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OX3832のブログ一覧

2023年06月12日 イイね!

ピラーバーの効果

ピラーバーの効果それでは今回TC1000に行ってきた目的である「お題」=「ピラーバー有無の変化」の確認結果です.

まず,「ピラーバー」というのはタイトル画像の通り,リアのハッチに対して真横に繋げられているバー(棒)の事です.ボディは開口部がある部分は剛性(変形のしにくさ)が下がるので,ハッチの右と左を棒で繋げて,ボディが捻じれても変形しにくいようにするためのパーツになります.

私が使っているのはAVCOの「ピラーバー」で,2012年に取り付けたものですから,かれこれ10年以上付けっ放しですね.最初に装着した時は,立体駐車場で90°切りながら下り坂を降りる,ボディを捩じるようなシチュエーションで軋み音が全くしなくなって「おおっ! これは凄い」と驚いたのをよく覚えています.剛性アップ系のパーツは「付けると分からず」「外すと実感出来る」のがお約束ですが,さて今回はどうでしょう・・・?


まずはいつもの通りロガーデータから.

今回,バーあり(1本目)→バーなし(2本目)→バーあり(3本目)と合計3回走ったのですが,3本目のデータはタイヤの摩耗が進み過ぎて正確な比較が出来ない状態だったので,1本目の後半と2本目の前半で比較してみる事にします.コンディション的には路面温度が7℃違うものの,気温・気圧は似た数値です.
(赤:ピラーバーあり 青:ピラーバーなし)



タイムは両者ともに42.0秒の時のものなので,大体似てますが微妙に違う箇所もあります.
差異のあった部分にフォーカスして順番に見ていきたいと思います.


1コーナー
乗っている時は,バーなし(青)の方が「ストレートの加速が遅いなぁ・・・」と感じたのですが,ピラーバーは横方向に機能する部品で縦方向には影響を及ぼさないはずですから,恐らく7℃上がった路面温度によってフロントタイヤがタレ気味だったせいでしょう.

それよりも違いを感じたのが1コーナーの進入で切り込んだ時(↓),



「ここからアクセルを踏みたいなー」と思うポイントでも,リアのロールがおさまらず,動き続けている感触がありました.動きの量自体は小さいのでそれでテールスライドが起きる訳ではありませんが,私はリアが止まった事を確認してからアクセルを開ける癖がついているので,リアが動いている間はアクセルを開けられず→LSDを使って曲げる事も出来ず→実質切り遅れという状態になり,バーなし(青)の方のラインは立ち上がりで若干大回りになっているのが読み取れます(↓).



大回りしているので勿論バーなし(青)の方が遅いのですが,これはドライバーのせいなので,バーなし(青)の動きに合わせて走れば違いはないでしょう.


ヘアピン
ここはボディ剛性が下がり,イン側のリアタイヤの荷重を抜き易くなったおかげか? 進入で曲げ易くなったように感じました.ライン取りを見てもバーなし(青)の方が小回りしており(↓),



「おっ! イイじゃん」と思ったのですが,車速の方のグラフを見てみると(↓),



単にバーなし(青)の時は,ボトムが低いだけでした・・・.そりゃ,旋回速度が落ちればその分小回りは出来ますよね.確かに「曲げ易い」とは感じましたものの,「曲がる!」とまでは感じなかったのでボディが捻じれるようになったとは言っても微々たる差という事のようです.なお,ボトムが落ちた直接の理由ははっきりしませんが,恐らくタイヤの摩耗が進んでグリップが落ちたせいではないかな?と思われます.


インフィールド
ボディの捻じれがあるとすれば,ここが最も効果的にそれを活かせるはず!と期待していたのですが,乗っている時は違いをほとんど感じず・・・.実際ライン取りを見ると(↓),



むしろ,ピラーなし(青)の方が曲がらなくなってます(泣).相対的にピラーなし(青)の方がフロントタイヤの摩耗が進んでいるのでグリップも落ちる事からこの差も納得なのですが,それを補うほどの改善効果はナイ!って事ですね・・・.


最終複合
ここも最終コーナーに向かう姿勢がピラーなし(青)の方が良かった記憶があるのですが,ライン取りを見てみると(↓),



単にピラーなし(青)の方が大回りしているだけでした・・・(大回りしているので自然と角度が浅くなるだけ).また大回りしてしまう原因は洗濯板通過後の20Rでアンダーステアが出ているためで,ようはインフィールドと同じ事が起きているという事なんでしょうね.


以上,ピラーバーのあり/なしによる比較でした.纏めると,

  ・ピラーバーを外すとリアのロール量が増える
  ・ロール量が増えた結果,リアが粘るようになりアンダーステア傾向になる
  ・剛性を落とす事によって増やせるインリフト量は僅か

といったところでしょうか.総じてみると根本的にドライビングスタイルを変えない限り,外す方向では優位性を見いだせないようです.なお,ロール量が増えた結果,外側のリアタイヤの荷重量も増えて内圧が上がり易くなったようで,走行途中からリアタイヤがグニャグニャし始めました(恐らくA052のビードシーディング圧を超えたんだと思います).そういった場面でもピラーバーなしの方はリアの収まりが悪く,動きが大きいので私としては相対的にコントロールがしにくかったです.

やっぱり,ボディを粘らせる方向は最初からスライド前提の走らせ方(例えばリアのトーをアウトに振るとか)じゃないと効果を発揮しないのでしょうね.これまでと完全に真逆の考え方なので,ドライビングを根本から変える必要があるんだなぁ~と改めて実感しました.
2023年03月02日 イイね!

ねじり剛性のお勉強

ねじり剛性のお勉強「良かれと思ってやった事が裏目に出る」というのはよくある事で,「大事なのはそこから何を学ぶかだよなぁ~」と何とかメンタルを保とうとしているOXです(何を言おうがダメなもんはダメなんですけど・・・).

さて,SNSを見ていたら「話のネタにどうぞ」と色々なクルマのねじれ剛性値のデータが流れてきたので,ふ~ん・・・と眺めていたのですが,相対値で示される事が多いこのデータを,絶対値で見ると色々興味深かったので纏めておきます.

クルマにおける「ねじり剛性」とは,雑巾を手で絞るかのようにボディにねじる力を加えた際に,どれくらい変形しないか?を表す指標です.


(ダイハツ:COPENより)

一般的にはサスペンションが狙い通りに動くようになるので剛性は高い方が良いとされていますが,「ボディが上手く捻じれるからこそ上手く走れる」という意見もあったりするので,なかなかにデリケートな分野です.

この「ねじり剛性」を表す単位としては「Nm/deg」が使われており,トルクをどれくらい掛けたら1度捻じれるか?という意味合いになっているようです.どうやって測定するのかな?と思って調べてみたら,こんなイメージのようです(↓).




(広島県立総合技術研究所:自動車の車体剛性共同実験の紹介より)

クルマをホワイトボディにして,ダンパーの付け根部分に力を加えるシリンダーを取付け,前後・左右反対向きの方向に力を加える事でねじりを再現し,その際のボディの歪み具合(変位)を測定して「剛性値」として算出するようです.


このため,ルーフ部分が繋がっていないオープンカーは剛性が低くなる事が容易に想像がつくと思いますが,実際どれくらい違うんでしょう? 早速データを見てみたいと思います(元のSNSでは2012年時点のデータだったのですが,調べてみたら2022年版のデータもあったので今回はコチラを参照します).

分かり易いのは,クローズドボディとオープンボディの両方の設定がある車種でしょうから,パッ見で目に付いたのがBMWのZ4でした.

【BMW E85 Z4 クーペ:32,000Nm/deg】


【BMW E85 Z4 ロードスター:16,000Nm/deg】


クローズドボディであるクーペが32,000Nm/degであるのに対し,オープンボディであるロードスターは16,000Nm/degときっちり半分です.両者の車重はクーペ:1425kg,ロードスター:1430kgとむしろロードスターの方が重いので,それなりに補強はしているんだと思いますが,屋根が繋がっていないと剛性はここまで落ちるんですね・・・.


Z4が極端な例だったりしないかな?と思い,今度はポルシェの718ケイマンと718ボクスターで比較.

【718ケイマン:41,000Nm/deg】


【718ボクスター:19,000Nm/deg】


こちらもクローズドボディのケイマンが41,000Nm/degであるのに対し,オープンボディのボクスターは19,000Nm/degと半分以下でした・・・.


オープンの弱さが分かったところで,今度は反対に一番強いそうなレーシングなクルマ達の数値を見てみると,

 Audi R8(2014–)              ・・・ 40,000 Nm/deg
 BMW E46 M3 GTR             ・・・ 46,000 Nm/deg
 Dodge Viper GTS-R            ・・・ 25,082 Nm/deg
 Ford GT                   ・・・ 27,100 Nm/deg
 Lexus LFA                  ・・・ 39,130 Nm/deg
 Lotus Elise 111s              ・・・ 11,000 Nm/deg
 McLaren F1                 ・・・ 13,500 Nm/deg
 Porsche 911 Coupe 991(2012-2018) ・・・ 30,359 Nm/deg

やっぱりドイツ車は固いなんだなぁ~というのが良く分かります.アメリカ車はこの中では比較的設計が古いの方なのでそれより若干劣る感じ.そして,イギリス車はやっぱり固さよりも軽さ!なんでしょうね.
(マクラーレンF1とか,これでよくル・マン24時間に出ようと思うよなぁ~って値です)


続けて,ソース元が海外なので日本車の情報は少ないのですが,気になった車種の数値を見てみると,

 Honda Civic Hatchback(EK)       ・・・ 10,700 Nm/deg
 Honda S2000(AP1)             ・・・  7,100 Nm/deg
 Mazda MX-5(NA,1990–1993)      ・・・  4,881 Nm/deg
 Mazda MX-5(NA,1994–1998)      ・・・  5,152 Nm/deg
 Mazda MX-5(NB,1999–2000)      ・・・  5,219 Nm/deg
 Mazda MX-5(NB,2001–2005)      ・・・  6,367 Nm/deg
 Mazda MX-5(NC,2006–2008)       ・・・  8,132 Nm/deg
 Mazda RX-7(FD)              ・・・ 15,000 Nm/deg
 Mazda RX-8                  ・・・ 30,000 Nm/deg
 Nissan Micra 3-door(K11, 1992–2003) ・・・  4,000 Nm/deg
 Subaru Impreza WRX(2002–2007)    ・・・ 23,000 Nm/deg
 Toyota Celica(T230,2000–2005)     ・・・ 13,600 Nm/deg
 Toyota Starlet(80 Series)         ・・・  7,600 Nm/deg
 Toyota Supra(A90)             ・・・ 39,000 Nm/deg

いくら当時頑張ったとは言っても,やっぱりS2000の剛性は低いんですね.ロードスター(MX-5)はそのS2000の更に7割くらいしかありませんが,それでもモデルチェンジの度に涙ぐましい努力を経て徐々に上げていってる様子が窺えます.S2000から6~7年遅れくらいにはなっていますがNC世代で上回っているのが素晴らしいですね.ただ,これとプラットフォームを共有しているRX-8の数字を見ると,「オープンで剛性なんて語っちゃいけない」と言われそうですが・・・.

クローズドボディなのに,そのロードスターよりも剛性が低いK11マーチ(Micra)はやっぱりなぁ~という気がさせられますが,反対にGD世代のWRXの数値の高さも別な意味でやっぱりなぁ~という感じです.FFセリカ(T230)とEKシビックの値を見ると1万越えくらいが1990年代後半~2000年代初期の市販車の標準という感じでしょうか.そこから20年経ったA90スープラの数値は,前述のレーシングカー並みの値を示しており,技術の進歩を示すと共に「最近のクルマに剛性アップパーツは要らない」という話も納得出来ます.

EF世代のCR-Xの数値は分かりませんが,EKが1万ちょっと,EP8xのスターレットが7千半ばというのを踏まえると,8千行かないくらいかなぁ~? 私のEF8はグラストップなのでそれより確実に下回るでしょうから,良くてS2000と同等くらいですかね・・・.


最後に面白かったので,テスラに関して1つ.

  Tesla Model 3(バッテリーなし) ・・・ 15,500 Nm/deg
  Tesla Model 3(バッテリーあり) ・・・ 20,600 Nm/deg

これを見て,やっぱりバッテリーも剛性アップパーツなんだなぁ~と思いました(笑).


以上,ねじり剛性のお勉強でした.
2023年01月15日 イイね!

重心高の影響に関するお勉強

重心高の影響に関するお勉強エンケイのRC-T5で新規設定された「15インチ・PCD100・5H・INSET40」って何用のホイールなんだろう?と気になっているOXです.

さて,タイヤが届かず日曜のファミ走は走れなかったので,今回は年末・年始に読んだ本の話でもしようかと思います.実家→東京に戻る新幹線で暇潰しに何か読もうと久方振りに書店に寄ったら,「GP Car Story」のSpecial Edition,「Adrian Newey(エイドリアン・ニューウェイ)」があったので,これを買って読んでました.

この本は,F1カーデザイナーであるエイドリアン・ニューウェイ氏の自伝「HOW TO BUILD A CAR」の副読本的な位置付けとして2020年に発売された本だそうで,ニューウェイ氏がどういう着眼点で当時のF1カーを設計したのか?が彼自身の言葉で述べられており,非常に面白かったです.

本書ではいくつかのクルマに関して触れられているのですが,その中の1台である「Williams FW18」の章で,昨今のF1でよく話題になる「レーキ角(クルマが前傾している角度)を初めて採用したのがこのクルマである」と述べられており,「こんな昔からレーキ角を考えてたのか~」と驚きつつ,その採用の経緯を興味深く読んでました.




(1994年型FW16,1995年型FW17に比べ,一番下の1996年型FW18は確かにレーキ角がついている↑)

「クルマを前下がりの姿勢にした場合~(中略)~リアの車高を上げるしかなく,結果として重心高が高くなるデメリットがあるからだ.96年までに私たちは簡易的なサーキットシミュレーションを完成させており,それを使ってダウンフォース増加によるラップタイムのゲインと,重心高が上がることによるタイムロスの比較評価ができた.結果はレーキ角を大きくすれば,ラップタイムは少なからず向上するというものだった~」

「この時代に既にラップタイムシミュレーションがあったのか!」とこれまた驚きつつ,やはりまだシミュレーション精度は低かったようで,最終的には実車のロールフープに重りを付けて,比較テストして採用可否を決めたんだそうです.


1996年ですからOSがまだWindows95の時代です(一般的なPCのメモリが8MBの世界!).そんな時代のシミュレーションだったら複雑な計算はしていないのでは?と思いつつ,「だったら,2013年製のPS3・GT6の物理計算でも味見くらいは出来るかな?」と思い,久方振りにGT6を引っ張り出して,車高を振ってテストしてみました.
(ええ,ウチでは未だにPS3が現役です・・・笑)





結果は,リアの車高30mm上げ+MAXダウンフォースより,前後共に車高30mmダウンの方が速かったです.車高が低い方がコーナーの立ち上がりで無理が効くので,とにかくステアリングを切れば曲がり,早めにアクセルを開けられるので,その分ボトムが上がってタイムを稼げるみたいですね.ま,絶対的なダウンフォース量が低いCR-Xのチューニングカーで試した結果なので,F1クラスの車速・ダウンフォースであれば結果は全く違うと思いますが・・・.


当たり前の事を当たり前であると確認しつつ,この本で面白かった話をもう1つ.今度は「McLaren MP4-13」の章で,クルマの全幅が200mmも縮められた1998年のレギュレーションに対応するためにホイールベースを延ばす事を考えたというお話.



「新車は全幅が狭くなることを考慮し,コンバインドエントリー(コーナーの進入部分)の限界状況での外側前輪の負荷および,コンバインドエグジット(コーナーの立ち上がり部分)の限界状況での外側後輪の負荷を減らす唯一の方法はホイールベースの延長だと考えたのだ.車幅が狭くなるのであれば全長も短くすべきだと主張する者もいたが,私の考えは異なっていた.むしろ,その反対だ」

エントリー/エグジットのタイヤの負荷の話は理解出来るのですが,その解決策が「ホイールベースの延長」となる理屈が私は未だに理解出来ていません.トレッドが狭くなる事で限界が下がりピーキーになる特性を,ホイールベースを延ばす事によって穏やかにする・・・というドライバビリティに近い世界の話だと当時は思っていたのですが,上記の発言を読む限り,何か物理的に理屈がありそうですね.

ちなみに,面白いのがこの翌年の「McLaren MP4-14」では,同じレギュレーションでありながら一転してショートホイールベース化を行った点です.こちらの経緯に関しては本書では触れられていないので分からないのですが,調べてみたところ「徹底的に低重心化を推し進めた」とあるので,重心が下がった事によって限界が上がり,ホイールベースを縮められたという事なんでしょうか・・・?


という感じで非常に面白い本だったのですが,これを読んでいてEF8の重心位置が知りたくなってきました.

前後方向の重心位置は車検証記載の前軸重・後軸重が分かれば割り出せるのですが,高さ方向となると術がありません.何か方法がないのかな?と調べてみたら,こんな方法があるそうです(↓).


(大崎喜久技術士事務所:トラック重心高の計測法より)

前輪をある高さ(h)まで持ち上げた時に,どれだけ後軸の重量が増えるか?(ΔW)を計測して,この公式に当て嵌めれば重心高(hs)が出せるのそうです.四輪全てのコーナーウェイト計測だと,専門の機器を持っているところじゃないとダメですが,後輪だけなら筑波サーキットの重量計測器で,フロントをジャッキアップしてウマを噛ませる方法で測れないかなぁ~?



どなたか試してみて下さい(笑).


以上,重心高の影響に関するお勉強でした.
2022年09月03日 イイね!

車高アップと荷重変化

車高アップと荷重変化現状の車高が走行中リア下がりになっている可能性があるので,レーキをつけてみようというのが前回のお話でした.

現状,リアの車高はフェンダーとの隙間で表現すると以下の通り.

 加速時       ・・・ 指1本分以下
 ブレーキング時 ・・・ 指2本分
 完全に浮いた時 ・・・ 指3本分

指1本分は大体15mmくらいでしょうか.数字で聞くと結構な車高変化に感じますね.リアの車高を上げると,重心がフロント側に移動するので,それでフロント荷重が増しそうな気もします.



フロントの荷重が増え過ぎてフルブレーキング時にロックすると嫌だな・・・と思い,車高を何mm上げるとフロントの荷重がどれくらい増えるんだろう?と色々調べていたら,コチラのブログで計算式を見つけました.折角なので,今回はこの計算式をお借りしてフロント荷重の変化量を試算してみたいと思います.
(今回は計算式は割愛します.詳細はリンク先のブログを参照下さい)


まず,車重は7年前にコーナーウェイトを測った事があるので,その時の数値を引っ張り出してみます.

  車両重量 = 981kgf

ホイールベースは2300mm,前軸荷重も644kgfと分かっているので,前軸からの重心位置を割り出すと,

  重心位置 = 790mm

タイヤ直径は205/50R15で587mm,重心高は分からないので全高(1270mm)の半分と仮定すると,

  重心高 = 1270 / 2 = 635mm

ここから車軸中心に対する重心高を求めると342mm.前軸との重心距離は861mmとなります.
また,前軸との重心角度は23°でした.


これをベースに,リアの車高を10mm上げた場合を試算すると以下の通り.

  ホイールベースの変化量 = +0.022mm
  車体傾斜角の変化量   = +0.249°
  重心位置の変化量     = -1mm
  前軸荷重の変化量     = +0.687kgf

リアの車高を上げると,ほんの僅かとはいえホイールベースって延びるんだなぁ~と思いつつ,前軸荷重はたった0.6キロ増えるだけなんですね.絶対値が644キロ中の0.6キロ増ですから,割合にして0.1%.考えるのが無駄に思える値ですね(苦笑).


折角調べたので,念のためにリアの車高を20mm上げた場合も試算してみると,

  ホイールベースの変化量 = +0.087mm
  車体傾斜角の変化量   = +0.498°
  重心位置の変化量     = -3mm
  前軸荷重の変化量     = +1.34kgf

ホイールベースの変化量は4倍になってますが,それ以外の数値は順当に倍になるくらいですね.元の値が小さいので大差ないです.


あまりにも変化が少ないので,試しに重心高を車高の2/3(847mm)だと仮定し直して,リアの車高を10mmアップした場合を試算し直してみると,

  ホイールベースの変化量 = +0.022mm
  車体傾斜角の変化量   = +0.249°
  重心位置の変化量     = -2mm
  前軸荷重の変化量     = +1.08kgf

重心が高い方が前軸への移動量は増しているようですが,それでもたったの1キロ.無視出来るレベルですね.


・・・という事で,リアの車高を上げてもフロントの荷重は全く増えない事が分かりました.なんとなく,前傾姿勢にすればフロントの荷重は増えるようなイメージを持っていたのですが,そんな事はないんですね.勉強になりました.

さて,これでリアの車高を上げてもフロントに影響を与えない事が確認出来たので,レーキを付けた時のネガはもうなさそうかな? あとは,車高上げると多分キャンバーが減る方向になるので,それを現状と同じ値になるように再調整が必要なくらいですかね・・・.


(リアの調整式アームがようやく日の目を見そう・・・)
2021年09月28日 イイね!

ホイールベースのお勉強

ホイールベースのお勉強ホイールベースの差を重量配分で埋められないか?と調べてみたのですが,残念ながら「埋まらない」という結論に辿り着きました.

それほどまでにホイールベースの差は絶対的なものなのか・・・と改めて実感したのですが,そんな折,「運動性能を考えた場合,ホイールベースは長ければ長い方がいい」というコメントを見つけました.

Motor Fan illustrated Vol.158内の「レーシングカーにおける重量配分」という記事で,GT3カー等を手掛けたトヨタの永嶋勉氏が持論としてそれを語っています.確かにF1を見ると,この50年でどんどんホイールベースが伸びてきており(タイトル画像参照),クルマが速くなればなるほど,ホイールベースを伸ばす(安定性を増やす)必要性があるようです.

そもそもホイールベースを伸ばすとなんで安定するんだっけ?と思い,記事を読んでみると「スタビリティファクター」という概念で,これを説明出来るそうです.


「スタビリティファクター」というのは,下図(↓)のような特性をもつ係数(Ks)で,



車速を上げて旋回していった時のステアバランス(アンダー/オーバー/ニュートラル)を,この係数で表現出来るのだそうです.そして,この係数は次式で求められます(↓).



複雑な数式が出ると拒絶反応が出る人もいると思うので(笑),ここでは「ニュートラルステア(Ks=0)でコーナーを速く曲がりたい!」という前提で式を整理してみると,

     0 = -m ×(Lf×Cf - Lr×Cr)/{2×(Lf+Lr)^2×Cf×Cr}
     0 = -m ×(Lf×Cf - Lr×Cr)
     0 = Lf×Cf - Lr×Cr
 Lf×Cf = Lr×Cr

という風に単純化出来ます.

ここで,Cf・Crはタイヤのグリップみたいなものですから,前後のタイヤから同じグリップを引き出したい(Cf=Cr)のであれば,Lf=Lrにしないと成り立たない事になります.そして,LfとLrは重心からの距離ですから,重心位置から前輪軸・後輪軸が同じ距離にいないとダメという事になります.ここから,前後の重量バランスが50:50であれば常にニュートラルステアが得られる,という理屈に繋がる訳ですね.

EF8の場合,前後の重量バランスが66:34ですから,数式に当てはめると,

 0.34 × Cf = 0.66 × Cr
 Cf =(0.66 / 0.34)× Cr
 Cf = 1.94 × Cr

つまり,フロントはリアに対して約2倍のグリップを発揮しないとニュートラルステアは維持出来ないという事になります.大雑把に考えると,これはフロントのタイヤ幅をリアの倍にするって意味ですから,まぁ,非現実的ですね(笑).


話を戻して,結局「クルマが安定している」というのは,「ニュートラルステアでタイヤのグリップに余裕がある」という意味だと思いますから,前述の数式をもう一度引っ張り出し,

 Lf×Cf = Lr×Cr

タイヤのグリップに余裕を与えるためにCf・Crの値を小さくしようとしたら,Lf・Lrの値を大きくしなければなりません.すなわち,重心から車軸までの距離を長くする(=ホイールベースを伸ばす)しかない,という事ですね.


なるほどなぁ~と思いつつ,だったら,ホイールベースを伸ばして,前後の重量バランスを適正化したクルマはさぞ乗り易いのだろうなぁ~と思ったら,そうでもないらしい・・・.再び,先述の永嶋氏のコメントです.

よかれと思ってそうした(重量配分を適正化した)のですが,ドライバーから「乗りにくい」と言われました~(中略)~「唐突にリアが動いて修正しづらい」と言われました.「むしろ(重量物は)前にあった方がいい」と.

なんでこんな事になるのか?というと,前述の式には出てこなかった「慣性モーメント」の影響のようです.


(Motor Fan illustrated Vol.158より)

重量配分を適正化する際,ホイールベースの内側(図の下段左)での移動であれば慣性の影響は小さいですが,ホイールベースの外側(図の下段右)に移動させると,慣性の影響が大きくなって動きを止めづらくなる(コントロールが難しくなる)という事のようです.まぁ,当たり前と言えば当たり前の話なのですが,恐らくコレがFD2とEF8が同じ動きに見える理由でしょうね.


では,「重量配分の適正化」と「慣性の影響」どちらを優先するのか?というと,先述の永嶋氏曰く「重量配分の適正化」だそうです.その理由は「(後輪駆動車において)フロントタイヤがよく温まる(フロントタイヤに多く仕事をさせられる)から」.つまり,慣性で悪化するデメリットよりタイヤ性能をフルに引き出すメリットの方が大きい,という事なのでしょう.

FFの場合,タイヤの温まりで苦しむのは冬場のリアタイヤですが,例えば,アタック前のウォームアップ中はリアに重りを載せてウォームアップを促進し,その後,一度ピットに戻って重りを下ろしてから本格的にアタック!・・・なんて作戦はアリなのでしょうかね?

最近,四輪用としては比較的安いタイヤウォーマーも出てきて,食指が動かされているのですが,気温も下がってきましたし,そろそろ真面目に対策を考えないと去年の二の舞ですね・・・.


以上,ホイールベースのお勉強でした.

やはりクルマが元々持ってる素性の差(重量配分やホイールベース)というのは大きいですね.相性の悪い事を他の要素で何とかやりくりしようとすると,どうしても難しくなります・・・.まぁ,最もその難しさ=楽しいとも言えるので(笑),引続き色々対策手段を考えながらEF8で走っていこうと思います.

プロフィール

「[整備] #CR-X フロントスプリング交換 https://minkara.carview.co.jp/userid/1684331/car/1250119/7767117/note.aspx
何シテル?   04/26 23:09
EF8乗りの先輩にタイムアタックで挑んでいます.現在までの通算成績は9勝20敗.GPSロガーを使ってマシンとドライビングの問題点を洗い出し,アップデートさせなが...
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