
先日、アコゴンのスタッドレス交換に行った際、店頭にシビックRユーロとフィットRSの6MT仕様が置いてあり、シビックの方は鍵がかかっていたため乗り込めませんでしたが、フィットは施錠されていなかったので乗り込んでみました。
エンジンをかけてみると、以前
初期型のRSを試乗した時と同じ印象でした。アイドリングがとても静かで大人しいエンジンという感じ。しかしシルバー色であしらわれている6速のシフトノブを各ギヤへコクコクッと入れていると何だか急にレーシーな気分に(笑)。でも展示車ということで試乗は無理です。

そしてつい先日、会社帰りにアコゴンのフロントブレーキパッドを交換するためディーラーに寄ると、オレンジ色のRSが営業車駐車スペースに置いてありました。当然ですが、サービスマンに尋ねました。
「あのフィット、6MTですか?」
「ええ、そうです」
「試乗してもいいやつ??」
「乗れますよ!」
ということで、フィットRSの6MTに試乗してまいりました。
実は私、このたび出たRSにはあまり興味がありませんでした。興味がないというか、上がノイジーで回らないL型エンジンに6MTをドッキングさせて、いくらショートストロークで短いシフトノブであってもあんな遠くて低い位置にあったんじゃ、それは「やっつけスポーツ」だろ!という思いがあったからです。
果たして実際に運転してみてその思いは変わったのか変わらなかったのか…。
因みに今回の試乗は夜だったため、写真はまともなものがほとんどありません。あしからず。

ボディカラーはRSのイメージカラーであるサンセットオレンジⅡ。初代シビックRSがオレンジでしたが、デザインが違うとオレンジの色合いも少し違ってみえます。
デビュー当初、ソリッドのオレンジはちょっとなぁ…って思っていましたが、実際に見ると光沢感抜群で安っぽさもない。意外とこのフィットには似合っていると感じました。やはり車はカタログだけじゃ判断できませんね。

顔つきはバンパー開口部形状が少々ガキっぽくて私の好みじゃありませんが、この派手なオレンジに負けない顔つきにするとなると、こういった感じになるんでしょうか…。前期のRSが幾分大人しい顔だっただけに、今回は15Xにその雰囲気を受け継がせ、RSはちと派手にいっちゃえ!という事なのでしょう。
まぁ、見慣れてくるとこの顔も最初の印象ほど悪くはないと思い始めました。

RSのみヘッドライトベゼルがブラックです。私は昔からヘッドライトのベゼルはブラックが好きで、以前乗っていたトルネオ(初期型)も後期型のブラックアウトベゼルに変更していました。彫りの深い目つきになるのがいいんですよね。

リヤのバンパーだけはノーサンキュー。加えてオールクリアレンズも。どんなにスポーティなデザインであっても端正な一面も残しておいてほしかったです。

MC直前にオレンジが追加された時のRS。バンパー下部のデザインも私は断然こっちのほうがまとまっていて好きです。

こっちはUSフィット。シビックもそうですが、US仕様ってどうして品の良いカッコよさなんでしょうかね。ホンダは国内版のスポーツグレードをどうしてもガキっぽくして、結果的にカッコ悪くして売っているようにしか思えないんですけどね…。
あ、あくまでも好みの話を好き勝手に書いておりますのでお許しを…。

ホンダは最近、ガンメタのホイールをほとんどの車に採用しています。このRSもそうですし、昨年MCしたインスパイアまでもがガンメタホイールになっていました。個人的には明るいシルバーのホイールの方が好みなので、スポーティグレードのほとんどにガンメタを採用する今のホンダ車には残念な気持ちがあります。私はスポーティな車が大好きでありながら車に男臭さは求めないタイプなので、そういう意味でいうと私はホイールに関してだけは色もデザインもトヨタ派です。
ただ、このフィットRSのオレンジにはガンメタが似合ってるなと思いました。

メーター類は全てアンバーで統一。少し攻撃的なこの色を、最近のホンダ車のトレンドとなっているグラデーション的な点灯方法にさせる事によって優しい雰囲気を作り出しています。緑色と青色がごちゃ混ぜに発光するハイブリッドよりも断然こちらの方がまとまりがあると思うのですが…。

ダッシュ素材の色は昼間乗り込んだRSで確認しましたがブラックでした。ブラックの内装は一歩間違うと非常に安っぽく見えてしまいがちですが、フィットのダッシュデザインは少しこってり系なので、そういう意味じゃデザインが色をカバーしている印象を受けました。
フラッシュ焚いた写しているので、写真からはどうにも評価しずらいでしょうね。
シート色は部分的にオレンジ。ボディカラーに関係なくオレンジ色しか選べないというのはどうなんでしょ…。せっかくノーブルな印象のディープサファイアブルーパールという色のボディカラーを選んで内装がオレンジって、私は受け付けないです。これって好き嫌いじゃなくセンスの問題だと思います。色使いだってその手のプロがいるはずなんだから、色の組み合わせとしてタブーかどうかをもう少し考えてくれればと思いました。
さて、なんだかんだと書きながらやっぱりこの車は走らせてみてインプレッションを語りたい1台です。時間的にも余裕があったので、少し街中から外れて田舎の峠も走らせてみました。大きな声じゃ言えませんが
かっ飛ばしました…。

あくまでも私個人としてこの車の走りをトータルで評価すると、よい意味で期待を裏切られた感じでした。悪くなかったんです。突出したものは無いのですが、思いの他スポーティでした。少し噛み砕いて書いてみますね。
◆エンジン◆
何よりもエンジンに関してが一番驚きました。随分前に試乗した初期型1.5RSによって、L型エンジンというのは中高回転域を捨てた吹けの悪いエンジンであるというのが私の中で完全に固定化されていましたが、このRSはあのL型とはまるで別物でした。はっきり違うのは中回転域から上です。抜けがかなりいいんです。ロングストロークエンジンな故に5500rpmを越えるとさすがにきつくなりますが、それでも初期のRSと比べると歴然の差。あの低中回転型のL型をよくもこれだけ激変させたものだと驚いたと同時に、今回のRSを当初獄評した自分を反省しました。
吹け方自体はB16Aなどの従来のスポーツVTECのような鋭いものではありません。剃刀のような鋭いレスポンスはなく、若干鈍いレスポンスをギヤリングでカバーさせて吹けの鋭さを演出している感じです。
音は結構気持ちがいいのですが、スポーツVTECならではの甲高いものではありません。なかなかスポーティな音ですが、どちらかというと渋めの快音?。鼻はよく通っているけどなぜか鼻声…、みたいな音と言っても分かりませんかね?(笑)。EGシビックのVTiっぽい音とでも言いましょうか、ちょい音が低いんですよね。
もう一つ私が気に入ったのがバイブレーション。私はVTECの魅力の一つにバイブレーションの気持ちよさがあると思っているのですが、ここ数年発表されているホンダi-VTECエンジンはどれもバイブレーションが気持ちよくありません。滑らかな中にも気持ちのよいバイブレーションというものがありますが、最近のi-VTECは吹かすと滑らかどころかノイジーなものばかりです。しかしこのRSのL型は凄く気持ちのよいバイブレーションを感じます。
ただ、うるさい注文をつけるとすれば、あと何か一つだけスパイスが欲しかったかなぁとは思います。高回転域で背中がゾクゾクってくるようなドラマチック感とでも言いますか…。B16A、H22A、F20Bを乗り継いできた私の意見ですので、もちろんこのエンジンに大満足な方は多いと思いますけどね。
◆6MT◆
決して突出した性能を持ちあわせているわけではないこのエンジンを、よりスポーティに演出させているのが6MTです。特に驚いたのがスタートダッシュ。鋭い加速と共にあっという間に吹けきります。それもそのはず、1速で40Km/h程度しか出ないほどのローギヤリングです。 その後のギヤの繋がりも悪くはないのですが、5速と6速の速比があまりにも近く、個人的にはもう少し5速と6速を離し、1速以降をクロスにした方がよかったんじゃないかと思いました。スタートダッシュでは強烈な印象がありますが、今回のようにワインディングで2~3速を多用すると若干ギヤリングがワイドに感じます。いや、本来これでも充分なんですが、1速の加速感を味わい、抜けの良い快音を響かせて走っていると、以前乗っていたDA6インテグラを思い出しまして、レブまで回せば5800rpm付近でポンポン繋がって加速していくあの気持ちよさが欲しいと思ってしまいました。インテグラは5速100Km/h時で3800rpmという今じゃ考えられないほどのローギヤリング仕様でしたが、そのおかげでワインディングではグイグイ登っていき、病み付きになる気持ちよさがありました。。
フィットもそこまでとは言いませんが、結果的に快適仕様の6速MTになっちゃってるんで、2~5速をもう少し1速に近づけて、各ギヤをクロスにすればいいのかなぁと思いました。
シフトフィールはコクッと軽く決まるもので、気持ちいいけど少し軽さを感じます。もう少しだけ重さのあるフィールだと100点満点だったのに。
◆サスペンション◆
いいです!凄くいい!
もともとMC前のRSだって凄くいい足をしていたと思うのですが、今回少しだけハイペースで走らせてみて、やっぱりいい足だと思いました。MC前のRSよりも随分と引き締められているのは間違いないようで、街中じゃ少し揺すられる硬さを感じますが、ハイペースになってくるとフラット感が増し、得意なステージが街乗りじゃないことを感じさせます。まさにロード・セーリング(RS)に相応しく、路面のアタリを爽やかに感じながら走ることができる、そんな印象です。ホンダのスポーティグレードの足は引き締まった硬めの乗り味でありながらショックのいなし方がとても軽く、むしろベーシックグレードの柔らかい足の車の方が乗り心地が悪く感じることが多いです。
そういう意味でも、ホンダのスポーツサスは贔屓目なしで本当にいい味付けだなぁといつも思ってしまいます。
◆ドラポジ◆
今回、唯一文句をつけるとすればドラポジに関して。高すぎです。
MC前のRSの試乗記でも同じことを書いた記憶がありますし、先の白いRSに座った時もそう感じてガッカリしましたが、これほどいい足とエンジンと6MTをもちながらこの高いドラポジはもったいない。私のドラポジではシフトレバーが短くて遠いんです。もちろん運転に支障があるほどじゃありませんが、もう少し太もも付近で手首のスナップをきかせてシフトチェンジしたい。恐らくセンタータンクレイアウトが災いして、シート高は改善しようがないんだろうと思います。
バリバリのスポーツモデルじゃなくあくまでもコンパクトカーですから、こんな事にケチをつけるのは可哀想ですが、シフトチェンジの一連の操作ってMT車を気持ちよく走らせる上で一番重要なファクターだと思うんですよね。この点4thプレリュードは最高でした。クラッチも上から踏みつけるんじゃなくて前へ踏みつける。些細なことですがこれがMTを操る上でとても気持ちよくて、コンパクトカーやセダン出身のスポーツグレードではこの点において2ドアスポーツには絶対に敵わないと私は思っています。
◆パワステ◆
MC前のRSやハイブリッドで感じたパワステの軽さも、このRSではきちんと見直されていて重さを出しています。
◆最後に◆
前述の通り、私はこのRSを乗りもしないで獄評してしまったことを反省してしまいました。ミニバンやハイブリッドばかりに手をかけているホンダですが、本気を出せばこんな気持ちの良い走りをする車が出せるんですよね。昔はこういった車がズラリと揃っていたのでホンダ車=走りが気持ちがいいというイメージが定着していましたが、今やそのイメージを取り戻すことは不可能に近いと感じます。このフィットRSをどれだけの方が手にいれて感動されるのかは分かりませんが、昔のようにどの車に乗っても「ホンダのエンジンは気持ちがいいね」という評価を得られなければ、“ホンダ=スポーティ”というイメージは過去のものとなってしまいます。
今のホンダVTECの気持ちよさというのは、今やどこのメーカーも持ち得ています。そして今回乗ったRSの気持ちよさというのは、以前のホンダ車では標準装備でした。
そんな事でいいのかホンダ!
アラフォーなおじさんは、久しぶりに気持ちの良いホンダ車に乗ってそう思ったのでした…。

因みに試乗の帰りに自分のアコゴンに乗って思ったこと。
高回転域の爽快な伸びきり感は、
やっぱり二次バランスシャフトのおかげだよな~…。
フィットRSの二次バランスシャフト付きが出たら、真剣に欲しいかも…
外観はUS仕様でね…