
1ヵ月振りに作業の打合せでショップに行ったのですが,会話している中で「スーパーガスターボ」の話題が出ました.
私は全く知らなかったので「なんですか? ソレ??」という反応だったのですが,「昔はよく売れたんだよ~」と営業さんが言うので軽く調べてみたところ,四国・高松市にある「日本環境電装」という会社が販売していた製品だそうで,旧名は「ブルーガスパワー」と言うのだそうです.
世間の評判的には,よくある燃費向上を謳ったオカルトグッズの一種と見なされていたようですが,理屈的に間違った事は言っていなさそうなので備忘録がてら少し調べてみる事にしました.
まず,モノとしては「インマニガスケット」で,インテークマニホールドとシリンダーヘッドの間に差し込むものです(↓).

(honda-beat.jp:
スーパーガスターボより)
通常のガスケットより厚みがあり,ガスケットの上部,ちょうどインジェクタが吸気ポートに向かって燃料を噴く位置に,それを邪魔するかのようにコイルが埋め込まれているのだそうです(↓).

(honda-beat.jp:
スーパーガスターボより)
このコイルで何をするのか?というと,通電してコイルを加熱させ,このコイルの間を通った燃料噴霧を強制的に温めるのだそうです(↓).
燃料(ガソリン)は加熱すると液体→気体になるので,同じ気体である空気と混ざり易くなり,均質な混合気が形成されて燃焼効率が上がる(≒燃費が良くなる)という理屈だそうです.
理屈的には特に間違っていないので,なるほどなぁ~と思い,実際に試した方の感想を調べてみるとこんな感じでした(↓).
・低速域のトルクが増えたような気がする
・一応,燃費は向上した(誤差の範囲だが)
・正直違いが分からない
・高回転は明確に回らなくなった
中には排ガス成分の計測までされた方もいて,未燃成分(HC/CO)は確実に減っていたそうですが,その一方で,燃料が通る途中にコイルを置いているため加熱が不十分だと燃料がコイルに付着し,空燃比が濃くなったり・薄くなったりとエンジンの不調を招いたりもしたそうです.
メーカーとしては「燃焼効率が上がった分だけ燃料を薄くする事が出来る」「燃焼効率が高いので点火時期をより進角させられる」という言い分だったそうで,この製品を使う事前提でリセッティングすれば「まるでターボがついたかのようにガスだけでパワーを出せる!」という事で「スーパーガスターボ」という製品名だったそうです.
まぁ,確かに加熱する事で気化し易くなるのは事実なので,燃料が濃い領域(低回転域)ではトルクが増える事もあるかもしれないなぁ~と思いつつ,燃料を温める=吸気を温めるという事でもあるので,それじゃ体積効率が下がって高回転でパワーが出なくなるのも当然でしょ・・・と思いました.
近頃のクルマは,直噴エンジン(燃料を直接シリンダー内に噴くエンジン)を搭載する事が多いですが,なぜ直噴が多くなったのか?というとガソリンの気化熱で空気を冷やせるからなんですよね.
シリンダー内に燃料を直接噴くと,燃料は急速に気化しようと周囲の空気から熱を奪うので,その分だけ温度が下がって体積が小さくなります.体積が小さくなるという事はその分だけ空気をシリンダー内に押し込めるという事なので,イコール,トルクが増える事になります(空気が冷たい冬場にエンジンが快調になる理屈がコレですね).加えて,吸気温度が下がるという事はノッキング(異常燃焼)も起こりにくくなりますから,圧縮比を上げたり,過給圧を上げたりといったパワーアップを施し易くなる訳です.故に最近のクルマは直噴ばっかになったんですよね・・・.
という事で,そんな直噴エンジンと相性が悪いであろう「スーパーガスターボ」が今日では聞かなくなったのも納得なのかなぁ~と思いました.
以上,スーパーガスターボのお勉強でした.
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Posted at
2025/07/16 17:31:19