
“変態と呼ばないで!”納得のマイナー・モデルを振り返る…
第5弾となる今回は前回から引き続いて『2代目A35/A55型ダイハツシャルマン』を取り上げます!
先代A10/20/30/40型初代シャルマンはデビュー時こそ久しぶりのダイハツオリジナル(実際にはセミオリジナル)として注目されパブリカやスターレットの借り物?だった唯一の普通車(商用車を除く)であるコンソルテシリーズの上に位置しダイハツフラッグシップの役目も背負いベースのカローラにはない高級度を身にまとう良く言えば“小さな高級車”悪く言えば“身の丈に合わないオーバーデコレート車”、市場の反応もこのクラスは掃いて捨てる程存在する激戦区ですので大中メーカーの大衆車がひしめく中、旧型カローラベースのマイナー車がマイナーメーカーからポッとデビューしても1年目こそ前述の理由からそこそこ注目されるもその後はジリ貧、それをダイハツは焦ったのか?MCでどんどんと過剰装飾化を決行、フラッグシップの名の下にデビュー時のスッキリしたオリジナル度は影を潜めてゆき最後にはその出で立ちに眉をひそめる?嫌悪を感じたユーザーも少なからずいたのでは?と思えるエスカレートぶりにダイハツという特殊な立場にあるメーカーの悲壮感を感じさせるものでした。
需要は当初こそ物珍しさからカローラやサニー、ランサーやGファミリアの隙間に入り込む販売台数を稼ぐも比較的早い時期からこのクルマはダイハツ、メーカーや販社のおエライさん専用車の存在価値でしかなくなり一般ユーザーがドライブする姿を見たら驚く!!とまで言われた程で当時も今も“珍車”“激レア”“カルト”の形容詞で語られる程の生粋の?変態車に相違ないですネ(+o+)
そんな初代シャルマン、74年~81年の8年間を生きそろそろお役御免か!?と思っていましたが油断しましたwww
何と今度は当時モデル末期だったE70カローラをベースに2代目が誕生!まさかのFMCを行いカルト好きを喜ばせてくれたのです!!
初代同様カローラをベースに再びダイハツフラッグシップの誕生はダイハツの社員さんはさぞ喜んだでしょうね~!
何せ先代が当時としても太古のE20系カローラベースでしたからね、2代目は仮にも現役のE70系ですから先代の型遅れベースとは違い更に2世代も新しい立派な新型(笑)
まっ、カローラがE80デビューの83/5迄の僅か1年半程度の“新型”でしたが…
↓81/10、E70型カローラベースでFMCされひと回り大きくなり“フラッグシップ”さがより充実?した2代目シャルマン
(㊤1500アルティア/㊦アルティア2トーン仕様)
それではモデル概要に移ります!
[諸元]
(発売)
1981年(昭和56年)10月
(ボディ)
4ドアセダンのみ
(バリエーション)
1300LD/LC/LF
1500LGF/LGX/アリティア
(型式)
ダイハツA35型(1300)及びA55型(1500)
(サイズ)
全長4200mm全幅1625mm全高1380mm
(ホイールベース)
2400mm
(車重)
815~905kg
(搭載エンジン)
トヨタ4K-U型 1300cc 直4 OHV シングルキャブ グロス74ps/10.7kgm
トヨタ3A-U型 1500cc 直4 OHC シングルキャブ グロス80ps/11.8kgm
いずれも縦置き搭載
(ミッション)
4速MT/5速MT/3速AT
(脚廻り)
Frストラット/Rr4リンク式リジット
(駆動方式)
FR
以上の通りの諸元でベースが70カローラですので機構、脚廻り、エンジン、ミッション設定はこれを踏襲、先代と較べTOPが1600→トヨタの新開発レーザー3A型1.5Lに排気量ダウンしています。
この事は普通ならイメージダウンとなりますが先代の旧態化したT型エンジンより格段に軽くレスポンスも良くしかも低燃費に1.5L化による節税といい事ずくめ!この判断は非常に良かったですね…と言うか既にこの時期は商用やDOHCを除いてトヨタでT系エンジンの搭載車はない、若しくは消える予定にあった時期なのでダイハツに供給し続けるのは無理、そこで華々しく“新エンジン”とセールスしていた売れ線3A-Uを下請けにも与えたってところでしょう。
(エンジン、ミッション)
搭載エンジンは定評の4K-Uと3A-Uの2種、1200時代の3Kは排ガス対策(TTC)でさすがにあのOHVとは思えない軽快な吹け上がりは影を潜めてしまいましたがこれを排気量UPしてTTCの損失を補いかつての元気さを取り戻すのに成功、カローラやシャルマンではやや荷が重いながら下級となるKP61スターレットは初代KP47スターレットから継承してレースでも大活躍する元気っぷり!
カローラ/シャルマンでは廉価版扱いの1300シリーズですが燃費、軽快さは新型A系エンジンにも遜色なくこの時代で既に20年となる古参エンジンですがまだまだ色褪せていませんでした。
↓スターレット、カローラで定評の4K-U型1.3Lエンジン
一方の3A-Uは諸元で記した通りのトヨタ中級クラスの新型エンジンでしてトヨタ初のFFモデル、78年デビューのAL10系ターセル/コルサ用に開発された1A-U型エンジンが基礎、この1Uはその後各部改良されスペック&燃費を向上させた3A-U型となります。
ボアダウンさせた2A-U(1300)も用意されますがこちらはターセル兄弟専用、1300はシャルマン、カローラ、スターレットには前述の通りまだまだ色褪せずこちらも改良を繰り返した4K-Uを搭載、1500のみTTC化以来評判が悪いT型に変わって3A-Uが搭載されました。
3A-UはT型1600(2T-U/12T-U)に較べ排気量こそ100cc、psも3psダウンとなっていますが肉薄の新設計、T型デビューの70年代初頭のOHVエンジンとは比較にならないレスポンス。
特にTTCによる補機装置が付いたモノと較べるとその元気さはT型なんて話にならない出来映えでT型の未対策に無理矢理補機装置で排ガス規制をパスしたものと違い設計当初からこれを盛り込んだ対策エンジンとの違いは鮮明でしたねー、ワタクシも初めてこのエンジンを味わった時は「これが排ガスパスの1500!?」と思える活発さは今も記憶に残っています。
↓80年代に入り悪夢の排ガス規制の後遺症から解かれデビューした1.5L 3A-U型新エンジン
ミッションに関しても70カローラからそのまま移植、70から例の1、3速の遠い旧型ミッションは新たなモノに換装され手を下ろせばシフトレバーに自然に手が届くフィーリングとなりKE10からいつも感じていたギアチェンジ時の違和感が補正されまた、FRですから当然ダイレクトチェンジなのでカチッと決まる気持ち良さも健在でした!
ミッションは4/5速MTと3速ATというこの時代ならば当たり前の布陣、後年ATは多段化に一早い推進をしたトヨタグループらしくシャルマンも4速ATが追加されていました。
(ボディ、スタイリング、エクステリア)
ボディバリェーションは先代同様の4ドアセダンのみ!
ベースの70カローラが2/4ドアセダン、HT、クーペ、LB、バンと多種多様のボディ展開をしていたので寂しい限りですし先代ではやはり20カローラバンベースのライトバンも存在しましたが2代目ではセダンオンリー、この事がシャルマンをよりダイハツのイメージリーダー、プレミアムセダンという価値を高めたか?は疑問ですしせめてこの後、静かに人気となるワゴンや若者向けのクーペなりHTの存在でもあればいくらか地味な印象も拭えたのではないかと感じます。
2代目シャルマンは先代が前後ドアに20カローラやスプリンターの影が大きく残るモノだったのに対し完全なるオリジナルデザインとなり新たなプレスを起こしていました!
“高級セダンの証”とも言われた6ライトサルーン+スクエアな直線スタイル、四隅をピンと張る端正な出で立ちは80年代らしいスッキリ感でダイハツの開発テーマ⇒『経済的なハイオーナーサルーン』を良く表しいかにも70年代だった先代の陳腐イメージは払拭され好感が持てましたがどこなく親会社のマークⅡセダン(X60系)を小さくまとめたような出で立ちはあまり新鮮さはなかったような!?!?
しかし初代後期の過剰装飾、アクの強い顔付やテールの処理はなくなりスッキリとクリーンでジェントルなモノに変更、このため良きにつけ悪きにつけ個性的だったエクステリアはスマートになりましたが“シャルマン”の主張は弱まりました。
↓80年代らしいクリーンなデザインの2代目シャルマン(81yアルティア opのアルミホイール装着車)
(インテリア、居住性、装備)
インテリアに関してはこの時期は小型車もFR→FFへの転換期で車室の広さをFF先駆の小型モデル達が謳う中、シャルマンはFR小型車ですからね、出た時点でこれは勝負になりませんorz…
モデル末期の70カローラベースの哀しい性、この頃当のカローラは次期型FFのE80型の試作も終えており初代同様の“お下がり”をもらうシャルマンですからここを語るのがナンセンスなのかも(+o+)
その代り?インテリアについては日産スタンザがミニ・セドリックであったようにシャルマンは“ミニ・クラウン”と言える程の豪華さをTOPグレードの『アルティア』に与えこれならダイハツ重役さんも満足!(笑)と思えるモノでした。
当時のカローラの最高峰『SE』をも上回りまだまだ小型車では珍しい各パワー装備もテンコ盛り、じわじわ訪れていたハイソブームの中でこの部分だけは若きGureも目を見張っていましたねー(笑)
何せシートや内張りの意匠はクラウンロイヤルサルーン?マークⅡグランデ?的、黒一辺倒のインテリアだった走りのクルマばかりを追いかけたワタクシ、「これが激シブ!」とか言いながらも明るくモコモコと豪華な内装に内心凄く憧れていましたネ~^_^;
↓とても1.5Lクラスのセダンの内装とは思えなかった『アルティア』のインテリア
i
インパネデザイン、外観と同じく直線的デザインでまとめられ80年代らしい集中メーターを採用、見切りはよくこれと言った特徴はないながら嫌味のない飽きのこない機能的なモノだったと思います。
↓アルティのインパネ、この部分は大衆車の域ながら機能的!
(シャーシ、脚廻り、ドライブフィール)
この分野も70カローラそのもの!だと思います(汗)
と言うのもワタクシこれの1500は経験してますが1300は未知ですので何とも…
1500アルティだけの感想はドライブフィール的にはハンドリング特性などは70そのままですがサスが柔らかい設定でシートもフワフワ、まだ本家高級車がこのような味付けこそが高級車!! という時期でしたのでそれを模倣するような柔らかさがありしかも本家ほど金も当然掛かっていないのでいよいよのところである程度は踏ん張れるクラウンやセドグロと違い物の見事に腰砕け→ハイスピードでは修復不可!っていう感じだったですねー。
70(前期)同様にステアリングが1500はボールナット、1300がラック&ピニオンでしたのでね、1300は廉価設定ですのでシートもアルティ程フワフワではないでしょうしサス設定も悪くても70の1300レベルだと推測しますのでかえって1500アルティアは安心感あったのかもしれません、あくまで推測の域を出ませんが。
運転していても6ライトによる明るい室内と広い視界、旧型にあった狭苦しい感覚はサイズ拡大以外でこんな部分も寄与ていたと思います。
サスも先代の古典的リーフリジットからストラット/4リンクに変更、もちろん70そのもので前述の通り柔らかめのバネ?ショックになってるか?程度のフィーリング差でした。
まっ、カロ-ラ同様に面白くも何ともない乗り味ですが誰が乗っても安心してドライブできる、当時のFR小型セダンとしては及第点以下でも以上でもないのが逆に平凡かつ信頼性の高い脚だったと言えましょう…
それではこれよりモデル改歴に移ります、2代目シャルマンは1度のMCを行っていますので前期・後期の記載となっています。
※特別仕様、小変更など全ては網羅していませんのでご了承願います。また、一部上記解説と重複箇所があります。
(81/10)
8年ぶりのFMCにて2代目A35/A55型がデビュー
(81/11)
特別限定車『1500スポーティLGX』をラインアップ、このモデルは1500LGXをベースにA/W、フォグランプ、2トンカラー、特別柄のシートを施したものでした。
(83/8)
MCにて後期型となります。
1500モデルは認可済みのドアミラーを採用、フロントグリルの意匠変更の他水平指針メーター、1500もステアリング形式をラック&ピニオンとしアルティアを旧アルティアの路線を踏襲する『アルティアL』、旧アルティアをベースにスポーティイメージ(60タイヤ+A/Wのop、ダーク&原色カラー、室内意匠等)とした『アルティアG』と2極化しユーザー拡大を狙います。
↓83/8~60タイヤ&A/W装着の『アルティアG』
↓アルティアGのインテリア&インパネ
尚、このMCから1500の3Aエンジンを3psパワーUP、これと併せて1500のみATを4速化、同時に1300から4MTを廃止し5MT/3ATのラインナップとしています。
(84/9)
一部変更、1500のみバンパーを大型化します。
(87/10)
デビュー6年で製廃の時を迎えます。
81年デビューから83年迄で細々約2万台弱の販売を行いますが84年を境に台数は激減、86年以降は3,2桁という時期もあり商品寿命が尽きた事が表向きの理由ですが親会社のメインであるカローラセダンがFF移行後も旧70系のシャーシをAE86系レビントレノに残して生産続行していましたがこれもいよいよ87年のE90系へのFMCでFFシャシに集約される事となりダイハツへのシャシ供給ができなくなった事が大きく初代よりも短命に終わる結果となってしまいました。
(総評)
提携→子会社~合併以後、トヨタの下請けに甘んじてきたダイハツが威信をかけて“フラッグシップ”として誕生させた初代シャルマン、決して商業的成功はならずともこれの意気込みこそ完全自前の『シャレード』開発に繋がり数少ないダイハツの名車誕生に寄与、シャレード以降の2代目シャルマンも意欲作としての期待が込められましたが蓋を開けてみればボディこそ完全オリジナルながら中身はカローラという先代と同じ内容で再び『シャルマン』としての主張がないままのデビューに市場はほぼ無反応、ダイハツの社員専用車のイメージ脱却はできずにトータル販売台数も先代以下の8年で約30,000台程度という散々たるものでした。
制約の中で造るダイハツ小型車ですから致し方ないですが終盤ではライバル車がほぼFF化を済まし新時代の小型車!として脚光を浴びる横で最後まで狭いFRセダンはいかにも不利でデビュー当初からFF化を叫ぶライバルが多い中での2代目シャルマン、出た時点で完敗が予測できた、そんなモデルでした。
初代デビュー14年でダイハツが学んだのは「所詮親のお下がりをもらっても大成ならず!」だったのではないでしょうか…
この教訓はシャレード、そしてシャルマン廃止から2年後にデビューする『アプローズ』に活かされダイハツ独自の視点と感性でオリジナルの魅力溢れるモデルの登場に繋がりますので2代のシャルマンの生存も決して無駄とは思いたくありません。
諸般の事情で?立位置的な後続であるアプローズも不幸な結果となりこれ以来ダイハツはこのクラスにオリジナルモデルは投入していません、時代的に現在OEM文化が根付いてしまい特にダイハツにそれ(オリジナル)を求めるのは酷ですがトヨタにはない斬新なアイディアや技術力を持つメーカーだけに惜しい気がします。
当時は「トヨタのお下がり」と相手にされなかったシャルマンですがこうして振り返ると現代のバッジ替えよりは遥かに造り手側の意地とメッセージを感じさせませんか?
シャルマンを今見て思う事…当時は理解されずとも初代デビューから40年の今日に“ダイハツスピリット”をつづく感じましたネ~、今更ですが…(^.^)/
“変態と呼ばないで!”納得のマイナー・モデルを振り返る・『A35/55型2代目ダイハツシャルマン』……終