さて、残り時間が無くなってきますよ~。(笑)
EX製作をするための治具が出来ました。
フロアーとなるベースにはプライマリーパイプを2in1にする為の2-1ジョイント部の「差し込み」にあたる4つの「穴」の開いたブロックを、EX出口ベースを基準に、オフセットを考慮しつつ対象に取り付けられる加工をします。
写真は、数回製作した後の時の物かな。
この四角いベースは取り回しの度に、つけ外しを繰り返します。
単純にボルト固定のみではねじ穴の「遊び」で狂いが出てしまいます。
これを解決するのに、ノックピンなる物を最低2本打ち込み、「ずれ」を防止する対策を行っています。
ENG.などで重要な「合わせ目」、例えばシリンダーブロックとヘッド面など、カラーまたは無垢のピンなどが入っている箇所があると思いますが、まさしくあれと同じ用途の物。
但し、こういった所に使う場合は、スプリングノックの方が都合がいいです。
工業知識がある人なら理解できる話。
今回のEXは、V側片バンクが、4-2-1と集合して、サイレンサー経由で、テールパイプが、リアの足回りの上下の真ん中を抜けて後方へ排出するデザイン。
この治具ベースに、2-1ジョイントベースと、サイレンサーのモデルとなる治具ベースも、対象に作れるように配置の取り付け「加工」を行います。
それと、シャシーより拾い上げてきた、ENG.周辺の補器類の干渉物も、「再現」しておく必要があります。
現場で「針金」を曲げてパイプラインを拾ってきたものを、シャシーに付いてあった同サイズの「太さ」で再現とか。
先ずこういう事が、EX製作前の下準備。
現場で実際に拾ってきた「現物あわせ」の物、3次元測定器で拾い上げた膨大なX.Y.Z座標の数値。
これを組み合わせて、干渉物、取り回しの位置関係などをこの治具に「表現」します。
で、この治具をもう一度3次元測定器で各部を測定。
現物との「誤差」をチェックして初めて、この上で「物」を作っても、実車に付かない製品が出来ることは無いと判断できるようになります。
さて、EXの製作にかかりますが必要な「部品」がいくつか必要になってきます。
先ずは、通称「EXフランジ」と呼ばれている物。
ENG.とEXパイプとを接合するところの部品。
ポート形状を見るとオーバルの形になっています。それを4個のM7スタッドとナットで固定する形。
ポートの形状は、ケン松浦Racingよりデーターとして受け取って、機械加工していきます。
で、それに伴い、このオーバルの形状からEXのφ50mmになる「異形パイプ」の製作も必要になってきます。
それと、2-1ジョイントが2種類。
今回はφ50x2-φ54x1タイプと、φ54x2-φ60.5x1タイプ。
それぞれEX1セットに付き4個、2個が必要になります。
こういった部品は長年の経験で製作していきます。
ジョイントも合流までの長さに「指示」があればそのように製作するとか無ければ、過去の実績でよかったサイズを選択するとかします。
さて、EXパイプ(プライマリーパイプ)、オートバイ業界あたりでは前パイプ。
ENG.から出てくる排気が通る最初のパイプの呼び名。
市販車ベースは、総じて鋳物製品かなと。
鋳鉄製から今は精密鋳造のロストワックス方法などありますが、レース業界などは刻々と寸法の変更がなされるので、パイプまたは板からの製作が多いと思います。
板から?と思われる人もいるかなぁと。
板を丸めると「パイプ」になるでしょ。あとはプレスで成形するとか。
今は色んな「手法」が存在していると思いますので、当時の小さな工場での製作の話を。(笑)
先ずは、時間制限あり。
使える道具、持ち駒~手元にあるだけの物でどうやるか。
初依頼を受けた時の話で書いていくと。。
3次元測定から3D図面を起こしてデーター化した結果。
パイプの「機械曲げ」で使える手持ちの「径」が、ほぼ無い。(笑)
この「機械曲げ」に関しては、また後日書くとして今回は、輪切り、通称「エビ管」方式で製作していきます。
「エビ管」とは?という人もいるかなということで説明すると、エビの尾っぽのような感じに輪切りしたパイプをつなげて、パイプに角度をつけるやり方。
判り易そうなwebだとこんな感じ。
曲げR及び曲げ角度は、長辺と短辺との「差」を利用すれば任意の物を作り出すことが出来ます。
また、ピースをつなげる時、円周長回転方向にずれを入れることで「ひねり」を生み出すことが可能になります。
この「エビ管輪切りピース」の製作も、3次元レーザーがあれば簡単かつ大量正確に作り出すことが可能ですが、持ってなかった。(泣&笑)
通常のパイプカット機で角度を入れて1個1個カットして作っていきます。
このピースを溶接していくわけですが、溶接のみで終わるとどんなに細かいピースの組み合わせでも、「カクカク」した形状のパイプ状態となります。
適当な角度で切ったパイプを溶接して作ってある「カクカクしたマフラー」。
ヤフーオクなどで見かけるでしょ?(笑)
3個のピースをつなげた場合溶接個所が2個できることになります。
この時点で、溶接部を含めてピースの外側ストレート部は「膨らませ」内側は「凹ませ」板金をしていきます。
終わるとまた両サイドに1ピースずつ溶接、2か所の板金。
これを繰り返していくことになります。
どうして必要な数を先に溶接してから板金しないの?と思う人もいるかな。?
一度にたくさんのピースを付けるとパイプの「中央付近」とか板金するための「当て金」が届かないのと、届いたとしてもそれ用の専用あて金が必要になってくるから。
両端に1ピースづつ増えていく場合は、「あて金」も同じ物を使い続けて作業ができることになります。
そんなに、板金すると伸びて狂うのでは?と思っている人いる?(笑)
多少は伸びますが、許容範囲内且、微調整で収まる内容。
その途中、円周方向に「回転」を加えれば、パイプに「ひねり」が入れれるようになります。
これを3Dデーターから出てきた数値から行う。
例えば5個同ピース0度の後3個同ピース0度を、13.5度ひねりとか。
この「ひねり角度」も周長で直線で〇〇mmと置き換え表示できるので色々やりやすい表示を元に、数値羅列表から組んでいきます。
機械曲げ出来るサイズがある所はそれを利用して製作していきます。
御殿場で拾ってきたデータで、製作したEXがこれになります。
2台分
装着したところ
という感じで時間内に製作して納入となったのですが。。。。
これが当時開幕してすぐの頃。
当時のF-3000に使用出来た車体は、ローラとレイナードの2社。
どちらを選択するかは各地チームが決定することだったようです。
で、ARTA-Racingはこの時「はずれ」となる方の車体を選択していました。
2戦目くらいで、明らかにARTAが選ばなかった車体を使っているチームの方が「速い」ことが判明。
シーズン途中ですが、車体を交換する決断をしたらしいです。当時で」1台3~4000万くらいとか言ってたかなぁ。
となると、EXも車体に合わなくなりますから「つくりないこ」の依頼が来る結果となるわけです。(笑)
次回は、「EXよもやま話」で出てきた機械曲げのEXから。