最悪の夜

今週も夜の峠に出撃。
特に通ってる所があるわけでもなく、
気が向いた所に走りに行く。気が変われば行き先もその場で変更。
そして、疲れたり眠くなったら駐車スペースに車止めて寝たり。
昨日の夜もそんな感じで、気が向いたので奥多摩方面へ。

あぁ～、なんか眠くなったから何処かで寝るか・・・。
ってな感じでいつもよりマッタリ車を転がしてた。

途中、Ｓ１５がコーナー出口でガードレールに刺さってた。
運転手らしき男性が一人で車外に居たので話し掛けたら、
レッカー車は呼んであるとの事なので、
俺はその場を後にしたんだけど、
よく考えたらあの真っ暗闇の中で一人ってのも可哀想だなって思って、
一番近い自販機（結構遠い）で差し入れのコーヒー買って、
事故車両の所まで引き返した。

レッカーが到着するまで時間が掛かるので、
彼と到着を待つことにした。

彼のＳ１５は、
バンパー真っ二つ。ボンネットはへの字。フェンダーぐちゃぐちゃ。
助手席のエアバッグが開いた衝撃でフロントガラスには大きなヒビが入り、
車体は、フロントサスの付け根のパネルまで変形してるのがパッと見て判り、
とにかく酷い状態だった。

待つこと１時間ぐらいか、レッカー車到着。
レッカー車が整備工場に事故車を運んだ後、彼を家まで送る事にした。

聞けば、まだ二十歳の社会人２年生。
自動車関連の仕事をしていて、
車が好きで自動車関連の仕事を選んだと。
車は買ってまだ４ヶ月。生まれて初めて買う車。
２６０万を５年ローンで買ったらしい。
ローンの残りは２３０万位と言っていた。
残念ながら車両保険には非加入だった。

話は長く続かない。
沈黙の中、何とか彼を助けるために良いアイデアは無いかと必死に考えた。

単純に、車が直れば良い。

直すとしても、車体のフロント周りの損傷が激しすぎる。
素人の俺が見たって、修理に１００万以上は掛かりそうだ。
中古のＮＡのＡＴ車の可走行車買って来て、
それを事故車とニコイチにしたって１００万以上は掛かるだろう。
それなら１００万円の中古車買って来てそのまま乗った方が良いぐらいだ。
彼の収入を考えると、これ以上ローンを抱え込むのは難しい。
どう考えても、彼の手元に残るのは２００万以上のローンの返済だけだ。

ドリフトに憧れて、
最終型シルビアのターボモデルのＭＴ車買って、
峠で事故ってほぼ全損。
絵に描いたような若気の至りで大失敗。

悲惨だ。

そんな彼に、励ましの言葉すら思い浮かばなかった。