
“華麗なる一発屋!!!”、今回はコレです→『A552/A512/A12型スバル1000、スバルff-1、スバルff-1・1100/1300G』となります!
このモデル、名前がチョロチョロ変わっていますがマイチェンor排気量UPの度にネーミングチェンジしてるもので基本同じクルマです。
現代のインプレッサ、これの前身であるレオーネのまた前身に当たりコレ(レオーネ)のフルチェン→ネーミングチェンジとも考えられますのでこの場合、一発屋には当てはまりませんが1000/ff-1/1300Gをあくまで一つの車種と捉えココで取り上げさせてもらいます!!
尚、これも長くなりますのでスバリスト以外の方はつまんないかもしれませんがご了承願います(;^_^A
まず最初に発売されたのが66/5の『スバル1000』になります。
軽自動車「スバル360」でそれまでの飛行機メーカーから転身した富士重、360の大ヒットで4輪での勝負を決意し次に挑戦したのが初の市販普通車である『スバル1000』でした!
1000や360以前に富士重はプリンス製エンジン(前半開発)と自社製エンジン(後半開発)を積んだ「スバル1500 P-1」(54y)という普通車を試作していますが採算面で問題があり数台を販売したのみで泣く泣く市販を諦めた経緯があり1000はこれ以来の普通車への挑戦でありその分持てる技術、アイデアを総動員して開発されたモノでした。
このクルマの独創性、優秀性は広く認められその後のFF開発に大きな影響を与えた他海外のアルファロメオ等もお手本にしたという話は有名ですね!
↓富士重初の量産市販普通車として登場した『スバル1000』
1000は来る高速時代に対応かつゆとりある室内を実現する為、当時の日本では珍しいFF駆動方式を採用、開発に当たってはこのFFと静粛性と徹底した振動を抑えるという見地からエンジンは水平対向式を採用する といったテーマが掲げられていました。
FFは一部軽自動車には採用があったものの普通車では技術的(主に動力伝達系)に困難な部分も多かったものの富士重の地道な研究と幾度となる実験にてようやく市販化されたものであり血と努力の結晶であったようです。
360のRR(リアエンジンリアドライブ)で定評のある富士重ですが ~乗員最優先の乗用車に於いて動力伝達装置が室内を狭くするのは言語道断~ というような哲学がありRRやFFしか考えなかったとの事、1000の場合はこれからの時代長距離、連続高速走行をする という部分を重要に考え直進性に優れるFF方式をとった訳です!
FFによりライバル他社とほぼ同様のサイズながら室内は1500クラスの広さを持ち特にフロアトンネルのないRrの足元は信じられない余裕を見せていました、重ねてプロペラシャフトが当然ない事によりホイールベースの制限を受けない事から後輪を可能な限りボディ後端までもってゆく事で外寸からは想像できない広さを実現していました。
↓当時としてはフロアトンネルがなく後席足元の広さと見かけは驚愕モノ!
余談ですがこのクルマ、最終の1300Gを運転した事あるのですが現代基準で見るとそう驚く程の後席の広さではないながら当時のスタンダードであるカローラ(KE10)やサニー(B10)に較べるとその差は歴然でしたねー。
ロングホイールベースからなる乗り心地はフワンフワンと独特な浮いているような感じ、ただ決っして不快ではなく“ゆりかご”とでも言いましょうか…
ただ長いホイールベースが故、コーナーはあまり得意でなかった気がします、後のレオーネにも共通していましたがFFの悪癖はそれほど出ていないながらやはり慣れたFRとは違和感アリアリで曲がりにくく後輪の動きを意識したドライビングが慣れるまでは必要でした。
↓1000のRrビユー、Rrから見ると長いホイールベースが一目瞭然!
脚廻りも当時は殆どなかった4輪独立サスを持っていたのも驚きでFF化により空いたRrも独立式を採用、Fr:Wウィッシュボーン Rr:トレーディングアーム式。
ステアリング形式はシャープなハンドリングを実現するラック&ピニオンをこの時代で採用、同様メカのいすゞベレットと並んでその先進性は注目すべき点だったと思います!
また冷却(水冷)を低負荷時と高負荷時で別々に分担させるデュアルラジエーターを採用、冷却ファンを廃しパワーロスを抑え軽量、静粛性が高くまたヒーター機能も強力、従来の水冷エンジンのように冷却装置がバカにならないスペース確保の必要がなく限りある1000のエンジンルームの効率化に役立っていました。
もう一点、独特な技術がこの1000では採用されておりこれは「センター・ピボット式ステアリング」という機構、FFはフロント・アクスルが駆動と操舵という2つの役割を受け持ちどうしても影響から前輪の操舵角がFRに較べ少なくなるのを抑える為のものでこれによりFrブレーキは通常のホイール内には設置されずエンジンルーム内、ミッション側に付けられるという凝りぶりでした!
↓緑の→部がFrブレーキ!!
スバル=低重心 という有名な文言は最近のモノではなくこの1000から既に意識されており新開発の水平対向式4気筒OHV 55ps 1000ccのEA52型エンジンも大きくそれに貢献していました。
様々な研究と工夫から極限までコンパクト化されこrによりスペアタイヤまでもがボンネットに収めるという技もこの時から既に披露してました~。
今でこそ所謂“ボクサーサウンド”を抑えてきていますがスバルの普通車、最近のインプ/レガにに至るまで ~♪ドコドコドコ~ という独特なエンジン音、これもこのEA52型から始まったものですネ、個人的には好きな音ではありませんが自動車ファンなら誰しもそうであるようにこの音が近づいてくると「あっ、スバルだ!!」と即座に判断できる特徴、個性的でした~。
尚、EA52型は広大な室内、FFという大前提から逆算して水対のコンパクトさという面で採用、これを生かし縦置きに搭載されています。
↓低重心に貢献した♪ドコドコ~の水対4発のEAエンジン
スタイリングはヨーロッパ調の派手さのない落ち着いたモノ、直線ベースながらFrエンド、Rrエンドは丸みを付けアクセントを加えていました。
ただこのスタイリング、見慣れないロングホイールベースがワタクシ正直子供の頃はこれ“奇形”にしか見えずタレ尻の胴長ダックスフンドに見えました(汗)
市場的にも同時期に発売されたカローラKE10とそう変わらないセミファストバックのスタイリングでありながらやはりこの奇異なロング車軸スタイルは不評だったようで好評カローラに較べその販売は数パーセントという状況、確かに子供の頃の街中でスバル1000を見かけるのカローラの1/10位?という感じだったような。。。
しかし後年のレオーネに至るまでスタイルよりも中身、技術屋精神てんこ盛りのスバル車はこの頃から“スバリスト”に愛され頑固に代替わりしてもスバルを乗り継ぐ方が多かったですね、友人の父もこうしたタイプで最近までランカスター、サブにサンバーと典型的なそれでした(笑)
インパネも独特な形状で違和感アリアリ、ダッシュボードが奥に寝てる感じが何とも奇妙でしたが広い前方視界とより室内を広々感じさせる効果は高かったと思います。
↓スバル1000インパネ
スバル1000の概要ですがボディはモノコック、当初4ドアセダン(A522)のみで発売、67/2に2ドアセダン(A512)追加、その後型式をA12型に統一後に商用バン(67yに4ドアバン、68yに2ドアバン)を追加しています。
67/11、時代の要請や流行もありスポーツグレードの2ドアに「スポーツセダン」を設定、それまでFFの広さを生かすためコラムシフトしか設定していなかった同車の初めてのフロアシフトモデルでした。スポーツセダンはラリーでも好成績を収める見かけによらないスポーティさ、後のレガシィやインプでの国際ラリー活躍の下地を造っていました!
エンジンはEA52をツインキャブ化したEA53型を搭載、出力を67psに高めています!
↓67/11追加のスポーツグレード「スポーツセダン」
↓スポーツセダンに搭載されたツインキャブEA53型エンジン
このように独創性に優れスポーツモデル、CMカー(バン)等の追加によりカローラ・サニーには遠く及ばないながらも高い評価と一定の販売台数(月/4000台)を得た1000は発売約3年となる69/3、初めてのマイチェンを受け車名を『スバルff-1』となります!
ff-1はFr/Rrの意匠変更、エクステリアは70年代に向け豪華なイメージを持たせていますが室内やインパネは1000を踏襲しています。
↓69/3~、ff-1(写真はスポーツセダン)
ff-1は65yから始まった1Lカーブーム以降次々に発売されたライバル各車に対し前身のスバル1000が独創性では1歩も2歩もリードしながらそれらに対し販売面ではかなり苦戦、これは見かけの素朴さや質素なイメージが災いしていると分析した富士重は豪華路線に向かったモノ、造形豊かなグリルやスポーツセダンでは1000時代以上にスポーティイメージが高められ69/10には最上級で豪華版の「スーパーツーリング」が追加されています。
ff-1には1000のEA52/53エンジンを100ccボアアップしたEA61型 62psとこれをツインキャブ化したEA61S型 77psを搭載し走りも豪華になっていたようです!!
しかしff-1へチェンジ以後(以前も含む)もライバル各社が排気量UPを次々に行い(サニー1000→1200)カローラ(1100→1200)ホンダ(1300新発売)ファミリア(1300とRE発売)コルト(1000→1100→1500→ギャラン1300/1500発売)と更なる激戦になり戦力増強、僅か1年強の70/7に再度マイチェンを実施、ネーミングを『スバルff-1・1100/1300G』とします!
↓70/7~ ff-1・1300G(写真はスポーツセダン)
1100/1300Gとなりよりエクステリアを豪華な派手なイメージとしインパネも一新、より豪華な現代的デザインとなります。
エンジンは旧ff-1のEA61シングルキャブ版を残しこれをff-1・1100(廉価版)に搭載、新設定の1300Gには1.3Lまで排気量UPを施したEA62型 80psとEA62S型ツインキャブ93psを搭載しました。
先にも触れましたがワタシが経験したのはシングルキャブ版でした、シングルながらパワーは充分でpsと言うよりトルクもりもりで元気に低回転から俊敏な走りができましたが癖のある機構から早く走るのには少々コツがいる、そんな感じを憶えています。
↓インパネも通常(?)なデザインに一新!
(㊦1300Gカスタム ㊨1300Gスポーツセダン)
1300Gで一つ特筆したいのは現在の 4駆乗用車=スバル のイメージを決定付ける元祖となる「1300G・バン4WD」が8台程度の製作→販売(5台=東北電力、1台づつ長野県自治体、同検農協と自衛隊納入)がなされたという事です。
FFはその構造から比較的簡単に4駆を造り易い部分に富士重は着目、豪雪地帯のパトロールや作業にそれまでジープを使っていた東北電力から厳冬時の快適性を得られる乗用タイプでの4WD車の製作依頼を受けこれに応えたという事、1300Gバンにプロペラシャフトを通しRrデフを設けトランスファ切り替えのパートタイム式4駆にしたもので当初はRrデフ/アクスルは日産ブルーバード510の物を流用したとの事です!
この1300G・4WDバンは後に話題となる国産量産初の4駆乗用(実際には貨物)のレオーネ4WDバンの先行パイロットモデルであった訳ですね。
↓スバリストには涙モノの“幻”の1300G・4WDバン
71/4には早くもお決まりグリルとテールのマイチェンを実施しますが1000発売から既に5年を経過してライバルが次々とモデルチェンジしてゆく中、どうしても古さは隠せなくなり71/10、次期型になる『スバル・レオーネ』(A22型)を発売、まずはレオーネはスポーティ度が高いクーペのみで登場、この為1300Gのスポーツセダンをこの時に廃止、72/2にレオーネセダンが発売され1300Gを廃止し廉価グレードの1100のみがレオーネと併売されますが同年9月で完全に製廃となりスバル初の独創的FF普通車、スバル1000の系統はこれにて終了し実質的にレオーネにバトンタッチされます。
↓71/10には後継となる『レオーネ』がデビュー
新星レオーネは独創的な機構は従来の1000~1300Gを継ぎながらスタイルは流行のウェッジシェイブを効かせロングノーズ、ショートデッキのアメリカン的出で立ちとなりどこか野暮ったい従来型から大幅にイメージを一新、しかしこだわりの水対エンジン&FF、ロングホイールベースは踏襲し個性派依然、頑固なスバリストを納得させるモノでした。
個人的にはスバルらしくないスタイリングやトヨタを意識し過ぎたエクステリア、インテリアが鼻に付きましたがドライビングフィールは従来型の乗り味を維持、もちろんボクサーサウンドも健在でこのレオーネも人気は低迷しますが2回のフルチェンを経て71y~92y(バンは94y)迄の21年間、富士重のメイン車種として頑張りました!
現在もラインナップされ高い人気を誇る89/2発売のレガシィ、92/11のインプレッサの高評価と実力も“元祖”があったからこそのもので不人気だった(カルトな人気はあったようですが)1000~1300G、華やかな人(車)生ではありませんでしたがその独創性は素敵であり華麗だったと思います、このクルマは『華麗なる独創一発屋!!!』として忘れてはいけません・・・(笑)!