ウイングネタは前回で終わり.今回は別のお話です.
先日のTC1000では久方振りにスピンをしました.まぁ,当日の路面はかなり悪かった(μが低かった)ので,路面のせいにして何も反省しないのもアリなのですが(笑),滑り易い路面なら滑り易いなりにコントロールするのがドライバーの務めなので,ドライバーの落ち度は落ち度として,なんでスピンしたのか? ちゃんと反省しておこうと思います.
今回は1コーナーとヘアピンの2箇所でスピンした訳なのですが,シチュエーションが異なるのでそれぞれ別々に見てみます.
最初に1コーナーの方から.
TC1000でオーバーステア気味のセットにすると一番苦しむのが,この1コーナーな訳ですが,逆に言えば,この1コーナーのオーバー挙動をドライバーの腕で何とか捻じ伏せる事が出来れば,残りのコーナーにクルマを合わせてタイムを削る事も出来ます.そういう意味では割と重要なコーナーであったりします.
それでは早速,スピンした際のロガーデータを見てみましょう.
(赤:ベストラップ 青:スピンしたラップ)
右側の緑丸がスピンしたポイントになるのですが,そこから遡って左側を見てみると,1コーナー進入時のブレーキングポイントが大分違うようです.距離にして約12m,スピンしたラップ(青)の方がブレーキングを遅らせており,車速も1.4km/h高い状態で1コーナーに進入していたようです.
ブレーキングを遅らせれば最高速も伸びるのは当然なので,この最高速に着目してランキング形式でデータを整理してみました.
結果,スピンした周(赤)が129.95km/hで当日1位でした.当日2位と約0.5km/h差,同3位と約1km/h差という点を踏まえると,どうやら純粋に突っ込み過ぎ(ブレーキングを遅らせ過ぎ)だったようです・・・(反省).
続けて,ヘアピンの方も見てみます.
こちらは1コーナーと異なり,乗っている時は特別無理している感覚はなく,完全に予想外のスピンで,スピンした瞬間何が起きたのか分からず混乱したのですが,果たして原因は何だったのか? こちらもロガーデータを見てみます.
(赤:ベストラップ 青:スピンした周)
あらら,こっちもかなり突っ込んでいたみたいですね(苦笑).
ならば,先程と同様にヘアピン手前の車速をランキング形式で整理してみます.
スピンしたラップ(赤)は117.78km/hで断トツの1位でした・・・.
う~ん,集中力が切れてたのかな? これはチト情けないですね(泣).
1コーナーでのスピンは「ウイングなし」の状態でしたので,まぁ,最悪スピンしても仕方がないかなぁ~?とも思うのですが,ヘアピンでのスピンは「ウイングあり」の状態なので,これで回るのはホント情けないですね・・・.
ただ,これは見方を変えると,「ウイングあり」の状態であっても,ブレーキングの仕方次第ではスピンするくらいのヨーを生み出す事は出来る!と言えるのかもしれません.スピンのメカニズムを解き明かせればクルマの状態がアンダーだった時に使えるワザの1つとして役に立つかもしれないので,もうちょっと詳しく調べてみます.
(転んでもタダでは起きないの精神です・・・笑)
上記のロガーデータを見ると,2コーナーを抜けた先の車速推移はベストラップもスピンした周も変わらないので,純粋にブレーキングの操作だけで違いを生み出しているようです.ならば減速Gはどうか?とフリクションサークルを見てみると,
ベストラップ(赤)が1.1G,スピンした周(青)が1.2Gで,0.1G上回っていたようです.
( ´・д・)ン?
減速Gで1.2G? なんかどこかでそんな話を聞いたような・・・??と記憶を辿ってみたところ,1年前くらい前にそんな話をしていた事を思い出しました(↓).
・
縦Gを意識せよ!(前編)
・
縦Gを意識せよ!(後編)
そうそう,「ハイグリップラジアルの限界Gは1.2Gだが,それを私は本当に引き出せているのか?」というお話.確か当時の結論としては「1.0Gは出せるけど,それ以上はリアタイヤの荷重を増やさないと無理!」でした.そして,実測値ベースで「私のEF8の場合,リアの荷重を10%増やせばMAX:1.3Gまでは出せる」という事も分かったのでした.
アレッ・・・? σ(・ω・;) ??
1年前はMAX:1.0Gが限界だったのに,なんで今は易々と1.1G出せているんだ?
確か限界を超えたGを出すとフロントタイヤがロックしたよね・・・??
ええっと,当時のブログを読み返してみると「リアの荷重が10%増えると減速Gも0.3G増える」という計算だったので,ここからざっくり推測すると「現状はリアの荷重が約3%(≒12kg)増えている」って試算になりそうです.
当時と今で最も異なるのはアンダーパネルですから,これの
重量5.3kgと,車体中心部(ホイールベース内)にあって前後のバネレートに基づいて重量配分されている前提で試算してみると,
5.3 × 11.8/(14.5+11.8)= 2.37 [kg] ≒ 2.4 [kg]
つまり,アンダーパネルを付けた事で,2kgちょっと純粋にリアの重量が増えた事になるのですが,これじゃ全然足りませんね.やっぱりダウンフォースが発生してリアの荷重が増えているという事なんでしょうか?
ならば,アンダーパネルのおかげで「ダウンフォースが増えて,リアの荷重も増えている」と仮定して,最大の1.2Gを発生している時の車速を車載で確認してみると(↓),
90km/h前後でした.
前回の分析で「今付けてるGTウイングは70km/hくらいからダウンフォースを発生する」という事が分かったので十分ダウンフォースが発生しているレンジにいそうです.
一方,そこから急に姿勢が乱れてスピンした際の車速を同様に車載で確認してみると(↓),
55km/h付近である事が分かりました.70km/hを下回っていますので,この車速域ではダウンフォースが減っている可能性は十分あります.
以上の事から,ヘアピンでのスピンの原因は「奥まで突っ込み過ぎた」が一番の原因である事は間違いないですが,それに加えて「減速の過程でリアのダウンフォースを失った」事も原因の1つではないか?と思いました.スリッピーな路面でブレーキングを奥まで突っ込み過ぎた結果,リアタイヤのグリップが限界ギリギリの状態となり,それでも70km/h以上の領域は空力で押さえつけて何とか姿勢を維持出来たが,70km/hを下回った瞬間ダウンフォースを失って耐え切れず,突然スピンモードに入った・・・そんなイメージだと,乗っていた時に感じた唐突感が充分納得出来ます.
以上,スピン反省回でした.
今の状態ではタイムを削るにはブレーキングで詰めるしかないので,やや突っ込み過ぎの傾向になるのは仕方ありませんが,それでスピンしては意味がないので,次はスピンする手前,ギリギリのところで限界を正確に見極めてコントロールしたいところです(センサーを鍛えないとな・・・).
また,ヘアピンで起きた唐突な挙動変化が空力によるものであるならば,1つ当た新しい走らせ方を思いつきましたが,それはまた後日として,今回は「空力に頼ったクルマはピーキーになる」という言葉を,しっかり肝に銘じて反省で終わっておこうと思います(ウェット路面の時は注意しないとな・・・・).