いすゞプラザ訪問記念、、第4弾は『JJ110/120/510型いすゞ・アスカ』です!!
※2011年8月UP
かつて乗用車をラインナップしていたいすゞ、生産/販売した乗用車のうち正常進化(モデルチェンジ/自社開発の代替わり)したのはジェミニと117(→ピアッツァ)を除いてはほぼ『一発屋』(ベレル、ベレット、フローリアン、アスカ)という不名誉な記録かも?しれませんが好むと好まざるを得ず長期生産=乗用車の普通1モデルサイクルが標準で4年と考えた場合 という特徴がどのモデルにもあるのはご承知の通り、いすゞだけではなく弱小メーカーは大メーカーのように潤沢な開発資金により新モデルを次々に開発、送り出す事ができない為、魅力あるモデルも末期は旧態化し必死に特別モデルや新エンジン等を搭載し何とか商品力を維持しながらに寿命更新を図るのが常、アスカも先代に当たるフローリアンほど過保護ではなくいすゞとしては短命ながら83/4~89/3の約6年生存したいすゞの上級車でした!
アスカは発売時のみ車格的に前任であったフローリアンのファーストネームを持つ『いすゞフローリアン・アスカ』を名乗るもすぐに『いすゞ・アスカ』となっています。(以下「アスカ」で記載)
尚、前任のフローリアンとは全くクルマ的脈略はなくフローリアンは60年代にいすゞが自社開発したモノ、アスカは提携先GMが主導開発したグローバルカー、そして90年に後続として登場した『アスカCX』が乗用車撤退に向けた富士重のレガシィOEMであったので立派な『一発屋!!!』、認定です(^_^;)
GM開発のグローバルカー、日本では『アスカ』として登場(83y前期型)
前任はあの名車?迷車?である『フローリアン』!
67y~82yという実に15年に渡りいすゞの上級セダンとして生き続けたフローリン製廃後、83/3に発売されたアスカは先記のようにGMが主導した所謂J-CAR(グローバルカー=世界戦略車構想)に参画したいすゞがフローリアン代替わりとして日本で発売したモノ、姉妹車がオペルやキャデラック、ホールデンやシボレーに生息しました。但し開発はオペル、GM、いすゞの3社がそれぞれに個別で行った為、本国(=アスカの場合は日本)オリジナリティ度が高く足回りと一部外装に共通部分はあるも味付けや意匠等はいすゞ独自開発(姉妹車の一部にいすゞ製エンジンやミッション搭載はあり。)
このやり方は74yに格下だったベレット→ジェミニへの代替わり時に行った事を手本としたものでした。
久々の新型車、アスカはかなり気合の入ったモデルで概要は横置きエンジン+FF方式を採用、この頃には既に小型クラスがFR→FF化の波が訪れていましたがライバルとした両横綱のトヨタ・コロナや日産ブルーバード他三菱ギャラン/エテルナ(Σ)等がまだFRだった時期に一早くFFで登場して注目を集めました!
搭載エンジンも全てアスカ用に新開発されたもので旧フローリアンやピアッツア初期の旧態化したG系/C系エンジンは載せられていません・・・
載せられたエンジンは非常に多彩でいすゞらしくデーゼルエンジン車も設定、下記がエンジンラインナップとなります。
(直4気筒OHCガソリンエンジン)
・1.8L 4ZB1型105ps=JJ110型
・2L 4ZC1型110ps=JJ120型
・2L 4ZC1型電子制御キャブ110ps =JJ120型
・2L 4ZC1-T型ECGI ガソリンターボ150ps=同
(直4気筒OHCディーゼルエンジン)
・2L 4FC1-J66ps=JJ510型
・2L 4FC1-Tディーゼルターボ89ps=JJ510型 (以上psはグロス表示)
いすゞ車、最強モデルではこれまでも意外と走りのHOTモデルを持っていましたが旧態化した2バルブのDOHCをピアッツァ、ジェミニにまだ載せていた時代に初めてアスカはガソリン+ターボを搭載、150psというパワフルなモノでこの初期ガソリンターボ、ワタクシも経験ありますが既存だった日産やトヨタのターボエンジンとフィーリングがやや異なり、それらが典型的ドッカンだったモノっであったのに対し比較的低回転から効くターボフィーリングが新鮮でその大人しい外観に対して意外な速さに驚きを隠せなかったのを憶えています。
それでも後年~現代のターボ車に較べるとドッカンでしたが当時のターボ車の水準とは異なる“スムーズな速さ”を感じましたネ~。
また、これの反対に位置するディーゼル(以下D)とディーゼルターボも低温時のみ始動性にDらしい気遣いは必要ながらそれまでのD車とは違い特にガソリン車に対して神経質という部分は殆どなく振動、騒音も極力ガソリンエンジンの静かさとスムーズさを達成しており特に旧フローリアンDと比較すると天と地の差を感じました。このアスカとジェミニのDでいすゞがこの時期から『ディーゼル乗用車王国』を築いたのも今は昔ですが古くはベレルから乗用ディーゼルにTRYしてきたいすゞの努力を実感できる出来だったのがこのアスカDでした!!
スタイリングはサイドウィンドゥにアメ車の雰囲気は残すも全体的におとなしくフォーマルなセダンとしては及第点だったと思います、ただ個人的には先にデビューしたピアッツァや後年(85y~)のFFジェミニ等秀逸デザインが目を惹いたモノに較べ真面目過ぎオーソドックス過ぎて遊び心がなく地味なイメージに鈍化していた感じがします。強力なライバルが多いこのクラスだからこそもう少しインパクトのあるスタイルだったらアスカのその後も違ったモノになったのでは?なんて思いますが。。。
アスカの脚廻りはまたまたいすゞらしくや々凝ったモノでFrは平凡なストラットながらRrにトレーディングアームとトーションビームを組み合わせ独立式(4独)ではないながらこれに近いしなやかさを実現するとう触れ込みのもの、しかし実際にドライブしてみると私的にはよくできたリンク式リジットとそんなに差は?という感じでした。
ミッションは当初5MTと3速ながらロックアップ式ATを設定、AT車は当時でも4ATが常識化していましたがGM製の高コストATを使っており生産に苦労したとの事、この為イージードライブモデルにはいすゞが苦心の末に開発→商品化した意欲作、NAVi5(電子制御5速AT)を84/8、まずガソリンモデルに、85/2にディーゼルモデルに設定しています。
NAVi5はそれまでのトルコンによる自動変速ではなくMT車で人間が操作する=クラッチを切る→ギアチェンジ→クラッチを繋ぐ という操作をコンピーユータが判断しロボット的に自動変速させる特徴的なものでいすゞの独自開発、開発の意図はMTをベースにするためATミッション開発費が抑えられ機構的にもトルコンのスリップによる伝達ロス=燃費悪化を抑えよりMTに近いフェーリングでイージードライブを実現するというものでした!
ただデビュー時のこのNAVi5はワタクシもドライブ経験ありますが感触はまさにゲテ物以外の何物でもなく変速タイミングやクラッチの繋がり時の振動や微妙なタイムラグ、特徴的なのは繋がる一瞬に空ぶかし状態になり精神的に落ち着かない感じが嫌でしたねー、シフトパターンもATセレクター方式ではなくMT車を意識(手動変速も選べた為)した変速的H型パターンでこれも馴染めませんでした…。
特にディーゼル車では元々が振動があるエンジンなので意図しない空ぶかし時の騒音/振動が非常に気になり一時いすゞはこれの発展型NAVi6という4tトラックのフォワードにも搭載したりしてましたがこれなどアスカの比ではない位乗りにくいものでした。
市場的にもこのNAVi5(6)は受け入れられずアスカと一時ジェミニに搭載したのを最後にその後の設定はされずいすゞも一般的なトルコンATを採用しています。
ただ現代のスムーサー(トラックの自動変速)にもNAVi5の基本技術は生き発展継承、出だしののそれを知っている者としては今のエルフ/フォワード/GIGAのスムーサーにあの極端な違和感は殆ど感じず技術革新をつくづく感じますね。
NAVi5搭載のアスカ2000LJ-Dのインパネ&インテリア
尚マイナーチェンジは83年デビュー後に認可されたドアミラーを84年に採用に85/7、にはフェイスリフトを行い高級イメージに振り廉価版(1.8LT)を廃止します。
84y~、ドアミラー装着の前期型(2.0LS)
85/7~、マイチェン後の後期型(2.0ガソリンLX)
↓後期型Rrビュー(2.0ターボD LF)
更に同85/11になるとガソリンターボをベースにしたHOTバージョンである『イルムシャー』が追加されます!
イルムシャーはご承知の通り西ドイツのチューナー『イルムシャー』が脚廻りにドイツのしなやかさをチューンング、角目4灯の専用グリルや専用エアロホイールキャップ、momoステにレカロといった味付けがなされほぼ同時にピアッツァにもこのイルムシャーを追加設定、86yにはジェミニにも設定され後年のロータスバージョン(ピアッツァ/ジェミニ)以前のいすゞのHOTバージョンとして注目されました!!
85/11に追加されたHOTバージョン『イルムシャー』
↓momoステとレカロがムーディなイルムシャーのインパネ
イルムシャーは地味なイメージのアスカが西ドイツのセンスいいジェントルなスポーティさを身に付けガラリとイメージが変わりこの種のモデルが好きな層にアピールできる充分な魅力があったと思います、イルムシャーはいすゞに勤める友人が買い何度かドライブしましたが勇ましい外観の割にダンパーやバネともに仕様変更しハードになりながらもセダンとしての乗り心地を犠牲にしておらず落ち着いた大人っぽい印象でした。
またこのイルムシャー前後にはこれ以外の一部モデルも大型アームレストやチルトステアリング他充実装備を行っておりイルムシャーとこの充実変更効果もありアスカは旧フローリアンに較べものにならない販売台数を85y~86yに記録(約250,000台)、この時期いすゞとしてはHITと呼べる数字では?と思います。
この他同じ85yにディーゼルのNA版も66ps→73psにパワーUP!
しかし普通ならモデル末期=発売4年目になる87yになると販売は下がり始めこれを危惧したいすゞ最上級モデルとして『LG』を設定します。
LGはシックな高級ボディカラーや新デザインのアルミホイール、Frエアダム、Rrアンダースポイラーにイルムシャー同様にレカロシート、momoステを装備した豪華モデル、や々やり過ぎ?外観のイルムシャーに抵抗のある層にもアピールしながらいすゞ最上級セダンとしての風格を与えアスカ全体のイメージUPを狙います。
LGではNAVi5のパターンをトルコンATのセレクター風に変更、エコノミーモードを新設しておりmomoやレカロも高級味付けとなっていました。
外観も内装もいすゞ最上級車として相応しい味付けがなされた『LG』
↓LGのインパネ
↓LGのインテリア
この他これまで設定のなかったデーゼルターボにNAVi5モデルを追加したり小変更にてカンフル注射し商品価値の維持を行いますが効果はなく87yから始まった販売下降は喰い止められず88yにはピーク時(85y)の約1/3まで減った事もあり翌89年3月、いすゞ上級セダンとしてフローリアン以来売れないながら67yより長く生きてきたこのカテゴリーを去る事を決断し製廃となります。
この時期は格下のジェミニが絶好調だった事もあり不人気でモデルレンジも長くなり商品力の衰えを隠せなかったアスカは先代のような長寿は時代もあり達成できませんでしたね~、お気の毒ながら。。。
当時はバブル景気盛んな時代、セダンでも大きなセールスポイントがないと生き残れずマークⅡに代表されるハイソセダンの一方でレガシィやブルのSSS-R、ギャランVR-4等のようなフルタイム4駆+DOHCターボのスーパーウェポン的セダンが台頭し速そうなスタイルやイメージがなくイルムシャーと言ってもそれらに較べると迫力不足、高級バージョンのLG等もマークⅡ/ローレルと言った老舗との対決は厳しくいすゞは売れ線であったジェミニに集中(新型開発真っ只中…ただこの新型ジェミニ=3代目JT151/191/641型が大スベリしていすゞの乗用車撤退を招く原因となる訳ですが…/('ё')\ )すべくアスカの撤退を選んだ訳です。
尚、アスカ代替ユーザーやいすゞ社内での上級車(重役他社内上位者)の為に後続に富士重工からスバル・レガシィのOEMを受けアスカ廃止翌年の90/6から『アスカCX』として発売されますが冒頭で記載した通りに当然クルマ的脈略は全いので『いすゞアスカ』は自社開発としては一代限りとなってしまいました。。。
後続はレガシィOEMの『アスカCX』
アスカ、一時期、ほんの一時期に売れたばかりにフローリアンのように手がかけてもらえずそれ同様の長寿は達成できませんでしたがイルムシャーという魅力あるモデルや現在トラックシュアNo1を達成した要因の一つであるスムーサーの元祖→意欲作NAVi5、そしてディーゼル乗用=いすゞと言わしめた実力等、当時の勢いは今でも鮮やかに印象に残っておりベレット、117やピアッツァ、2代目ジェミニのような華やかさはなかったものの“縁の下の力持ち”的な『一発屋!!!』だったと思いま~~す!