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2021年09月28日 イイね!

ホイールベースのお勉強

ホイールベースのお勉強ホイールベースの差を重量配分で埋められないか?と調べてみたのですが,残念ながら「埋まらない」という結論に辿り着きました.

それほどまでにホイールベースの差は絶対的なものなのか・・・と改めて実感したのですが,そんな折,「運動性能を考えた場合,ホイールベースは長ければ長い方がいい」というコメントを見つけました.

Motor Fan illustrated Vol.158内の「レーシングカーにおける重量配分」という記事で,GT3カー等を手掛けたトヨタの永嶋勉氏が持論としてそれを語っています.確かにF1を見ると,この50年でどんどんホイールベースが伸びてきており(タイトル画像参照),クルマが速くなればなるほど,ホイールベースを伸ばす(安定性を増やす)必要性があるようです.

そもそもホイールベースを伸ばすとなんで安定するんだっけ?と思い,記事を読んでみると「スタビリティファクター」という概念で,これを説明出来るそうです.


「スタビリティファクター」というのは,下図(↓)のような特性をもつ係数(Ks)で,



車速を上げて旋回していった時のステアバランス(アンダー/オーバー/ニュートラル)を,この係数で表現出来るのだそうです.そして,この係数は次式で求められます(↓).



複雑な数式が出ると拒絶反応が出る人もいると思うので(笑),ここでは「ニュートラルステア(Ks=0)でコーナーを速く曲がりたい!」という前提で式を整理してみると,

     0 = -m ×(Lf×Cf - Lr×Cr)/{2×(Lf+Lr)^2×Cf×Cr}
     0 = -m ×(Lf×Cf - Lr×Cr)
     0 = Lf×Cf - Lr×Cr
 Lf×Cf = Lr×Cr

という風に単純化出来ます.

ここで,Cf・Crはタイヤのグリップみたいなものですから,前後のタイヤから同じグリップを引き出したい(Cf=Cr)のであれば,Lf=Lrにしないと成り立たない事になります.そして,LfとLrは重心からの距離ですから,重心位置から前輪軸・後輪軸が同じ距離にいないとダメという事になります.ここから,前後の重量バランスが50:50であれば常にニュートラルステアが得られる,という理屈に繋がる訳ですね.

EF8の場合,前後の重量バランスが66:34ですから,数式に当てはめると,

 0.34 × Cf = 0.66 × Cr
 Cf =(0.66 / 0.34)× Cr
 Cf = 1.94 × Cr

つまり,フロントはリアに対して約2倍のグリップを発揮しないとニュートラルステアは維持出来ないという事になります.大雑把に考えると,これはフロントのタイヤ幅をリアの倍にするって意味ですから,まぁ,非現実的ですね(笑).


話を戻して,結局「クルマが安定している」というのは,「ニュートラルステアでタイヤのグリップに余裕がある」という意味だと思いますから,前述の数式をもう一度引っ張り出し,

 Lf×Cf = Lr×Cr

タイヤのグリップに余裕を与えるためにCf・Crの値を小さくしようとしたら,Lf・Lrの値を大きくしなければなりません.すなわち,重心から車軸までの距離を長くする(=ホイールベースを伸ばす)しかない,という事ですね.


なるほどなぁ~と思いつつ,だったら,ホイールベースを伸ばして,前後の重量バランスを適正化したクルマはさぞ乗り易いのだろうなぁ~と思ったら,そうでもないらしい・・・.再び,先述の永嶋氏のコメントです.

よかれと思ってそうした(重量配分を適正化した)のですが,ドライバーから「乗りにくい」と言われました~(中略)~「唐突にリアが動いて修正しづらい」と言われました.「むしろ(重量物は)前にあった方がいい」と.

なんでこんな事になるのか?というと,前述の式には出てこなかった「慣性モーメント」の影響のようです.


(Motor Fan illustrated Vol.158より)

重量配分を適正化する際,ホイールベースの内側(図の下段左)での移動であれば慣性の影響は小さいですが,ホイールベースの外側(図の下段右)に移動させると,慣性の影響が大きくなって動きを止めづらくなる(コントロールが難しくなる)という事のようです.まぁ,当たり前と言えば当たり前の話なのですが,恐らくコレがFD2とEF8が同じ動きに見える理由でしょうね.


では,「重量配分の適正化」と「慣性の影響」どちらを優先するのか?というと,先述の永嶋氏曰く「重量配分の適正化」だそうです.その理由は「(後輪駆動車において)フロントタイヤがよく温まる(フロントタイヤに多く仕事をさせられる)から」.つまり,慣性で悪化するデメリットよりタイヤ性能をフルに引き出すメリットの方が大きい,という事なのでしょう.

FFの場合,タイヤの温まりで苦しむのは冬場のリアタイヤですが,例えば,アタック前のウォームアップ中はリアに重りを載せてウォームアップを促進し,その後,一度ピットに戻って重りを下ろしてから本格的にアタック!・・・なんて作戦はアリなのでしょうかね?

最近,四輪用としては比較的安いタイヤウォーマーも出てきて,食指が動かされているのですが,気温も下がってきましたし,そろそろ真面目に対策を考えないと去年の二の舞ですね・・・.


以上,ホイールベースのお勉強でした.

やはりクルマが元々持ってる素性の差(重量配分やホイールベース)というのは大きいですね.相性の悪い事を他の要素で何とかやりくりしようとすると,どうしても難しくなります・・・.まぁ,最もその難しさ=楽しいとも言えるので(笑),引続き色々対策手段を考えながらEF8で走っていこうと思います.
2021年09月27日 イイね!

前後重量配分のお勉強 その②

前後重量配分のお勉強 その②では続きです.

後輪駆動車は余力のあるフロントタイヤにより仕事をさせるために,前後の重量配分をフロント側に寄せて前後同サイズのタイヤを履かせている.重量配分をフロント側に寄せられていないとタイヤサイズを上げられない.ならば,前輪駆動車はリア側に重量配分を寄せれば良いか?というと,加速時にトラクションが得られないので,そういう話でもない.というのが前回のお話でした.


じゃあ,FFの理想的な重量配分が50:50ではないとして,一体いくつなのか?と調べてみると60:40くらいだそうです.これを頭に入れつつ,主だった車種の重量配分を調べてみると,

 67:33 ・・・ EK9
 66:34 ・・・ EF8
 65:35 ・・・ EG6,DC2
 64:36 ・・・ GK5,ZC33S
 63:37 ・・・ FD2,DC5,ZC32S
 60:40 ・・・ ZF1

みんな理想値よりはフロントヘビーですね.唯一理想値が取れているZF1は,重たいバッテリーをリアに積んでいるためのようです(こもりん.さんからは「実測値で63:37だ!」と主張されましたが・・・笑).

そのZF1,リアにバッテリー積むし,GEフィットベースだし,当然センタータンクレイアウトなのだろうと思い込んでいたのですが,違ったんですね(↓).



なんでなのかな?と思ったら,FD2よりも低い着座位置を実現するためだったようです(↓).



重たいバッテリーで前後バランスが取れるから~というのもあるのでしょうけれど,実は燃料タンクの位置ってそんなに影響を与えていないのか?と思い,センタータンクレイアウトに関して調べてみると,CR-Zではなくグレイスですが,こんなコメントを見つけました(↓).


ホンダ・グレイス 開発者インタビューより)

やっぱり影響は大きいんですね.そう思うと,GK5とZC32Sの走りを見た時に,極端にGK5の姿勢変化が違った理由の一端には,燃料タンクの搭載位置なんて要素も絡んでいたのかもしれませんね.


・・・って,いきなり話が逸れた.ええっと,なんの話でしたっけ?
ああ,そうそう.FFの理想的な重量配分は60:40だけど,そんなクルマは少ないって話でした.

では,理想的な配分から違ったとして,それがどれくらい影響するのか?を調べていった時に,Motor Fan illustrated Vol.158 前後重量配分の真偽 にこんなデータ(↓)が載ってました.



FFにおいて,ホイールベースと前後の配分を変えた時に,どんな違いが出るか?という試験データです.
このままだとちょっと見づらいので,前後・左右をいつもの配置に直して(↓)読み取ってみます.



まず,ホイールベース固定(2000mm)で荷重配分がフロント寄り(67:33)の場合(青色)と,リア寄り(62:38)の場合(黄色)との比較結果です.この図は左曲線のU字状になっているのが前輪のG変化.右下→左上への斜め線になっているのが後輪のG変化を示しており,全体的に見て,前輪と後輪でGの変化推移が全く異なる事がよく分かります.

ブレーキングを開始した時点(一番下)が開始点です.ここから右に旋回し,左向きの横Gが発生していく訳なのですが,減速領域を見てみると,前輪・後輪共にリア寄り(黄色)の方がフロント寄り(青色)よりも横Gが大きい事が分かります.つまり,旋回性能が上がっているって事ですね.一方,加速領域を見ると,前輪はフロント寄り(青色)の方が加速Gが大きく,後輪はリア寄り(黄色)の方が加速Gが大きいです.つまり,バランスをリア寄りにするとフロントのトラクションは減るが,リアのトラクションは得られるという事のようなのですが,トータルで見た場合にどちらが得か?というのは判断が難しいところですね.

これを纏めると,FFで前後重量配分をリア寄りにした場合,コーナー進入時の旋回性能は上がる.但し,立ち上がりでのトラクション性能に大差はない,という感じでしょうか.


次に,荷重配分を62:38に固定して,ショートホールベース(2000mm:黄色)とロングホイールベース(2600mm:赤色)を比較してみます.減速領域においては,ロングホイールベース(赤色)の方が前輪の横Gは小さいものの,後輪の横Gは逆に大きいです.ようは,フロントが入らず,リアも動かないって感じでしょうか.一方,加速領域においては前輪も後輪もロングホイールベース(赤色)の方が加速Gが大きいです.特に後輪の方は明確な差があり,トラクション性能として秀でているのが読み取れます.

これを纏めると,FFでホイールベースを延ばすと,コーナー進入時の回頭性が悪くなるが,立ち上がりでのトラクション性能は向上する,という感じでしょうか.


ここまでの情報を整理すると,以下になります.



FFにおいて重量配分の違いが影響を及ぼすのは,コーナー進入時(Entry)の旋回性能の部分であり,立ち上がり時(Exit)には特異な差は生まれない.一方,ホイールベースの違いは,コーナー進入時にも立ち上がり時にも影響を及ぼし,トラクションが悪化しても回頭性が欲しい場合はショートホイールベース,回頭性が悪化してもトラクション性能が欲しい場合はロングホイールベースという事になるようです.



・・・とすると,EF8⇔EF9で上図のような挙動の違いが出るのは,重量配分の差ではなく,やはりホイールベースの差という事のようですね.また,ホイールベースの差を重量配分を変えて埋めようとしても,特性が異なるので同じようなリアのトラクションは得られない,という事のようです.

う~ん・・・残念.何とかCR-Xで同じ動きを作り出す方法がないか?と思い,重量配分に着目したのですが,どうやら,こればっかりはどうしようもないみたいですね.この動きを作り出すための方法は別な手段で探ってみたいと思います.
2021年09月26日 イイね!

前後重量配分のお勉強 その①

前後重量配分のお勉強 その①今月の頭に「旋回しながら加速させようとした時に,EG6・EF9はリアの追従性が良いので前にちゃんと進むが,FD2・EF8はリアが外に流れていく(追従しない)ので,コントロール(アンダーとオーバーの境目を見切る事)が難しい」というお話を聞いて以降,どうしてそういう特性になるのかが気になっています.

EG6とFD2に関しては何となくメカニズムの想像がつくのですが,EF9とEF8の差に関しては今一つ分かりません.

そんな折,縦Gの話も出てきて,前後の重量配分の話が改めて気になってきたので色々調べています.


前後の重量配分というのは,クルマ1台分の重量が前軸(前輪)と後軸(後輪)でどういう配分になっているか?という話です.



よく「50:50が理想!」と言われますが,これはFRの場合を指している事が多く,FFは勿論の事,MRでも理想的な比率は異なるようです.

MRで50:50が理想的ではない事は実はレンタルカートに乗っているとよく分かるのですが,シートポジションを前寄りにするより,後寄りにした方がトラクションの掛かりが良くて乗り易いんですよねぇ~.



本来,レンタルカートのシート位置調整は,身長や手足の長さを吸収するための機構なのですが,私の場合は「このカート,リアのグリップが低いなぁ~」と思ったら,ステアリングやペダルの操作が多少辛くなっても,目一杯シートを後ろにズラしてトラクションを稼いだりしてます.カートの場合は一番の重量物が人間なので,効果がよく体感出来ます(最近はペダル側で調整するカートが増えてきたので,あんまりこの作戦が使えなくなってきてますが・・・).


さて,このシート位置によるバランス調整を四輪でやっているのが,EF8の先輩です(↓).


(写真はコチラからお借りしました)

左がEF8の先輩ですが,右のEF9に比べて明らかにヘルメットの位置が後ろである事が分かると思います.右の方が前のめりの姿勢なワケではなく,先輩のシートがJTCCばりに後退しており,シート背面がほぼBピラーと同じ位置なんです・・・.


JTCCの話が少し出たところで,そういえばレーシングカーの重量配分ってどうなっているんだっけ?という事で,データがないか調べてみたところ,少し古いですが,Racing onの2003年10月号に当時のGT500マシンの重量バランスに触れた記事がありました(↓).



まだJGTCと言われていた時代で,比較的,市販車の面影が残っている頃のクルマですが,5年間の重心位置の開発推移を見るとなかなか面白いです.NSXが一番分かり易いですが,徐々に低く・前に移動している様子がよく分かります.

『低く』する理由は自明だと思いますが,『前に』移動させている理由は何なのか? やはり50:50を目指しているのか? 記事を読むとその理由は「フロントタイヤにより多く仕事させるため」と書かれていました.

従来のレーシングカーでは,駆動をかけるリアタイヤのサイズはフロントよりも大きく設定されていた~(中略)~しかし,近年になって,フロントタイヤを大径化して,より多くの仕事をさせようという発想が広がった.

フロントの大経タイヤから十分な性能を引き出すためには,それに応じた荷重をかけなければならない.従来理想と言われた45:55というバランスでは,前荷重が不足気味になる.大径のフロントタイヤを装着したレーシングカーにとって,理想の重量バランスは48:52~50:50で,非常に前寄りになっている.



なるほど.操舵と駆動を分けている後輪駆動車の場合,相対的にフロントの仕事量が少なくなるので,フロントタイヤを積極的に太くする理由がなかったのが,レギュレーションでフロントとリアを同サイズにする事が許可されているなら,それを最大限使わない手はない!という発想のようですね.

では,その48:52~50:50を実現するために,スープラ・GT-Rは何をやったのか?というと,



最初(99年型)は,エンジン・ミッションの位置を後退させ,重量物を中心に寄せるフロントミッドシップ化が行われたそうです.その後(03年型),更にミッションを分離して,後方へ移動させてデフと一体にするトランスアクスル化が行われ,更にリア寄りとなったようです.ちなみに,トランスアクスル化がされた'03年とそれを行う前の'02年の重心位置を上の方の絵で確認すると,スープラ・GT-R共に中心よりもやや前方に移動しているのが分かります.GT-Rの方は前方に移動しつつ低くなっているので,前後よりも上下を優先したのかな?と思いますが,スープラの方は上下は変わらず,純粋に前方にスライドしていますね.それだけフロントタイヤの仕事量を増やしたかったという事なのでしょうか・・・?


一方,MRであるNSXはどうか?というと,



NSXのエンジンは元々横置きなので,まずは(00年型),エンジン下をくぐっていた排気管を横にズラして,マウント位置を下に下げたそうです(↓).



単純にエンジンだけ位置を下げると,エンジンの出力軸とデフの入力軸の高さが合わなくなると思いますが,間のミッションで一軸増やして,このズレを吸収したそうです.さすがはメーカーワークスの仕事って感じでしょうか.その後(03年型)でエンジンの搭載位置が普通のMRっぽい縦型に変更となりましたが,横型搭載前提のNSXを無理やり縦型にしたので,ミッションをエンジンの前方に置き,プロペラシャフトを介してデフに繋ぐというレイアウトになったそうです.強引な手法ですが,前述の重心位置を見ると,確実に低く・前方に寄っているので,こうまでしてでもフロントタイヤに仕事をさせたかったという事なのでしょうね.実際問題,当時のスープラ・GT-Rは前後330/40R18の同サイズを履いているのに対し,NSXはリアこそ330/40R18を履いているものの,フロントは325/35R18とワンサイズ小さいので,荷重不足で苦しんでいたのでしょう.


ここまでで,後輪駆動車がフロントタイヤに仕事をさせるために重量配分を前方に寄せているのは分かりましたが,では,前輪駆動車もリアタイヤに仕事させるために重量配分を後方に寄せているのか・・・?というと,そう簡単な話でもないようです.

一番分かり易いのが,坂道発進(↓).



クルマは加速しようとすると必ず後傾姿勢になりますが,後傾姿勢になるとフロントが浮く事になります.そうすると,フロントで駆動しているFF車の場合,トラクションが掛からなくなるので前に進まなくなる・・・という問題です.このため,FF車の場合は重量配分を後方に寄せ過ぎないように設計されているそうです.

じゃあ,FFで50:50のクルマなんてないの?と調べてみたところ,見つけました!(↓)



Citroen Xsara F2 Kit Car

まぁ,見つけたといっても,ゲーム(GT6)上で設定数値が50:50になっているだけの話ですが・・・.
一応,実在するクルマではあるものの(↓),実車が本当に50:50なのかは分かりません.



ただ,GT6上で走らせてみるとFFとしては驚異的に曲がるので,グランツーリスモをお持ちの方は,一度味わってみると面白いかもしれません.


以上,重量配分のお勉強でした.
この話,実はもう少し続きがあるのですが,いつもの通り長くなってしまったので(笑),今回はここまで(次回に続く).
2021年09月23日 イイね!

縦Gを意識せよ!(後編)

縦Gを意識せよ!(後編)TC1000の1ヘアでタイヤの縦のグリップを限界まで引き出せているのか?と言われ,ハイグリップラジアルの限界が1.2Gと言われているところ,私は1.0Gでフルロックしたのに,プロは1.3G出してもロックが回避出来た・・・というのが前回のお話.

ブレーキング時にタイヤのロック→解除という高度なスキルが,私にないのは事実だとしても,ロック経験後の2度目の踏み込みで,1回目よりも踏力を上げるとは考えにくく,一体プロはどうやったんだ?と他のデータも調べ始めました.

そうしたところ,別の日に,別のプロに,別のタイヤで走ってもらった時のデータ(↓)を見ていたところ,



右側の緑丸の部分で1.23G出ていました.やっぱりプロは出せるのか・・・と思いつつ更に見ていくと,同じプロが,同じタイヤで,同じ走行枠を走ったのに,左側の緑丸の箇所では0.99Gしか出していない事に気づきました.

この赤線と青線の違いは何か?を調べていったところ,それが 車重 である事に気づきました.

赤線はプロの単走時,青線はプロの横に私が同乗した時.つまり,青線の方は私の体重分(約60kg)クルマが重い状態の時のデータという事になります.そして,別のプロが1.3Gを出した時も,やはり車重が増えていた時(=同乗走行時)であった事に気づきました.


ブレーキング時に1.2Gを出すためには,車重が何か関係がある・・・?と思い,今一度,物理の基本に立ち返って考えてみます.

運動方程式([力] = [質量] × [加速度])より,

 [減速G] = [制動力] / [車重]

となるので,[減速G]を上げるためには,ブレーキの[制動力]を上げるか,[車重]を減らせば良い事になります.これで[車重]が関係している事は確認出来ましたが,[減速G]は[制動力]と[車重]の比率になりますので,片方が増えたら,もう片方も増えないと絶対値的には上がらないという事になります.


という事で,次にブレーキの[制動力]に関して調べてみます.


(アドヴィックスセールス:ブレーキ雑学講座72 タイヤとブレーキより)

 [制動力]
  = [ピストンシリンダー面積] × [パッドの摩擦係数] × [ブレーキ油圧] × [ローター径] × [タイヤ外径]

ですので,同じクルマで物理諸元が一緒であるならば,[制動力]を決めているのは[ブレーキ油圧]=[踏力]のみという事になります(厳密には,[パッドの摩擦係数]も車速によって変化しますが,今回は省略).

従って,同乗走行時のプロは,[車重]が増加した分だけブレーキング時の[踏力]を上げ,[車重]の増加分よりも[踏力]の上げ代分の方が大きかったため,結果,[減速G]が上がった・・・という理屈になりそうです.


では,なぜ[車重]が増えると,より[踏力]を上げられるようになるのか?
ここも物理の基本に立ち返って考えてみます.



アモントンの法則から,

 [摩擦力] = [摩擦係数] × [垂直抗力]
       = [摩擦係数] × [車重]

となりますので,[車重]が増えると[摩擦力],すなわちタイヤのグリップが単純に増える事になります.
[摩擦力]が増えれば・・・,



それと釣り合うようにブレーキング時の[制動力]も増やす事が出来ますので,これが[車重]が増えて[減速G]が上がった理屈のようです.


理屈が分かったところで,では,[車重]が軽い時に,なぜプロは1.2Gを出さなかったのか? これはプロの技量を踏まえれば「出さなかった」のではなく,「出せなかった」と捉えるべきでしょうね.

ならば,[車重]が軽いとなぜ出せないのか? プロですから「フロントタイヤのグリップを使い切れていない」なんて事は有り得ません.グリップに合わせて,フロントの制動力はMAXまで使い切っているはず.ここから更に制動力を上げるとなると・・・,

ハッ! Σ(゚▽゚;)!! 「リアの制動力か!?」


私のEF8の前後重量配分は 65.6:34.3 という典型的なフロントヘビーで,リアの軸重は337kgです.

そして,同乗時に乗っかった60kgのウェイトは,この位置(↓)にセットされているので,車体のほぼ中心.



ウェイトがない状態で車高はほぼ水平にセットしてありますから,車体の中心に掛かった荷重は前後のバネレートに基づいて配分されると思われ,当時のレートだとフロント:リア=2:3くらいになるはず.これに基づきウェイトの分配をざっくり計算をしてみると,

 60kg × 3/5 = 36kg

となりますので,リアの軸重は,

 36kg / 337kg = 0.10

となって,約10%増えていた事になります(ちなみに,フロントの増加量は約3%).

前述の通り,タイヤのグリップは重量(軸重)に依存しますので,これだけでリアのグリップが10%増加し,同等以上の制動力も得られると考えられます.これに加えて,ウェイトの追加により,水平→リア下がりに車高が変わっていたのだとしたら,



フルブレーキング時に起きる,リアのリフトを抑制する効果も得られいるかもしれません.これによってリアの制動力は更に上がっていた可能性もありますね・・・.


以上を纏めると,プロがブレーキング時に1.2~1.3G出せていたのは,60kgのウェイト追加による副次効果と思われ,ウェイトがない時の限界はやはり1.0G前後と思われます.これはウェイトの追加によって前後の重量バランスがリア寄りに変化し,軽量時には使い切れていないリアブレーキの性能を引き出せた事によるものと推測します.

であるならば,リアが軽量なFFで,ましてショートホイールベースでリアが浮き易いCR-Xの場合は,一般的に言われているハイグリップラジアルの限界Gを減速時に引き出すのは難しいのではないか?と思われます.どうしても限界Gを引き出したいのならば,リアに重りを乗っけて走れば済む話ですが,仮に重りを乗っけてブレーキングで稼いだとしても,重りのせいでコーナリングとストレートスピードを失うのであれば,トータルで考えれば損だと思いますので,それをやろうとは思いません(笑).

ただ,重りを乗っける以外の方法(例えば,車高をリア下がりにするとか)で,リアブレーキを効果的に使えるようになるのなら,試す価値はあるかな?と思います.そして,その際に効果を測るモノサシとして,今回,ひらりん2000GTさんに教えて頂いた「1.2G」が指標の1つになるのではないでしょうか.

ひらりん2000GTさん,アドバイス有難う御座いました!
Posted at 2021/09/24 23:39:25 | コメント(2) | トラックバック(0) | ドライビング研究 | 日記
2021年09月22日 イイね!

縦Gを意識せよ!(前編)

縦Gを意識せよ!(前編)先日のTC1000で,ひらりん2000GTさんから「ブレーキング時に限界までタイヤを使い切れているのか? もっと縦Gを意識すべきだ」とアドバイスを頂きました.

その際の指標として「Sタイヤであれば1.5G,ハイグリップラジアルであれば1.2G出せているかどうか?」だと教えて頂きました.私はSタイヤを履いた事がないので実際に1.5G出るのかどうかは分かりませんが,ハイグリップラジアルの方は「1.2Gくらいは出るだろうなぁ~」と感覚的には思いました.

通常Gというと横Gを指している気もしますが,ひらりんさん曰く「縦Gもそれを狙うべき」との事.A052のブレーキングで1.2Gと言われると,さすがにそこまでは毎ラップ出せていない気はしたので,「1.2Gはさすがに出てないと思いますけど,1.0G前後くらいのブレーキングは毎回していると思いますよ」と答えたら,「本当に1.0G出ているのか? 仮にそれが0.6G程度だったら,大きな詰め代じゃないか.確認してみるべきではないか?」とアドバイスを頂きました.

・・・という事で,今回は「TC1000 1ヘアのブレーキングで何G出ているのか?」を確認してみたいと思います.


まず,私の感覚的には,1ヘアのブレーキングで1.0G前後くらいは毎回出せている気がしていて,これを1.2Gまで上げるとフロントタイヤがロックする認識です.よって,手始めにこの日のベストラップと,過去に最も派手にタイヤをロックさせた時(↓),



この両者のロガーデータから比較してみたいと思います(赤:ベストラップ時 青:フルロック時).



1ヘアは緑丸のポイントですが,1.0G前後は出ていそうですね・・・.拡大してみます(↓).



ベストラップ時(赤)は1.03G,フルロック時(青)は0.99Gでした.ベストラップ時(赤)とフルロック時(青)で色々仕様が異なりますが,一番大きな違いはタイヤの銘柄です.サイズは同じ205幅ですが,ベストラップ時(赤)の方はA052,フルロック時(青)の方はRE-71Rを履いています.

巷で言われているように,「縦のBS」と私も認識しているので感触的には縦のグリップはA052よりRE-71Rの方が僅かに上な気がしています.従って,その縦のRE-71Rでフルロックするレベルの減速Gよりも,更に大きな減速GをA052で出したとなると,タイヤの縦グリップの限界はちゃんと引き出せているように思えます.


さて,A052とRE-71Rで縦のグリップはどちらが上か?は主観が混じるので,ここでは一先ず横に置いておくとして,車載映像が示す通り,RE-71Rで1.0Gに達するとフルロックする(タイヤの縦グリップの限界を超える)事は間違いありません.

だとすると,先述の「ハイグリップラジアルの限界は1.2G」という話と辻褄が合わず,本当にRE-71Rの限界は1.0Gなのか? 私のブレーキングスキルが低い(ドライバーの腕が悪い)せいなんじゃないか?と疑問が浮かびました.

そこで,こちらの方(↓)にご登場頂き,



ロガーデータを見てみます.上記の車載はRE-71Rで走って頂いた時のものなのですが,1ヘアのブレーキング時にロック→解除を行い,限界ギリギリのコントロールをしているのが確認出来ます.このプロのコントロール時のデータなら間違いないだろう・・・という事で見てみると(赤:私 青:プロ),



なんと,1.32G!

さすがはプロですね.1.2Gを軽々と超えてきました.そして,このグラフの赤線は同じ日に走った私の方のデータなのですが,やっぱり1.0G止まりで,私の感覚ではここら辺をタイヤの限界だと判断しているようです.

一体,この0.3Gの違いは何によって生み出されているのか? それを解き明かすために他のデータを見ていると・・・というところで,話が長くなりそうなので一旦ここで切ります(次回へ続く).
Posted at 2021/09/23 19:36:21 | コメント(3) | トラックバック(0) | ドライビング研究 | 日記

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「[整備] #CR-X フロントスプリング交換 https://minkara.carview.co.jp/userid/1684331/car/1250119/7767117/note.aspx
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