
フジコちゃん、借金のカタに…
売られてませんっ!
2026年3月13日(金)に全国の映画館で公開された
アニメ映画"パリに咲くエトワール"を観てきました。
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劇場アニメ『パリに咲くエトワール』本予告(30秒)| 2026年3月13日(金)全国公開
この映画は原作を持たない完全オリジナル作品で
公開当初は特段大きな話題にもならず興行成績も振るわなかった作品でしたが、
公開後日が経つにつれて徐々に観た人の絶賛の声がX(旧Twitter)で聞かれるようになり
最初は興味が全く無かった私ではありましたが、
少しずつ気になってきて、先日ついに観に行ってしまいました。
結論から言うと、観に行って良かったです。
観た感想はと言うと、絶賛の声が多い事に十分納得の行く良い作品でした。
個人的には好みのタイプの作品では無いという事もあって
そこまで持ち上げるつもりはありませんが、
近年稀に見る良作である事は間違い無く
少しでも気になるのなら観ておかないと確実に損はする、程度の感じでした。
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劇場アニメ『パリに咲くエトワール』長尺予告| 3月13日(金)全国公開
公開されるまでその存在を知らなかった私は公開前の話はわかりませんが、
"コードギアス 反逆のルルーシュ"の谷口悟朗監督、
"ガールズ&パンツァー"の吉田玲子脚本というスタッフの名前に連なる
"メカデザイン:片貝文洋"、"メカ作画監督:橋本敬史"、"殺陣作画監督:中田栄治"といった
予告編映像や公式サイト上で見られる雰囲気からは程遠いスタッフ陣に
実はロボが出てきて戦闘シーンがあるのか?
みたいな話題があったとか無かったとか…。
まぁ、言いたい事はわかります(苦笑
自分も公開前から注目していたら、恐らくそんな妄想をしたかもしれないですし。
しかし、実際に公開された映画は予告編映像から伺える作品そのものでした。
終始20世紀初頭のお話でメカとか殺陣バトルとかいったような
ファンタジー要素はほぼ皆無で最後まで安心して見られました。
逆に、そういうサプライズ的なものを期待した人にはガッカリかもしれませんが、
そもそもそういう人がこの作品を見るだろうか?とも思えますね(^^;
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劇場アニメ『パリに咲くエトワール』short movie“#緑黄色社会 による挿入歌「étoile」♪”| 絶賛上映中!
本作を見ていて個人的に強く思った事がふたつ。
・ひとつ目
「作り手の熱量が最初から最後まで限度を超えている」なところ。
とにかく作画関係を中心に映像カロリーが高すぎました。
画面に映る人物は背景の一人ひとりがちゃんと各々動いていて
主要人物だけでなく脇役からモブに至るまで手足の先まで細かく動いていて
その動きもちゃんと意味のある動きをしていたところ。
その人が何を考えどんな気持ちでそう動いているのかが
モブキャラクターまでわかるように描かれているのが細かすぎて凄かったですね。
セリフ描写でもモブのセリフで主人公の変化が見て取れるところとか。
序盤ではパリに来たばかりで元気溢れる主人公フジコに
「今日も元気だね!」と声をかけてくれる町の人。
でも後半は「今日は元気だね…」とセリフが変わっていて、
日が経つにつれて自信を無くし画家の夢から遠ざかっていったフジコの心境まで
モブキャラクターのセリフでわかってしまいます。
そんな細かいコダワリが全編に渡って埋め込まれているのはとんでもないハイカロリー。
いくらコンピュータ制作が普通の現代とはいっても並々ならぬものだと思います。
バレエのシーンも実際にバレリーナの踊りをモーションキャプチャーで取り込み、
それを元に手描き作画で描くというハイカロリーな手法を取っているので、
止まるべきところでキチッと止まるバレエの動きをしっかり再現していますし、
一人だけ東洋人でリズム感が違う千鶴が一人だけテンポがズレている描写も
全員を手描きで描いたうえで千鶴だけワンテンポズラす事で再現するところとか
普通に観たらまずわからない細部まで細かく描写されている恐ろしさ。
東洋人と言えば、後半に出てくるフジコのバイト先の先輩はフジコを虐めてるように見えて、
実はフジコが客から東洋人だとバカにされないように厨房から出さないで守ってたとか
サブキャラクターの細かい心情まで描かれているのもポイントでしたね。
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劇場アニメ『パリに咲くエトワール』short movie“マチルダと千鶴”| 絶賛上映中!
バレエ団の先輩のマチルダも、嫌味ないじめっ子かと思いきや
千鶴の能力をしっかりと認めて成長する為にアドバイスしたうえで
千鶴の性格も理解していてわざとキツめの口調で背中を押しているのもポイント♪
・ふたつ目
「作品としてあまりにも美しく綺麗にまとまってしまっている為に、
後味が良すぎて観終わったあとに満足してしまい印象に残りにくい」ところ。
この作品には前述の通り意表を突く展開みたいなサプライズ要素とかはありませんし
物語のラストが綺麗に締めくくられていて、
さらにはエンドロールでじっくり余韻に浸らせてくれる事もあって
なんかもう、満足を通り越して気持ちが成仏してしまうくらいさっぱりした気分になります。
強烈なインパクトが無いので、特別に強く印象に残る場面がなかなか無いのですよね。
加えて、劇中の登場人物に根っからの悪人が居ない事も手伝って
劇中での人物間のわだかまりなんかも無く終わるのですっきりし過ぎています。
それは本当は良いところなのですけどね。
つまるところ、往年のジブリ作品とか近年の新海誠作品みたいな感じで
アニメファン向けでは無い万人向け作品ですが
その割には目立つセールスポイントも無く
アピールできない事からちょっと売り込みにくい作品で、
それが興行成績的に振るわない要因とも言えます。
その良さがネットのクチコミで広がって行ってるところは今風ですね。
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劇場アニメ『パリに咲くエトワール』short movie“【 棒 術 vs 薙 刀 】”| 絶賛上映中!
あと、この手の作品によくある、主人公のキャストが声優さんでは無い方で
サブキャラクターのキャスティングにベテラン声優を配置している点。
主役二人の声と演技はなかなか良かったので不満はありませんが、
サブキャラクターの声が多くのアニメ作品でお馴染みな方々ばかりで豪華すぎました。

冒頭から聞かされるガトーとハマーン様の日常会話とか
ついつい変な事を考えてしまいます(^^;
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『パリに咲くエトワール』×緑黄色社会「風に乗る」コラボレーションミュージックビデオ |3.13(金)公開
この作品が私に刺さった理由のひとつとして、
谷口悟朗監督が本作のコンセプトに据えていた
「例え売れなくても今作りたい作るべき作品を作る」という点。
これ、マツダのMAZDA3に通じるところがあるんですよね。
MAZDA3は販売面を兄弟車のCX-30が担うので、
例え売れなくても新世代マツダの象徴としてやりたい事を思いっきりやる、
というのがコンセプトでした。
その為に(主に日本では)売れませんでしたね。
MAZDA3乗りとしては、そんな志も共感したところでしょうかね。
本作は公開から1か月を過ぎていますが
映画館での上映が既に終了しているところが多いのは
興行成績が振るわなかった事や春休み期間で大作が多数公開されている事から
仕方がありませんね。
気になる人には見に行って欲しいところですが、もう上映している映画館も無く…。
今後配信やTV放送があったら是非観て欲しい作品ではあります。
ただ、本作は若い人向けの作品ではなくて、どちらかと言うとやや高年齢層向けですね。
私の年代だとちょっとグッと来ます。
40代以上のアニメ好きにはちょっと観て欲しいかなって思います。
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『パリに咲くエトワール』×緑黄色社会「風に乗る」コラボレーションミュージックビデオ