久しぶりの懐かしみシリーズです。今回は3代目プレリュードですが、実は随分前に3代目プレリュードのネタを書いていまして、その頃はまだ画像の複数アップロードの方法を知らなかったため、内容はかなりあっさりしたものでした。しかし今回、画像と説明内容を分厚くして書いてみたので一緒に懐かしんでいただけると嬉しいです。

1987年(昭和62年)4月に登場した3代目プレリュード。初版カタログは真っ赤な表紙でした。

そして、プレリュード自体のイメージカラーもこの赤でしたね。
皆さんはプレリュードといえば、まずはどの型を思い浮かべるでしょうか。
私は4代目のオーナーだったにもかかわらずなぜかこの3代目がパッと思い浮かびます。

なんたってこのプレリュードはボンネットフードが低い。低いというか薄いという言葉がピッタリ。
この車ほどボンネットフードの低さに拘った車はなかったでしょうね。
ボンネットが低すぎるが故に、横のプレスラインをフロントフェンダーに走らせることができなかったりフロントバンパーの絞込みに苦労したとか、当初デザイナーさんは相当苦労したらしいです。フェラーリのスタイルはFFでも実現可能であることを証明したようなもんですよね(笑)

2代目プレリュードも相当ボンネットフードが低い車でしたが、3代目はそれよりも30mm低く、2代目の途中で追加された2000ccDOHCエンジンを積んだ追加モデルSiと比べると50mmも低くなっています。
デザイナーも苦労したでしょうけど、一番泣いたのがエンジン屋さん。「イメージとしてはエンジンレスぐらいのつもりで行け」という命令が下ったとか(笑)。昔のホンダエンジンニアは、いつも最後に泣かされるのがエンジン屋でしたね。
エンジンについてはあとで書きますが、2代目と同じ2000ccのDOHC(B20A)でありながら当然大幅に手が加えられています。そりゃ50mmもボンネットを低くするんですから、エンジンがそのままじゃここまで低くはできなかったでしょうね。

正面から見るとよく分かりますが、ボンネットフード中央部が一段下がっているんですから、その低さは強烈です。このボンネットの中に2000ccのDOHCエンジンが納まっているとは到底思えないほどですよね・・。

3代目プレリュードの特徴の一つでもあるボンネットディフレクター。整流効果もさることながら、見た目でも私はかっこいいと思っていました。これがなかったらノペっとした退屈なボンネットに見えていたんじゃないかと思います。

フレッチングテールと呼ばれる独特のトランク先端処理。ノッチバックのトランク末端処理としてはどこかダラ~っとした感じがして私はあまり好きじゃなかったのですが、街中で見かける3代目はリヤスポ付きがほとんどだったのであまり気になることは無かったかも。

トップグレードの2.0Si。
外観は唯一の14インチタイヤを履くもののホイールはキャップです。フォグランプもSiのみ標準。ガラスサンルーフはプレリュードの売りの一つだった「全車標準装備」。

一番売れたグレードの2.0XX。2代目を含めてこのグレードを「ダブルエックス」と呼んだり「ペケペケ」なんて呼ぶ友人もいたなぁ・・。
タイヤは13インチでホイールもキャップ。でもそれ以外はSiとほぼ同じ装備なので一番お買い得感のあるグレードでした。

こんなグレードあったの?って言われそうな2.0XR。
バンパーが上部のみカラードで下は黒の樹脂むき出し。ドアミラーも黒でクルーズコントロールも省かれます。
因みにうちの親父が乗っていた初代プレリュードは、プレリュードの中でも一番スポーティなグレードでして、これがXRというグレードでした。タイヤが唯一ポテンザだったりハニカムグリルだったりバンパープロテクターが付いたり・・。なのに3代目ではこのような廉価グレードになってしまって残念です・・・。

私は見たことがない2.0XL。
バンパーはオール樹脂むき出し。タイヤも165SR13にグレードダウン。でもサンルーフ付きです(笑)。

1年後、ホンダ恒例のイヤーモデルにスイッチ。
フロントウィンカーとリヤコンビネーションランプ(ガーニッシュ含む)がスモークレンズ化され、SiとXXにはブロンズガラスが採用されました。

街中で見かけるプレリュードってほとんどがリヤスポ付きだったので、カタログの標準状態を見るとフレッチングテールに目がいっちゃいます・・・。ここだけは2代目や5代目の様な処理が好きだったんですけどね。
そうは言いながらも、プレリュードって歴代全てがバックシャンだなぁと個人的には思っています。アメリカでは“車のカッコよさはバックスタイルで決まる”なんて言われていましたが、ホンダ車がアメリカで大人気なのもリヤスタイルがかっこいいからかな?なんて勝手に思っています。

こういう洒落た雰囲気のカタログ、大好きです。

欧州仕様のプレリュードも載っています。欧州はポジションがオレンジ厳禁でしたっけ?
ここが白色レンズに変更されています。

こう見ると3代目は5代目とそっくりで、ホンダの思うプレリュードとは原点に立ち返った端整な3ボックススタイルなんだろうなと推測できます。

日本仕様もポジションは白だと良かったのに。

内装はこんな感じでした。
ホンダが得意としていた包み込まれるようなデザインですね。そしてホンダ車の定番だったトレー式ダッシュボードも。トレー式だと安っぽくなりがちですが、ホンダのそれは決してそんなことはなかったと感じていました。

そしてシートも2代目から4代目まではサイドサポート部が張り出したバケットタイプでしたね。4代目乗りだった私もサーキットではノーマルシートでありながら交換を全く考えず最後まで走れたほど重宝していました。

ホンダ車のメーターはこの薄いブルーが良かったですよね。夜間の室内が思いのほかムーディで、当時2代目プレに乗っていた会社の後輩君も私のDA6インテグラのライトブルーのメーター照明を見て羨ましがっていました。

このイヤーモデルでは、Siの4WS車にエクセーヌ内装が設定されました。汚れが心配な色ですが、肌触りはすごく良かったはずです。触ったことがないので感触を書けないのであります・・・。
そういえば、これまで紹介した3代目初期型では、F1スペシャルエディション、プレステージブラックという限定車が発売されたのですが、これらをご存知な方はかなりの3代目マニアかもしれません。
さてエンジンの話しです。
エンジン自体はZCなどのように“中空カムシャフト”だの“常識破りのバルブリフト量”だの、目から鱗的なエンジンではないので、いつもよりは大人しく書いてみます(笑)。

3代目プレリュードのエンジンは2機種。どちらも排気量2000ccで型式がB20Aですが、この2機種は動弁機構をはじめ多くの内容が異なっています。
写真はSi用のB20A(DOHC)。当時のホンダ車で有名になった“整備屋泣かせ”という言葉がありますが、プレリュードはまさにその筆頭だったと思います。
画像で分かると思いますが、エンジンが後ろに傾けて搭載されています。2代目ではエンジンを15度前傾させていましたが、3代目では2機種ともとも18度後傾させています。

まずはSi用のDOHC版B20A。エンジンヘッドカバーがホンダフォーミュラーカーエンジン似ですね。無論、燃料噴射装置はPGM-FI。ボア×ストロークは81×95mm。ロングストロークエンジンですね。
◆最高出力:145ps/6000rpm
◆最大トルク:17.8kgm/4500rpm
※ネット値
2代目で途中追加されたDOHC版B20Aですが、確かデビュー当時はZCのようにヘッドカバーがゴールドだった記憶がありますが、3代目ではブラック塗装に変更されてますね。そういえばZCも途中からゴールドからブラックになったっけ・・・。
話しが逸れてしまいましたが、2代目でデビューしたB20Aから基本的には大きな手は入ってはいないものの、エンジンフードを50mmも下げるために実はかなりの改良がなされています。
エンジン後傾搭載が低ボンネット化へ一番効果的だったのはもちろんですが、エンジン本体ではクランク軸にあるドライブプーリーとカムシャフトのタイミングプーリーの小径化がかなり効いています。もちろん、そのためにより屈曲性に強いベルトを採用しているのは言うまでもありません。

更に、ホンダがよく使う手法である複合吸気システムが新たに採用されています。
通常では細くて下から大回りする格好のプライマリーポートに吸気を通し、5000rpmを境にセカンダリーポートのシャッターを開いて約1.5倍の流路面積を確保しています。
そしてご覧の通り、エンジンを後傾させたおかげで吸気ポートの捻りが従来よりも少なくなり、このおかげで2代目のB20Aよりもパワーアップしているそうです。ただし、出力表示がグロスからネットに変わったため、160psが145psへと数値自体は下がっていますが、実際はパワーアップしているそうで・・・。

XX、XR、XLに搭載されたもう一つのB20A。
◆最高出力:110ps/5800rpm
◆最大トルク:15.5kgm/4000rpm
※ネット値

こちらは2代目1800ccES型と基本構造が同じ1カム3バルブエンジンですが、従来のCVCCシステムは廃止。排気量も車両重量増に合わせて2000ccにアップ。安価に提供するという意味で常套手段となりつつあったCV(可変ベンチュリー)型キャブレター仕様としています。ただし2連装でスロットルボアも大口径。低速から高速まで吸入空気量に比例してベンチュリー面積が連続変化する可変ベンチュリー気化器の採用、しかも2連装となれば当時日本ではホンダが最も得意とする技術でした。それにインマニに連通管を設けているので吸気性能は並みのキャブレター式よりは数段上と言われていました。
又、このエンジンはDOHC版と多くの部品を共通化させていて、タイミングベルトの掛かり方は当然DOHCとは違うものの、タイミングプーリーを共通化させたり、クランクシャフトではベアリングやカウンターウェイト、ジャーナル径もDOHC版と共通化させていています。ボア×ストロークも全く同じでむろんボアピッチ91mmもブロック高さも同じときています。部品の共通化って何となく悪い意味に捉えられがちですが決してそんなことはなく、共通化することによって上級機も下級機も安く作れる、つまり相対的にエンジン価格を下げることができるわけですから、立派な方法だと思います。もちろん、重要な部分は専用品になっていますけどね・・。

さて、3代目プレリュードを語る上で外せないのが4輪操舵システム=4WSです。多くの方がご存知だとは思いますが、機械式の腕角応動型だったこの4WSは世界初の画期的なシステムでした。なんたってオプションでたった8万円ですからね。もちろんこれに伴う特許を世界主要国で確立しての発表だったのは言うまでもありません。
これまでの懐かしみシリーズではいつもはエンジンネタを詳しく書いてきましたが、今回はこの4WSを分かりやすく書こうと思います。興味のない方はすっ飛ばしてくださいね。

そもそも2WSというのは、ハンドルを切ると前輪だけが向きを変え、前タイヤに横滑り角が生じてコーナーリングフフォースが発生したところで車体にヨーが起こります。このあと後タイヤにも横滑りが角が生じ、ここで初めて後輪にコーナーリングフォースが発生してコーナリングという仕事が行なえるわけですね。そう思えば、車体に固定されている後輪というのは力学的にえばいつも受け身ですよね。
ならば前輪と後輪が同時に動けば、前後のコーナリングフォース発生の時間差が極めて少なくなり、車の運動はスムーズで安全に行なわれるのではないか?というところに4WS化への狙いがあったわけです。

仕掛けとしては実にシンプル。でも言うは易し行なうが難し。よくこんな発想ができるなぁと感心してしまいます。まぁ、だからこそ世界各国で特許が取れたわけなんですが・・・。
その仕掛けは絵の通りです。前輪を操舵するフロントステアリングボックスからセンターシャフトへ出力させ、後輪を操舵するリヤステアリングボックス内へ軸回転力が取り込まれます。そのリヤステアリングボックスから後輪を操舵するタイロッドへと出力させているのが分かりますよね。タイロッドは後輪センターより後ろ側につながれており、ここを押したり引いたりすることでリヤタイヤがクネクネ動くわけです。その取り付け構造はフロント同様ですが、フロントはフロントステアリングボックスの回転ネジ(ピニオンネジ)から直動ネジ(ラックネジ)へと伝達され、しかもハンドルを切った量だけラックネジも横にストロークするという単純な動きで済むのに対し、リヤはハンドルを切ると一旦前輪と同じ向きになるようタイロッドをストロークさせ、更にハンドルを切り増すと今度は前輪と反対の向きになる様タイロッドも逆方向にストロークさせる動きをさせています。
分かりやすく書きますと、ハンドルを右に回したとして、その場合前輪が右に切れていくと同時に後輪も同位相、つまり右に切れていきます。ただしその切れ角は極めて小さく、ハンドルを120度(1/3回転)回したとこ=前輪の切れ角10度足らずのところで後輪切れ角最大値1.5度に達し、そこから更にハンドルを右に回すと後輪は徐々に戻っていきハンドル回転角度230度で後輪切れ角は0度に。そこから更に右に切ると今度は後輪が逆位相、つまり左に切れていく・・・。同位相が最大1.5度であるのに対し、逆位相はハンドルを最後まで(1回転+1/4)回転させて最大5.3度切れるそうです。
同位相から逆位相へ切り替わるハンドル切れ角230度というのは、確かにかなり小さな交差点じゃない限り回すことがないし、その時の速度もかなり遅いでしょうから逆位相時での後輪の巻き込みによるスピンなども起こることは無さそうですね。

要のリヤステアリングボックス内部。
この絵じゃわかり辛いので、もっと分かりやすい絵がこの次の絵。

フロントから来たセンターシャフトが最終的には①の偏心シャフトにつながり、そのシャフト先端にはPという芯を振ったピンが出ています。
そのピンに嵌まるのが②のプラネタリーギヤ。このギヤは固定された③のインターナルギヤと噛みあっていて、①の偏心シャフトが矢印方向へ回転すると②のプラネタリーギヤも同じ方向に公転しますが、③のインターギヤと噛みあっているため公転方向とは逆回りに自転し始めます。②のプラネタリーギヤの先端にはこれまた芯を振ったQというピンが出ていて、④のスライダーに嵌まります。④のスライダーは⑤のガイドに嵌まっていますが、上下方向のみ自由にスライドするようになっています。
もうお分かりだと思いますが、②のプラネタリーギヤが公転と自転をすることでスライダーが上下左右に動き、上下方向はスライダーで力を吸収させ左右方向のみをストロークロッドに伝え、タイロッドを介して後輪を操舵しているのです。

リヤタイヤがまずは同位相になり、そこから逆位相に切り替わるメカニズムをもう少し分かりやすく書いてみました。
水色円が①の偏心シャフト、白色円がプラネタリーギヤ、黄色円がインターナルギヤだとし、白く塗り潰した小さな円がプラネタリーギヤの出力ピンQです。このピンQの動きに注目。
白色のプラネタリギヤが左に回転し始まると、出力ピンQがセンターよりもほんの僅かに左に寄っているのがわかりますよね。更に回転し続けるとそこから今度はピンはセンターに戻り、更にその先から右に大きく寄っていくのが分かりますよね。プラネタリーギヤの公転によって出力ピンは一旦左に寄るものの、自転によってセンターに戻り始め、公転自体も右に向きを変え始めるので自転との相乗効果によってピンは大きく右に降り始める・・・。
お気付きかもしれませんが、軸の偏心量やギヤの歯数の組み合わせによって設計自由度があるわけで、後に登場したCBアコードの4WSは“セダンチューンド4WS”なる謳い文句でしたが、車に見合ったマイルドな特性になるようこれらの組み合わせを変えていたわけですね。
因みにこの4WS仕様のプレリュードの後ろについて走った方はおられるでしょうか。
私はよく後ろについてリヤタイヤの動きを眺めていたことがありましたが、正直走行中の4WS仕様ってまるで事故車のように真っ直ぐ走っていません。大袈裟に言えばいつも後輪が左右のどちらかにカニのように斜めに走っている・・。フロントと同位相に動く後輪ですので確かに納得ですが、正直後ろからの眺めは事故車のような走りで好きじゃありませんでした。

そんな4WSも、特許取得するまでにはこんなことをして開発していたんですね。開発をスタートさせた時期がこのアコードを見ればでよく分かります・・・。
ちょっと怖いです・・・

さて、そのプレリュードも2年半後となる1989年11月にマイナーチェンジが行なわれました。

前期型よりもグッと垢抜けたマスクを得た後期型。リトラ車の中でも特に表情というものを持っていなかった初期型プレリュードでしたが、後期型はなんとなく初代インスパイアのテイストを盛り込んで華やかさが出てたと私は思っていましたが、皆さんはどう思われたでしょうか。

ひたすら薄い印象だった初期型に対し、何となく車全体に厚みが出てきたというか、ボリューム感を感じます。

シャープでかっこいいですね。そういえば、ブロンズガラスもハーシェードタイプになってますね。

リヤコンビランプは透明感が増し、また立体感も出してますね。

イメージカラーは赤ですが、実際一番見かけたのはやっぱり黒ですかね・・・

初期型よりもフレッチングテールに違和感を感じにくくなったのは、この立体感のあるリヤコンビランプのおかげでしょうか。

当時、MM思想を強く打ち出していたホンダですが、プレリュードは辛うじてロングノーズスタイルを守ることができましたね。

ナンパ車の代表格だったプレリュードですが、私はこのプレリュードに対しフォーマルな印象を持っていました。まぁ、確かにチャラチャラした男もよく乗ってましたけど・・

TCVってご存知でしょうか。
トラクションコントロールシステムとビスカスカップリングLSDを組み合わせた造語ですかね。私はこのTCVの走りを知りませんが、TCSはスリップというものをエンジン出力側で抑制するもので、LSDは左右のデフをロックするもの。どちらも同時に作動した時ってどんな制御になるんだろ・・・

内装は大きくは変わっていませんが、新たにハンドルとシフトノブに本皮が使われていますね。

そして、エアコンはフルオート式が全車に設定されました。標準じゃないのが残念・・。
ホンダは昔からオートエアコンの操作部がシンプルでセンスよく配置しています。トヨタの「これでもか!」的なズラリと並んだスイッチも確かに高級感がありますが、私はこういうシンプルでありながら整然と並んだ操作面が大好きで、「機能美」という面ではホンダのほうが上だと思うこともよくあります。
さて、グレード紹介です。
MCモデルからグレード構成が見直され、前期型にあった不人気グレード、XRとXLが廃止されました。

最上級グレードはSi-TCV。ATで230万円程度ですので、そこそこいい値段ですね。

ノーマルのSi。恐らくSiで売れたのはこちらのほうでしょうね。
ウィンカー部のクリアがスモーク調だったんだ・・・。知りませんでした。

恐らく一番売れたであろうXX。エンジンは見劣りしてしまうものがありましたが、スタイルの良さとSiとほとんど変わらない装備のおかげでお買い得感は高かったですね。
モデル末期、リヤスポや本革ステアリングを装備した「XXスペスシャルエディション」なる限定車が発売されました。

そしてMCした翌年に追加されたのが、北米仕様のSiステイツ。Siステイツについてはこれまで何度か書いているのでご存知な方がおられると思いますが、エンジンはB21Aという排気量は2100ccのもので、ボディはボディ同色の分厚いサイドモールでかろうじて3ナンバーボディとなっていますが、実質5ナンバー同然でした。
オートエアコンが標準でジュネーブグリーンパールというボディーカラーやグリーンガラスがステイツ専用。更にオプションでタン色の本革シートも選べました。2ドアらしさという意味ではこのステイツが一番でしたね。
注目なのは、B21Aエンジンです。
B型エンジンというのはボア81mmとボアピッチ91mmが基本になっていて、例えば名機B16Aは排気量1.6Lをストローク77mmで稼いでいます。しかしプレリュード用のB20Aでは2.0Lをストローク95mmで稼いでいて、さすがにこれはそこそこのスポーツユニットとして考えると限界に近い。よりエンジントルクを欲しがっていた北米において排気量アップをするとなると、もはやストロークアップは無理です。だからといってボアアップしようにもボアピッチ91mmに対するボア81mmだと、シリンダー間隔は10mm。鋳鉄ライナーぶんを計算するとすでに目いっぱいの設計だったことがわかります。
ちょうどその頃ホンダは4代目プレリュード用のH22Aを開発していて、国産初の鋳鉄ライナースリーブレス構造をモノにしていました。アルミナ繊維、炭素繊維、アルミニュウムの繊維複合材をシリンダーの内面に形成させたFRMというやつです。これをH22Aよりも一足先にB20Aで採用し、北米デビューさせていたわけです。このFRMは確か国産ではH22A以外ではGT-Rだけが採用していたと思います。とにかくお金がかかっている中圧・低速充填鋳造技術なのです。

さて、プレリュードネタの最後は、1987年のMCと同時に新たに追加された「インクス」で〆ます。
インクスはヘッドライト常時点灯が義務付けられている北米に対応するために出来たモデルだそうで、実はうちの親父の愛車でした。

なんとなく初代レジェンド2ドアHTのテイストを感じません?うちの親父は顔のないリトラを昔から嫌っていて、だけど初代プレリュードオーナーだったので、このインクスが出たとき即買いました。このカタログは親父が購入した時のもので、購入時の見積もりも一緒に挟んでありました。

僅かにメッキが使われいますが、たったこれだけでも気品みたいなものが出てアダルトクーペという感じがします。プレリュードって、本来こういう車なんじゃないかって私は思っているんですけどね。
リヤコンビランプはリトラと違ってスモーク調ではありません。インクスに見慣れたいた私は、この明るめのリヤが3代目プレリュードだと思ってしまうんですよね~(汗)

ちょっと渋めのワインレッド。ワインレッドが一番似合っていたホンダ車は、私の中ではDA6インテグラですかね・・。色々理由があってワインを買えなかったんですけど欲しかった・・・。

リトラのプレリュードは運転席からノーズ先端が見えませんが、インクスはほぼ先端までが見えます。DA6インテグラに乗っていた私は、親父のインクスに乗るとまずはボンネットの長さを感じていましたし、内装もやはり1ランク上だと感じていました。

インクスの内装カラーはブラウン。これが凄く良かった・・・。黒い内装=スポーティという短絡的な発想をしがちなホンダですが、リトラのプレリュードでもボディカラーによってはこのブラウンを採用してもよかったんじゃ?って思います。
インクスにはエアバッグの設定があったので、その場合4本スポークステアリングでした。そしてメーターの周囲にはメッキリングがあしらわれ、照明色も薄いブルーではなくグリーンでした。この程よいメッキリングって今のフィットシャトルなんかにも採用されていますが、艶消しシルバーで塗られたリングよりも遥かに品良く感じます。個人的な意見ですけど・・

落ち着いた内装ですね。シートの座り心地もパンと張っててすごく好きでした。
最後はグレード紹介。

リトラのプレリュードにあったSi-TCVというのはインクスにはなく、代わりにエアバッグを標準装備したSi-SRSというグレードがありました。
インクスが登場した時、ベルノ店でこれのガンメタAT車に乗ることができたのですが、B16Aよりも格段にトルク感があって、キックダウンさせた時の加速も断然力強かったのを覚えています。

エアバッグなしのSi。アダルトクーペって感じがして、いいですね~。

そしてXX。
うちの親父はこれの白で5MTの4WS仕様でした。エアコンはオプションのフルオート式で、サンルーフも私のインテグラよりも随分大きくて色々な意味で優雅な気分になれました。
ただし、3バルブエンジンは振動が少々大きく、DOHC版のB20Aよりも加速が悪いのは当然だとしても振動までもが大きかったのはちょっと意外でした。そして4WSの挙動が最後まで好きになれず・・。のちに4代目オーナーになった私ですが、その記憶があり、更にサーキット走行で予期せぬ挙動が出るのを嫌って2WS仕様を購入しました。私の友人が同じ4代目プレリュードの4WSを買っていてサーキットを一緒に走っていましたが、特にリヤを意識することはなかったとは言ってましたけど・・・。
ということで、画像59枚も載せた今回の懐かしみシリーズはいかがだったでしょうか。この頃の車を見ていると、いつの時代になってもかっこよさというものを追求してほしいなぁと思ってしまう自分。今はやれ燃費だ!やれ広さだ!という時代ですが、再び理屈抜きにかっこいいと思える車が沢山出てくると嬉しいんですけどね・・・。
CMもまた懐かしいです・・・
初期型
後期型リトラ(1)
後期型リトラ(2)
インクス