パイプの機械曲げ。
最近は、様々な曲げ加工ができる機械が存在しますので、当時のオーソドックス的なパイプ曲げの動画をユーチューブより拝借します。
何処の会社の物かは全く知らないものです。(笑)
動画に出てくる左の「丸い形の物」を通称「ロール」と呼びます。
動画で多分Φ28.6mmのステンレスパイプを曲げていると思います。
この時の「ロール」は、見た目約R70(半径70mm)xΦ28.6mmの使用しているかなぁと、。
このロール径でパイプが曲がる事になります。
仮にR70のロールを使用してパイプを曲げた場合、約2.4DのR径の曲げと言う事になります。
1D=曲げようとするパイプの直径を表します。
細かい事は後ほど。
続いて動画の説明。
パイプを「芯棒」の様な物に差し込んでいます。
通称「芯金」、パイプの内径にガタ無いくらいの寸法で出来ている物。
パイプを曲げて行く時にパイプの「潰れ」を防ぐために使われる部品です。
曲げる物がパイプではなくΦ28.6mmの無垢の丸棒だった場合この「芯金」は不要となります。~潰れる事が無いから。
パイプを芯金に差し込むと、右側からスライドしてくる部品があります。
「ロール」と接触する動画手前側のスライド部品を「クランパー」と呼びます。
曲げるパイプを「握る」部品。
通常、曲げるパイプの2D前後(動画では50mmくらいかな。)
この場合約50mmほどで固定してR70のロールに沿って曲げるという事を行っています。
このクランプパーが短いと曲げている途中で「滑り」が発生して曲げが失敗します。
長ければ、次の曲げ(2次曲げ)までの直線パイプ部分が長くなるという事になります。
手前のクランパーと同時に奥の長い部品が右より移動してきますが、通称「ワイパースライダー」と呼びます。
スライダーの左側~ロールの後方に灰色のブロックが見えると思いますが、この内側に通称「ワイパー」というパイプベンダーマシンの要とも言うべき部品が付いています。
ワイパーと呼ばれている通り、拭き~しごきをする部品。
その先端は、ロールのセンター~クランパーの位置まできています。
では動画の動きを見てみましょう。
①、先ずはパイプを芯金に差し込みます。(通称①曲げ)
曲げる角度または、ストレート部の欲しい長さ等で差し込み量を決めます。
②、右側より、クランパー、ワイパースライダーが移動してきます。
③、指定の角度へ曲げる動作が入ります。(動画上では約30°位かな)
ロールの回転距離と同調して、ワイパースライダーも前方で移動してきます。
この移動距離がこのパイプを30°曲げた時の外側の「周長距離」という事になりま す。
④、規定値までロールが回転してパイプが曲がった後に、パイプの中に入っていた
「芯金」が後方へ移動します。
これにより、パイプの内径の潰れの修正と、パイプを取り出せる状態の前段取りとなります。
⑤、「クランパー」が右へ移動してパイプが「握り」から解放され、同時に「ワイパースライダー」も解放してモトの位置へ戻ります。
⑥、曲げたパイプを取りだした後、ロールを戻す事で、①曲げ工程が終了となります。
2曲げ以降は、「治具」を取り付けて曲げたパイプを治具に沿わして曲げていく事で、1本のパイプを「形」していくという事になります。
動画を見てもらうと判ると思いますが、この方式のパイプベンダーは曲げと曲げの「間」にはクランプするストレートの距離(この場合は約50mm)が必要になります。
クランプ部を特殊な曲げた形状の物に換えれば曲げと曲げの距離を理論上0mmに出来ますが、通常は、曲げ→ストレート部→曲げという状態になります。
曲げパイプを「つなぐ」という事をすればストレート部を無くせますが、溶接などの方法でつながなければならないという別の作業工程が入ってくる事になります。
このような理由で、市販、量産品などは手間を省ける方法を選択する事になりますが、ワンオフ、レースなどでは性能重視の為この辺りを手間をかけての作り込みとなる訳です。
パイプベンダーマシンもNCベンダー、3Dベンダーとか進化していっています。
さてこの動画に出てくるベンダーマシンで、パイプを「曲げる」という行為について。
動画の曲げでは、Φ28.6mmのパイプを「③曲げ」加工しています。
最後の③曲げでは約110°くらいまで曲げている感じでしょうか。
この時、Φ28.6mmの真っ直ぐなパイプが約110°曲がる時にはどんな「変化」が起きる事になるでしょうか?
パイプの曲がる「内側」「外側」で、伸びる事が発生していると同時に「伸びる量」が異なっている点。
「外側」となるパイプの部分は「内側」と比べてもかなりの量伸びなければならない状態です。
それを「可能」にする為には、パイプの厚み=肉厚が必要になります。
動画を見ても判るように、Φ28.6mmのステンレスパイプですが、厚みは1.5mmを使用しています。
技術がある所なら1.0mmでこれくらいの「物」なら楽に曲げ込めます。(笑)
0.8mmでも、大丈夫かな。
楽に曲げれると言った理由。
先ずパイプの直径(動画ではΦ28.6mm)なら肉厚1mmで2D(28.6mmx2)のロール径は簡単という事。
機械でのパイプ曲げは薄肉且つ極小R(1Dに近い数値)を曲げるか?、
が重要。
極小値より大きい数値は問題無くなる為。
量産品なら生産効率、耐久性、後の加工性などを考慮して「肉厚パイプ」の選択はあり得ますが、レースに使用する部品、いかに軽量できるか?も重要なファクターとなります。
前回の「エビ管」EXからシャシー変更で作り直しになったEXでは、データーを元に、極小機械曲げのEX製作に挑戦してみた。
但し1Dには届いていません。この時は多分、1.4Dぐらいで且、90°曲げまでには届いていません。(極小深曲げになってくるとつぶれ、折れに対する要素が一気に増えてくる)
曲げの、「セッティング」が決まると、エビ管の数ピース分の角度が曲げられ、そして溶接個所を少なくする事が出来ます。
製作時間短縮と、それに伴う溶接部という「不安箇所」の削減目的。
その代償として、エビ管では肉厚1.0mmで製作出来た所が、極小曲げの為厚み1.2mmを使用する事になり、部分的に20%の重量増加というマイナスな部分も発生しました。
まぁ、重たくなるのは判っていたのですが、「重量」に関しては指定は有りませんでしたから。(笑)
製作する側も、こういった特別な「依頼」があった時など、新しいチャレンジも行っているという事です。
F-3000のEXに関してここまで。
次回は、材料、溶接などについて書いてみようかなと。