
偉大なる“UP! DOWN! 野郎たち”!!!…いよいよチェイサー最終回、最終型となる『X100系6代目チェイサー』を取り上げます!
77yにマークⅡの双子兄弟モデルとしてデビュー、時にマークⅡよりスポーティに、時に豪華なパーソナルイメージへとお家の事情で後年加わったクレスタを含んで若干ながらコンセプトの変更がなされ“マークⅡの安物” “マークⅡやクレスタよりわざとデザインを落としている” “兄弟と較べるとチェイサーはね~…” と陰口ばかり叩かれる事の多いやや悲運のモデルでしたが96/9発売の最終X100系は最後にして初めてマークⅡを上回る人気を得ており特にスポーツグレードのツアラー系に至っては製廃後、特に後続モデルの不人気や安全基準の規制等、時代の流れから後年~現在では縦6エンジンが廃止された事もあり高人気を中古で持続、製廃10年を経ながらも一部グレード→ツアラーVのMT はまだまだUP!!UP!!の人気を得ており状態がいいモノは100万オーバーのプライスが付いているという事もご承知の事と思います!
業者オークションの乗用車コーナーをヒマにまかせて覗くと同じ年式、同じような状態でマークⅡとチェイサーのV MTの値段差を見ていると一時は10万~15万以上の開きがあり(チェイサーが高い)歴代の両車ではあり得なかった事で驚いたりしちゃいます(^^;)
X100系でも従来通りのピラード4HTボディでマークⅡとボディを供用する双子モデルながら60以来久しぶりに原点に還りマークⅡを若々しくリファイン、スポーティ路線に回帰し意匠の雰囲気のみならずボディの前後=オーバーハングを切り詰め“走り”の部分に本気で振ったスタイリング、佇まいが人気の要因で同時にFMCしたマークⅡが以前のチェイサーのように“手抜き?”と思われる程の素っ気ないデザインとなりクレスタも非常に地味なイメージになってしまった事もチェイサー人気の大きな要因だった気がします。
チェイサーはマークⅡ含めて90系のぼってりした丸味は抑えられ60~80系に回帰したような直線基調の軽快感溢れるすっきりしたデザインも好評でした。
100系のマークⅡとチェイサーでは普及グレード(グランデ/アバンテ)を含めるとやはりマークⅡの販売がチェイサーの約2倍と上回りましたが実にツアラー系では圧倒的にチェイサーが選ばれていたのもこれまでにない現象だったようです!
↓96/9、最終型X100系チェイサー誕生!(前期2.5ツアラーV)
マークⅡで伝統のスラント化されたノーズはデッキと共に(オーバーハング)をバランスが崩れない程度に絞り込み異形丸目4灯の精悍な顔付と初代30/40をモチーフした3分割の角型テールランプは非常に若々しくスポーティでワタシも個人的に兄弟のみならずこのクラスのライバル車達含めても純粋に“カッコいい!”と思え こちら にも記載しましたが現愛機が何らかの事情で手放さなければならなくなったとすれば代替候補の1つです(^^;)
↓異形丸4の精悍なヘッドライトと初代をモチーフした3分割角型テール!!
↓ベースとなったX100系マークⅡ(㊤前期2.5グランデ/㊦同2.5ツアラーS)
尚、従来マークⅡは70系のワゴンと80系セダンを90系時代も細々と販売、セダンは主用途は営業用(タクシー)が多いながらも一部グレード整理してオーナー向けもラインナップしていましたが95/12に80マークⅡセダンをベースにした完全営業向けの『クラウンコンフォート』がデビューしこれを後続としてX100系マークⅡ(従来で言う4HT)デビューとほぼ同時に生産終了、84yからFMCせず生き永らえていたワゴンも製廃、ワゴンはカルディナとクラウンワゴンを一時後続に据えた後に97/4、カムリグラシアワゴンと双子となる『マークⅡクオリス』となっています。
これによりフルラインナップが崩れオーナー向けとなるセダンボディを失ったマークⅡに対し(コンフォートも一部オーナー仕様はありましたがその造り、佇まいは営業用然としており殆どオーナー層に選ばれてはいませんでした)その受け皿的役目を請け負ったのがX100系クレスタでした。
その為か?非常に100系クレスタは従来型(50~90)でもマークⅡ/チェイサーに対して派手さを抑えたイメージでしたがより地味な印象になり存在感はかなり希薄、3兄弟ファミリーでチェイサーに代り最少販売車種となってしまいました。
この頃になるとセダンモデル需要減退が顕著になっていた事もありますが100系クレスタはどう見てもそれこそ以前のチェイサーのように“手抜き”的作品に個人的には見えてしまいこちらも最終型というのありヤル気のなさを感じたり…
まぁ、チェイサーファンとしては最終でクレスタの分まで気合が入った感じでそれはそれで歓迎でしたがかつて兄弟の中でもひときわオリジナルでパーソナル感を漂わせ注目されていたクレスタの最終モデルは残念でしたネ~…
↓こちらも最終型となるX100系クレスタ(㊤/㊦2.5スーパールーセント前期型)
100系登場時、バブル崩壊後の日本は大不況の時期でありそれに加え台頭するミニバンブームも影響しセダンタイプモデルは販売減退、これまで売上ではトヨタの大黒柱的存在だったマークⅡ兄弟といえども開発費を70~80のようにふんだんにかける事はもうできず100系ではシャーシは90からキャリーオーバーし全体の造りも90系以上のコストダウンがなされました。しかし安全対策には時代の要求もありしっかり対応、トヨタ独自の衝突安全ボディ『GOA』の採用やABSと90時代は運転席のみだったSRSエアバッグを助手席及びサイドにも採用し全モデルに標準装備されています。
↓全車に運転席/助手席エアバッグを搭載!
ただコストダウン化している割にインパネ等の造り、デザインは90系よりも高級感があり裏側はイザ知らずこの頃はさすがトヨタ!見えるところで前作が不評でしたのですかさず改良されておりツアラー系にはスポーテイ雰囲気満点のカーボン調パネルが、アバンテ系の木目パネルも90時代より上質な雰囲気を漂わせていました。
上級モデルにはクラウン譲りのオートスイングルーバーも装備され少なくても室内での見え見えコストダウンは感じられません!
↓カーボンパネルを採用したツアラー系と美しい木目パネルのアバンテ系のインパネ&インテリア
(ツアラーV㊤1.8ラフィーネ㊥2.5アバンテ㊦)
それでは100チェイサーのモデル概要です。
(サイズ)
:全長4715全幅1755高1400(4WDは1415) ホイールベース2730(以上mm)
(車重)
1410kg(2.5アバンテG)
(定員)
5名
(エンジン)
4S-FE型 水冷直4 1800cc ハイメカDOHC 16バルブ EFI 120ps
1G-FE型 水冷直6 2000cc ハイメカDOHC 24バルブ EFI 140ps
1JZ-GE型 冷直6 2500cc DOHC 24バルブ EFI VVT-i 200ps
1JZ-GTE型 水冷直6 2500cc DOHC 24バルブ EFI VVT-i IC付ツインターボ 280ps
2JZ-GE型 水冷直6 3000cc DOHC 24バルブ EFI VVT-i 220ps
2L-TE型ディーゼル 水冷直4 2400cc OHCターボ 電子制御燃料噴射ポンプ97ps
(以上ps表示はネット値)
(駆動)
FR/4WD
(ミッション)
5MT/4速AT(OD付/ECT-iE/ECT-E/ECT)
(脚回り)
ALL(Fr/Rr)ダブルウィッシュボーン4輪独立懸架
(ボディ)
4ドアHT
(バリェーション)
1800 (型式SX100)
XL/ラフィーネ
2000EFI 24バルブ (型式GX100)
アバンテ/ツアラー
2500 TC24(型式JZX100/4WD JZX105)
アバンテ/アバンテFour/アバンテG/アバンテFour Gパッケージ/ツアラーS
2500 TC24 ツインターボ (型式JZX100)
ツアラーV
3000 TC24(型式JZX101)
アバンテG
2400ディーゼルターボ(型式LX100)
XL/アバンテ
ホイールベースは先記の通り90系のシャーシのため変更はありません、もちろん3ナンバーサイズです。
幅/高さは先代よりもサイズアップ、80/90で言われ続けていた室内空間増大という改良がなされます。
乗車した感覚では80/90からの劇的な広がりはないものの頭上の広がりは顕著、FRの4HTボディとしてはスタイルとの妥協も計算しこれが限界なのかな?と思えます。
これ以上の空間が欲しいならこの時代、既にアッパーミドルでもFF化が標準化していたのであえてマークⅡ/チェイサーを選ぶなら気にならないでしよう、てかしてはダメです(笑)
しかしやはり外寸の割には狭いのは初代~最終型まで見事に引き継がれました!!
冒頭で述べた通り全長は前後の絞りで90よりは短くなりこれがマークⅡ/90チェイサーと比較して走りの部分で大いに軽快感を引き立たせていました!
↓チェイサーらしいスタイルを破綻なく維持しながらオバーハングを切り詰めた100系のプロポーション!!
搭載エンジンは90を全て継承しますが1JZ/2JZエンジンは新たに『BEAMS』と呼ばれる高出力と低燃費を両立させる新世代のエンジンを謳ったモノで上級高出力エンジンに可変バルタイ(VVT-i)を採用、2.5LNAの1JZ-GEで180ps→200psパアワーアップ、ツインターボの1JZ-GTE及び3Lの2JZ-GEではスペック的には変わらないながらもドライバビリティ、フィーリングは従来型とは性質を異にしています!
トヨタの可変バルタイ、ワタクシ2JZは経験ありませんが1JZはターボ/NAともある実験で乗り較べホンダのV-TECや三菱のMIVEC程劇的なフィーリングの違いは感じませんが特にNAでは中回転以上での領域での吹け上がりは従来型よりも素早くタコメーターの針が上がるのを感じ取れ ~これならターボいらんか?~ と思える程でした!
もう一つの売りである“低燃費”はオーナーではなかったので分かりませんが少なくともカタログでは大排気量とは思えない10・15モードでL/10㎞オーバーという素晴らしい?数字が並んでいます。
↓後にメジャーとなる“BEAMS”をこの代から採用し大々的にアピール!
↓BEAMSの本質である可変バルタイ機構=『VVT-i』
↓VVT-iを採用した1JZ-GTE㊤と2JZ-GE㊦
尚、2L 1G-FEが吸排気系見直しで5psアップの140psとなっており1.8L 4S-FE/2.4L 2L-TEは従来型を採用、ただ、本家マークⅡからはリストラ策の一環でこの二つのエンジンはカタログ落ちしておりディーゼルモデルはクレスタとチェイサー、1.8Lはチェイサー単独になっています。
これはマークⅡ販売店には直近の下級コロナプレミオが存在しており1.8Lはそちらに譲りクレスタではやはり同系でビスタに1.8Lモデルがあるもののチェイサー販売店のオート店(現ネッツ)には直近下級スプリンターに1.8Lモデルが存在しないためチェイサーのみリストラを免れたものです。
ディーゼルは2.2Lのコロナプレミオ/ビスタ/スプリンター全てに3C系が存在しておりマークⅡのDモデルのみ単なるリストラでした、ディーゼル乗用車人気の衰退もあり以後チェイサー/クレスタからもディーゼルモデルは廃止されますますが真っ先にDモデルを設定したマークⅡが最初にこれを廃止したのも皮肉ですね。。。
バリェーション的にもほぼ90系後期を継承しますがツアラー系に廉価版となる2L 1G搭載の『ツアラー』が加わり2.5ターボのツアラーV、2,5NAの同Sと共にツアラーシリーズを形成しています。
駆動は基本FR、アバンテFour及び同Gパッケージが4WDとしてラインナップ、ラフィーネを1.8L専属にする代りにDにもアバンテを設定しています。
↓ツアラー系以外の100系チェイサーのバリェーション展開
脚廻りの味付けは90時代とほぼ同様のALLダブルウィッシュボーンでアバンテ系以下は乗り心地優先、ツアラーはハードでフィーリングに特に変化はありませんがVVT-iと90に較べ見切りが良く着座位置も心持ち高くなりアイポイントが変化したせいもあるのか非常に乗り易く=飛ばし易く!?なっていた印象です。
相変わらずツインターボでは不足気味の足で強化は必須ですが3L/2.5L NA以下ではアバンテ含めて1.5t近くのボディを載せるのにを充分な性能でした。
アバンテ系以下でも80/90系よりはしっかりした印象もありましたねー…
↓90系を継承したFr/RrダブルウィッシュボーンIRSの脚廻り
100系となり電子制御サスTEMSはよりきめ細かい電子制御を行うスカイフックTEMSに進化、ATもこれまでの電子制御ETC-Sを更に進化させたECT-iE/ECT-Eを採用、iEを3.0アバンテG/ツアラーVに、Eを2.5アバンテ系/ツアラーSに搭載しています。(4WD/1G-FE=電子制御ECT、1.8/2.4D=4AT 5MTはツアラーVとツアラーのみに設定)
ETC-iEはインテリジェントATといわれECT-Eと併せて燃費や登坂降坂をも考慮した自動変速を行う夢のAT!更にiEでは各ドライバーの運転趣向を判断し〈燃費指向←→パワー走行指向〉まで行うものでした。
ツアラーに特化した新装備としてVのMTにははトルセンLSDを標準装備(ATにop)、徹底した走り趣向をここでも訴求しチェイサー史上最もスポーティに振られこのような走りキャラクター設定がマニアックな人気要因の一つだと…
↓V、MTには走り屋には“必須”のLSDを標準装備!
また、ツアラーシリーズ全てに消費電力は下がりながらもハロゲンの明るさ、寿命を大幅に上回るディスチャージライト(他にキセノン/HIDとも呼ばれますネ!)をトヨタしては初採用、BMWで91yに初めて自動車に採用以来注目のアイテムでした!
日本では大型の三菱ふそうスーパーグレートが初採用して以来現在は汎用などの普及もあり一般的になりましたがまだまだ高価で希少な時代に標準装備され大きく注目されておりこれを初めて味わった時(スパグレですが…)ハロゲンと較べ絶大な明るさと綺麗な白/青の光は見かけもながらすっかり加齢で目が衰え夜間のドライブに若干の不安が出始めたワタクシは一気に魅せられてしまいましたねー。
かつてシールドビーム→ハロゲンに進化した時代を知る年代ですがその時よりも衝撃の明るさ&見易さに感激したのを憶えています!
↓HIDをトヨタでは初採用し大注目されたツアラーシリーズ(ツアラーS前期)
ツアラーシリーズには欧州車では一般的だったゲート式ATセレクターが採用され操作性の向上とスポーティイメージを高めています。
ゲート式、今やメジャーになりましたしこの頃でも外車では当たり前でしたが国産でこれは馴染みがなくストレートのセレクターに馴れた身には操作性に独特さがあり違和感がありました、しかし馴れると扱い易く何故もっと早く普及しなかったかが不思議に思います。
↓ツアラー系に採用されたゲート式ATセレクターレバー
↓最高峰“V”と共にツアラーシリーズを形成する『2.5ツアラーS』㊤と『2.0ツアラー』㊦
ツアラーには別枠?にてトヨタ特装(TECS)扱いで持込み車検となるTRDスポーツの設定も注目、TRD製グリル/各エアロパーツをまとうその佇まいは一層ツアラーの魅力を高めていた“特別仕様”でした!
↓ツアラー系特装モデルである『TRDスポーツ』
TRDバージョンまで投入しスポーツ路線を本気で進むチェイサーは当然の如くレースにも参加、ご承知の通り4発の3S-GE型エンジンをミッドシップに改造搭載して全日本ツーリングカー選手権 (JTCC)に登場しサーキットでも活躍していました!!
それではモデル改歴です(主要のみ)
(98/8)
MCで後期型となります。
前後意匠変更に加え2.0L 1G-FE型エンジンもBEAMS VVT-i機構を採用し出力を140ps→160psにアップします。
Fr/Rrは好評の為大幅な変更はなくFrはグリルデザインを、Rrはテールランプを3分割をハーフクリアレンズの丸型2灯に改めライバルのスカイライン真っ青なデザインとなっていました!
↓98/8、MCで後期型となります(㊤後期2.0ツアラー/㊦2.5アバンテG)
(01/6)
人気UP!!!で好評だった100系チェイサー、兄弟のマークⅡが00/10に時期型X110系にFMCした後も継続されモデルライフは異例の5年を数えました。
しかしクレスタと合わせた3兄弟の販売低下、セダンモデル需要縮少の荒波を避ける事はできずリストラ策が取られ01/6にチェイサーはクレスタと統合、X110マークⅡとシャーシを共用しながらマークⅡとは全く性格を異にするパーソナルセダンの ヴェロッサ に産まれ代り77年6月にデビューからちょうど24年でチェイサーはその歴史の幕を閉じました…。
↓“本家”マークⅡはセダン市場の厳しい中でも00/10に8代目(最終)がデビュー
↓チェイサーはクレスタと統合され“新車種“『ヴェロッサ』へ…
常にマークⅡやクレスタの影に怯え?顔色を伺った?“偉大なる“UP! DOWNのチェイサー!!!”、最後にして3兄弟中最高人気を獲得し華々しい最後を遂げ現在の中古車市場でも未だ影響力を及ばす100系ツアラーVの存在が貴重な置き土産だったかもしれませんね。。。
チェイサー、その24年の歴史をあくまで兄弟との比較ではなく評価/販売台数から考慮し改めて振り返りますと…
初代X30/40系(UP!!!)→2代目X60系(DOWN!!!)→3代目X70系(UP!!!)→4代目X80系(DOWN!!!)→5代目X90系(UP!!!)→6代目X100系(大幅なUP!!!)
になると思います。見事にシーソーのようにUP!!!DOWN!!!を繰り返すチェイサーですが最後の100系で誕生以来、ライバルとしていたスカイラインにようやく評価も人気も届き有終の美を飾ったと思います!!
後続のヴェロッサが強過ぎる個性で大コケ、結局チェイサーのDNAはマークⅡから改称された現行マークXに継承されますが同車のスポーティな味付けを見るとかつてのマークⅡよりも初代や最終チェイサーのDNAを感じるのはワタシだけでしょうか…!?
4HTがステータスで大人気、注目の的で元気だった頃の生き証人チェイサー、個人的に記憶に強く留めておきたいモデルに認定してチェイサーの巻を終わりにしたいと思います!!
チェイサーシリーズ・・・終