
15年くらい前でしたでしょうか。
3Lカーと言うのがちらほら言われていました。
3リットルで100km走るというクルマでした。
確かアウディA2とVWポロだったでしょうか。
でも、当時はこれらはかなり異質なクルマだったような気もします。
時は流れて今では軽自動車なら3Lカーもいくつか。
ハイブリッドもアクアなら余裕で3L越え。
ディーゼルかガソリンかという差はあれ、
普通に買えるクルマがこうなってきてるんですね。
自分的には縁遠いんですが…(^^;
そして、ルノーからはちょっと面白いコンセプトカーが今年のパリショーでお披露目されるようです。
Renault EOLAB
ガソリン1リットルで100km走るハイブリッドカーみたい。
パッと見の印象は次のメガーヌ?と思ってしまいましたが、サイズはBセグハッチで、
資料上も現行クリオといろいろと比べられています。
ちょっと興味があったので、PressKitと呼ばれるルノーの公式資料を読んでみました。
英語は超苦手ですが、こういう資料になると俄然読む気が起こります(笑)
怪しい読解ですので、誤訳、ミスリードがあってもご容赦で…
超低燃費かつ超低CO2排出とあります。1L/100km、22g/1kmのCO2排出。
これがどれだけ凄いかと言えば、
UK仕様のCLIO4 GTは1.2Lターボで5.2L/100km、120g/kmCO2。
同等排気量のCLIO4 TCe90搭載車(898cc)で4.5L/100km、104g/1kmCO2。
ざっくり5倍走れるってことのようです。
5倍走るための工夫は多岐にわたるようですが、まずは軽量化でしょう。
CLIO4に対して400kg軽くなって955kgであると言っています。


ボディで130kg、ドライブトレーンで160kg、装備品で110kg。相当な軽量化です。
アルミの多用やCFRPを使用すれば軽量化は可能ですが、コストが上がってしまうので、
ルノーとしては適材適所の妥当な価格で軽量化の利点を皆さんに提供したいと言っています。
で、さすがルノーと思ったのは、樹脂(サーモプラスチック)が多用されています。
パネルがそうなっているのは予測可能でしたが、
フロアや片方Bピラーまでもが繊維強化のプラスチックです。凄い大胆(^^;
鉄(高張力鋼)は特別な超超高張力鋼ですが、使われるのは一部の骨格のみに限られています。
そしてボディの後半はほぼアルミ。
天井はマグネシウムだったり、グラスルーフの車はポリカーボネイトみたいです。


ドライブトレーンとしては、フロントもリアもそうみたいなのですが、
ミシュランと開発した145/70R17タイヤを履くようです。
パフォーマンスはそのままに、低転がり性能を追求したものですが、
トレッドパターンで幅がありそうに感じさせること、
サイドウォールの見た目で軽さが醸し出されていることなど、
ルノー&ミシュランこだわりのデザインのようです。
そして組み合わされるホイールは「アクティブホイール」と呼ばれるもので、
リムに仕込まれた温度センサーによって、ブレーキを冷やす必要のない時はスポークの間を
シャッターで閉めて空力性能を上げるという凝ったギミック内蔵です。
Continentalと開発したブレーキはディスクは中心がアルミ、パッドの当たる外周は鉄とか、
パッドも一般的な常時ゼロタッチしている状態ではなく、
完全に離れて引きずり抵抗をなくしているけど、ブレーキのレスポンスは変わらないようにしている
とか、燃費に効くなかなか細かい積み上げをしています。


エアロダイナミクスですが、CD値は0.235。かなり低いですね。
サイドのシルエットがどことなく抑揚の利いたでっかいトヨタアクアのように見えなくもないですが、
追求するとこういうものって似てきてしまうものなのでしょうか…
ある速度になるとフロント下にはアクティブスポイラーが下りてくるというのは、
なんだか昔の国産車っぽいです。
面白いのはリアにもフラップがあって、上の写真の後ろ姿に注目していただきたいのですが、
バンパーから縦にオレンジ色のフラップが飛び出しています。
これも速度が上がると飛び出してくるようです。
そして、Aピラーは2重構造。ガラスとダミーのピラーの間に隙間があります。
同様にフロントバンパー端の縦の溝も、タイヤハウスに向かって穴が開いています。
どちらも空気を通すための隙間で、空気のはく離や渦の発生を嫌って作られたものでしょう。
ちょっとレースシーンからのフィードバックがあるように思えて面白いです。

肝心のハイブリッドシステム。
エンジンは3気筒999ccの75馬力(57kW)、95Nm。数値だけ見れば至って普通のリッターエンジン。
モーターは50kW、200Nm。数字的にはアクアとよく似た感じです。
これに組み合わされるのが3速!のクラッチレスのトランスミッションとあります。
CVTでもなく、DCTでもない。
コスト、重量から見ても小さいクルマにはこちらの方が適していると言っています。
これは欧州ハイブリッド車を指して言ったように思いますが、
現行アコードだったり、トヨタのハイブリッドであったり、変速ギアを持たないハイブリッドもあるので、
特許やら各社の都合や考え方にもよる部分なのでしょう。
リチウムイオンバッテリーはEVとハイブリッドでは求められる特性が違うので、
今販売されているルノーのEVとは少し違うようです。


外観で特徴的なのは、左右非対称のドアでしょうか。
よくある非対称カーと同じく、助手席側には後部ドアがあります。ただ、リアヒンジです。
さすがフランス車だなと思ったのは、ドアは非対称でも、デザインは対称になっている点です。
気が付かないですよね。
そしてちょっとエグいリアのランプ。ランプのレンズはリアウィンドウと一体のお品なんだとか。
後のことを考えてない、訳が分からなくてびっくりするような凝り方です(笑)


内装は意外とコンサバ?
メーターの表示がまるでスマホです(笑)


そういえば、このEOLAB、ルノーの花びらデザインテーマの何に該当するのか?
と思ったら、「WISDOM」だそうです。
DeZirやルーテシアの「LOVE」で恋に落ちてから始まって、いろいろあって、最終的に知恵を得る。
6つのステージのいわゆる「上がりのクルマ」というところでしょうか。
「WISDOM」のコンセプトカーとしては、
昨年のフランクフルトでミニバン?のイニシアルパリが発表されました。
上がりにしては何となくどちらも所帯じみた感じが拭えなくもないですが、
スポーティーな雰囲気には仕上がっていますね(^^)
さて、ここまでダラダラ書いたEOLABですが、
どうもぽっと出のコンセプトカーという訳ではないようです。
そもそもフランスでは政府の目標として、
2020年に燃料消費を2L以下/100kmにするというプランがあって、
それに基づいてのルノーとしての技術的取り組みを示したのが、
このEOLABプロジェクトということのようです。
さすがそういう取り組みだけあって、サプライヤーと開発を行いましたというのが、
文書の随所に表れています。サンゴバン、ミシュラン、コンチネンタル、ポスコ…
残念ながら、日産だったり日本の数あるサプライヤーは出てきません。
他メーカーのことはよく分かりませんが、
PSAの圧縮空気ハイブリッドもそういう動きの中にある技術なのでしょうか。
見てくれだったり、ハイブリッドシステムは6年も経てばもっと進んでいるかもと思いましたが、
1L/100kmが目標という数値だったり、ボディ構造に見られるチャレンジングなアプローチには
ちょっと驚きがありました。
フランス車というと、どうも古いイメージで
デザインコンシャスで…とか、機械がラテンで…とか、燃費は二の次どころかもっと後の話で…
とか捉えていましたが、ちょっと認識を新たにしなきゃなと思った次第。
しかもそれが政府に数値の目標があるとか。
日本もうかうかしてられませんね。