて簡単なもので済みます。そこがメリットです。しかし凸レンズに光を通すため、光の端にプリズム現象が生じ、光が分解されるというデメリットもあります(光の周囲が紫色やオレンジ色っぽくなる)。また、光の飛距離も長い代わりに、照射する部分としない部分の分れ目がはっきりしすぎているのもデメリットといえるかもしれません。
この様に小さくシンプルなリフレクターで済むプロジェクター式ですが、実は車によってはそのリフレクターに“ある工夫”を凝らして複雑な形状にしたものがあるらしいのです。
ある工夫が凝らしてあるもの…、そう、グレア光を抑えた形状のものです。リフレクター下部を大きくえぐって、セラミックチューブの反射光を殺しているんですね。噂ではS2000などがこれにあたるらしいのですが、私のアコードがどうなのかはよく分かりません。
どちらにしてもプロジェクター式の場合、マルチリフクレター式に比べて光の束が多く、その上レジストも無いため、マルチリフレクター式よりも白い光を発しやすいと言えるでしょう。
とまぁ、長々と書いてしまいましたが、純正バーナーの発光色が違う原因をまとめますと
(1)キセノンガスの量で違う。
(2)セラミックチューブの色によって違う。
(3)レジストの有無や色によって違う。
(4)プロジェクター式の場合、反射板形状によっても違う。
という事でしょう。
私の乗っていたトルネオの最初のバルブは、純正範囲上限付近のキセノンガスの量(4500ケルビン相当)だったのかもしれません。しかしそれ以上にセラミックチューブとレジストの色が灰色だった事の方が大きな要因だと思います。逆に、最初に交換した茶色いバーナーは、セラミックチューブとレジストが赤茶色だったのかもしれません。こちらは見ていないので推測ですが…。
つまり、純正バーナーではキセノンガスの量の差というのは思いの他小さく、これが原因で圧倒的な色の差を生んでいるとは考えにくいのです。もちろん、その差がゼロではありませんが、原因の大半が(2)と(3)だと思われます。(4)は私たち素人にはどうしようもありません。
ケルビン数はあくまでも発光源の色温度です。しかし私たちが目にしているのは、ライトユニットに収められたあとの反射光です。つまり5000ケルビンのバーナーを入れていても実は5000ケルビン以下の色を見ている可能性が非常に高いのです。
もしHIDバーナーの購入を予定されている方がおられましたら、一度自分のライトのリフレクターを見て、グレア光が混じっていないか確認されるといいでしょうね(プロジェクターは難しいですが)。そして購入予定のバーナーのレジスト&セラミックチューブの色も見るといいでしょう。少しでも表示ケルビン数に近づける事ができるはずですし、純正同等のケルビン数でも相当な純白光を得られる可能性があります。

最後ですが、今回私は5500ケルビンの安価なバーナーを買いました。自分ではちょっとケルビン数が高いかなぁとも思いましたが、見ての通りセラミックチューブが銅色です。そこそこの黄銅色が混じる事を考慮しての選択です。ただし、アコードのリフレクターがグレア光対策されたものだったら青いかも…。いえ、同じバルブをお友達のHIROさんが付けられており、純白と仰られていたので安心しています。HIDは振動に弱いので耐震性とうい面での作りにおいて心配ですが、とりあえず交換したら、また報告したいと思います。
長々と読んでいただきまして、ありがとうございました。